Cryptococcus neoformansは、深在性真菌症を引き起こす重要な真菌であり、感染時は特徴的な細胞学的変化を示すことが知られている。我々の研究から、本菌の細胞周期制御は、
S. cerevisiaeと異なることが分かった。従って、本菌の細胞周期制御メカニズムを解明することにより、病原性についての考察を深めることができると期待される。これまでに、
C.neoformansのCdk1とcyclinホモログのクローニングを行ってきた。更に今回、Cdc25のホモログについても同定した。Cdc25は、多くの生物の核分裂制御において、Cdk1のチロシン残基の脱リン酸化を誘導し、Cdk1とcyclinの複合体を活性化させる機能を有する。CnCdc25の推定アミノ酸配列を一般的なCdc25ホモログと比較解析した結果、ホスファターゼ蛋白質が共有するコンセンサス配列のうち特にチロシンを標的とした基質結合に関与する領域を持つことが明らかとなった。また、他の担子菌類のCdc25ホモログとも高い相同性を示した。そこで、
Sz. pombeのcdc25 ts mutantを用いて、CnCdc25の相補実験を行ったところ、CnCdc25は
Sz.pombeのCdc25の機能欠損を補うことが確認され、ホスファターゼとして機能する可能性が高いことが考えられた。しかし、
C.neoformansで
CnCdc25遺伝子を破壊した際の影響は認められなかった。以上のことから、
C. neoformansのCdc25は、
Sz.pombeなどとは異なり、生存および核分裂制御に必須ではないことが示唆される。
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