日本災害医学会雑誌
Online ISSN : 2434-4214
Print ISSN : 2189-4035
28 巻, 2 号
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総説
  • 白石 淳
    2023 年 28 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2023/08/27
    公開日: 2023/08/27
    ジャーナル フリー

    医学研究が行うことは、科学の探求や社会の要請から生まれる医学の問いを受け、科学的手法を通じて定式化し、その結果を導き、問いに答えることである。定式化には主にPatient, Intervention, Comparison, and Outcome(PICO)の枠組みが用いられ、Introduction, Methods, Results, and Discussion(IMRAD)の形式で書かれた論文で問いから答えまでの流れが示される。Introductionでは背景と問いの意義が、Methodsでは問いをPICOに基づいた具体的な研究手法が、ResultsではMethodsに対応した結果が、それぞれ示される。最後にDiscussionで既存の研究との対比が考察され、問いへの答えが明らかにされる。医療者と医学研究者にはこの構造を理解し、論文を効果的に読み、書くことが求められる。

原著論文
  • 新山 紗千, 春名 純平, 田口 裕紀子, 村中 沙織, 稲村 広敏, 上村 修二
    2023 年 28 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 2023/06/13
    公開日: 2023/06/13
    ジャーナル フリー

    【目的】DMAT活動に対する情熱と職場環境との関連性を明らかにする。【方法】北海道内のDMAT隊員を対象にアンケート調査を行った。調査内容は個人背景、DMAT経歴、パッション尺度日本語版、日本語版TeamSTEPPSの下位項目であるリーダーシップ(上司のリーダーシップ)および相互支援(同僚との相互支援)とした。パッション尺度の下位項目である基準パッションのカットオフ値で2群に分類しあらかじめ設定した共変量を調整したロジスティック回帰分析を行った。【結果】186名の回答者すべてを分析対象とした。多変量解析の結果、上司のリーダーシップがDMAT活動に対する基準パッションと独立した関連因子であった。【考察】DMAT活動に対する情熱は上司のリーダーシップの高さと関連しており、DMAT隊員の活動には職場環境の重要性が示唆された。

    Editor's pick

調査報告
  • 橋本 真由美, 金子 直美, 安心院 康彦
    2023 年 28 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 2023/06/13
    公開日: 2023/06/13
    ジャーナル フリー

    【目的】災害下の避難所生活者に対し、看護学生が実施可能な生活援助と課題について検討した。【方法】4年生過程の3年生以上を対象とし、「避難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドライン」と「避難所運営マニュアル」の項目を、「看護師教育の技術項目と卒業時の到達度」の項目と比較検討した。【結果】1. 日常生活援助6項目34種類のうち10種類(29.4%)、診断・治療の援助4項目22種類のうち8種類(36.4%)、看護基本技術3項目15種類のうち8種類(53.3%)が、資料1・2と対応した。2. 資料1・2で実施困難な項目は、療養環境下で行われる看護技術と避難所運営・管理であった。3. 課題として臨地実習と避難所での環境の相違による影響が挙げられた。【考察】支援時には、事前に学生の知識と看護技術のレベルを確認し、支援後まで教員のサポートが必要である。【結語】教員の引率のもと十分な安全とサポートが配慮されたうえで看護学生は災害時に有用な人材となる可能性がある。

事例報告
  • 門井 謙典, 足立 了平, 岸本 裕充
    2023 年 28 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 2023/08/27
    公開日: 2023/08/27
    ジャーナル フリー

    2016年4月に発災した熊本地震に対して、兵庫県医師会はJMAT(Japan Medical Association Team: 日本医師会災害医療チーム)兵庫を派遣した。JMAT兵庫は、医師・歯科医師・薬剤師・看護師・調整員からなるチームを編制し、派遣カレンダーに基づき継続的な支援を展開した。JMATの活動内容は、DMAT(Disaster Medical Association Team: 災害医療派遣チーム)から引き継ぎ地元の医療機関が復旧するまで長期にわたり、保健や公衆衛生的な活動も網羅しなければならない。今回のJMAT兵庫には、JMAT史上初めて歯科医師がJMATに参画した。歯科医師が参画したJMATは、被災者に対して多職種によるスムーズな対応が可能となり、また、支援に入る歯科チームとの連携がスムーズであった。従来の歯科医師会チーム所属の歯科医師以外に、JMATの歯科医師も派遣されたことから、派遣に際して、日本医師会・日本歯科医師会間および、被災県医師会・被災県歯科医師会間における緊密な情報共有が必要となり、連携の構築が必要である。

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