腎結石を合併した特発性腎性低尿酸血症の患者にallopurinolを投与して自覚症状の改善を観察できた.症例は42歳の男性で,25歳ごろより血尿,腰痛,結石の自然排泄を認め,37歳で低尿酸血症を指摘され,42歳の時入院して低尿酸血症の精査を受けた.血清尿酸値1.9mg/dl,尿酸クリアランス(C
UA) 50.7~53.3ml/min, 尿中尿酸排泄量482.5mg/日,pyrazinamide 3gの投与で尿酸排泄は完全に抑制されたが,benzbromarone 200mgの投与では尿酸排泄の増加はみられなかったことより,本症例を分泌後再吸収障害型の腎性低尿酸血症と診断した.腹部単純X線像で両側腎部に一致して多数の石灰化陰影が認められた.分析の結果,結石はシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムの混合石であった.腎結石に対し手術は適切でないと判断され,また本例の腎結石の発生・増加に尿酸クリアランス亢進状態が悪影響を与えていると考えられたので, allopurinol 200mgの投与を8年間にわたって行った.その結果,結石の縮小・消失はみられなかったが,allopurinol投与中は癌痛発作や結石の自然排泄の頻度が減少し,また副作用もみられず,allopurinolの投与は臨床的に有効であったと考えられた.特発性腎性低尿酸血症と腎結石の合併は国内外の報告例を通覧すると15%の頻度でみられ,結石の種類は尿酸結石とカルシウム結石が同程度にみられる.本症に合併した腎結石の治療には尿酸結石の場合は言うに及ばず,カルシウム結石に対してもallopurinol投与は試みる価値のある治療法と思われた.
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