日本ヘルスケア歯科学会誌
Online ISSN : 2436-7311
Print ISSN : 2187-1760
ISSN-L : 2187-1760
20 巻, 1 号
日本ヘルスケア歯科学会誌
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 相田 潤
    2019 年 20 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2022/08/27
    ジャーナル オープンアクセス
    う蝕(未処置歯)は世界で最も多い疾患である.日本においても人口の30%以上が有する疾患である.また,歯の喪失の減少に伴って,高齢者の有病者の増加も顕著である.しかし,小児のう蝕が減少したために,う蝕のこの有病者率の高さは,十分に認識されていない.従来「幼少期に歯を削り,中高年で歯が喪失し,高齢期には受診しない」とされていた歯科受診のトレンドは,「幼少期にう蝕が予防され,高齢期でも歯科受診をする」という流れに変わってきている.このトレンドの変化は,医療保険制度との間にギャップを生んでいる.このため診療報酬の中に,予防の評価を位置づけ,定期健診を点数表に盛り込むことが,時代の要請となっている.治療による受診回数を減らし,定期健診による受診回数にシフトする歯科医療を実現するべく,行政,研究,教育,臨床にかかわる者の意識改革が求められている.
原著
  • 斉藤 仁
    2019 年 20 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2022/08/27
    ジャーナル オープンアクセス
    一般開業歯科診療所に初診で来院する患者の主訴は,過去に治療したことのある歯に起因するものが多いと思われる.実際に初診患者の主訴がどれくらい過去の治療に起因するものかを調べるために,日本ヘルスケア歯科学会の会員のうち,本調査に協力が得られた48歯科医院で2017年9月1日から11月30日までの間に来院した初診患者について,その主訴の原因を調べ,48歯科医院のうち対象期間内でのデータがすべて揃っている20医院の20歳以上の初診患者718人についてまとめた.主訴の原因が過去に治療したことのない歯に起因するものが全体の10 %だったのに対して,治療歴があるものの合計は43 %であり,20歳以上の初診患者は過去の治療の何らかの再治療で歯科医院に来院している可能性が高いことがわかった.
  • 藤原 夏樹
    2019 年 20 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2022/08/27
    ジャーナル オープンアクセス
    この調査の目的は,歯科医院を初診に来院した幼児のうち,2〜3歳児と4〜5歳児のう蝕関連要因の違いを明らかにすることである.調査対象は,2016年4月から2019年3月にふじわら歯科医院に初診で受診した2〜5歳の患者134名(男児68名,女児66名),調査方法は,初診日の診療データを用いて対象者全体および2〜3歳児(61名)と4〜5歳児(73名)の各グループのう蝕関連要因,とくに2〜3歳児と4〜5歳児の生活習慣要因の差について解析した.Fisherの正確検定の結果,う蝕有無と有意(p<0.05)な関連性のある要因は,全対象者が「性別」「甘い菓子の常食」,4〜5歳児が「性別」「歯磨剤の使用」「甘い菓子の常食」だった.2〜3歳児は有意な要因はなかった.ロジスティック回帰分析の結果,有意(p < 0.05)な関連要因をオッズ比の順に挙げると,全対象者は「甘い菓子の常食」「性別」,2〜3歳児は「性別」,4〜5歳児は「甘い菓子の常食」「歯磨剤の使用」「性別」だった.本調査の結果,「歯磨剤使用」や「甘い菓子の常食」のような家庭生活に関する要因について,2〜3歳児はう蝕との関連性が認められなかったが,4〜5歳児では有意に関連していたことがわかった.年長になるほど,う蝕予防のためには生活習慣の改善が重要となることが示唆された.
臨床ノート
  • 杉山 修平
    2019 年 20 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2022/08/27
    ジャーナル オープンアクセス
    永久歯咬合面の診査の向上と学校歯科健診で咬合面の着色をう蝕と指摘されて来院する患者とその保護者への説明を目的として,第一大臼歯萌出時から20歳までを対象に永久歯の咬合面の規格写真を撮影している.咬合面を詳細に記録することは診査や情報提供に役立つだけでなく,う窩ができてしまった場合の原因(プラークコントロールの不良や深い裂溝,エナメル質形成不全など)を考察することにも役立っている. 今回,当院での永久歯の咬合面の規格写真撮影方法について紹介する.
  • 藤原 夏樹
    2019 年 20 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2022/08/27
    ジャーナル オープンアクセス
    人工知能IBM Watson®を使用したテキストマイニングにより,ふじわら歯科医院の歯科衛生士診療記録と当該患者の抜歯経験ある・なしの関連性について分析した.テキストマイニングとは,自由に書かれた文章を単語に分割し,それらの出現頻度や特定項目との相関関係を計算する分析法である.その結果,2016年1月から2018年6月までの患者数1498名,9725回の診療記録において,期間中抜歯した患者147名の診療記録で頻繁に使用された単語は,抜歯の原因を連想させる「破」「排」「膿」や抜歯後の補綴治療に関係する「義歯」「印象」といった言葉であることがわかった.一方,抜歯しなかった患者1351名の診療記録は「フロス」「初期」「歯石」「プラーク」等,口腔衛生に関係する言葉が高頻度に使われていた.これらの結果をどう臨床に応用するかは今後の課題だが,人間の洞察力とは異なる観点からデータを解析できるため,歯科臨床でも将来の有用性が示唆された.
  • 杉山 精一
    2019 年 20 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2022/08/27
    ジャーナル オープンアクセス
    ヘルスケア歯科診療では,口腔内規格写真撮影が診療の基本である.近年,口腔粘膜疾患に対する患者さんの意識も高まっている.疾患を適切に治療するには早期発見が重要であり,そのためには健常な状態の口腔粘膜写真を記録して比較することにより,診断に際しての重要な情報となると思われる.今回,NIDCR(National Institute of Dental and Craniofacial Research)の資料をもとにして口腔内規格写真撮影方法としてまとめたので報告する.
調査報告
  • DMF歯数の度数分布と健康格差に着目した解析
    秋元 秀俊, 藤木 省三
    2019 年 20 巻 1 号 p. 41-55
    発行日: 2019/12/18
    公開日: 2022/08/27
    ジャーナル オープンアクセス
    定期管理型歯科診療所の初診患者の経年的動向を知ることを目的に,日本ヘルスケア歯科学会の会員診療所(主に認証診療所)において日常的に記録されている資料を収集して,その初診患者の特徴を分析した.この第12次調査は,52診療所(24都道府県)の1年間(2017年1月1日から12月31日)の匿名化された初診患者(生年月日と性別の記載がある患者総数12,684人,男性5,448人,女性7,236人)の口腔内の記録を集計・分析したものである.会員診療所のうち原則として初診患者全員の口腔内記録がデジタル化されたデータとして提出可能で,6歳以上の小児について1人平均DMF歯数(以下,DMFT指数),成人についてはDMFT指数のほか,残存歯数,歯周病進行度,喫煙経験の記録のある会員に協力を要請し,その記録を集計した.その結果,12歳以上の年齢(階層)別DMFT指数,男性の喫煙者率の顕著な低下が引き続き認められ,男女とも高齢者の年齢階層別の現在歯数の増加が引き続き認められた.調査協力歯科診療所の所在自治体の成人1人当たり市町村税額により診療所を4群に分けて,初診患者の特性を比較したところ,①地域の経済格差はう蝕経験の極端に多い子どもの多寡によってDMFT指数に反映する,②50歳以上の年齢階層で,所得階層順に現在歯数の平均値が大きくなっていることが明らかになった.また,この健康格差は経年的に縮小傾向にあることが認められた.
feedback
Top