音楽と言語には多くの共通点があり,鳴り響く音の背景に「言葉」が潜んでいる。ロマン派の作曲家は特に,音楽に普遍的な価値と個人的な心情をオーバーラップさせる傾向があり,彼らは自己の内面を表面化しつつ,詩歌の恩恵なども受けながら豊潤な言語世界を音楽にしてきた。
本論は,言葉に並外れた感性をもつR.Schumann の音の「風景」を,言語的な視点から見つめるものである。今回は《子供の情景》作品15 を題材として選び,中核となる〈トロイメライ〉に焦点を当てながら,「詩人」「夢」「子供」というキーワードと共に,言葉にできない世界を,敢えて言語で表現しようと試みた。
その結果,シューマンの潜在意識が音楽に投影される過程が浮かび上がり,現代に引き寄せて考察すると,彼が現実と非現実を行き来する優れた言語能力を持っていたからこそ,時空を越えたテーマを後世に提示し続けている事が確認出来た。
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