発達支援学研究
Online ISSN : 2435-7626
1 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 保育の場で求められる支援のあり方
    杉山 弘子
    2021 年1 巻2 号 p. 21-27
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では、保育の場における「問題」を二つ取り上げ、乳幼児期の発達と保育についての研究、とりわけ遊びと仲間関係についての研究が保育支援にどう生かされるのかを考えた。一つは、クラスでの集まりや遊びなどの集団的な活動への参加が難しいという「問題」であり、二つ目は、場面の切り換えが難しいという「問題」である。諸研究は、子どもが集団的な活動に参加するためには、子どもにとっておもしろい活動であること、多様なおもしろさのある活動であること、時間差をもって参加できるような継続する遊びがあることが重要なことを示唆していた。また、次の場面が安心で楽しいものであるとわかること、次回の遊びへの期待がもてること、活動をともにする友だちがいることが、場面の切り換えを支えることを示唆していた。これらのことから、乳幼児期の発達と保育についての研究は、集団的な活動への参加や場面の切り換えが、それぞれの子どもにとってもつ意味を問い直すことに役立てられることで保育支援に生かされると考察された。
  • 加藤 道代
    2021 年1 巻2 号 p. 28-38
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    発達支援について日常の文脈に基づいて考察すると、そこには、「発達支援を必要とする児の日常」への直接的な発達支援という面と、「児の日常にかかわる人たちの日常(親、保育者、教師など)」への支援(児に対しては間接的な発達支援)という面があり、そのいずれもが重要であることがわかる。親や教師などの日常的発達支援者は、専門的な知識があるわけではなく、たまたま支援が必要なお子さんのごく近くにいるため、“そのお子さんの発達支援者となる・発達支援者である”ことが求められるようになった方々である。日常的発達支援者とお子さんとの関係は、日常の中では悪循環や誤学習が生じやすく対応に困難を感じることも少なくないが、それを自分だけの力で解決することは難しい。したがって、当事者の日常という渦中から距離を置いた、外部の非日常的発達支援者による介入は大きな意味をもつ。外部支援者は、日常の文脈におけるお子さんの行動を丁寧に観察し、日常的発達支援者の話を丁寧に聴きながらともに対応を考えるとよい。日常的発達支援者が気づくことを尊重し、日々の努力をねぎらうことは、専門的な介入と同等に重要となるだろう。
  • 指導員・子ども・学校・家庭・福祉機関・行政・心理相談員の協働
    西本 絹子
    2021 年1 巻2 号 p. 39-56
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    学童保育において、障害のある子どもへの発達支援がどのように行われているのかについて、そこにいかなる協働のしくみが働いているのかとの視点から、巡回相談を行った事例に基づいて論じた。学童保育は制度や形態は法的にはほぼ確定し、育成内容に関する国としての指針もできた。しかし現実には、施設・規模・運営方法等は多様で、指導員の専門性やその程度も極めて不統一である。一定の共通条件の下で実践を一般化するには遠い現状にあるが、心理相談員が行う巡回相談という協働の在り方について述べたうえで、障害と不適切な養育環境の複合と相互作用により、社会性の発達に著しい困難があった子どもへの支援を分析した。事例では、アセスメントによる支援計画に基づき、PDCAサイクルの下で取り組みが段階的に修正・工夫され、当初の1年半で目覚ましい成果が得られた。4年目の民営化による学童保育の教育的機能の低下によって一時発達が後退したが、約4年半にわたる指導員、被支援児も含めた学童保育の子どもたち、学校、家庭、福祉機関、行政担当部署、心理相談員による協働の結果、5年生時に生活習慣が整い、社会性の成長も見られ、学校活動にも正常に参加できるようになり、5年生修了時に卒会した。
  • 東北メディカル・メガバンク計画 三世代コホート調査参加児対象の予備的調査
    小林 朋子
    2021 年1 巻2 号 p. 57-61
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー
    発達障害は、早期に気づき、適切に対応することにより、その個性を障害ではなく社会全体に適応した個性に導くことが可能である。5 歳児は、発達障害のある児童への気づきの場として適正な時期であり、就学に向けた相談、支援等のフォローを行うためにも最適な年齢と考える。地方自治体の中では、独自の健診プログラムを組み、5 歳児を対象とした発達障害のスクリーニングを行う動きが広がっている。しかし、2019 年度時点において宮城県内での5 歳児発達健診は実現されていなかった。 東北メディカル・メガバンク計画では、宮城県内の約3 万人の小児が参加する三世代コホート調査を実施しており、2019 年度は仙台市内在住の三世代コホート調査参加5 歳児340 名を対象に、5 歳児発達健診を予備的調査として実施した。一次検査(質問紙調査)126 名、その後の二次検査(対面調査)38 名が参加し、14 名で自閉スペクトラム症(以下、ASD)特性、12 名で注意欠如・多動症(以下、ADHD)特性有りとの判定が得られた。発達特性有りと判定された5 歳児は、東北大学病院での臨床診断および早期療育に繋げられる体制も構築した。同様の方法で大規模に5 歳児発達健診を実施するためには、相当数の専門職の確保、発達障害疑い児の早期療育体制の拡充が必要であり、自治体によって5歳児全員を対象に発達健診を実施する際の課題が浮き彫りとなった。
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