日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
特集号: 日本計算工学会論文集
2018 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 原崎 健輔, 浅井 光輝
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182001
    発行日: 2018/01/24
    公開日: 2018/01/24
    ジャーナル フリー
    近年の頻繁に発生する局所的豪雨による土砂災害や2011年の東北地方太平洋沖地震における津波による防波堤の洗掘崩壊といった災害は, いずれも流体である水と固体である土 (砂礫) が相互に影響し合った固液混相流である. しかしこれらの災害はその規模が大きく, 例えば防波堤の実規模での実験などによる検証や議論は不可能である. そのため数値解析を用いてこれらの解析を行い, 被害メカニズムの解明や対策案の構築に役立てることが期待されている. 本研究ではこれら災害の内, 津波による防波堤の崩壊メカニズムの解明, 対策案の構築に焦点を当てた, 固液混相流手法の開発を行っている. 具体的には流体の解析にはSPH法, 固体解析にはDEMを用いており, 両者を相互作用力によって連成させ解析を行う. また自由表面判定を改善することで, 混相状態でも安定した解析解を得られるようにしている. 本論文では水とガラスビーズを用いたシンプルなモデルを用いて妥当性の確認と本手法の精度検証を行い, 最後に粗視化手法を用いた洗掘解析に本手法の適用を試みた.
  • 植田 翔多, 間所 寛, 近藤 雅裕, 岡本 孝司
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182002
    発行日: 2018/01/26
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所の廃炉において再臨界リスクに影響与える炭化ホウ素の分布を把握することは重要であるため, 炭化ホウ素制御棒の共晶溶融と溶融移行挙動が注目されている. 近年, 著者らは炭化ホウ素制御棒材料の共晶溶融を実験的に可視化し, 共晶溶融の後も融液が元の位置にとどまることを見出したが, そのメカニズムは明らかになっていなかった. 本研究では, 粒子法の一種であるMPS法に共晶溶融モデルを追加して可視化実験を解析した. これにより, 実験で観察された融液の停滞が, ホウ素の拡散による等温凝固に起因する可能性が示された.
  • 佐藤 兼太, 越村 俊一
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182003
    発行日: 2018/01/26
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー
    市街地スケールの大規模3次元津波シミュレーションは, 計算負荷・コストの点で依然として課題があり, 京コンピュータなどのHPCIを活用した事例など限られた環境下でしか実現されていない.
    陽的な解析手法であることと, 並列化効率が高いことは, 大規模3次元解析においては重要な要件であり, この点で格子ボルツマン法が注目されている.
    しかし, 格子ボルツマン法による自由表面流れ解析手法は, 津波数値解析を実行する上で要求される精度を十分に満足できていないことが問題となっている.
    上記の問題に対して, 本研究では格子ボルツマン法による自由表面流れ解析モデルの高度化に向け, PLIC-VOF法に基づく自由表面流れモデルを構築した.
    さらに, 界面における法線ベクトルの高精度な算出のため, 流体充填率から生成される擬似的なLevel Set関数を導入し, 簡便なカップリングを行った.
    そして, ゲート急開流れのベンチマークテストを通じて, 本提案手法が従来の格子ボルツマン法の自由表面流れ解析モデルの問題を解決し, 高精度な解析が可能であることを示した.
  • 福島 寛二, 田中 聖三, 磯部 大吾郎
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182004
    発行日: 2018/01/26
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー
    本論文では, 津波漂流物の衝突による構造物の損傷評価手法の開発のため, 自由表面流れの流体と構造物の連成解析手法を提案する. 自由表面流れの解析にはVOF法に基づく安定化有限要素法を適用し, 既往の津波実験との比較により妥当性の検証を行った. また, 連成解析手法においては, 漂流物を単純形状の剛体とみなし流体要素内の剛体表面を平面と仮定することにより, 剛体表面に働く流体力を簡便に計算する手法を提案し, 既往の実験との比較により妥当性の検証を行った.
  • 三浦 利季, 小林 康一, 山下 拓三, 田中 聖三, 磯部 大吾郎
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182005
    発行日: 2018/01/26
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー
    In big earthquakes, tumbled furniture such as bookshelves and desks in rooms may become fatal obstacles that obstruct people from evacuating. Recently, quake-proof furniture are getting popular to prevent accidents in earthquakes. It is important to understand the overturning behaviors of furniture with and without quake-proof countermeasures under seismic excitations, as well as the behaviors and damages of the building itself. In this paper, the motion behaviors of furniture were analyzed using the Adaptively Shifted Integration (ASI) -Gauss code utilizing frictional contact algorithm based on the sophisticated penalty method. The numerical results were validated by comparing with the experimental results. The numerical code was also applied to a motion analysis of a furniture placed at each floor of an RC building.
  • 車谷 麻緒, 相馬 悠人
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182006
    発行日: 2018/01/26
    公開日: 2018/01/26
    ジャーナル フリー
    社会基盤構造物の多くを構成している鉄筋コンクリートは, 引張に弱いコンクリートを引張に強い鉄筋で補強した構造である. 材料の挙動に着目すると, コンクリートはひび割れが発生して軟化挙動を示す脆性材料であるのに対して, 鉄筋は弾性限界後に塑性硬化を示す延性材料である. 鉄筋コンクリートは, まったくタイプの異なる材料を組み合わせた構造 (材料) であるため, その破壊挙動は非常に複雑で非線形なものになる.
    既往の研究において, 著者らは, 有限ひずみを用いて, コンクリートの破壊力学に基づく損傷モデルを定式化し, これをコンクリートのひび割れ進展挙動のモデル化に応用することで, 幾何学的非線形性を考慮した鉄筋コンクリートの有限要素解析に適用可能であることを示した. しかし, 有限ひずみを用いて鉄筋の塑性変形まではモデル化しておらず, コンクリートと鉄筋の両方の非線形力学挙動を再現するには至っていない. また, 鉄筋の塑性変形をモデル化していないため, 鉄筋コンクリートの破壊挙動に対して, 実験結果との定量的な比較も行えておらず, 実験結果の再現性についても検討する必要がある.
    そこで本論文では, コンクリートのひび割れ進展挙動に有限ひずみ損傷モデル, 鉄筋の塑性変形に有限ひずみ塑性モデルを適用することで, 幾何学的非線形性を考慮した3次元鉄筋コンクリートの破壊シミュレーションが行える有限要素解析手法を開発する. そして, RCはりの実験結果と解析結果を比較することにより, 提案手法による破壊シミュレーションの妥当性を検証する.
    第2章では, ヘンキー超弾性モデルをベースに, 鉄筋の塑性変形のモデル化に適用するvon-Mises塑性モデルとコンクリートのひび割れ進展挙動のモデル化に適用する修正von-Mises損傷モデルの定式化を示す. 本論文における一つ目の新規性は, ヘンキー超弾性モデルをベースに, 塑性モデルと損傷モデルを統一的に記述する定式化である. 第3章では, 提案手法の基礎的検討として, せん断補強筋の異なるRCはりの4点曲げ試験を対象に, 実験結果と解析結果を比較することで, 鉄筋コンクリートの破壊挙動を精度よく再現できることを示す. 本論文における二つ目の新規性は, 有限ひずみ材料モデルを用いて, 鉄筋コンクリートの実験結果を定量的に再現することである. 第4章では, 本論文の総括を行い, 今後の課題と予定について述べる.
  • 野村 怜佳, 高瀬 慎介, 森口 周二, 寺田 賢二郎
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182007
    発行日: 2018/02/06
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル フリー
    本研究では, 細管粘度計の測定手順に倣い, 水と固体粒子が混ざり合った固液混合流体の粘性を, 三次元流体-構造連成解析を通して測定する数値粘性測定を実施し, 測定された巨視的粘性の傾向について基礎的な検討を行う. 具体的には, 土砂を模した剛体球粒子が混流した状態で管路流れの数値実験を行い, Hagen-Poiseuille 式を用いて巨視的な粘性を数値的に算定する. 解析結果から流れの微視的機構を観察した上で, 巨視的粘性との関連性について考察する. 流体運動の記述には三次元Navier-Stokes方程式を採用し, 土砂運動のモデル化には個別要素法 (DEM) を用いる. また, 水と土砂の相互連成解析には安定化有限被覆法を用いる.
  • 田中 聖三, 磯部 大吾郎
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182008
    発行日: 2018/02/06
    公開日: 2018/02/06
    ジャーナル フリー
    J-STAGE Data
    地震発生時に励起される可能性のある津波災害は, 沿岸域に多大な人的・物的被害が引き起こされることは記憶に新しい. 津波発生時に沿岸域でとるべき行動は, 原則として高台へ避難することであるが, 高台から遠く離れた平地部においては, 津波避難ビルを建設することで対応がなされている. この津波避難ビルは, 津波波力に対して十分な堅牢性を有し, 想定しうる様々な津波波力に対し設計時に十分検討されている必要がある. これらの多数の津波シナリオを取り扱う検討方法として, 数値解析による検討方法は, 有効な手法であるといえる. 十分な堅牢性を評価するためには, 建物の部材の終局状態における損傷を検討しなければならず, そのためには, 部材細部に作用する局所的な波力も考慮しなければならない. 合わせて, 建物の詳細な形状を表現する必要があり, これらの要求を満足する津波伝播解析に必要なモデルの自由度は多大なものとなる. これらの大規模問題に対して, 大規模並列計算機を用いて解析を行うことが可能となってきているが, 設計時には部材寸法の変更などによる構造部材の形状変化があり, その度に津波入力の全てのケースを再計算して波力を推定することは, やはり計算コストを莫大なものとしてしまう.
    そこで本研究では, 津波避難ビルの設計時における損傷評価のための有限要素解析手法を構築することを目的とする. まず, 津波波力を表す方法として, 構造物の形状を詳細に表現し, これらに作用する波力を高精度に評価することが可能な解析手法の構築を行った. 時々刻々の自由表面流れを解析するために, 安定化有限要素法に基づくVolume of Fluid (VOF)法を実装した. 数値解析例として, 津波避難ビルに対する津波伝播解析を取り上げ, 津波避難ビルの形状による波力の変化について検討を行った. また, 津波避難ビルの形状による抗力係数の変化についても検討を行い, 設計時に用いる津波波力の推定式の有効性を検討した. また, 構造物の損傷評価を行うための方法として, ASI-Gauss法に基づく骨組構造解析手法に対して先の津波波力を入力とする1方向連成解析手法を構築し, 津波避難ビルの損傷評価を行った.
  • 盛 健太郎, 金子 賢治, 橋詰 豊, 高瀬 慎介
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182009
    発行日: 2018/02/09
    公開日: 2018/02/09
    ジャーナル フリー
    逆断層においては, 地震動のみではなく地表面が大きく変位することによっても被害が発生する。
    例えば, 集集地震 (1999年, 台湾) などにおいて逆断層のずれによる地表面の変位により多くの構造物が致命的な損害を受けた。
    一方, 地質学分野等の研究者らによって基盤断層の研究が発展し, 基盤断層の位置や形態・活動確率・予測される基盤変位量などの多くの情報が得られるようになってきた。
    それにより, 既設の社会基盤構造物の付近に活断層が存在することが指摘され, 構造物の被害の予測や対策手法の開発が求められている。
    しかしながら, 基盤断層が大きく変位した場合の上部の表層地盤の変形挙動や盛土などの土構造物の変形挙動については, 拘束圧に大きく依存することや数mオーダーの強制変位により変形の局所化領域あるいは不連続面が発達・分岐すること, 土質により異なる挙動を示すこと等により, 未だ明確に理解されていない部分も多い。
    特に, 逆断層上部の土構造物の変形挙動は, 表層地盤の材料特性や境界条件を含む構造特性あるいは断層の形態・角度・規模など多くの要因に支配されるが, それぞれの要因についての違い等について不明な点が多い。逆断層変位による被害を低減するための対策工法の開発が必要であるが, これらを検討するための手法の確立と表層地盤や地表面変位の変形挙動に関する知見の蓄積が重要となる。
    本研究では, まず, 層厚が厚く拘束圧が大きい部分も想定可能な, 遠心載荷模型実験装置を開発し, 乾燥した硅砂4号を使用した簡単な逆断層実験を行う。
    次に, 基盤逆断層の上部にある表層地盤を対象に, 2次元粒状要素法を用いた逆断層シミュレータを開発し, 解析の結果を遠心載荷模型実験と比較する。
    さらに, 各解析パラメータの表層地盤の変形挙動に与える影響や解析の結果得られる粒状体内部の情報について示す。
    最後に, 対策手法を考える上で参考となる柔らかい層を意図的に設置した簡単な解析について示す。
  • Yi LI, 浅井 光輝
    2018 年 2018 巻 2 号 p. 20182010
    発行日: 2018/02/20
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー
    本論文では、流体と剛体の連成解析のために、流体にはISPH法をまた剛体の運動表現にはDEMにおける集合粒子モデルを採用した。通常DEMによる剛体解析においては剛体間の衝突には一種のペナルティ法を使用することが多い。しかしながら、そのペナルティ定数を大きくしすぎると小さな時間増分を使う必要があるものの、特に流体の計算コストが大きい場合には剛体計算の時間増分を流体解析と同じだけ大きな値を設定するため、このペナルティ定数を小さい値に設定することが行われてきた。本論文では特にコンピュータグラフィックスの分野の剛体計算手法として使われる撃力法を採用することで、物理的な定数の一つである反発係数のみを用いた解析を実施可能とし、また流体と同じ時間のまま衝突を含む流体剛体連成解析を実施した。
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