酸液中における銅および銅合金に対するMBTの腐食抑制効果を検討するために, 塩酸, 硫酸, 燐酸溶液中で浸漬腐食試験を行なった。また塩酸, 硫酸中の銅について分極曲線を求めて検討し, 次の結果を得た。
(1) MBTは非酸化性酸液中の溶存酸素による銅および銅合金の腐食を十分に抑制する能力を持つ。しかし塩酸中では硫酸中より高濃度を必要とする。
(2) Fe
3+が存在しても, 硫酸中では十分に腐食を抑制するが, 塩酸中ではFe
3+濃度の影響を受けやすく硫酸より効果が悪い。燐酸中では黄銅の腐食は十分に抑制するが銅に対しては塩酸の場合と同じ傾向を示す。
(3) Cu
2+による腐食に対しても硫酸, 燐酸中では十分に抑制する。
(4) 分極曲線を検討した結果, MBTは陰陽両分極を増大するが十分に抑制する場合には特異な陽分極が認められ, 陽極における抑制が大きな意味を持つと考える。
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