近年の国内では小児のう蝕罹患率が低下し、不正咬合を主訴として歯科医院を受診する患児の割合が増加している。これは歯冠幅径の増大傾向など児童を取り巻く環境変化に伴う口腔内の状況の変化による影響が考えられる。過去に不正咬合に関する実態調査が行われているが、近年同様の調査は実施されていない。そこで、現代の児童の不正咬合および永久歯の萌出状況を把握することを目的として実態調査を行った。研究対象は、環境省子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の北海道札幌地区において 2021 年7月から 2022 年3月までに歯科追加調査に同意した小学校2年生の児童 82 名(男児 46 名、女児 36 名)であった。対象者には永久歯の総萌出本数、第一大臼歯萌出本数、永久前歯萌出本数、不正咬合の発現率と分類、矯正治療経験の有無について調査を行った。全調査対象(8.1 ± 0.23 歳)において少なくとも1本以上の第一大臼歯が萌出しており、永久前歯は上下中切歯及び下顎側切歯については萌出が完了し、上顎側切歯は半数以上が未萌出であった。また、対象児童の半数以上が何らかの不正咬合を有し、その種類別発現頻度は叢生 25 名(59.5%)、反対咬合8名(19.0%)、上顎前突7名(16.7%)、偏位5名(11.9%)、過蓋咬合5名(11.9%)、開咬2名(4.7%)であり、叢生が最多であった。今回、北海道札幌地区の小学2年生の児童における永久歯の萌出と不正咬合の実態を明らかにすることができた。
抄録全体を表示