人間福祉学会誌
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最新号
人間福祉学会誌
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 松田 光一郎
    2024 年 23 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、知的障害者の雇用のための方略として、応用行動分析の視点に基づいたアプローチの成果と課題について検討した。その結果、知的障害者の障害者雇用の実践に応用行動分析を用いることで、当該個人の問題とされる行動の原因を障害に求めず、なぜその行動が起こっているのかを整理し、環境調整に重点を置いたアプローチを検討するための情報を得ることができた。しかし、社員にとって応用行動分析の専門的な用語は難しく、抵抗感や負担感があるため、応用行動分析の視点に基づいたアプローチから得られた情報を、職場に蓄積・表現・移行するための機能を持ったシステムの構築が課題である。
  • 更生保護就労支援事業の受託団体職員を対象とした質問紙調査の分析から
    中村 秀郷
    2024 年 23 巻 2 号 p. 9-16
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、実践現場から見た更生保護における就労支援の現状と課題を明らかにすることである。令和4 年度に更生保護就労支援事業を受託した全25団体に対して質問紙調査を実施した。分析結果から、本事業の成果として、(1)受託団体は更生保護における支援機関等との連携強化に繋がっていること、(2)受託団体は就労支援のノウハウ習得及び財政基盤の安定に繋がっていること、(3)職員は再犯防止と改善更生に繋がっていることを実感していること、(4)職員は受託団体内部及び保護観察所との連携体制が業務の困難性軽減に有効と感じていること、が明らかになった。また、本事業の課題として、(1)職員は保護観察官と同じような困難性を感じていること、(2)職員は支援期間終了後においても協力雇用主へのフォローアップを行い、苦労することがあること、が示された。本研究は、受託団体職員から見た就労支援の現状と課題の一端を明らかにした。
  • 全国公的扶助研究会に所属するメンバーへのインタビュー調査から
    田中 秀和
    2024 年 23 巻 2 号 p. 17-24
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、福祉川柳事件の反省を経て再建された全国公的扶助研究会(以下、公扶研)が、事件後どのような認識をもって研究運動を行っているのか、またその意義等についていかように認識しているのかについて、公扶研を構成するメンバーに対するインタビュー結果から考察を行ったものである。その結果、調査対象者であるベテランの生活保護ソーシャルワーカーからは、生活保護ソーシャルワーカーをめぐる専門職のあり方について、福祉専門職に対する様々な捉え方があること、ならびにその雇用形態は、正規雇用が望ましいと考えていることを明らかにした。また、本稿では公扶研が担う研究運動が、生活保護利用者の想いを代弁し、より利用者に寄り添った制度設計を求めることにとどまらず、会を支えるメンバー同士の支えあいの場にもなっていることを明らかにした。
  • 命題的心理化の方略に焦点を当てて
    和田 恵, 大石
    2024 年 23 巻 2 号 p. 25-33
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    自閉スペクトラム症(ASD)児には社会的コミュニケーションの困難がみられる。他者心情の推察を調査した先行研究から、ASD 児は言語的補償による命題的心理化を行うことが明らかになってきた。ASD 児がどのように社会的情報の処理を行っているか検証するためには、まず定型発達(TD)児においても、命題的心理化の方略による心情推察が可能なことが説明される必要がある。本研究ではTD 児51名を対象とし、社会的相互作用が描かれた絵カードから命題的心理化を促す文脈分析課題を用いて、心情推察の正答率やナラティブを調査した。その結果、事実の読み取りは十分に可能であったものの、心情推察の正答率にはばらつきがあった。ナラティブにおいては、感情と関連させて因果関係を説明する記述が最も多くみられた。TD 児・ASD 児が行う命題的心理化がどのような機序によるものかは、本研究の結果を基礎にしながら、今後の具体的な介入によって比較検討される必要がある。
  • 精神障害者のQWL とQOL に着目して
    鴨野 直敏, 中村
    2024 年 23 巻 2 号 p. 35-41
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、就労継続支援B型事業所における職員の語りの分析を通して、QWL とQOL の相互補完性に対する職員の支援観を明らかにすることである。 B型事業所の職員9 名を対象に半構造化インタビューを実施し、Mayring(2004)の質的内容分析法を参考に用いて逐語データの分析を行った。分析結果から、利用者のQWL とQOL の相互補完性向上の促進要因として13項目のコード化単位が生成され、7 つの文脈単位に分類され、さらに【職員の日々の情報共有と連携・指導の重要性】、【職員の肯定的声掛けとフォローアップの重要性】、【QWL とQOL の相互補完性向上の重要性】、【職場の居場所と就労の場としての充実化の重要性】の4 つのカテゴリーに収斂された。本研究では、利用者のQWL とQOL の相互補完性に対する職員の支援観を明らかにし、実践現場におけるQWL とQOL の相互補完性向上の促進に向けて示唆するこ とができた。
  • 福岡県内の市区町村社会福祉協議会地域福祉担当職員の自己評価を通じて
    木山 淳一
    2024 年 23 巻 2 号 p. 43-49
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、地域共生社会政策が地域福祉の推進という形で進められている現状にあって、社会福祉法に「地域福祉の推進を図ることを目的とする団体」として明記されている市区町村社会福祉協議会の地域福祉担当職員の自己評価を通じて、これからの地域福祉の推進戦略を考察することである。福岡県内の60市町村(74団体)を対象に、社会福祉協議会が持つ強みや弱み、地域福祉が政策化することでの機会や脅威という4 つの要因を郵送法によって回答を求めた結果を整理・分類し、8 つのグループを生成した。そのグループごとにSWOT クロス分析の手法を参考に、地域福祉政策の実現に向けて社会福祉協議会の地域福祉の推進戦略を考察した。
  • 復職保育者調査結果に関する専門的視点とAI 分析による
    杉山 祐子, 植松, 友永, 南谷, 松川, 田村
    2024 年 23 巻 2 号 p. 51-59
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    保育士不足解決策として、全国に95万人存在する潜在保育士の復職支援は有効と考えられる。本研究は、保育職に復職した保育士へ属性と離職理由、復職動機を調査し、専門家の視点とAI 分析を用いて、復職支援の効果的な観点を検討することとした。310名の復職保育士の回答を得た。属性は、305名が女性、既婚で子ども有は86%であった。離職理由は、結婚、妊娠子育てが最も多く、保育職に失望しての離職は少数であった。AI の分析を加えると、属性と関連が明らかになり、女性特有のライフステージの変化時の離職であり、次のライフステージの変化を機に復職に踏み切ることができていた。その際、育児との両立への職場の理解や、ワーク・ライフバランスを重視した労働時間が要件であった。しかし、復職の最も大きな要因は保育職の魅力や働き甲斐の再認識であった。潜在保育士の復職支援の重要な観点は、保育の魅力の再認識や意欲の喚起であることが示唆された。
  • 兼松 由紀子, 平澤, 樋田
    2024 年 23 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    A大学では、老年看護学実習前に実習に向けた実践的な思考を学ぶために紙上事例の看護過程演習を教授している。認知症高齢者の全体像および看護介入がイメージできることを目的に、独自の動画教材を作成した。質問紙調査の結果、動画教材の学生評価が高かったのは、認知症高齢者への看護介入8項目の中で〈患者と視線が合う位置で話かける〉であった。看護過程演習に動画教材を活用したことによる学習効果についての自由記載からは、≪学生のペースで学べる≫≪患者像の把握≫≪患者を捉えるためのアセスメント≫≪患者とのかかわり方≫の4 カテゴリーが抽出された。独自に動画教材を作成した利点として教員が伝えたいと考えた看護介入のポイントとなる場面を選択し焦点を当てたことで紙上事例では伝えられない患者像に気づくことに繋がった。
  • 堀米 史一
    2024 年 23 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究はリスクマネジメント理論モデルにおける事故防止策と事故防止策以外で事故防止につながる取り組みの構造を検証することを目的とした。東京都内の介護老人福祉施設全580施設の職員1740名を対象にアンケート調査を実施した。欠損のあったデータを除き367件を分析対象者と有効回答とし、分析は因子分析を用いた。結果として①事故防止策21項目4 因子構造、②事故防止策以外で事故防止につながる取り組み21項目5因子構造であることが推測された。信頼性についてはCronbach’s α係数で①事故防止策がα=0.903、②事故防止策以外で事故防止につながる取り組みがα=0.859であった。適合度指標は①事故防止策の適合度指標はCFI =0.846、RMSEA =0.090、②事故防止策以外で事故防止につながる取り組みはCFI =0.821、RMSEA =0.091であった。CFI とRMSEA の値に留意する必要はあるが一定の信頼性と妥当性が認められる尺度であることが確認された。
  • 井上 敦
    2024 年 23 巻 2 号 p. 77-86
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、援助者の利用者観・援助者観と介助のあり方との関連を明らかにすることを目的としている。調査対象者は日常的に介護に携わる老人福祉施設の職員であり、アンケートの配布数は847、回収数は501(回収率59.1%)であった。分析対象は介護職442名とした。アンケートでは主に、利用者をどのような存在と捉えているのか(利用者観)、援助者としてどのような考えに基づきケアを実践すべきと考えているか(援助者観)、実際の介助時の配慮について尋ねた。検定方法は、t 検定及びFisher の正確検定を実施した。検定の結果から、利用者と援助者との関係を常に「援助される/援助する」関係として二分することは利用者の強みや力を発揮する場を見落とすことになりかねないこと、援助者には利用者が「助ける」役割を発揮する機会を用意・提供し、それをケアに活かすことが求められること等が示唆された。
  • 対話を通して生起する支援者の「ゆらぎ」の視点から
    石黒 慶太
    2024 年 23 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、ソーシャルワーク実践において、知的障害者との関係から生起する支援者の葛藤を再考し、積極的な意味づけが付与できるよう試みた。結果として、支援者は、対人関係や制度により葛藤を生起するが、ソーシャルワーク実践における被支援者が知的障害者である場合、支援者である健常者と被支援者である知的障害者の支援関係において当事者のニーズは、支援者による不可視化と排除の対象になる可能性をもつ。 しかし、支援者は、知的障害者へのソーシャルワーク実践において生起した葛藤について、対話を通した「ゆらぎ」として捉えることで、葛藤は支援者が支援者自身を省察する機会となり、学習の機会になるという肯定的な意味づけで捉えることができる。そしてさらに、支援者は葛藤を肯定的に捉えることで、知的障害者へのソーシャルワーク実践を常に省察し続ける省察的実践者となる意義をもつ、と考えられることが明らかになった。
  • 李 宜貞
    2024 年 23 巻 2 号 p. 95-105
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、韓国の重度重複障害児童・生徒の母親を対象に、特別支援学校における全般的な指導・援助に対 する認識をインタビュー調査した。そして、(1)個別の教育支援を通じた学習の効果と児童生徒の自立性の促進効果 の検討、および(2)家庭における持続的で多様なサポートの現状とその効果について分析することが、本研究の主た る目的である。最も多くの困難に直面している重度重複障害児童・生徒をもつ母親6 人に対するインタビュー調査を 行い、M-GTA を用いて質的分析を行った。その結果、とりわけ「学習面」と「進路・キャリア面」の評価が高かった。 さらに、日本の学校心理学の4 つの観点およびキャリア教育の4 つの目標の枠組みを用いて、母親の特別支援教育に対する評価を分析した。特に「学習面」では、継続的な[学習中心の生活技術教育]の支援を通して障害児童が自分の行動を修正し、変化させると評価された。また「進路・キャリア面」では、それぞれの特性に合わせた計画と多様な経験の機会を通じて、障害児童の成長を向上させると共に、将来の進路決定の土台となると評価された。さらに、学校の特別支援学習と連携された家庭の個別支援教育の活動に対する効果および課題点が検討され、教師と共に学習支援者のパートナーの役割である母親の重要性も高く評価された。以上の現状分析を踏まえて、現在の韓国の特別支援教育の課題が議論され、(1)学校を卒業した後も学校・家庭・地域社会との連携の持続が重要であること、(2)重度重複障がい児にとって重要な家庭の支援者である母親に対する社会のサポート体制が今以上に必要なことが明らかになった。
  • 壬生 尚美, 森, 永嶋, 長谷部
    2024 年 23 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    介護老人福祉施設における介護ロボットの使用状況と職員の意識を明らかにするために、47都道府県の介護老 人福祉施設835施設(全国8,234施設の1 割程度、2021年10月現在)に、無作為自記式郵送調査を実施した(回収率 15.9%)。その結果、介護ロボットの導入経験は72件(54.1%)あり、「見守りロボット」「移乗介助ロボット」「入浴 支援」の順に使用していた。また、介護ロボット使用に関する意識を5 件法で回答してもらい、主因子法による因子 分析をした結果、「業務軽減」「使用課題」「使用効果」「利用者の安全」「ロボットへの依存」の5因子が抽出された。 施設長と専門職の各因子の平均得点の差は、「利用者の安全」は、施設長が専門職より有意に高く、「ロボット依存」 では専門職が有意に高かった。介護ロボットの使用を推進するためには、介護ロボットの種類別使用状況と専門職の 意識を十分把握し、組織体制づくりを構築していく必要性を課題とした。
  • この運動はどのような「感情」に導かれたのか?
    北川 博司
    2024 年 23 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、岡崎哲夫の森永ヒ素ミルク中毒事件の被害児救済運動の感情史研究である。この事件は後遺症が公的には無いとされたことから、各地の運動が衰退の一途を辿ることになった。ところが岡崎率いる岡山県組織だけが活動を継続し、事件発生から14年後の出来事を機に世論の支持を受け、恒久救済機関の設立を得、今日に至っている。 このような世間の無理解という社会体制における感情に抗ったリーダーの感情を理解し、今後の支援に活かすためには、社会福祉分野における感情史研究が必要である。なぜなら社会福祉は人間の「幸福」を追求し、この幸福とは感情語であるからである。AI など高度化する情報化社会、感情の平板化が危惧される現代社会にあって、「感情体制」の再解釈や「感情共同体」において共有された感情語に着目、研究を進める感情史研究は、社会福祉の価値を追求し、人々をエンパワメントするソーシャルワーク実践に有益な示唆を与えてくれよう。
  • 変容する「人倫国家」の行方
    福地 潮人
    2024 年 23 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、スウェーデンにおける市民社会組織(CSO)を取り巻く社会環境の変化、それに対応する政府の市民社会政策の転換、そしてそこに生じたジレンマの理解を通して、同国の市民社会に対する姿勢に生じている変化を読み解いた。方法としては、スウェーデンの政府機関が発表した政策文書の分析結果と、筆者が同国のCSO と関連機関に行ったインタビュー結果を用いた。 その結果、以下の点が明らかとなった。(1)スウェーデン政府のCSO に対する規制や政府補助金に関する要件は非常に緩やかであった。しかし(2)近年、(ⅰ)移民の増加、(ⅱ)政治的な右傾化に直面し、反民主的なテロ組織への公的資金の流れが危惧されている。(3)政府は、従来の寛容な市民社会政策を大幅に変更し、民主的条件を課すなど規制を強化し始めている。本稿は、こうした一連の動きは、スウェーデン国家がもはや新ヘーゲル主義のいう「人倫国家」から遠ざかろうとしていることを示していると主張した。
  • 中谷 こずえ, 津田
    2024 年 23 巻 2 号 p. 133-142
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、生きづらさのある薬物・アルコール・ギャンブル依存症の当事者がとらえる将来への希望を明らかにすることとした。研究対象者は10年以上のアルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症歴を持ち、回復施設で勤務している14名である。研究方法は、半構成的面接法によるデータ収集を行い、質的記述的に分析した。 結果は、『終わりの見えない生きづらさ』は決して無くなることはないが、『つながり合える人生』の中で、さまざまな人との出会いによって『さらけ出すことのできる自分』とも出会い、自分を認め、『人の良い点を見出す力』も培われていった。さらには、『取り戻した自己肯定感』から【ポジティブな思考の転換】、【柔軟性を持った適応力】も導き出し、【未来への希望】も語れるようになっていた。よって、『自分で決める自分の人生』を【常に前向きな自分の人生】、【大切に歩みたい人生】として【自分の人生に対する責任感】を果たそうとしていた。
  • 大門 彩香
    2024 年 23 巻 2 号 p. 143-151
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    令和3 年5 月21日少年法等の一部を改正する法律が成立し、令和4 年4 月1 日から施行されている。少年法の改正は、特定の少年事件や触法事件がメディアや週刊誌などによってセンセーショナルに扱われる度に、主に少年個人に原因と責任を見出す厳罰化の方向で重ねられてきた。 一方、こうした改正が少年らの実情に即しているのかについて、本研究では臨床家や学術領域における専門家が、重大少年事件や重大触法事件に対する責任と原因の帰属先をどのようにとらえているのかその論調をたどり、現在の世論や法制度の新自由主義的な価値観による、少年法の厳罰化という子どもらへの福祉的・社会的資源の削減の傾向と、更生保護のありかたの風潮との異同を明らかにし、今後の子どもらを囲む社会の望ましい方向性について探った。
  • 高齢化率が高い都市部に着目して
    平澤 園子, 三上
    2024 年 23 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、都市部の高齢化率が高い地域を担当する地域包括支援センターに焦点をあて、地域で暮らす認知症高齢者を早期に発見するための取り組みの現状と課題を明らかにすることである。研究趣旨に同意が得られた6 つの地域包括支援センターを対象に半構造化面接を行った。聞き取り調査の逐語録からは、【認知症高齢者の早期発見を妨げる包括側の要因】【認知症高齢者の早期発見を妨げる住民側の要因】【地域住民との協働を促進する要因】の3 つのコアカテゴリが得られた。地域包括支援センター職員は、高齢者単独世帯が多い都市部ならではの課題として、地縁によるつながりが他の地域よりも乏しく、認知症高齢者の実態把握が困難であることを認識していた。この課題を克服するために、地域商店街の店員や、配達や集金を扱う企業や団体職員などを介して地域住民と協働することにより、地縁に代わる新たなつながりを見いだしつつあることが確認できた。
  • 古市 孝義, 金
    2024 年 23 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、実家への帰省を含む旅行の準備過程と旅行が高齢者の日常生活に及ぼす影響について検討した。 東京都A市高齢者13名を対象に半構造化面接を行い、ユーザーローカルAI テキストマイニングを用いて分析を行った。旅行に行くという目標を持つことで準備過程から日常的に散歩や運動を実施し、旅行先の下調べをする等、旅行に行くという目標設定は、高齢者の身体的・精神的意欲向上につながっていると推察される。また、旅行は歩く行為のきっかけとなり、他者と話すことや自然に触れることで、高齢者の身体や精神に肯定的な影響を与えていると示唆された。
  • 2 年間実施した基礎的学習プログラムのアンケート結果
    高野 晃伸, 中川, 吉川, 山下
    2024 年 23 巻 2 号 p. 167-173
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    3Dプリンタを介護現場で活用し、障がいの状態に応じた福祉用具を作製できれば、要介護者の生活や支援を改善できる可能性がある。そこで、これまでの研究を土台として開発した、3Dプリンタを用いた福祉用具作製の教育プログラムを、2021年度と2022年度に介護福祉士養成校での学生を対象に実践し、その効果をアンケート調査から分析した。マン・ホイットニーのU検定より2 年の結果に有意差がなく、類似性が高いことが示された。プログラム内容については、「目指しているものを作ることができた」「興味や関心を持つことができた」等、肯定的な回答が多いことから、満足度は高いことがわかった。また自由記述については、KHCoder の関連語分析で「難しい」と関連の強い語では「楽しい」が最も多く、「難しかったが、楽しく学ぶことができた」と考えることができる。一方、要介護者へのアセスメントに関する全ての質問項目で9割以上が「(理解)できる」と回答しており、本プログラムは、要介護者に対する介護過程のアセスメント力を身に付ける機会となるといえる。
  • 叶 寧
    2024 年 23 巻 2 号 p. 175-183
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/10
    ジャーナル オープンアクセス
    研究目的は、長野県須坂市における地域包括支援センターと保健補導員との関わりおよび保健補導員に期待さ れる役割について明らかにすることである。行政直営型地域包括支援センターの職員を対象に、半構造化面接による インタビュー調査を行った。結果は、地域包括支援センターと保健補導員との関わりについて、3 つのコアカテゴリー 『地域包括在任中における現役保健補導員との関わり』『健康づくり課在任中における現役保健補導員との関わり』『地 域包括在任中における元保健補導員との関わり』が抽出された。保健補導員に期待される役割は、4 つのカテゴリー 【健康づくりと介護予防の地域の窓口】【高齢者に対する支援】【地域との繋がりの継続】【困り事に対応する地域のネッ トワークづくり】に分類された。その他、保健師の保健センターと地域包括支援センターとの間の異動及び、保健補 導員と地域包括支援センターの担当地区の不一致の状況が明らかとなった。
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