本論文は音声言語間の通訳教育の観点より、手話通訳教育の特性、課題について検討するものである。 まず、文献検索により音声言語通訳と手話通訳を概観し、大学での英語通訳教育の実践例を報告する。 次に、先行文献で提示された手話通訳教育との比較を通して、手話通訳教育実施上の課題を検討する。
大学の授業や学会・研究会等の学術分野における手話通訳は、話題として取り扱われる内容が複雑かつ専門的であり、一般のコミュニティにおける通訳とは異なった技術が求められる分野の一つである。本稿では、こうした学術分野における手話通訳研究の結果を元に、学術分野における通訳の困難性について外観することで、今後の通訳者の養成と質的向上に必要な知見を提示した。この中では、特に「用語の訳出」と「論理展開ならびに論旨の伝達」「モダリティや程度の伝達」に焦点をあて、通訳者の訳出に見られる特徴から特有の難しさについて言及した。この結果、①話されている内容や用語に対する知識、②NM 表現をはじめとする手話表現の習熟、③学術分野で用いられるレジスタの慣れや理解、④論理や態度の伝達に対する意識向上などの重要性が指摘された。
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