人間福祉学会誌
Online ISSN : 2435-9254
Print ISSN : 1346-5821
19 巻, 2 号
人間福祉学会誌 第19巻 第2号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • -株式会社Tの雇用前実習を事例に-
    松田 光一郎
    2020 年 19 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では自閉性障害を伴う知的障害者の職場定着に向けた環境整備のあり方について、雇用前実習を行う株式会社Tとジョブコーチが連携した就労支援の事例をもとに検討した。その結果、職場定着に必要な環境整備の条件として、①就労支援機関との継続的連携、②本人中心計画の共有と更新、③職場定着支援に関する情報移行の3つが判明した。よって、これらの条件を満たすためには、職場定着後も関係者が継続的に本人中心計画を確認し、当該個人最新情報に基づく支援を実施する仕組みの重要性が示唆された。
  • ~テキストマイニングによる学生感覚の分析~
    宮嶋 淳
    2020 年 19 巻 2 号 p. 9-16
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    この研究では、視聴覚教材を活用して、学生が国際協力ボランティアに関する「共感」感覚に焦点をあて、今後の教育のあり方について検討した。  学生たちに提示した視聴覚教材は、教材提供機関の意図を学生たちに的確に伝え、訴えかけ、理解されるものであり、学生たちのボランティア感覚を向上させるために効果を上げるものであった。 テキストマイニングの結果から、国際協力ボランティアに関する学生の共感感覚が「ボランティア=善、変化・成長、生き様、役立ちの継続」を軸としていた。 そうした学生の「共感」感覚を活かした、授業展開や教材の選択、開発を行うためには、明確な意図のもと、可視化された教材を活用することが有効であろうことが示唆された。
  • 西村 智恵子, 高野
    2020 年 19 巻 2 号 p. 17-24
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、学童期自閉症スペクトラム(以下、ASD)児の母親における困難への対処に伴う体験のプロセスについて検討することを目的とした。学童期ASD児の母親8名を対象にインタビュー調査を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的分析を行った結果、以下のような体験のプロセスが示された。(1)学童期ASD児の母親は子育てにおいて【子どもの特性理解と対応】の試行錯誤を繰り返す中で、【行動問題の多面的理解】や【子どもの変化への気づき】の段階へと進み、子ども理解を深めていく。(2)子ども理解が深まるにつれて、【母親自身の生き方の変化】が促され、それが【母親の困惑】を軽減することにつながっている。(3)【ソーシャルサポート】は、これらのプロセスの促進要因としての働きを持っている。以上のようなプロセスを踏まえ、各段階の課題を的確に把握することが、学童期ASD児の母親支援において重要であると考えられる。
  • 大沢 理尋
    2020 年 19 巻 2 号 p. 25-33
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
  • 金 美辰
    2020 年 19 巻 2 号 p. 35-42
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者の余暇福祉施設である老人福祉館を利用する地域高齢者の社会活動及び社会活動に影響を及ぼす要因,利用継続要因や利用阻害要因を分析し,継続利用に求められる支援について把握することを目的とした.老人福祉館を利用する地域高齢者30名を対象に,半構造化した質問による個別面接法で調査を実施した.krippendorffの内容分析の手法を用いて分析を行った結果,402のコードが抽出され,18のサブカテゴリーと4つのカテゴリーが生成された.老人福祉館利用地域高齢者の社会活動は,[個人活動][社会参加・奉仕活動][学習活動][仕事]に分類され,老人福祉館利用を通して形成された人間関係が地域における交友関係や社会活動に繋がっていた.老人福祉館の継続利用には,利用者が楽しく感じることや健康の維持・管理等の自身の役に立つ活動の提供及び社会的居場所利用へのソーシャルサポートが求められることが示唆された.
  • -S市内合同運動行事構築の成果を通して-
    野村 敬子
    2020 年 19 巻 2 号 p. 43-49
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    S市の高齢福祉課や地域住民の協力の下で、市内全認知症グループホームの入居者を対象に、地域合同運動行事を実施して5年目になる。認知症高齢者は認知症でない人に比べて8倍転倒しやすいと報告1) されていることから、送迎を伴う集団運動会には大きな不測のリスクを伴う。しかしながら、施設参加率は5年連続6割を超える。参加利用者のADLは、自力歩行可能者78.8%、オムツ交換要介助者が約80%、自立度が上がった者が12.8%、参加不能者及び自立度下降者が37.2%と要介護状態の重度化傾向が見られる中、当日の条件により参加率の変動はあるものの、地域合同運動行事への期待値が高く、地域住民に対して「災害発生時の緊急体制を求める」が5段階評価の4.7で最も高かった。年に一度、重度化した認知症利用者を会場へ搬送することで、避難訓練の代替機能としていることも分かった。市内合同運動行事に参加する意義として、不測のリスクを伴いながらも、認知症の理解や見守り支援の必要性を伝える上でも地域住民との交流機会は意義深いといえる。そして、地域連携緊急時協力体制を求めていることが明らかになり、地域密着型としての機能拡充の可能性が見えた。
  • -プレフレイル・フレイルの現状と課題-
    野村 敬子, 加納, 名倉, 羽田野
    2020 年 19 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、60歳以上の介護保険制度における介護認定非該当者、かつ不就労者を対象として、フレイル予防教室に参加してもらい、同意を得た参加者に、ポピュレーションアプローチ型フレイルチェック方式による主観的・客観的健康評価を行った。健康評価の調査結果から、プレフレイル・フレイルの現状と課題について検討した。教室参加者96名(男27名、女69名)に対し、同意を得られた調査対象者は82名(男21名、女61名)であった(85.4%)。チェックリストを用いてフレイル群、プレフレイル群、非該当群に分類した。フレイル群は11名(13.4%)、プレフレイル群は26名(31.7%)、非該当群は45名(54.9%)であった。年齢、性別は3群で有意差を認めなかった。TUG、握力、かな拾いテスト、主観的健康感、運動習慣、運動する仲間の有無、相談者の有無、ストレスの有無、睡眠の状況において有意差が認められた。運動する仲間がいるものは、握力の値が高い、かな拾いテストの値が高い、1日の歩行時間が短い、主観的に運動不足だと思わないことが因子として抽出された。プレフレイル状態から健康状態とは異なった事象が主観的・客観的問わず出現していることが明らかとなった。
  • 永嶋 昌樹
    2020 年 19 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者と交流することへの意識や意向は,高齢者と交流した経験が関連していると仮定し,これを検証するために,小学校5・6年生の児童を対象に高齢者に関する意識調査を実施した. その結果,単に高齢者との交流経験があったり,同居していたりするだけでは,高齢者との交流意向があるとは限らないことが明らかとなった.ただし,祖父母と現在交流していることと,高齢者との交流の意向の関係については,さらなる検証の必要があると考えられる. また,高齢者との交流を積極的に望まない子どもは,高齢者に対してネガティブな感情を抱いているというよりも,高齢者への関心が低い傾向にあることが伺えた.高齢者との交流の意向がある子どもは,そうでない者よりも世代間交流活動への参加意向も高かった. これらの結果より,子どもの高齢者に対する肯定的な感情を育むためには,まずは高齢者への関心を高めるための働きかけが必要であると考える.
  • -A県下介護福祉施設の実態調査より-
    横山 さつき, 山下, 海老, 土谷, 森田, 名倉, 高野, 野村
    2020 年 19 巻 2 号 p. 67-77
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    介護福祉施設における介護支援機器の導入・活用状況及び介護職員に対する教育状況等を明らかにするために、A県下所在の特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、障害者支援施設の全数(311施設)を対象として郵送法による質問紙調査を実施した。その結果、最も導入率が高かったのはスライディングボード52.1%で、装着型移乗支援スーツは2.7%であった。最もアクシデント発生率が高かったのはマット状重量離床センサー40.0%であった。65機器のうち41機器(63.1%)のマニュアルが各施設で作成されておらず、施設・機種によって、「導入時の業者による説明を聞き任意使用を認める」から、「マニュアルを作成して全職員に説明し、実技試験を実施して合格者に使用許可を出す」といったレベルまで教育状況は多様であった。よって、各施設の人的・物的環境に合わせた機器使用マニュアルや介護職員の技量を評価するチェックシート等の開発及び教育体制の整備が必須である。
  • -就労継続支援B型事業所における職員へのインタビュー調査に基づいて-
    鴨野 直敏
    2020 年 19 巻 2 号 p. 79-86
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者は、A県内にある5か所の就労継続支援B型事業所の職員7名に半構造化インタビュー調査を行なった。抽出された要素から、職員の精神障害者への関わり方がどのように適切であれば労働生活の質(Quality of Working life)が向上するのかが理解できた。  先行研究において、職員と精神障害者が労働を通じて労働生活の質(QWL)の向上をはかっている面は理解できた。これらに加えて、筆者は職員の接し方について、ときには友人のように接することも必要になること、また、B型事業所は精神障害者にとっては、労働者性を一方において居場所として考えることが必要ではないかと考えた。つまり、これらは精神障害者の生活の質(QOL)向上を目指すことが同時に、その労働生活の質(QWL)を上げるという相互補完的議論が必要となってくることの方向性を論じたものである。
  • -松本市A地区での取り組み-
    佐藤 哲郎
    2020 年 19 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    地域福祉の実践は、多様な専門機関や専門職および地域で生活している住民や当事者などが協働しながら展開される。筆者は、多様な主体が協働しながら評価していくことが地域福祉活動では特に重要であると考えている。本稿では、参加型評価の事例として、松本市A地区で取り組んでいる「コミュニティカフェ」および「認知症カフェ」の2つのカフェについて実施した参加型評価について報告する。参加型評価を実施した結果、①協議と合意形成の促進、②プログラム改善のしやすさがあげられた。課題として、評価ワークショップでの成果の設定の難しさがあげられた。
  • 髙城 大
    2020 年 19 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、生活保護領域におけるソーシャルワーク実践の中で成立しているワーカーとクライエントとの関係性について、実践上な意味を改めて考え、その今日的な意義を明らかにし、実践的課題を考察した。援助関係には、クライエントの個別化を尊重し、協働作業を経て援助方針へと反映させるという意味があることを確認した。
feedback
Top