日本災害医学会雑誌
Online ISSN : 2434-4214
Print ISSN : 2189-4035
28 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 宮川 明美, 谷川 攻一
    2023 年 28 巻 3 号 p. 89-100
    発行日: 2023/12/02
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    【目的】双葉郡は2011年の福島第一原子力発電所事故の影響を最も受けた地域である。我々はこの地域における医療体制の再整備に関する課題を把握するために、事故後の医療ニーズの変化と医療体制の変遷について調査した。【方法】福島県と地方自治体からの報告、双葉消防署からの救急搬送データ、ふたば医療センター(FMC)での患者データの分析を行った。【結果】事故後、2014年からの避難指示解除に伴い、救急搬送件数は年率約10%で増加した。事故後早期には労働関連事故や交通事故による外傷の割合が30%以上増加した。住民の帰還に伴って内因性疾患(呼吸器疾患が最多)の割合が増加した。2018年にFMCが開設されたが、60歳代の患者が多く、2019年には80歳代の患者の割合が著しく増加した。【考察と結語】事故後、継続して行われた除染事業や復興事業、および住民の帰還による人口統計の変化は観察された外傷や疾病構造と関連していた。

    なお、本論文は以下の原著論文の和訳である。

    Miyagawa A, Tanigawa K: Health and medical issues in the area affected by Fukushima Daiichi nuclear power plant accident. Int J Environ Res Public Health 2022; 19: 144.

調査報告
  • 宮脇 博基, 中西 茂幸
    2023 年 28 巻 3 号 p. 101-106
    発行日: 2023/12/24
    公開日: 2023/12/24
    ジャーナル フリー

    【背景】政府は大規模地震時に自衛隊輸送機に災害時医療チーム(DMAT)を搭乗させ、多数傷病者を航空搬送する広域医療搬送を計画している。この際、医用電子機器と航空機電子システムの双方がお互いの発する電磁波により動作異常を起こす可能性があり、両者間の電磁適合性(EMC)の確認が安全管理上重要である。【方法】日本DMAT事務局および航空自衛隊航空支援集団に対し、固定翼輸送機と医用電子機器間のEMC基準について聞き取り調査を実施した。【結果】これまで72種類の医用電子機器のEMC確認を地上駐機中の実機を用いたカップリング方式で実施済だが、自衛隊保有の機器が主であり、DMAT保有の機器については少数のみの実施であった。EMC未確認の医用電子機器の飛行中使用は原則認められない。【考察】広域医療搬送を想定したEMC基準は未整備であり、実搬送時に支障がでる恐れがある。【結語】自衛隊輸送機とDMATの医用電子機器間のEMC基準の整備が喫緊の課題である。

  • 春川 一樹, 石井 美恵子, 内海 清乃, 相田 浩
    2023 年 28 巻 3 号 p. 107-114
    発行日: 2023/12/24
    公開日: 2023/12/24
    ジャーナル フリー

    【目的】原子力災害時発生時の勤務継続または出勤に関する病院職員の意識調査の結果を分析し、病院業務を継続するうえでの課題を抽出する。【方法】A病院の全職員を対象に質問紙調査を実施した。結果は記述統計とχ2検定により分析した。【結果】職員697人に配布し600人から回答を得た(回収率86.1%、有効回答率99.7%)。勤務継続または出勤できる64人(10.7%)、できない139人(23.2%)、条件付きでできる397人(66.2%)であった。勤務継続の意思について医療専門職とその他の職種の2群間に有意差が認められた。【考察】勤務継続の条件は安全と情報に集約された。2群間に有意差が認められたのは、放射線に関連する知識の違いや学習機会の有無が影響していると推察された。【結語】原子力災害発生時に病院の業務継続を行うためには、すべての職員を対象とした原子力災害に関する教育が必要であることが示唆された。

事例報告
  • 髙田 洋介, 池田 修一, 喜田 たろう, 勝部 司, 夏川 知輝, 甲斐 聡一朗, 久保 達彦
    2023 年 28 巻 3 号 p. 115-123
    発行日: 2023/12/24
    公開日: 2023/12/24
    ジャーナル フリー

    2016年に「ASEAN災害医療連携強化プロジェクト」が開始され、最初の3年間の成果を本誌に報告した。本稿はその続報として、2019年から2021年(以下延長フェーズ)の成果を報告する。2017年に「災害医療に係るASEAN首脳宣言」が採択され、延長フェーズでは、この宣言を2025年までに具体化する行動計画を立案し、それを推進する委員会の設立、地域連携演習をASEAN加盟国が持ち回りで実施する仕組み・手順の確立などのほか、災害医療に係る教育研究機関が参加する学術ネットワークの設立を支援し、ASEAN災害医療学術国際会議の開催や、災害医療に関する研修コースの標準カリキュラムの開発を行った。また継続して地域連携演習を開催しながら、新たに各国緊急医療チームの「包括的チーム情報」の活用および「医療の質の確認のための現場訪問」の試行を取り入れた。このように進化をしながら地域単位で能力連携強化に取り組んでいる点は世界的にも先進的である。

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