人間福祉学会誌
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20 巻, 1 号
人間福祉学会誌 第20巻 第1号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • ― 刑事施設、少年院のソーシャルワーカーへのインタビュー調査から ―
    中村 秀郷
    2021 年 20 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、矯正施設の福祉職が高齢者・障がい者ソーシャルワークで直面する困難性の構造・展開を明 らかにし、その実態を体系的に整理することである。矯正施設の福祉職 9 名を対象として、個別インタビュー及び フォーカスグループインタビューによる半構造化面接を実施し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA)を用いて逐語データの分析を行った。分析結果から12個の困難性概念が生成し、概念間の関係性から、< ソーシャルワークができない葛藤>、<矯正への苦慮>、<クライエントの言動への困惑>、<矯正施設出所に向け た地域調整への焦り>、<支援の行き詰まり>の 5 つのカテゴリーに収斂された。本研究では、概念間の繋がり、カ テゴリー間の流れから矯正施設の福祉職のソーシャルワークの特徴を提示し、実践現場で直面すると考えられる困難 性の予測に示唆を与えた。
  • — 災害1年後の関市訪問調査から ―
    山下 科子, 木村, 名倉, 田中
    2021 年 20 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、平成30年 7 月に発生した関市豪雨災害で大きな被害を経験した地域の 1 年後となる2019年 8 月~ 9 月に実施した生活状況等の訪問調査結果を分析したものである。その結果、病気と有意な関連がみられた項目は、被災時の対応より被災後の健康状況や生活習慣に多くあった。メンタルヘルス指標であるK 6 評価の項目別では、気分の沈み状態になる者が有意に病気有となる傾向にあった。ヒアリング(自由記述)「安全な避難のために必要なこと」 については、性別、年齢区分、世帯、地域により選択率と共起関係に違いが見られ、「健康や生活上で気になること、 不安なこと」については、年齢区分と地域により選択率と共起関係に違いが見られた。被災者の今後の心身の健康のためには、地域性や環境に合わせた早急な防災整備や継続した健康管理が必要である。
  • — 3年間のサロン活動推移調査から ―
    野村 敬子, 松田, 稲垣
    2021 年 20 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    S市では、サロン活動における地域住民連携フレイル予防事業に取り組み始めて 3 年になる。2017年度より 3 年間のサロン活動推移調査からサロン活動における地域住民連携フレイル予防の成果について検討した。結果、サロ ン会場数と参加者数、支援者と参加者間で強い相関が認められた。フレイル予防事業対象者数は、全地域で年々減少 した。最も高齢化が進んでいる地域のフレイル予防事業対象者は 0 人になった。参加者と地域住民支援者とのつながりが参加率を高め、フレイル予防の取り組みの成果につながったものと推測した。したがって、サロン活動における 地域住民連携フレイル予防の継続的に成果を図るには、地域住民支援者のフレイル予防意識の強化が重要であり、サ ロン活動参加者へのフレイル予防意識の向上に寄与するものと考えられる。
  • 森 千佐子, 壬生
    2021 年 20 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、介護福祉士と社会福祉士のダブルライセンスの意義や必要な学習内容について明らかにし、 両養成課程における具体的な教育内容について検討するための基礎資料とすることである。四年制大学において、介護福祉士・社会福祉士の両養成課程で学び、福祉専門職として従事している 9 名を対象にインタビュー調査を行い、質的帰納法を用いて分析した。介護福祉士・社会福祉士のライセンスは、他職種連携や利用者理解に役立ち、活躍の場の広がりにつながっていることが示された。大学での授業により、対象をアセスメントする力や対人支援の基礎が身につき、実践に活かされていることがわかった。また、ロールプレイやディスカッションなどの授業形態が、学びに有効であることも確認できた。修得しておきたかった内容や養成への要望からは、他職種との連携・協働に必要な知識の必要性や実際の連携・協働のあり方に関する課題が示唆された。
  • ― 東京都内の施設を対象とした調査より ―
    永嶋 昌樹
    2021 年 20 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、介護施設における外国人介護人材の就労実態を把握するとともに、施設ソーシャルワーカー の外国人介護人材の受入れについての意識と、その課題を明らかにすることである。調査の結果、2019(平成31)年 3 月 1 日現在で、東京都内の特別養護老人ホーム・介護老人保健施設の42.6%にはすでに外国籍の職員が在籍しており、 特に、特別養護ホームに限っていえば45.4%の割合であることが明らかとなった。つまり、施設ソーシャルワーカー の半数弱は、既に外国人介護人材と接していると考えられる。ソーシャルワーカーとしては当然であるが、外国人介 護人材との関係をミクロレベルの視点で捉えること、単なる労働力ではなく、生活している一人の人間であると認識 して関わることが重要である。また、ソーシャルワーカーとして関わることこそが期待される役割である。
  • ― 放課後等デイサービスにおける取り組みを事例に ―
    松田 光一郎
    2021 年 20 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル オープンアクセス
  • ~ハローワークの利用を視野に入れて~
    吉川 知巳
    2021 年 20 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国のシングルマザーの就業率は高い。しかし、再就職先は、非正規雇用が少なく「ワーキングプア」に陥 る傾向にある。やはり、正規雇用されるには、病児保育などの子育て資源の利用を念頭においた求職活動が必要だ。 しかし、この利用を念頭に入れて動いているシングルマザーは少ないだろう。彼女たちは、稼ぎ手である夫がいない ことからすぐに働かざるを得ない。つまり、手短な織り込みチラシなどで探すのが現状だ。これよりも、ハローワー クなどを利用した方が正規雇用として就職しやすい。昨今は、マザーズハローワークなどでは、子育て支援の情報も 紹介されることから、なおさら公的な機関を利用した方がよい。ここへ、彼女たちをつなげるには、離婚届けを出す 市民課などに、ハローワークなどの案内をおくことを提案した。
  • ― 健康問題からケアニーズ抽出を目指して ―
    中谷 こずえ, 五十嵐, 石塚
    2021 年 20 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル オープンアクセス
    矯正施設で社会復帰を目指す成人男性受刑者の健康実態と健康意識の現状を明らかにし、健康問題の観点から 健康を維持増進するための看護支援を明らかにすることを目的とした。全国56箇所の成人男性受刑者708名に対して、健康実態と健康意識についての質問紙調査を郵送法で行った。調査内容は、基本属性(年齢、施設での生活歴、前職業、過喫煙歴、BMI、現在歯数など)と、健康状態(精神・睡眠状況、食欲、身体活動量、・生きがい意識など)で構成した。統計解析には、275名(有効回答率38.8%)のデータを使用し、調査項目ごとに記述統計量を算出し、t 検定、相関関係、さらに関連要因を探索するため、重回帰分析も用いた。研究参加者の平均年齢は45.5±10.71歳であった。入所期間は、 5 年以上が半数(58.9%)であった。受刑前職業種では、土木業者や専門・技術職者(67.6%)が半数以上を占めていた。年代別現在歯数を一般値と比較した結果、30から50歳代(p<0.001)と70歳以上(p<0.05)は有意に低いことが示された。現在歯数を従属変数として重回帰分析では、年齢、排便習慣、食事摂取量が有意な負の標準回帰係数を示した。医療体制が十分ではない刑務所という環境下において、刑期が長期にわたり、加齢による変化は避けられない。また、歯の損失により、十分にかみ砕くことができないため、食事摂取量やさらには、排泄にも直接的に影響を及ぼすことが明らかになった。社会復帰を目指すためには、健康が保たれなければならない。そのため、精神・睡眠・身体活動量や生きがい意識にも働きかけながら、矯正施設内でも行える歯周病などの病気発症の予防ケアが求められていると考えられた。
  • ― グループ・インタビューから見えてきたこと ―
    宮嶋 淳, 今井
    2021 年 20 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、介護や保育の職場で働く職員がダイバーシティを理解し、介護・保育の領域で必要とされる多職種連携によるダイバーシティの実践ができるようになるために、如何なる専門性が必要であり、それを養成するためのリカレント教育には、どのようなプログラムを開発することが求められるのかを明らかにすることを目的とした一連の調査研究のうち、質的研究にあたるインタビュー調査結果を報告するものである。介護・保育職場におけるダイバーシティ専門職を養成するための焦点として、職場内外環境を理解し、様々な人々を主体者として参加させ、ダイバーシティの良さを感覚的に体得していること並びに実践上のリスクを理解し、回避できることが求められると考えられた。
  • ― Zoom を活用したグループワークの結果より ―
    宮嶋 淳, 宮嶋
    2021 年 20 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿ではアート・プログラムを対面ではなく、オンラインで行うことによりどのような変化が生じるのかに焦点をあてた。その変化が負の効果である場合、どのように活用方法を工夫する必要があるのか考察した。その結果、オンラインによる臨床美術実践を提供していくために 5 つの課題があることが明らかにされた。それらは第 1 に、講師の操作方法に関する基礎知識の修得、第 2 に実践の質を確保するための技術力、第 3 に実践プロセス上のクライエントとの適切なコミュニケーション、第 4 にクライエントの特性と指向性の尊重、そして第 5 にクライエントの特徴に即した目標・到達点・支援計画などの立案・実行である。このような 5 つの課題を克服し、オンラインによる臨床美術を実践していくことが、新型コロナ禍における今後の展開課題であることが明らかにされた。
  • ― A県内の地域活動支援センター職員の施設評価に対する意識調査より ―
    加藤 大輔
    2021 年 20 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル オープンアクセス
    精神障害者施設を利用する当事者が、施設で行われている活動や運営を共に考える当事者参画型の評価システムのあり方を考察するために、A県内の地域活動支援センターのうち、主な支援対象を精神障害者としている11ヶ所の職員に対して意識調査を実施した。調査は無記名自記式のアンケート調査で、回答者数は61人であった(回収率は95.3%)。調査の結果、「プログラム内容の定期的な話し合い」は利用者を交えて実施している意識は高かった。しかし、「プログラム内容の振り返り」「年間の事業計画を作成するための話し合い」「年度末に事業計画の実施状況の評価」「施設の運営状況を共有する機会」は利用者を交えて実施している意識は低かった。よって、A県内の地域活動支援センターでは、当事者と職員が能動的なかたちで活動や年間計画を振り返るといった当事者参画を意識した評価は行われていない状況が明らかになった。だからこそ、職員は当事者と日々の活動だけでなく、施設全体に関することを共に振り返り、評価する姿勢を意識することで、より当事者参画が進んでいくと考えられる。
  • ― 介護福祉職員へのインタビュー調査 ―
    高野 晃伸, 名倉, 横山, 山下, 海老, 土谷, 森田
    2021 年 20 巻 1 号 p. 95-103
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/12/06
    ジャーナル オープンアクセス
    介護福祉現場における人手不足は深刻な状況であり、介護福祉職員の腰痛対策など労働環境の改善は喫緊の課題といえる。このような状況に対して国は、介護ロボットを含む介護支援機器の普及を推奨しているが、介護福祉現場では十分に普及しているとは言い難い。そこで本研究では、A県の介護福祉士養成校における介護支援機器教育プログラム作成に向け、現場における介護支援機器導入の阻害因子と促進因子を把握することを目的として調査・研究をおこなった。その結果、介護支援機器導入の阻害因子として「非効率」「金銭的理由」が、促進因子として「職員の課題改善」や「事故防止」などが示された。しかし、「利用者の自立支援」は抽出されなかった。よって、業務効率優先の志向に偏重することなく、利用者の自立支援の観点からも介護支援機器の導入を図るなど、多面的に介護支援機器の導入を検討できる知識・認識を身に着けることのできる教育の充実が求められる。
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