脳死・脳蘇生
Online ISSN : 2435-1733
Print ISSN : 1348-429X
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総説
  • ─臨床倫理カンファレンスの方法─
    会田 薫子, 荒木 尚
    原稿種別: 総説
    2023 年 35 巻 2 号 p. 48-57
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー
    抄 録:本邦で脳死下臓器提供が法制化された臓器の移植に関する法律(臓器移植法;1997年)の制定から四半世紀が経過したが,内閣府の世論調査(2021年)において,臓器提供の意思表示をしていたのは約1割に留まった。また,脳死下または心停止下で家族が臓器提供をすることに関しては,本人が事前に意思表示をしていた場合は本人の意思を尊重すると回答した人は約9割だったが,本人が何も意思表示をしていなかった場合は家族として臓器提供を決断することに負担を感じると回答した人も9割近くにのぼった。これらの結果から,意思決定支援のためにさらなる対策が必要とされているといえるだろう。本稿では,その一環として,日本人の意思決定に関する文化を踏まえて開発された臨床倫理検討法を用いた多角的なカンファレンスの方法を紹介する。この方法を用いて多職種間の情報共有とチームワークを促進し,家族の声を聴き,揺れ動く感情に応答しつつ意思決定を支援することは,現状改善のための一助となる可能性がある。脳死患者/患児の看取り医療において,本人・家族の意向を尊重した臓器提供が一般的な選択肢の1つとなるために,より充実した家族ケアを含めた意思決定支援が必要とされている。
  • ―レシピエントサイド―
    江川 裕人, 江口 晋, 岡田 克典
    原稿種別: 総説
    2023 年 35 巻 2 号 p. 58-63
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー
    抄 録:日本の臓器移植は,移植後の成績は世界でトップクラスであるが,その数は先進国の中で著しく少ない。しかし,臓器の移植に関する法律(臓器移植法)制定後25年経過してようやく,脳死下臓器提供が2019年度に94件に達し,2022年度には106件に増加しつつある。人口が半分の隣国韓国で年間500件であるので,今後,日本においても年間1,000件は到達可能と予測される。年間1,000件の臓器提供に対応するために早急に改革が必要である。日本移植学会では,提供にかかわる移植医の負担軽減を目指す「脳死・心停止下リカバリー環境改善委員会」と広く移植医の労働環境を把握し改善のための提言をする「働き方改革委員会」を立ち上げ活動してきた。脳死・心停止下リカバリー環境改善委員会は摘出手術互助制度として,手術機材の共用,施設からの貸出,機材搬送の外部委託からなる手術機材の取り扱いと施設間の協力体制の整備を実施した。働き方改革委員会は,移植医療に携わる医師と移植施設を対象として脳死下・心停止後臓器摘出手術に関する勤務実態,就労管理,補償,待遇にかかわる実態調査を行い機関紙に掲載した。
資料
  • 芦刈 淳太郎, 大宮 かおり
    原稿種別: 資料
    2023 年 35 巻 2 号 p. 64-71
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー
    Abstract:In Japan, since the enactment of the Organ Transplant Act 25 years ago, 7,071 recipients have received transplants from 889 donations after brain death and 1,717 donations after circulatory death. However, organ donation and transplantation decreased by 38% in 2020 and 2021 during the COVID-19 pandemic, before eventually recovering in 2022. We implemented cautious safety measures, such as conducting COVID-19 tests and closely monitoring donors and recipients to minimize risks, and as a result, we did not experience any COVID-19 transmission due to organ donation and transplantation. To increase the number of donors and organs, we have implemented a donor hospital collaboration system project and started obtaining high resolution X-ray and computed tomography digital data from donor hospitals to enhance donor evaluation. Additionally, an ad-hoc external professional committee has created a proposal recommending the strengthening of donor family care, creating a procurement coordinators' license, and revising the Act to improve organ transplantation in Japan.
  • 石川 牧子
    原稿種別: 資料
    2023 年 35 巻 2 号 p. 72-77
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル フリー
    抄 録:2019年わが国の臓器提供は,過去最高の提供数であった。2010年の改正法施行により,本人の意思が不明な場合,家族の承諾で脳死下提供が可能となり,提供数は徐々に増加し始めた。また,2019年には,中学校の道徳の教科書に臓器移植が取り上げられるなど国民の理解が進むことで,臓器提供がさらに増加していくものと期待されたが,2020年はCOVID-19の猛威により医療は逼迫し,通常医療の維持すら困難となった。移植医療にも甚大な影響が及ぼされ,2019年に比べ,臓器提供数は全国的に大きく減少した。静岡県では,COVID-19の市中感染が拡大した2020年3月~2022年12月までに脳死下および心停止後を含め16例の臓器提供が行われた。COVID-19流行下でも,症例検討など施設間の情報共有を実施することで大きな問題が生じることなく提供が進められたが,脳死下臓器提供承諾に至る家族の決定から臓器摘出までの時間がCOVID-19流行前に比して延長したことがわかった。
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