不安症研究
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13 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 大井 一高, 音羽 健司, 嶋多 美穂子, 杉山 俊介, 棚橋 俊介, 貝谷 久宣, 西村 文親, 佐々木 司, 谷井 久志, 塩入 俊樹
    2021 年 13 巻 1 号 p. 2-12
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/01/14
    ジャーナル フリー

    パニック症は(PD)は,多因子遺伝を示す精神疾患である。欧米人大規模全ゲノム関連解析(GWAS)では不安症と関連するゲノム座位が同定されている。欧米人において不安症は,一部の精神疾患や中間表現型の遺伝基盤と重複している。本研究では,ポリジェニックリスクスコア(PRS)解析を用いて,日本人PDと欧米人精神疾患や中間表現型間の民族差を超えた遺伝要因の共通性を検討した。欧米人精神疾患や中間表現型のGWASデータを,Discoveryサンプルとして,日本人PD患者および健常者(HC)をTargetサンプルとしてPRSを算出し,欧米人精神疾患や中間表現型に基づくPRSが,日本人PDリスクに及ぼす影響を検討した。欧米人不安症,うつ病,孤独感や神経症傾向PRSは,日本人HCよりもPDで高く,教育年数や認知機能PRSはPDで低かった。本結果は,PDとうつ病や神経症傾向間の民族差を超えた遺伝的共通性を示唆している。

  • 松永 寿人
    2021 年 13 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/01/14
    ジャーナル フリー

    ICD-11に新設された「強迫症および関連症群(obsessive-compulsive and related disorders ; OCRD)」について,強迫症を主とした強迫スペクトラムの導入,あるいは他の不安障害からの分離といったDSM-5でこの領域になされた改訂との連続性を中心に概説した。OCRDは1990年ごろに提唱された強迫スペクトラム概念を基盤としており,これに分類される精神疾患は,「とらわれ」と「繰り返し行為」を中核的病理として共有し,また不安症との差異として,病的不安を必ずしも伴わないこと,妄想的な場合など洞察水準が多様であること,などが特徴的である。さらにはプライマリケアに加え,内科や外科,皮膚科といった一般診療科,美容整形外科など,多彩な臨床場面で遭遇しやすい点もOCRD内で共通している。このため今回の改変は,ICD-11が目指す臨床的有用性を大いに配慮したものであるが,これが実臨床にもたらすメリット・デメリットに関して,その妥当性あるいは信頼性を含め,さらに検討を要するであろう。

原著
  • 本田 由美, 貝谷 久宣, 境 洋二郎, 坂元 薫, 佐々木 司, 高橋 美保
    2021 年 13 巻 1 号 p. 24-37
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/01/14
    ジャーナル フリー

    社交不安症(SAD)の患者が専門的支援に繋がることを阻害あるいは促進する要因,および専門的支援を受けることが患者にとってどのような体験であるかを調査した。SAD患者5名に対し実施したインタビュー内容についてKJ法を援用した質的分析を行った結果,促進要因としては症状悪化が挙げられ,SAD認知度の更なる向上が必要であることが示唆された。阻害要因としては「病気ではなく性格」と考えたことや周囲の無理解,心理的・物理的ハードルが挙げられ,阻害要因の低減のためにはインターネット情報の活用が有効と考えられた。専門的支援を受ける体験においては,支援先を変更する患者が多く見られ,適切なSAD対処や丁寧な説明姿勢など,支援を受け続けるモチベーション維持の必要性が窺われた。また,適切な心理教育により,自らの症状を性格とは捉えなくなるなど,症状との向き合い方が変容する様子が見られた。

短報
  • 河上 雄紀, 沼田 恵太郎, 大野 裕史
    2021 年 13 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2021/11/30
    公開日: 2022/01/14
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究では,他者の視線検出に関する注意バイアスについて,社交不安の観点から検証を行った。社交不安の高い者は,他者の視線方向への注意バイアスを示すと仮定した。社交不安:高群(n = 30)および社交不安:低群(n=29)に対し,多数の妨害刺激の中から直視またはよそ見の視線刺激を検出することを求めた(stare-in-the-crowdパラダイム)。その結果,直視視線の検出速度が両群で類似していることが示された。ただし,社交不安:高群は,よそ見視線の速やかな検出を示した。これらの知見は,社交不安が,よそ見よりも直視を優先的に検出するという注意バイアスを弱めることを示唆している。最後に,社交不安の機能と今後の研究の方向性について議論した。

症例報告
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