発達支援学研究
Online ISSN : 2435-7626
2 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 愛着障害支援の立場から
    米澤 好史
    2022 年 2 巻 2 号 p. 59-69
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿では、愛着障害への支援の専門家としての実践活動、実践研究から得られた経験から、発達支援において愛着の視点からの支援の重要性について提唱したい。保育、教育、福祉、医療の現場に直接、足を運びながら、発達支援にかかわり、また、発達支援者にかかわる中で、何も愛着障害の支援だけではなく、発達障害やその他の発達支援においても、発達の基盤としての愛着形成が様々な支援の土台になっていることを提唱する。そもそも愛着障害をどう捉えるべきなのか、愛着形成が発達においてどのような意味を持っているのかについて論じつつ、愛着障害についての誤解、無理解が発達支援において、より適切な支援の妨げになってすらいることについても、愛着障害と発達障害の関係を論じながら指摘する。併せて、さまざまな発達の問題、こころの問題への愛着の視点からの支援のポイント、支援のあり方について紹介する。
  • 4歳児クラスと5歳児クラスの比較
    杉山 弘子, 本郷 一夫
    2022 年 2 巻 2 号 p. 70-87
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究は、4歳児クラスと5歳児クラスにおける協同活動に関する子どもたちの話し合いについての保育者の認識を明らかにすることを目的とした。調査対象者は、保育者146名であった。保育者は、協同活動に関する子どもたちの話し合いについての質問に答えるように求められた。質問項目は、話し合いの頻度とテーマ、話し合い時の子どもの行動についての重視度、話し合いでの主な決定方法、多数決の際に重視していた事項、合意形成のための工夫、グループでの話し合いのテーマ・ねらい・留意点等である。4歳児クラスと5歳児クラスの比較を通して、次のような結果が得られた。(1)保育者は、5歳児クラスでは、より多様なテーマについて、より多くの話し合いの機会を設けていた。(2)保育者は、5歳児クラスにおいては、合意形成のための行動をより重視していた。(3)保育者は、5歳児クラスでは、多数決に関する手続きをより重視していた。これらのことから、保育者が、子どもたちが話し合いに積極的に参加し、充実感を味わえる協同活動を構成することが重要であることが示唆された。
  • 児童館の統合育成におけるカンファレンスを踏まえて
    田爪 宏二
    2022 年 2 巻 2 号 p. 88-98
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿では、京都市の児童館における統合育成で実施されているケース検討会を踏まえ、学童保育における発達支援の可能性について考察することを目的とした。さらに、カンファレンスによる指導員の発達支援に関する専門性の向上に対する支援についても検討した。 学童保育では、学校や家庭とは異なった環境において、遊びや生活を通して専門的な支援が行われる。児童の行動もこのような環境の特徴を反映しており、ケース検討会において取り上げられる事例は、集団活動における逸脱や、異年齢間のトラブルに関するものが多い。
  • 新版K式発達検査1983と2020の標準化資料の比較から
    郷間 英世, 田中 駿, 清水 里美, 足立 絵美
    2022 年 2 巻 2 号 p. 99-114
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    今回発刊された新版K式発達検査2020の標準化資料を、1983版の標準化資料と比較し、現代の子どもの発達の様相や変化について検討した。その結果、2020年までのおよそ40年間の子どもの発達は、全体的にみると大きな変化はなかったが、いくつかの発達課題で顕著に促進した課題や遅延した課題がみられた。促進したのは「色の名称」課題で4つの色を答える検査項目では12ヵ月の変化がみられた。遅延したのは「図形模写」や「折り紙」課題であり、「正方形模写」「三角形模写」「菱形模写」では9~11ヵ月、折り紙を何回か折る検査項目である「折り紙Ⅱ」「折り紙Ⅲ」では3~6ヵ月の変化が認められた。これらの発達の変化は、社会環境や養育環境などの急激な変化に伴い、子どもの認知や運動の発達が変化してきたことが推測された。この変化をどうとらえ、どのように対応していくかは今後の課題である。
  • デジタルメディアの操作を中心に
    森口 佑介
    2022 年 2 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    様々な研究によって新型コロナウィルス感染症(COVID-19)によるパンデミックが子どもの精神的健康に影響することが報告されているが、子どもの発達にいかなる影響を及ぼすかについてはほとんど報告されていない。我々は、これまでの研究で、新型コロナウィルスが、①社会情緒的行動、②他者との心理的距離、③デジタルスキル、④遊びに及ぼす影響を検討してきた。本稿では、特に③デジタルスキルの発達について議論した。調査では、0-9歳の子どもとその養育者のデジタルメディア使用と、子どものデジタルメディアの使用スキルについて、パンデミック前後に尋ねた。その結果、養育者においても、子どもにおいても、デジタルメディアの使用時間はパンデミック後に長くなることが示された。また、子どものデジタルメディアの使用スキルもパンデミック後に高くなっていることが示された。これらの結果から、新型コロナウィルスによるパンデミックにより、子どものデジタルメディアを操作するスキルは高まったことが示唆された。
  • インクルーシブな社会につなげるために
    相澤 雅文, 酒井 隆成
    2022 年 2 巻 2 号 p. 119-132
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    トゥレット症は、発達障害のひとつとされ、その発生頻度は、子どもの1,000人に3~8人とされる。一方、チック症状だけを取り上げれば、子ども5~10人に1人がチック症状を体験するとされている。チック症状自体に対しての認知度は高いが、チック症の中で重症とされるトゥレット症への認識は十分に広がっていない。本稿では、トゥレット症の理解を広げることを目的として、まず、トゥレット症の概要について紹介した。次に、当事者である酒井隆成氏と「これまでのこと、これからのこと」をテーマとした、日本発達支援学会第3回大会で小講演(トークセッション)から、教師を含めた周囲の人々の理解や、居場所づくりといった環境からの影響が大きいことや、理解や支援を得た経験が自ら生活しやすい環境を構築するためのエンパワメントとなることなどについて報告した。
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