日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
選択された号の論文の157件中51~100を表示しています
内臓真菌症
  • 樽本 憲人, 山口 敏行, 前崎 繁文, 渡辺 典之, 橋北 義一
    セッションID: P-009
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    カンジダ血症は敗血症の中でも稀ではない疾患のひとつであり、死亡率は依然として高い。新薬の登場により治療選択肢の幅が増え、Candida albicansによる感染症の治療が容易になってきた反面、近年non-albicans Candidaの増加も指摘されているなど、カンジダ血症の様相は複雑化を呈している。今回、埼玉医科大学病院における近年のカンジダ血症の発症頻度を明らかにして、Candida属の血液培養から検出される頻度や使用される抗真菌薬の変化などの臨床的検討を行った。2004年~2007年まで血液培養にて検出された、Candida属は55株であり、うち主な菌種はC. albicans21株、C. parapsilosis21株、C. glabrata3株、C. tropicalis3株、その他Candida属5株であった。また、使用抗菌薬の種類は、micafungin:35.7%、fluconazole:25%、fos-fluconazole:25%、liposomal amphotericin B:7.1%であった。当日は治療薬の平均投与期間、投与量、予後の推移などを含めた検討の報告を行いたい。また、2004年にも埼玉医科大学病院におけるカンジダ血症の臨床的検討を行っているため、これと比較したものを報告する予定である。
  • 高園 貴弘, 泉川 公一, 三原 智, 小佐井 康介, 西條 知見, 中村 茂樹, 山本 和子, 今村 圭文, 関 雅文, 掛屋 弘, 山本 ...
    セッションID: P-010(SII-02)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【背景・方法】ELISA法による血清アスペルギルス抗原検査(プラテリアアスペルギルス)は、血液内科領域において侵襲性アスペルギルス症の早期診断に有用とされているが、呼吸器内科領域では偽陽性例が多く課題となっている。当科において2005年1月から2006年12月までにプラテリアアスペルギルスを行った症例113例の臨床背景、画像所見について検討を行った。【結果】平均年齢は62.8歳(13~88歳)。抗原価1.5以上、1.5未満の症例の平均年齢はそれぞれ、73.4歳、61.4歳であり、スピアマンの順位相関係数にて年齢と抗原価には正の相関関係が認められた(P=0.04)。平均抗原価は、0.917(0.078~15.3)で、カットオフ値1.5、0.5とした場合の陽性例(率)はそれぞれ、12例(10.6%)、56例(49.5%)であった。カットオフ値を1.5とした場合の偽陽性例12例の基礎疾患(重複あり)としてステロイド投与が7例(58.3%)、誤嚥性肺炎、間質性肺炎が各4例(33%)、肺癌、COPD、糖尿病、免疫抑制剤投与例が各3例(25%)に認められた。そのうち、ステロイド投与例、誤嚥性肺炎例、免疫抑制剤投与例は、陰性群と比較し有意に高率に認められた(Χ2乗検定P<0.05)。画像所見においては、陽性群と陰性群において有意な差は認められなかった。今後も症例蓄積し検討を行う予定である。
  • 山本 由子, 有高 奈々絵, 森 健
    セッションID: P-011
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    最近経験した侵襲性肺アスペルギルス症1例、侵襲性接合菌感染症2例を報告する。【症例1】悪性リンパ腫の63歳・男性で2回目入院。経過中ITCZを投与していた。23病日に高熱・胸部異常影を認め、抗生剤投与及びβ-D-グルカン陽性でMCFGに変更した。しかし効果無くL-AMBに変更した。31病日の痰培養でAspergillus sp.を検出した。陰影は縮小傾向を示したが、L-AMBによる腎障害が見られ減量しVRCZを併用した。その後VRCZによる肝障害を認め、L-AMB単独に戻し基礎疾患も軽快して退院。【症例2】血球貪食症候群(悪性リンパ腫の疑い)の23歳・男性。入院時及び48病日・64病日に高熱を認め、ITCZのほか抗生剤投与で軽快した。71病日右上肺野に結節影が出現し真菌症を疑ってMCFG及びFLCZの併用に変更したが改善せず、β-D-グルカン高値のため、L-AMBに変更したが3日目に死亡。剖検で接合菌症・CMV感染症・グラム陽性菌性敗血症と診断された。【症例3】アグレッシブNK細胞白血病の50歳・男性で加療目的に転入院。入院時よりITCZ内服を行い、5日目より化学療法を開始した。day4に熱発しday6よりCRPが上昇・肝機能も悪化し、抗生剤の変更でも改善せず、入院15日目にFLCZへ変更したが死亡。死亡当日の胸部CT-scanで比較的小さい結節影を両肺に各1個認めたが、約5時間後の胸部X線像では両肺に多発性陰影が出現し肺出血を疑った。剖検で接合菌と診断された。
  • 安藤 常浩, 守屋 敦子, 折津 愈, 鈴木 利哉, 鈴木 憲史, 武村 民子, 渋谷 和俊
    セッションID: P-012
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    症例は68歳男性。健診にて血液異常指摘。前医でMDS、8トリソミーと診断。無治療で経過観察中、出血傾向、腰痛出現。骨髄生検にて芽球50%認め急性骨髄性白血病(AML)と診断され入院。DNR, Ara-Cによる寛解導入療法を開始した。その後、追加投与行ったが、寛解は得られず、皮膚浸潤を認め、中等量Ara-C(Mit, Ara-C)、引き続きCAG(Ara-C, ACM , G-CSF)療法を開始した。しかし骨髄抑制遷延し、敗血症合併。種々の抗生剤に加えMCFGなどの抗真菌薬も投与されたが改善は得られなかった。さらに神経所見を呈し、髄内浸潤も認められた。MTXの髄注、全脳照射を開始したが、18Gy照射後、突然心肺停止状態となった。剖検では肺、脳に接合菌による侵襲性病変を認めた。特に左肺下葉において肺動静脈内の密な菌糸の増殖像、広範な出血性梗塞像を認めた。また脳血管内への侵襲像と脳内出血を伴う病変も認めた。さらに左肺上葉ではアスペルギルスの組織侵襲による結節性の病変も認められた。アスペルギルスによる日和見感染の増加については従来指摘されているが、最近では接合菌感染についても注目されている。本症は接合菌とアスペルギルスの重複感染を病理組織学的に確認しえ、その進展様式について考察するうえで貴重と考えられ今回報告する。
  • 山本 由子, 有高 奈々絵, 森 健
    セッションID: P-013
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【目的】各種血液疾患に対して抗真菌剤が、どの程度投与され、どの程度感染症を発症していたかを検討する。【方法】2006~2007年の2年間に退院した症例のうち、骨髄移植ドナー17例を除く580例を対象とした。尚、剖検で深在性真菌症と診断された症例、各種培養検査で真菌を認めた症例のほか、各種血清学的補助診断法が陽性になった症例を深在性真菌症感染例として解析した。【結果および考察】症例の内訳は合計333名(男性187名、女性146名)で延580回入院していた。平均年齢は60歳。年代別では60歳代が91名延116回、70歳代が80名延141回、50歳代が57名延116回入院していた。580回の入院のうち255例に何らかの抗真菌剤が投与されていた。基礎疾患別では各種白血病102例中77例(感染例 17例)に、悪性性リンパ腫294例中124例(感染例16例)に、多発性骨髄腫64例中23例(感染例2例)、骨髄異形成症候群26例中23例(感染例2例)、再生不良性貧血11例中3例(感染例1例)に抗真菌剤が投与されていた。投与開始時の薬剤はITCZが154例、FLCZが65例、MCFGが27例、L-AMBが6例などであった。当初から静注剤を投与した症例はより重篤であった。
  • 西山 彌生, 山口 英世, 安部 茂
    セッションID: P-014(SII-05)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    アスペルギルス症の起因菌として、最近、 A. terreus の分離頻度が増えている。本菌は、アムホテリシンBに対して低感受性を示すため治療困難な場合が多く、臨床上問題となっている。新世代のアゾール系抗真菌薬ボリコナゾール(VRCZ)は、 Aspergillus 属に対して強い抗真菌活性を示す。我々は、これまでに A. fumigatus 発育菌糸に対するVRCZの作用を微細形態学的に検討した結果、VRCZが細胞膜をはじめとする細胞内膜系を破壊して殺菌的作用を示すことを見いだした。今回は、 A. terreus に対するVRCZの作用を形態学的に解析したので報告する。 本菌発育菌糸に種々の濃度のVRCZを作用させた後、菌糸細胞viabilityの変化、および電子顕微鏡による微細形態の変化を観察した。VRCZを作用させた場合には5時間後に菌糸の伸張が抑制されると共に、菌糸側壁に多数の分岐を形成し、濃度および作用時間に依存して死細胞が増加した。一方、細胞内微細構造の変化としては、細胞壁の肥厚や隔壁の形成異常、壁内および細胞壁と細胞膜の間空隙に高電子密度の小胞構造の蓄積が認められ、やがて大部分の菌糸が溶菌した。これらの所見から、VRCZが A. terreus の細胞構造を破壊することによって強力な殺菌作用を示すことが明らかとなった。(会員外共同研究者:蓮見弥生)
  • 木村 雅友
    セッションID: P-015
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【目的】ファンギフローラY(アルフレッサファーマ)は擦過物の塗沫標本や組織中の真菌要素を検出するために開発された蛍光染色液キットである。そのなかのB液はスチルベンジルスルホン酸系蛍光染料で真菌細胞壁のβグルカンやキチンなどに親和性が高く,そのため蛍光顕微鏡で真菌を検出することが可能となる。しかし,染色後長期間保管した場合でも観察に耐えうる蛍光強度が残っているかどうかは検討されていない。そこで12年前に染色した標本をもう一度蛍光顕微鏡で観察し検討した。【材料と方法】12年前にファンギフローラYキットで染色し蛍光顕微鏡で観察し,その後室温暗箱に保管していた各種真菌症の組織標本(カンジダ;22例,アスペルギルス;7例,クリプトコックス;3例,ムーコル;5例,トリコスポロン;4例)を材料とした。これらの組織標本を蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse E800 equipped with filter module UV-1A; excitation,365nm; dichroic filter,400nm; barrier filter, 400nm with mercury lamp for illumination)で観察した。【成績】12年前の観察と同様に蛍光し,組織中の真菌要素を容易に検出できた。なお,ムーコルについては12年前と同様ほとんど蛍光を示さなかった。【結論】ファンギフローラYキットで染色した組織標本は長期間室温で保管しても蛍光強度が減弱せず,長期間後の真菌の見直しに関しても役立つことがわかった。
  • 田辺 公一, 中山 浩伸, 山越 智, 知花 博治, 新見 昌一, 宮崎 義継
    セッションID: P-016(SII-04)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【目的】病原真菌Candida glabrataは、出芽酵母とは異なり好気条件でも血清や胆汁からコレステロールを取り込んで、アゾール剤によるエルゴステロール合成阻害を回避する。本研究では、ステロールトランスポーターCgAus1pによるステロール取り込みの分子機構と生理的役割を明らかにすることを目的とした。【結果と考察】CgAUS1および出芽酵母のortholog遺伝子ScAUS1ScPDR11をそれぞれ恒常的に発現させた出芽酵母株を作製し、フルコナゾールによるエルゴステロール合成阻害が血清の添加によって回避されるかどうかを検討した。好気および嫌気培養条件におけるフルコナゾール感受性を比較した結果、CgAUS1発現株はScAUS1およびScPDR11発現株と同様に嫌気条件下でのみ、血清添加によって耐性化した。また、出芽酵母の細胞壁マンノプロテインをコードするDAN1遺伝子はステロールの取り込みに必要であると考えられている。DAN1を破壊すると、CgAUS1発現株も血清によるフルコナゾール耐性化は著しく損なわれた。本研究により、出芽酵母とC. glabrataには共通のステロール輸送機構が存在すること、またステロール取り込みに関わる因子が出芽酵母では嫌気条件でしか発現しないのに対して、C. glabrataでは好気条件においても発現することが示唆された。
  • 田口 英昭, 渡辺 哲, 豊留 孝仁, 佐藤 綾香, 落合 恵理, 亀井 克彦
    セッションID: P-017
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Aspergillus fumigatus に対するcaspofungin(CAS)とvoriconazole (VRCZ)の併用効果について検討するため、RPMI培地による微量液体希釈法を試行し、CCDカメラを用いて各ウエル内の菌増殖状態を観察した。その後、ヒト血清中で Aspergillus fumigatus を培養し、菌糸成長速度を指標としてBioCell Tracer(BCT) で検討した。 【方法】患者分離株であるA. fumigatus IFM 51357、49824 および49896株を供試菌とした。単剤でのMIC値は酵母様真菌DP”栄研”で得られた値を目安にチエッカーボード法を試行し、各ウエル内の菌の増殖状態を目視及びCCDカメラを用いた画像解析法(IA01MIC mkII)を用いて確認した。次に、ヒト血清中にCAS 0.25~05 mcg / ml と VRCZ 0.125~0.25 mcg / mlを1) 2 剤を同時に添加した群、2)2剤をインターバルを持って添加順序を異にした群とに分け併用時の効果を比較した。 BCT測定は分生子 2~3 × 103個を接種、RPMI 1640 で前培養の後、健常者ヒト血清に交換した。菌糸の先端をモニターし、各CAS濃度を含む血清および、併用時はVRCZを含むて血清に置換し検討した。 【結果】 A. fumigatusの菌糸成長はCASが1~0.25 mcg / ml濃度において抑制された。しかし、0.125 mcg/ mlでは抑制効果は減弱した。 また、CAS とVRCZ の併用では2剤同時とCASが先でVRCZを後で添加した系で効果が示唆された。
  • C Lass-Florl, J Bille, DS Perlin, S Park, K Lagrou, P Hauser, E Harris ...
    セッションID: P-018
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    Objectives: Early diagnosis of invasive aspergillosis (IA) is essential to survival. Classical microbiological methods are slow and insensitive. Real-Time PCR offers the prospect of both faster and more sensitive microbiological confirmation of IA. FXG : RESP (Asp +) is a new test kit that detects both Aspergillus spp. and Pneumocystis jirovecii, utilising molecular beacons. This ready to use PCR assay consists of an extraction kit plus PCR assay and is CE marked. In this report we focus on the clinical performance for Aspergillus spp.
    Methods: The FXG : RESP (Asp +) real-time PCR kit was tested on 198 respiratory specimens from a wide variety of patient groups, collected from 4 European hospitals. Analysis was carried out using an AB7500 thermocycler. Samples of BAL were mostly stored at -20 to -80C prior to DNA extraction using the MycXtraTM fungal DNA extraction kit,. Some sputum samples were also processed. The FXG : RESP (Asp +) results were compared with culture for Aspergillus spp. The whole assay time including extraction is <4 hours from BAL and <5 hours from sputum. The limit of detection was ~1 genome for A. fumigatus (as assessed by purified Af293 DNA), and this was used as the clinical cut-off. An internal amplification control reaction within the kit detects inhibitors that might affect the PCR reaction, although positive results in the presence of inhibition may be reported.
    Results: Overall, for all 198 respiratory samples the sensitivity was 74% and specificity 93% with positive and negative predictive values 76% and 92% respectively. On 75 freshly collected sputum and other lower respiratory tract samples the sensitivity and specificity were 79% and 88% respectively. The FXG : RESP (Asp +) assay also detects Penicillium spp. as the target sequence in this fungus is identical. 3 samples were culture positive for Penicillium spp, and positive for FXG : RESP (Asp +) and recorded as 'false positives'. The FXG : RESP (Asp +) does not detect Zygomycetes or Candida spp., and this was confirmed in the clinical study.
    Conclusions: Overall the speed of detection and sensitivity of the FXG : RESP (Asp +) assay will bring considerable clinical benefits. Additional prospective and supportive clinical trials are ongoing
  • P Hauser, K Lagrou, X Cui, C Lass-Florl, DS Perlin, S Park, J Maertens ...
    セッションID: P-019
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    Objectives: Pneumocystis pneumonia continues to be a common infection in HIV patients and also occurs in other immunocompromised patients. Early diagnosis is known to improve outcome, and specifically, exclusion of the diagnosis, reduces the need for toxic empirical high dose cotrimoxazole therapy. Real-Time PCR offers the prospect of faster and highly sensitive detection of P. jirovecii. FXG : RESP (Asp +) [Myconostica, UK] is a test kit that detects both P. jirovecii and Aspergillus spp., utilising molecular beacons. In this report we focus on the clinical performance for P. jirovecii.
    Methods: The FXG : RESP (Asp +) real-time PCR kit utilises the large subunit mtRNA gene as a target to detect P. jirovecii and the assay is highly sensitive, being able to detect 6 target copies. The assay appears to be specific for Pneumocystis spp, with the possible exception of Fusarium solani. It was tested blindly on 196 BAL samples, collected from 4 European hospitals. All results were compared to microscopy, usually Calcofluor or Gomori methanamine silver stains, performed shortly after the sample was collected, and in non-AIDS patients whether patient was treated for PCP. Most HIV/AIDS samples had been previously extracted and stored frozen as DNA; the remainder were extracted with the MycXtraTM fungal DNA extraction kit, having been stored frozen unprocessed.
    Results: The kit contains an internal amplification control to detect potential inhibition of the PCR reaction and 6 (3%) of the clinical samples showed evidence of inhibition. These results were excluded from analysis, although 5 were positive by both microscopy and the FXG : RESP (Asp +) assay, and would be reported clinically. 42 samples were from HIV/AIDS patients and 148 from other patients, mostly with leukaemia. With respect to Pneumocystis detection, the FXG : RESP (Asp +) assay had good performance with a sensitivity of 97.4%, specificity of 92.9%, positive and negative predictive values of 90.4% and 98.1%. 8 samples had negative microscopy but very high FXG assay signals, suggesting that the microscopy was falsely negative, as reported in prior literature. These were reported as false positives
    Conclusions: The clinical performance of the FXG : RESP (Asp +) assay for the diagnosis of Pneumocystis pneumonia is superb. Overall the speed of detection and sensitivity of the FXG : RESP (Asp +) assay should bring substantial clinical benefits. Prospective and supportive clinical trials are ongoing
  • 米花 有香, 宇留賀 公紀, 石田 文昭, 榎本 有香, 宮本 篤, 諸川 納早, 岸 一馬, 吉村 邦彦
    セッションID: p-020
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【症例】73歳 男性。68歳時に過敏性肺臓炎、72歳時に肺結核(病型:l III 2)の既往を有し、外来にて経過観察中であった。その後画像検査にて空洞壁の不整な肥厚をきたし、アスペルギルス症の疑いで、イトラコナゾールを開始するも改善せず、精査・治療目的入院となった。身体所見では37.3℃の発熱と、聴診上両側胸部下方にfi ne cracklesを聴取した。血液血清学的検査では、白血球数は7,600/μlと正常範囲内、CRP 2.2 mg/dlと軽度上昇を認めた。また、β-Dグルカン<6.0 pg/ml、アスペルギルス抗原・抗体はともに陰性であった。KL-6 1,177 U/ml、IgE717 U/mlと上昇を認めるも、ムコールのRASTは陰性であった。糖尿病の合併はなく、入院時の胸部CTでは空洞の拡大化と、周囲へのGGAの広がりを認めた。CTガイド下にて採取した空洞内容液の培養から、Cunninghamella bertholletiae による感染症と診断した。アムテホリシンBリポソーム製剤による治療を4週間行うも改善が得られず、外科的切除を施行した。術後両肺にGGAが拡大するとともに呼吸状態が悪化し、術後1 ヶ月で死亡した。【考察】Cunninghamella bertholletiae による真菌感染症は海外では日和見感染症として注目されつつあるが、国内の報告は稀である。本症例は病的空間に同菌が付着、増殖する腐生性の病型にあたると考えられる。
分類と同定
  • 矢口 貴志, 弘 佑介, 松澤 哲宏, 田中 玲子, 細谷 幸一, 中山 素一, 徳田 一
    セッションID: P-021(SI-01)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    Aspergillus section Fumigati に属する菌種において、複数の遺伝子の塩基配列を決定し、関連菌と合わせて系統解析を実施した。その結果、どの遺伝子ともほぼ同様の系統樹を示し、Section Fumigati に属する菌種は I.A. fumigatus、II. A. lentulusA. fumisynnematus、III.A. fumigatiaffinisA. novofumigatus、IV.A. udagawaeA. viridinutans、V.他の菌種がそれぞれ属する 5 つのクラスターに分かれた。臨床分離株の多くは I に含まれたが、中には、II、IV に属する菌株があった。各分生子の表面微細構造は、I、V は刺状突起、II、III、A. udagawae は小コブ状の隆起、A. viridinutans は中間的な形状を示した。生育温度は、I が 50℃ でも生育するのに対して、II、III は 45℃ まで、IV、V は 42℃ まで生育し、これは簡便な分類に利用できる。各種抗真菌薬に対する感受性は、A. lentulus をはじめ非典型的な A. fumigatus は amphotericin B に対して、MIC が 1-2 μg/ml となり、高めの値を示した。この解析結果を用いて、臨床上問題となる薬剤感受性の低い菌種検出方法の検討を行った。菌が検出された場合の識別・同定法については、DNA の抽出、増幅条件等の最適化により、新たに開発したプライマーを用いて I、II、IV に属する菌種の識別が 8 時間以内で可能となった。
  • 弘 佑介, 松澤 哲宏, 細谷 幸一, 中山 素一, 徳田 一, 矢口 貴志
    セッションID: P-022
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    Talaromyces 属およびその関連菌である Hamigera 属,Byssochlamys 属は,子のう胞子が耐熱性を示すことから食品,飲料などの製造過程における事故原因菌として重要である.Talaromyces 属は, Penicillium 以外にも GeosmithiaPaecilomyces をアナモルフにとする種があり,分子系統的にも多系統と指摘され,分類学的に混乱している.今回, 本属および関連菌種の 28S rDNA D1/D2 領域,β-チューブリン遺伝子の塩基配列を決定し,NJ 法により系統解析を実施した.その結果,2 遺伝子の解析からえられた系統樹はほぼ一致し,Talaromyces 属は 5 群に再分類され,Byssochlamys 属,Hamigera 属とは系統的に明確に区別された. この解析結果を用いて,飲料などの製造工程で問題となる耐熱性カビの検出方法の検討を行った.菌が検出された場合の識別・同定法については,DNA の抽出,増幅条件等の最適化により,新たに開発した耐熱性カビの識別用プライマーを用いて酵母や一般のカビと問題となる耐熱性カビの識別ができ,Talaromyces 属、Byssochlamys 属、Hamigera 属および Neosartorya 属の 4 属を属レベルでの同定が 8 時間以内で可能となった.
  • 矢口 貴志, 堀江 義一, 松澤 哲宏, 田中 玲子, Paride Abliz, Hui Yan
    セッションID: P-023
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    Aspergillus section fumigati に属する菌種のうち、A. fumigatus はアスペルギルス症原因菌として最も重要な菌であるが、これまで臨床からの分離株には典型的な A. fumigatus 以外の株も混在していた。近年、分子系統解析によって非典型的な株の多くは A. fumigatus とは別種とされている。現在、非 A. fumigatus およびアナモルフのみを形成するヘテロタリックな Neosartorya は 16 種報告されており、このうち A. arviiA. fumigatiaffinisA. fumisynnematusA. lentulusA. neoellipticusA. viridinutansN. fenneliaeN. udagawae がヒトや動物に対しての病原性を示している。今回は日本、中国、ブラジルなどの土壌から非 A. fumigatus を分離し、系統解析の結果と形態学的知見とを比較研究した。その過程で未報告種を認めたので併せて報告する。方法:土壌および臨床分離株と既知種をβ-チュブリン、ハイドロフォビン、カルモジュリン遺伝子などを用いて系統解析を行い、形態学的知見と比較検討した。結果:系統解析の結果、7 クラスターに分類された。概ね系統解析と形態学的知見は一致したが、系統は一致するが形態が異なる例や系統は異なるが形態が一致する例も認めた。これまで A. fumigatus とされていた臨床株の分類的位置を明らかにした。
  • 西村 和子, 佐野 文子, 鎗田 響子
    セッションID: P-024
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    我々は 2007 年に温泉水の濾過物をから人獣共通病原性黒色真菌 Ochroconis gallopava を分離し,それらの実験動物への病原性と共に報告した(Yarita K et al. Mycopathologia 164: 135-147, 2007).今回は,同時に分離された Ochroconis 属の新種と思われる菌株について報告する.神奈川県のある温泉地帯で温水が流れる河川水(屋外, 41-42℃,弱酸性)から O. gallopava に類するが, 42℃で分離時にオリーブ緑で綿毛状集落を示した2菌株,IFM 54738, 54739 を分離した.IFM 54738 においては,分生子柄は短く,直生か屈曲,濃褐色,先端よりシンポジアルに 4,5 個まで分生子を生じ,小歯はやや長く枯れていた.分生子は,2 細胞性,淡褐色から褐色,棍棒形から円筒形,平滑,10.3~18.0 (av.13.2) x 2.2~4.5 (av.3.6) μm,隔壁部はくびれない方が多く,基端の臍はやや目立った.最高生育温度は 44℃.分生子の形態,最高生育温度は明らかに O. gallopava とは異なった.2 株とも rRNA DNA の ITS, D1/D2 領域の配列は同一で,O. gallopava との一致率はそれぞれ 84,96%で,別種である事を示していた.マウスに静脈内接種した結果,致死性はなく,腎のみに病巣が生じる点も O. gallopava と異なっていた.以上より,本菌株は Ochroconis 属の新種と思われ,日和見真菌の候補菌種として,今後注意が必要である.
  • 松澤 哲宏, 矢口 貴志, 堀江 義一, 田中 玲子, 五ノ井 透
    セッションID: P-025
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    高度医療の進展に伴い真菌症は増加傾向にあり,その中でも特にアスペルギルス症は重要である.アスペルギルス症は A. fumigatus もしくは Aspergillus section Fumigati に属する菌がその原因の大半を占める.Section Fumigati に属する菌の系統分類と生理学的性状の相関に関する報告は既になされており(Yaguchi et al, 2007),最高生育温度による典型的な A. fumigatus と非典型的な A. fumigatus の区別が可能であることが示唆された.しかし,A. fumigatus 関連菌以外の病原性 Aspergillus 属菌の中には,分類に基づいた性状の把握が十分になされていない菌が存在する.
    Emericella 属は Aspergillus のテレオモルフの一つであり,アナモルフは Aspergillus section Nidulantes に分類され,36 種 2 変種のうち 5 種で病原性が報告されている.Verweij ら(2008)は臨床分離株の E. nidulansE. quadrilineata の MIC を比較し,2 菌種間で複数の抗真菌薬に対する感受性に差があることを報告し,同時に遺伝子配列を用いた正確な種同定の重要性を指摘した(2008).
    今回,我々は病原性 Emericella 属菌 5 種の MIC を測定し,菌種間による薬剤感受性の差異を明らかにすると共に,種特異的かつ迅速な同定が必要なことから,PCR などを用いた識別法の開発を試みた.
  • 渡邉 晴二, 安澤 数史, 河崎 昌子, 石崎 宏, 望月 隆
    セッションID: P-026
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    Fonsecaea pedrosoi は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、rRNA遺伝子のITS領域を用いた制限酵素切断片長多型(RFLP)分析の結果、それぞれ7タイプと6タイプに分けられている。 我々は、メラニン合成酵素遺伝子(PKS 1)の一部を用いてさらに詳しいタイプ分けを試みてきた。 まず、GenBank に登録されていたExophiala dermatitidisExophiala lecanii-corniPKS1領域を用いて、F. pedrosoiPKS 1 領域の増幅が期待されるプライマーを設計し、得られたPCR産物を用いて、制限酵素によるタイプ分けを行った。臨床分離株30株のDde I、Msp IによるRFLP分析では、これまでの結果と同様のタイプ分けが可能であった(第50回日本医真菌学会)。 今回、F.pedrosoi の 各mtDNAタイプ各1株について同領域の塩基配列を決定し、type1: KMU3713 コスタリカ分離 1809bp、type2: KMU3811 タイ分離1809bp、type3: KMU 3803 ベネズエラ分離 1804bp、type4: KMU3712 コスタリカ分離 1809bp、type5: KMU3807 コロンビア分離 1799bp、type6: KMU3808 コロンビア分離 1799bpであった。 E.lecanii-corni と比較し、同領域は1箇所のイントロンを含むことが分かった(type1:227-289bp)。各タイプのエクソン部分での遺伝子置換率は、最小でtype1と4の1.6%、最大でtype1と5の16.5%であった。さらにUPGMA法で系統樹を作製しITS、 cytochrome b領域の系統樹と比較したが矛盾はなかった。
  • 河崎 昌子, 安澤 数史, 竹田 公信, 若狭 麻子, 田邉 洋, 望月 隆, 石崎 宏
    セッションID: P-027(SI-02)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    共にTrichophyton mentagrophytes complexの有性世代であるA. simiiA. vanbreuseghemiiは、1973年のTakashioの報告により別種であるとされている。しかし、topoisomerase遺伝子の塩基配列を基に推定した系統樹ではA. simiiA. vanbreuseghemiiの系統が分けられない事から、我々はこれら2種が同種である可能性を考えた。交配能の落ちたテスター株をマウスに感染させて逆培養する事で交配能の回復を図り、種々の組み合わせで交配実験を行ったところ、2004年にインドで人から分離されたA. simii株KMU4810(+)とA. vanbreuseghemiiのテスター株RV27961(-)との交配に成功した事は昨年の本会で報告した。今回はさらに、昨年得られたF1世代のHybridのうちの1株(KMUAsv11株; rRNAとactin遺伝子はA. simii型、topoisomerase遺伝子はA. vanbreuseghemii型)をA. vanbreuseghemii(RV27961)と戻し交配したところ子嚢胞子の産生が確認された。稔性のあるF1が産生される事から、A. simiiA. vanbreuseghemiiとの交配は異種間交配ではなく通常の種内交配であると考えられ、2種の同種性が強く示唆された。
  • 三川 隆, 金山 明子, 池田 文昭
    セッションID: P-028
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    ヒトヨタケ属(Coprinus sensu stricto, Coprinopsis, Coprinellus)のアナモルフ種であるHormographiella属菌が新興真菌症起因菌として注目されている. 演者らは臨床材料および環境材料から真菌を検査する過程において,16株のHormographiella様の真菌を分離した. 本研究はこれら分離株の形態と分子生物学的性状を解析して, 本属菌とCoprinus sensu stricto, Coprinopsis, Coprinellusの系統的位置関係を明らかにすること, アナモルフとテレオモルフの関連性を明らかにすることを目的として行なった. 28S rDNA, ITS領域の解析結果から, Hormographiella様真菌は2つの系統群に大別された(Clade I, Clade II). Clade Iは分生子柄のよく発達した系統群でH. aspergillata, Hormographiella sp. IおよびHormographiella sp. IIで構成された. Clade IはRedheadら(2001)によって提案されたCoprinopsis属に対応していることが判明した. Clade IIは分生子柄が未発達のグループでH. verticillataおよびH. candelabrataで代表され, RedheadらのCoprinellus属と一致していることが判明した. 形態と分子およびアナモルフ-テレオモルフの関連から, Clade IIに包含されるアナモルフ種はHormographiella属から分割して, 新属として位置づけることが妥当であると考えられる. 会員外共同研究者 鈴木真言, 佐藤弓枝, 長谷川美幸 (三菱化学メディエンス), 小林寅吉吉 (東邦大学医学部看護学科)
  • 久和 彰江, 仲村 健二郎, 青木 茂治
    セッションID: P-029(SI-03)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    目的:病原性真菌Cryptococcus neoformans は3亜種および5血清型に分けられる。2004年に市販の血清型同定キットが中止になったため、我々は血清型を分ける方法として、multiplex PCRで同定する方法を報告した(Mycoses 50: 277-281, 2007)。しかし、ヤトロン血清型同定キットでは血清型Bと判定された株の中に、このPCR法では血清型Cと同定される株が入っていた。そこで、改良 multiplex PCR法を開発したので報告する。
    材料と方法:使用菌株は5種の血清型、合計21株を使用した。新しくプライマーをLAC1 から2つ(No.5と6)、CAP4 から2つ(No.1と2)を加え、2段階で行う。最初は、LAC1 のNo.2~5とCAP4 のNo.1と2の計6プライマーでmultiplex PCRを行ない、次に血清型AおよびDの株はCAP4 のNo.1と2でPCRを行なうことで血清型Aに特異的な1バンドの存否でADの判別を行なう。また血清型BおよびCの株はLAC1 のNo.2,4~6の4プライマーでBまたはCの判別を行なう。
    結果:5種の血清型A、D、AD、B、およびCの菌株をうまく判別同定できたことを報告する。
    (会員外共同研究者;トリノ大学 Valerio Vidotto)
  • 佐藤 一朗, 槇村 浩一, 蓮見 弥生, 西山 彌生, 内田 勝久, 山口 英世
    セッションID: P-030
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【目的】真菌症は免疫力の低下した患者にとって重篤な症状を起こす病害である。そのため、免疫力の低下した患者における微生物叢とその薬剤耐性を定期的に把握する必要がある。我々は外来患者の外耳道から新規Candida属酵母を得たので報告する。【材料および方法】国内病院での外来患者の外耳道から採取した耳漏スメアを分離源とした。純粋分離菌株の26S rDNA D1/D2領域(26S)および ITS1+5.8S rDNA+ITS2領域(ITS)を用いた分子系統分類を行った。そのほかの試験項目はThe Yeasts 4th edに順じた。【結果および考察】純粋分離菌JCM15448株は26Sの相同性がCandida haemulonii CBS5149T とは85.7%、C. pseudohaemulonii CBS10099Tとは83.0%であった。ITSはそれぞれ84.9、81.4%であり、系統樹ではCandida属に分類されたが同一な種は認められなかった。本菌株は42℃およびビタミンフリー培地で生育陽性であり、Candida属としては特徴的な培養性質を示した。その他の培養性質から本菌株はグループ VI(イノシトール・硝酸カリウム・エリスリトール陰性、40℃陽性)に分類された。本グループはC. albicansをはじめ病原性が報告されている種が複数属しているが、本菌株の病原性は不明である。ボリコナゾール・イトラコナゾール・フルコナゾール・フルシトシンに対する感受性は既知の種と差が認められなかった。これらの結果から本菌株をCandida属の新種と判断した。
  • 佐藤 一朗, 菅又 美穂, 槇村 浩一
    セッションID: P-031(SI-05)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【目的】動物の鼻腔には様々な微生物が常在していることが知られているが、動物種ごとの微生物叢はまだ十分に調べられていない。動物園は生物多様性の保存を目的の1つとした施設であるため、動物園飼育下における各動物に固有の常在菌も同じく保存されている可能性が高い。我々は希少動物として重要なコアラ(健常)の鼻腔から新規担子菌酵母を得たので報告する。【材料および方法】国内動物園で飼育しているコアラの鼻腔スメアを綿棒で掻きとり、純粋分離菌株を得た。26S rDNA D1/D2領域(26S)および ITS1+5.8S rDNA+ITS2領域(ITS)を用いた分子系統分類を行った。そのほかの試験項目はThe Yeasts 4th edに順じた。【結果および考察】CHRMOagar Candidaに特徴的なルビー色を呈する酵母を同じ動物園の3頭から1株ずつ得た。3株の性状は一致し、Sporobolomyces属菌との相同性は26Sが95~99%、ITSが88~92%であり、近縁種と偽菌糸の形成条件が異なった。したがってこれら3株を新種と判断し、Sporobolomyces koalaeと命名した(JCM15063T=CBS10914T=DSMZ19992T, IJSEM in press)。別の動物園から分離したJCM15449株の相同性はBLASTの結果ではTremella moriformisが最も近縁であり96.2、88.7であった。しかしながら、ballistoconidiaを形成する表現形質などからBullera属の新種と判断した。これら2菌種の病原性は不明であるが、宿主が健康であることから非病原性の常在菌であると考えられる。
  • 王 麗, 各務 清美, 横山 耕治
    セッションID: P-032
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    Alternaria属菌は,土壌や空中に存在し,希に感染を引き起こす.医真菌領域においては,A. alternata が主要な分離菌であるが,A. tenuissima も少数分離される.本属菌の形態的な分類・同定は難しいため,遺伝子配列による解析が重要な指標となる.すでに主要な病原真菌のチトクローム遺伝子のデータは蓄積されており,本菌属のチトクローム遺伝子を解析し,特異的な塩基配列を利用すれば,迅速同定,診断が可能となる.材料と方法:当センターの保存株,及びCBSより購入したAlternaria属菌及び近縁菌のチトクローム遺伝子の解析を行った.チトクローム遺伝子を増幅するプライマーを用いてDNAを増幅し,また増幅部分にイントロンが挿入されている株については途中に新たなプライマーを設計し解析した.塩基配列はダイターミネーター法により解析した.結果と考察:チトクローム遺伝子増幅用の共通プライマーで増幅できなかった株もみられたが,得られた塩基配列のエクソン部分を用いて系統解析を行った.解析可能であった株は,イントロンを含まないもの,イントロンを含むものではイントロンの長さにより3グループに分けられた.これらの株はUrocladium, Curuvularia 属とクラスターを同じくした.
  • 康 穎倩, 矢沢 勝清, 横山 耕治, 三上 襄
    セッションID: P-033
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】文部科学省のアジア科学技術協力推進戦略・地域共通課題解決型国際共同研究の「真菌症原因菌の疫学的研究と真菌症対策拠点形成」事業において、中国の貴陽医学院で分離された病原性酵母について、その分類学的な研究と薬剤感受性を検討した。【結果および考察】分離は、Potato Dextrose agar (PDA)で行い、菌種の同定は主にクロモアガーを用いて行い、最終的な種の確定は、ITSおよびD1/D2領域の塩基配列を解析することにより行った。分離した56種の病原菌の内訳は、30株(54%)がCandida albicansで次にC. glabrataが6株、C. parapsilosisC. tropicalisが4株であった。Candidaの他の菌種が5株で、残りはCryptococcus 等であった。ITSおよびD1/D2領域の塩基配列の解析で、Candida rugosa に類似しているが、相同性が低い菌株が1菌株発見されており現在、その詳細な分類学的な位置づけを検討している。分離した30株のC. albicansの25S rRNA遺伝子情報に基づく、遺伝子型の解析では、genotype A, B, C はそれぞれ56%, 23%および20%であった。薬剤感受性の検討では、azole, flucytosine, amphotericin Bでは、C. glabrata の分離株の多くがazole に対して基準株と比較して耐性傾向にあることと、flucytosine に対して数株でMIC値が僅かに高い菌株が観察されたが、高度の耐性菌は観察できなかった。(共同研究者 貴陽医学院:Luo Zhenhua、 Wang He)
  • Reiko Tanaka, Juhaer Mijiti, Takashi Yaguchi
    セッションID: P-034
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    It is well known that Candida albicans is one of important agents causing opportunistic fungal infection. McCullough et al. showed 4 genotypes in C. albicans (including C. dubliniensis) using 25S rRNA. There are many reports about genotyping of C. albicans in various countries. However this is the first report of genotyping of C. albicans isolated from Xinjiang Uygur Autonomous Region in China. Thirty-nine isolates from 52 HIV/AIDS patients at a hospital in Xinjiang Uygur Autonomous Region were genotyped. At the same time, 100 isolates from non-AIDS patients at a hospital in Tokyo were also genotyped. Results: Uighurian isolates were divided into genotypes A (51%), B (36%) and C (13%), Japanese were A (63%), B (28%) and C (9%). We compared these data with other countries'. The profile of Uighurian was similar to that of Turkish rather than Chinese (Chengdu). It is clear that the genotypes are characteristic in each area (geographical) and ethnic (ethnological). The other hand, we refined on ALTS analysis aiming at identification strain level. Specifically we used μTGGE (micro temperature-gradient gel electrophoresis) instead of agarose gel.
    Collaborators: Pu XM2), Erfan A2)
  • 五ノ井 透, ハナフィ アメド, メーヤー ウィランド, 三上 襄
    セッションID: P-035(SI-04)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    マイクロサテライトは、ゲノム上に存在する数塩基単位の繰り返し配列であり、集団遺伝学やDNA鑑定において遺伝子マーカーとして用いられている。世界の各国で採取された100株あまりのCryptococcus neoformans var. grubii (serotype A) のマイクロサテライト多型を解析し、地域による菌の分布の多様性について明らかにした。すでに公表されているH99株ゲノム配列を基に、15の典型的なマイクロサテライト部位をランダムに選択して塩基配列を解読した結果、3つの部位で2~3塩基の繰り返し配列が7~13回と異なる回数繰り返される、マイクロサテライト多型が観察された。残りの12ヶ所には多型は観察されなかった。見つけたゲノム上の3ヶ所の多型を用いて世界各国で採取された菌株をタイプ分けしたところ、日本-中国-台湾に共通する型、タイ国に特有の型、ヨーロッパ-エジプトに共通する型などを識別することができた。また、ベネズエラ-コスタリカ-ブラジルなどの中南米の各国には、多くの型が混在していることが明らかとなった。 今回多型が存在することが明らかとなった3つの部位を含め、Cryptococcus neoformans のマイクロサテライト多型の解析は、菌の伝播経路、感染経路の解析や地域多様性の解析、さらには、菌種の解析にも有用であると結論した。
  • 横山 耕治, 各務 清美, 賀 丹, 王 麗
    セッションID: P-036
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    Aspergillus section Nigri は,発酵真菌,オクラトキシン産生菌,植物病原菌,病原真菌を含む社会的に重要な菌群で,コロニーや胞子が黒色の菌のグループで,種の数が多い割に形態的な特徴は乏しいために同定や分類に混乱がみられる.チトクローム遺伝子解析による客観的な分類とマイコトキシン産生能や病原性の関連性を明確にすると共に本菌群の分布や生態を明らかにするために中国や日本の土壌分離株の解析を行った.材料と方法:山梨のぶどう園から採取した土壌より分離した菌及び中国各地から採取した土壌より吉林大学で分離した株を用いて,チトクローム遺伝子解析した.結果と考察:日本土壌では,A. japonicus がほとんどでA. niger は比較的少ない,中国土壌では,両種の割合はほぼ同じであった.A. japonicus の種内DNAタイプは日本ではAN-D-1とAN-D-2がほとんどであるが,中国からはAN-D-3が分離された. オクラトキシン産生菌の主要な種であるA. carbonarius の分離頻度は,日本,中国の調べた範囲では低かった.ブドウ,コーヒー豆,ワインなどのオクラトキシン汚染が本菌によるものと推測されているが,収穫後の管理が適正であれば汚染の可能性は少ないと言える.感染を引き起こすA. niger は何処にでも生息しているがその病原性に関する研究は少ない.
  • 各務 清美, 王 麗, 横山 耕治
    セッションID: P-037
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    皮膚糸状菌Microsporum canis は,世界中に分布し,好獣性であるので人獣共通感染症を示し,家畜やペットからの感染が多くみられる. 生息地が限定されず世界的であることから種内の多様性が推測されるが,家畜やペットからの分離菌と飼い主からの分離菌では,遺伝的に同型であることが推定される.これらの推定を確かめるために,AFLP解析を行い,M. canis の疫学的研究を行った. 材料と方法:当真菌医学研究センター保存の菌株,北京大学分離株,貴陽医学院分離株を用いた.AFLP法には,全DNA抽出物を制限酵素EcoR I,Mse Iを用い切断し,それぞれの切断面に認識サイトを含むアダプターを結合した.認識サイトの付いたプライマーを用いてPCRで各断片DNAを増幅し,蛍光ラベルを付けてABI 3130を用いてフラグメントの解析を行った. 結果と考察:得られたフラグメントは,幾つかのパターンが観察され,多様性の結果であろうと考えられるが,保存株の採取地が未だ充分ではなく,採取地を拡げることにより,より多様になると考えられる.家畜やペットからの分離菌と飼い主からの分離菌は,お互いが感染源であろうと推測できるため切断パターンの絞り込みを行っている.このようにAFLP解析は病原真菌の疫学研究に有効な方法であると考えられる.(会員外共同研究者:北京大学 李 若瑜,貴陽医学院 王 和)
  • Nanthawan Mekha, 杉田 隆, 池田 玲子, 西川 朱實
    セッションID: P-038(SI-06)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【はじめに】深在性トリコスポロン症は予後不良な真菌感染症の一つである。本症の主たる起因菌は世界的にTrichosporon asahiiである。タイにおける全病原性酵母に対する本菌の分離比率はおおよそ2-8%である。この度は、タイ患者から分離されたT. asahiiの遺伝子多型と薬剤感受性性について検討した。【材料および方法】タイ患者から分離された101株を用いた。rRNA遺伝子中のIGS1領域のDNA塩基配列を解析することにより遺伝子型を決定した。また、AMPH-B, 5-FC, MCZ, ITCZ, FLCZ, ITCZおよびVRCZのMICをCLSIに準拠して測定した。【結果および考察】T. asahiiのIGS1領域には7つの多型が存在する。101株中、I型が45%、III型が35%、VII型が18%であり、II型およびIV型が数%であった。日本人由来株の主要遺伝子型がI型であるのに対し、米国ではIII型であることからタイでは独自の遺伝子型比率を構成することが示された。また、AMPH-B、5-FCおよびFLCZには低感受性あるいは耐性を示した。VRCZが最も感受性が高かった。[会員外共同研究者]Tussanee Lrodkaew, Natteewan Poonwan
  • 滝澤 香代子, 田中 博二, 新矢 恭子, 小菅 旬子, 福島 和貴
    セッションID: P-039
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    【要旨】2006年、大動脈弁狭窄症の基礎疾患があり、竹による裂傷を負った経歴を有する6才の雌イヌが、後肢跛行を主訴として来院した。骨生検により真菌が分離され、病理所見、交配試験、分子生物学的検討により、Schizophyllum communeS. commune)1核菌糸体と同定した。【実験と方法】形態:コロニーは白色綿毛状で、表面に淡褐色の分泌物を生じた。培養初期にメタン臭。菌糸にクランプはないが壁にいぼ状ないし棘状突起。最高生育温度は41℃。S. communeが疑われた為、本菌の1核菌糸体7株、2核菌糸体1株と交配試験を行い、fruit bodyとclamp connection形成を観察した。分子生物学的検討:rDNAのITS及びD1/D2領域の塩基配列の解析を行った。【結果・考察】Blast検索の結果、ITS(659bp)、D1/D2(645bp)における相同性は共に99%以上を示した事によりS. communeと同定した。交配試験では、5株のテスター株間でのclamp形成が認められた。Fruit bodyは1株により形成され、ビロード状の高さ約3mm、直径5-10mmでcup-shapedのものが観察された。僅かに茶色を呈するものも見られた。以上の結果から、本分離株をS. communeの1核菌糸体と同定した。抗真菌剤に対する感受性はITZ, AMPH, MCZ に認められる傾向にあった。治療はITZにより行われ快復したが、1年後急死した。動物における本菌の報告は2症例目であるが、ヒト同様に増加傾向が推察された。
  • 加納 塁, 板本 和仁, 長谷川 篤彦
    セッションID: P-040
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    今回、初めて猫の鼻腔内アスペルギルス症からAspergillus udagawaseが分離されたので報告する。症例はアメリカンショートヘアー、1歳11カ月齢、避妊雌。 主訴は3カ月前から左眼球の突出、涙流、鼻汁排泄であった。頭部のCTスキャンで左眼窩に軟性の腫瘤が認められた。そこで左眼球および眼窩内腫瘤の摘出を行った。腫瘤には、多数の分枝している菌糸を取り囲むように肉芽腫が認められた。また血清中のアスペルギルス抗原が陽性であった。腫瘤の一部をサブローブドウ糖寒天培地上で培養したところ、白色から緑色の多数の絨毛状の集落が認められたため、アスペルギルス症と診断した。アンフォテリシンB(AMB)、イトラコナゾール(ITZ)、ミカファンギン(MCF)を投与したが、改善せずに9週間後に死亡した。 本分離株からDNAを抽出し、PCR法にてITS領域およびβ-tubulin遺伝子を増幅し、ダイレクトシークエンス法にて塩基配列を決定した。本菌のITS 領域の塩基配列は A. udagawaeおよびNeosartorya fischeriと100 % で、A. fumigatusとは 98%以下 の相同性が認められた。一方、β-tubulin 遺伝子では、A. udagawaeと100%の相同性が認められた。以上の結果から本菌をA. udagawaeと同定した。さらに薬剤感受性についてE-test法で調べたところ、AMBには>32mg/mlと耐性が認められた。
  • 神戸 俊夫, 服部 尚生, 田中 玲子, 知花 博治
    セッションID: P-041
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    演者等は、カンジダ症の原因菌として最も高頻度に分離されるCandida albicansの感染経路の特定および感染予防を目的とした高精度株レベル識別系の確立を進めてきた。これまでに、C. albicansのRPS/ALT領域の構造の多様性が、本菌種の特異的同定とタイピングに有効であること。さらに、RPS/ALT解析にマイクロサテライトのフラグメント解析を加えることにより、C. albicansを株レベルで識別する能力が高まることを報告してきた。本総会では、RPS/microsatellite解析によるC. albicansの株レベル識別能の評価と、genotype variationにつて報告する。日本、ブラジルおよびタイで分離された合計117株のC. albicansは、4種類のmicrosatellite markerにより104種類のgenotypeに区別され、さらにRPS/ALTタイプの解析を加えると112種類のgenotypeに区別(DP=0.999)された。これに対し、同一患者に由来するC. albicansでは、分離部位(常在部位と感染部位)に関係なく、同じgenotypeを示した。現在、C. albicansのgenotypeのvariationと安定性を調べるために、解析株の数を増やすと共に、同一患者から複数回分離したC. albicansのgenotype解析を進めており、これらの結果も合わせて報告したい。 (会員外共同研究者:足立秀禎、清水和栄)
免疫と生化学
  • 石橋 健一, 三浦 典子, 安達 禎之, 大野 尚仁
    セッションID: P-042
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【背景】β-グルカンは,真菌細胞壁主要構成多糖成分として共通に存在する.また,真菌培養上清中に放出されてくることが知られており,炎症性メディエーター産生など様々な生物活性を有することが報告されている.しかし,β-グルカンの真菌菌体そのものに対する作用を検討したものは少ない.本研究では,β-グルカンが真菌成長に対してどのような影響を及ぼすのか検討した.【結果・考察】完全合成培地C-limiting mediumを用い,β-グルカンとして,カードラン,ラミナリンを添加し,Aspergillus fumigatusならびに,Aspergillus oryzaeを培養した.肉眼的観察では濁度が上昇し,増殖促進されていることが示唆された.次に,菌糸成長の形態的変化を顕微鏡観察したところ,グルコース, デキストランを添加した培地と比較し,β-グルカンを添加した培地においては,分岐頻度が少なく,分岐部からの発育菌糸成長が促進され,菌糸凝集塊の大きさに差が認められた. 【考察】本研究により, β-グルカンがAspergillusの増殖,成長を変化させ,菌糸成長を促していることが示唆された. (会員外共同演者 白須由治)
  • 萩谷 ゆみ子, 杉田 隆, 加藤 博司, 西川 朱實, 比留間 政太郎, 武藤 正彦
    セッションID: P-043(SIII-06)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【背景】 難治性成人型アトピー性皮膚炎(AD)患者において、抗真菌剤の投与が有効であることより、その増悪因子としてMalasseziaが示唆されている。しかしながら、AD患者において、成人と小児の2群間でMalassezia floraを比較検討された報告はない。【目的】この研究では、AD患者を成人と小児の2群に分け、各群のMalasseziafloraについて非培養法を用いて検出・定量し、比較検討する。【対象】頚部に皮疹を持つ58人のAD患者(男性28人,女性30人; 成人27人,小児31人)を対象とした。【方法】 Scaleは、AD患者の頚部の皮疹より採取し、そのサンプルより直接DNAを抽出した。主要2菌種であるM globosaM. restrictaについてはreal-time PCRを用いて高精度に定量し、その他7菌種は、nested PCRを用いて検出した。また菌種別抗マラセチアIgE抗体も調べた。【結果】 Malasseziaの量は成人の方が多く(P<0.05)、菌種別にみると、小児ではM. restrictaが優位で、成人ではM globosaM. restrictaがほぼ同等であり、菌叢が有意に異なっていた(P<0.05)。菌種別抗マラセチア抗体価をみてみると、成人は、小児と比較して、M globosaM. restrictaの両者対する抗体価が上昇していた。【結論】 AD患者の皮疹部のMalasseziaについて、小児と比較して成人では量そのものだけでなく、優位となる菌種が異なっていた。
  • 倉門 早苗, 杉田 隆, 西川 朱實
    セッションID: P-044
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【はじめに】カンジダ症の主要起因菌であるCandida albicansはカテーテル等のメディカル・デバイス上にバイオフィルム(BF)を形成し、各種抗真菌薬に耐性化することから臨床上問題となることがある。この度は、C. albicansの1)BF形成に関与する遺伝子の同定、および2)BF状態での遺伝子発現プロファイリングについて検討した。【材料および方法】1)BF形成関連遺伝子:BFおよび浮遊細胞(PC)からRNAを抽出し、サブトラクション法を用いてBF状態で有意に発現する遺伝子をクローン化した。相同組換えにより、当該遺伝子を破壊し、野生株とBF形成能を比較した。2)遺伝子発現プロファイリング:DNAマイクロアレイを用いて、BF状態での各種遺伝子発現をPCと比較した。【結果および考察】1) 野生株と比較してBF強度が有意に低下する遺伝子を複数見出した。2)BF状態では、PCと比べて、SAP・PLB等の病原因子の発現にはほとんど変化が見られなかったが、薬剤耐性関連遺伝子であるCDR1は発現が亢進していた。以上、二形性がBF形成に寄与している事は明らかであるが、本実験の培養条件下では破壊株の二形性は野生株と同様であったことから、二形性関連遺伝子以外の遺伝子もBF形成に関与していることが示唆された。
  • 池田 玲子, 澤村 果菜子
    セッションID: P-045
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【目的】われわれは、C. neoformansS. aureusの接着により死滅すること、およびこの接着は C. neoformans莢膜主鎖のmannotriose以上とS. aureus表層triosephosphate isomeraseとの相互作用によることを報告した。そこで、この度はさらに死滅機構について検討した。【方法】2菌種を混合培養しC. neoformansのアクチンをローダミンファロイジンでラベルした。活性酸素種(ROS)を2',7'-dichlorofluorescin diacetateを用いて、DNA断片化はTUNEL染色により検出した。さらにH2O2添加でもS. aureusの共存と類似の細胞死が誘導されたため、H2O2により発現が上昇するタンパク質を同定した。【結果および考察】純培養系ではアクチンパッチが点在していたが、S. aureus 接着細胞およびH2O2添加細胞ではアクチンは凝集していた。これらのストレスによるC. neoformansでの活性酸素種の増加およびDNA断片化を伴う死滅が観察された。H2O2刺激で発現が増加したタンパク質は、MALDI-TOF-MS によるPMF解析により電位依存性イオンチャネルと同定された。これはミトコンドリア外膜に存在するvoltage dependent anion channel (VDAC)と相同性が高い。ミトコンドリアのシトクロムcは、VDACを経て遊離されアポトーシスを誘導することが知られている。さらに、VDACとアクチンとの相互作用の報告もある。従って、観察されたC. neoformansの死滅は、ミトコンドリアを介したアポトーシス様細胞死であると考えられる。
  • 青木 厚介, 安達 禎之, 大野 尚仁
    セッションID: P-046
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【目的】β-グルカン(BG)は真菌の細胞壁を構成する多糖であり,白血球の活性化,貪食能の促進,炎症性サイトカイン産生など様々な生理活性を示す.また真菌は喘息などのアレルギー症状を悪化させる因子として知られている.これまでに本研究室ではBGがIgE介在性のアレルギー反応に影響を及ぼす可能性があることを示してきた.しかし,その他アレルギー反応におけるBGの影響は未だに不明である.そこで本研究では遅延型アレルギー反応での悪化因子としてのBGの可能性を探るため,ハプテンである2,4,6-trinitro-1-chlorobenzene (TNCB)を反復塗布することで接触性皮膚炎を惹起し,BGのアレルギー反応への影響を検討した.【方法】C57BL/6Jマウスの腹部にTNCB及びCandida albicans由来可溶性BGであるCSBGを塗布した(初回感作).初回感作5日後から,角層除去を行った耳介にTNCBあるいはTNCB/CSBGを4日毎に塗布した.塗布後一定時間で耳介の厚さを測定した.【結果・考察】耳介塗布開始から16日前後でTNCB単独塗布と比較してCSBG併用塗布による耳介腫脹の増大が確認された.特に耳介塗布後48時間以降では,耳介へのCSBG併用塗布で耳の腫脹の持続が認められた.CSBG塗布は耳介の腫脹増大とその緩解を障害することから,接触性皮膚炎においてCSBGが増悪傾向を示すことが示唆された.以上の結果より,C. albicansの細胞壁BGが経皮的に進入したことでアレルギー症状を増悪したことが考えられた.
  • 池田 太, 安達 禎之, 大野 尚仁
    セッションID: P-047
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    病原真菌であるCandida albicans (C. albicans) の細胞壁組成は、菌体を取り巻く環境要因に伴い変化することが知られている。細胞壁の組成変化は宿主の自然免疫系の真菌認識に影響を与えるものと思われることから、今回、異なる培養条件でC. albicans菌体を得て、その細胞壁β-グルカンとdectin-1の結合性、細胞刺激性を比較した。C. albicans NBRC1385株とdectin-1の結合性を評価するため、dectin-1可溶性IgGキメラタンパク (sDec1) を作成し、様々な条件で調製した死菌体へのsDec1の結合性を比較した。結果、27℃よりも37℃で培養した菌体への結合性が高く、Potato dextrose培地よりも合成培地 (ショ糖、無機塩、ビオチン) で培養した菌体への結合性が高かった。菌体の加熱処理によってもsDec1の結合性は増大した。次にこれらの菌体によるMφ刺激性を検討した。C57BL/6 (WT) 及びそのdectin-1欠損マウス (KO) のチオグリコレート培地誘導腹腔MφをGM-CSF処理し、死菌体と6 hr培養後、上清中のサイトカイン産生を測定した。その結果、TNF-α産生量は、WTMφではsDec1-Fc結合性の結果を反映していたが、KOMφでは大幅に低下した。以上、培養条件がC. albicans細胞壁β-グルカンとdectin-1の相互作用に変化を与え、dectin-1介在性の免疫応答に影響を及ぼしうることが示された。(会員外共同研究者:東京大学医科学研究所、岩倉 洋一郎、西城 忍)
  • 柴田 信之, 大川 喜男
    セッションID: P-048
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々はこれまでCandida属菌の細胞壁マンナンの詳細な構造および抗原性について解析してきた。今回は、好脂質性病原性真菌Malassezia furfurおよび病原性黒色真菌Fonsecaea pedrosoiの細胞壁多糖について構造および抗原性の比較解析を行った。
    【方法】M. furfurおよびF. pedrosoiの培養上清、および菌体より120℃、2時間の熱水抽出により得た細胞壁多糖について、DEAE-Sepharose クロマトグラフィーにより分離した。多糖およびアセトリシスにより得られたオリゴ糖は600 MHzでH-NMR分析を行った。
    【結果及び考察】細胞壁多糖の糖組成分析の結果、M. furfurからは主にガラクトースからなる多糖が、F. pedrosoiからはガラクトース、マンノース、グルコースからなる多糖が得られた。NMR解析の結果、両多糖とも主鎖はβ-1,6結合ガラクトフラノース構造であった。F. pedrosoi細胞壁多糖の希アルカリ処理では多量の六糖が遊離してきた。一方、多糖部分のアセトリシスでは主に二糖が得られた。これら二糖、六糖、および多糖のNMR解析の結果、F. pedrosoiの細胞壁多糖はβ-1,6結合ガラクトフラノースからなる主鎖にα-1,2結合でグルコースが結合する構造であると考えられた。
    (会員外共同研究者:田所ゆかり、斎藤智美)
  • 赤座 誠文, 赤松 浩彦, 松永 佳世子
    セッションID: P-049(SIII-05)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    Malassezia spp. に対する培養ヒト表皮細胞(NHEK)の自然免疫反応において、リガンドである Malassezia spp. の前培養条件が実験結果に及ぼす影響について検討した。試験菌株としては Malassezia globosa (M. globosa)、M. restrictaM. sympodialisM. dermatis 及び M. furfur を用い、modified Dixon agar medium 又は Leeming & Notman agar medium を用いて 2 又は 7 日間培養し、試験菌とした。種々の条件にて調製した Malassezia spp. と NHEKを1 : 1 の比率にて共培養し、6 時間後に mRNA を抽出した後、リアルタイム PCR にて炎症性サイトカイン IL-1α、IL-6 及び IL-8 の mRNA 発現量を測定した。その結果、前培養に用いた培地及び前培養時間によって、炎症性サイトカインの mRNA 発現量に違いのあることが明らかになった。NHEK のレセプター(TLR 及び Dectin)阻害が、炎症性サイトカインの mRNA 発現に与える影響についても検討したので、併せて報告する。
  • 菅原 二陽, 石橋 芳雄, 杉田 隆, 西川 朱實
    セッションID: P-050
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ヒト皮膚の常在真菌であるMalassezia属のなかでM. globosaM. restrictaの2菌種はアトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis;AD)患者の皮膚において特に高い定着率を示すということが知られており、AD増悪因子の1つとして考えられている。近年、Th2型免疫応答の誘導に関与するThymic Stromal Lymphopoietin(TSLP)がAD患者表皮ケラチノサイトから産生されることが明らかにされ、ADの病態におけるTSLPの重要性が指摘されている。そこで、本研究ではM. globosaおよびM. restricta刺激によるヒトケラチノサイトのTSLP分泌誘導について検討した。
    【方法】ヒトケラチノサイトは、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)を用いた。NHEKはMalasseziaと1:20で共培養することにより刺激した。TSLPタンパク分泌は、刺激24時間後の培養上清についてELISA法により解析した。また、刺激4時間後のTSLP mRNA発現は、RT-PCR法により解析した。
    【結果および考察】M. globosaM. restricta 2菌種ともヒトケラチノサイトにおけるTSLPの遺伝子発現およびタンパク分泌を著明に誘導することが明らかになった。これは両菌種がTSLPの産生を介してTh2型免疫応答を誘導し、アレルギー性炎症を惹起あるいは増悪することを示唆している。
  • 安達 禎之, 石橋 健一, 三浦 典子, 大野 尚仁
    セッションID: P-051(SIII-04)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【目的】dectin-1は(1→3)-β-D-グルカン(BG)受容体として機能するC-typeレクチンでありヒトやマウスなどでは真菌細胞壁多糖の認識と自然免疫機能の活性化に関わることが示されている。しかしラットについての報告がないためラットdectin-1のcDNA配列および発現細胞によるBG受容体活性を解析した。【方法】ラット脾臓細胞のcDNAライブラリーからラットdectin-1 cDNAをクローニングし、その配列を決定した。ラットdectin-1の遺伝子導入により発現細胞を作製し、真菌BGの結合性およびNF-κB活性化能を測定した。【結果と考察】ラットdectin-1のcDNAはマウスと高い相同性を有し2つのisoformを有していたが、開始コドンの位置はマウスやヒトなどの他種dectin-1とは著しく異なっていた。また、既登録のラットdectin-1推測配列とも異なっていた。細胞内の連続した酸性アミノ酸配列やITAM 様配列、細胞外の糖鎖認識ドメインのBG結合を左右するWIH配列は保存されていた。ソニフィラン(SPG)およびzymosanの結合はいずれのisoformでも認められ、zymosanやカンジダ菌由来のBG粒子によるNF-κBの活性化がdectin-1の発現により高められた。以上よりラットdectin-1は他種のdectin-1と異なるものの、BG受容体として必須のITAM様配列や細胞外WIH配列が保存されており、真菌のBG結合、細胞内活性化シグナルの誘導においては機能的であることが示された。[会員外共同研究者:加藤雄也〕
  • 加藤 博司, 杉田 隆, 高畑 ゆみ子, 武藤 正彦, 比留間 政太郎, 石橋 芳雄, 西川 朱實
    セッションID: P-052
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    尋常性乾癬(Ps)患者の皮膚には、Malassezia globosa(M.g)、M restricta(M.r)が高頻度に常在し、病態との関連が指摘されているが、血清中の特異的抗体の報告は少ない。この度は、Ps患者におけるM.gM.rの関与について特異的IgG抗体およびIgA抗体を測定し検討した。「方法」YOSHIDAらの方法に準じて、菌体破砕抗原を固相化したELISAを作製した。Ps患者(25例、年齢56.4±15.3、男性:22、女性:3)で血清中のM.gM.r特異的IgG抗体価(mg/L)およびIgA抗体価(μg/mL)を測定した。年齢21~40才(A群:5例)、41~60才(B群:9例)、61~80才(C群:11例)の3群で比較し、健常者(H群:27例、年齢47.5±14.0、男性:15、女性:12)とも比較した。「結果」Ps患者のM.g特異的IgG抗体価はA群:3.04±3.07、B群:1.93±1.72、C群:3.14±4.28、H群:4.51±4.68、M.r特異的IgG抗体価はA群:2.28±2.21、B群:1.18±1.48、C群:1.49±0.77、H群:2.86±3.24であり、M.g特異的IgA抗体価はA群:0.087±0.036、B群:0.14±0.11、C群:0.49±0.47、H群:0.45±0.79、M.r特異的IgA抗体価はA群:0.18±0.18、B群:0.25±0.33、C群:0.71±0.96、H群:0.79±1.31であった。「まとめ」Ps患者の特異的IgA抗体価は、A,B群で健常者群に比較して低値傾向であった。Malassezia対する粘膜免疫機能の低下が示唆された。さらに病態と関連した検討が望まれる。
  • 押方 智也子, 釣木澤 尚実, 齋藤 明美, 竹内 保雄, 谷口 正実, 安枝 浩, 秋山 一男
    セッションID: P-053
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)は真菌に対するI、III、IV型アレルギーが関与するが複数の真菌に感作されることが多い。今回、真菌に感作されABPMを発症していない真菌感作喘息とABPMのIgE抗体産生能の差異を検討した。【方法】1999年4月から2008年3月に当センターで診断したABPM58例(ABPM群)、真菌に感作された成人喘息68例(BA群)を対象とし、約20種の抗原に対する寒天ゲル内二重拡散法による沈降反応と血清総IgE、IgE RASTを測定した。【結果】沈降抗体反応は、Aspergillus(A) fumigatusA. glaucusA. flavusA. nidulansA. nigerの陽性率がABPM群で多く、BA群では陰性であった。ABPM群ではBA群と比較して血清総IgE値が有意に高く、AspergillusPenicillium(P)、Cladosporium(C)のIgE RASTの陽性頻度、scoreが高値であった。AlternariaMalasseziaCandida、ダニ、スギは2群間で差を認めなかった。【結論】P、Cは環境で高頻度に検出される空中飛散真菌であり、これらの真菌に対する感作の個体差がABPMの病態に関与する可能性が示唆された。
皮膚真菌症
  • 清 佳浩
    セッションID: P-054
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    日本医真菌学会・疫学調査委員会による2006年度の皮膚真菌症調査成績を報告する。方法および調査項目は2002年に準じ、下記に記載した全国に分布した17施設において、2006年1月1日から12月31日までの期間、調査用紙に従った検索を行い集計した結果を報告する。芝木皮ふ科医院 芝木秀臣 網走厚生病院皮膚科 高橋一朗 笠井皮膚科 笠井達也 東京女子医科大学東医療センター皮膚科 原田敏之 帝京大学医学部皮膚科学教室 渡辺晋一 まるやま皮膚科クリニック 丸山隆児 東京医科大学皮膚科学教室 坪井 良治 帝京大学医学部付属溝口病院皮膚科 清 佳浩昭和大学藤が丘病院皮膚科 二宮淳也 揖斐総合病院皮膚科 藤広満智子 東皮ふ科医院 東 禹彦 金沢医科大学皮膚科 望月 隆 鳥取大学医学部皮膚病態学 山元 元 産業医大皮膚科 小林美和 久留米大学医学部皮膚科学教室 楠原正洋 掖済会長崎病院皮膚科 西本勝太郎 松田ひふ科 松田哲男
  • 鈴木 琢, 久保田 信雄, 島村 剛, 長坂 沙織, 向井 秀樹, 渋谷 和俊
    セッションID: P-055(SIV-04)
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    過去に爪白癬症を病理組織学的に検討した報告は散在するが、定量的かつ経時的に検討した報告は殆ど無い。今回我々は、日本白色種ウサギを用いて爪白癬動物モデルを作製し、感染状態の経時的変化について検討した。ステロイド製剤による免疫抑制状態下、Trichophyton mentagrophytes(TIMM2789)を経爪的に2週間感染させた後、放置期間を0,2,6週間の3群に設定し、組織標本を作製した。組織標本はImageJ(R)を用いて爪中のPAS陽性細胞の菌糸を計測し、以下の結果を得た。1)爪母角部から菌体までの最短距離を比較した結果、経時的に伸長する傾向を示した。2)爪甲内における菌糸の占拠率は経時的に増加していた。3)爪甲内における菌糸の局在を90検体、約3000点を爪甲先端及び爪床側からの最短距離を二次元的に検討した結果、局在の重心は経時的に爪母角近位側部から遠方かつ深部へ移動し、更にその病巣の局地化が認められた。4)感染爪の外観において、爪甲の混濁は経時的に増強される傾向があったが、爪甲の深部に菌糸が移動した場合には必ずしもその傾向を示さなかった。以上より、爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討の結果、爪甲内での菌糸が経時的に移動・変化することが判明し、本モデルの爪白癬モデルとしての有用性が示唆された。また、定量的な解析手法を用いることで、実験的な爪白癬の病態解析における新たな解析手段の可能性が示唆された。
  • 柳原 誠, 河崎 昌子, 石崎 宏, 望月 隆, 宇田川 俊一, 安澤 数史, 佐藤 幸生, 花川 博義, 刀川 信幸
    セッションID: P-056
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
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    【目的】先に趾間に生じた褐色皮疹より分離した Curvularia sp.(KMU4944)について報告した。しかし、同菌がなぜヒト皮膚表面に感染したのか不明のままであった。今回は同菌のヒト角質および植物に対する感染性について検討すると共に,自然界からの同菌の分離を試みた。【方法】実験1:ヒト角質(白髪、爪、胼胝)およびイネ科植物の葉を材料とし、滅菌消毒後、素寒天培地に上に環状に並べ、その中央にKMU4944を置床し培養した。生育の有無を光顕および電顕(SEM)的に検討した。実験2:イネ科の植物をパラコートで前処理し、3-5日後,枯れた葉を津田の方法を用いC. sp.の分離を試みた。【結果】実験1:KMU4944は白髪、爪および胼胝の角質および植物の葉の表面に白い長い分生子柄を放射状に伸ばし、その上に黒褐色の分生子をつけた。電顕的には毛髪クチクラ細胞間から分生子柄がのびその先端に分生子を形成していた。実験2:イネの“ひこばえ”からC. lunata (KMU2685=AF071339)が分離できた。この菌の分生子の表面は粗造で、角質での生育を認めた。【結論】KMU4944はin vitroで植物の葉のみならず、ヒト角質で成長することが明らかになった。C. sp.は皮膚表面に感染することはごく稀であるが、条件が揃えばヒト角質に感染する能力のある菌であることが明らかとなった。自然界からのKMU4944の分離はまだ成功していない。
  • 本間 喜蔵, 西本 勝太郎, 竹中 基
    セッションID: P-057
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    長崎県に於いては、以前より長崎大学皮膚科・真菌研究室を拠点とし、関連病院皮膚科と一部の真菌に興味のある開業医との間で真菌培養ならびに同定のネットワークが構築されていた。そこで、Trichophyton tonsurans 感染症の流行拡大に合わせてこのネットワークを県下の皮膚科診療所全体に拡大し、症例の掘り起こしに努めた。その結果2003年から2007年末までの5年間に、長崎県下で真菌培養により、67例のTrichophyton tonsurans 感染症が確認された。学年別では大学2例、高校50例、中学12例、小学1例、幼児2例で、高校生を中心に感染が拡大していたが、最近中学生の症例が増加傾向を示してきた。男女別では男63例、女4例であった。競技別では柔道58例、相撲4例、レスリング1例、その他格闘経験無しが4例で、競技人口に比例して柔道経験者が多かった。病型別では頭部白癬4例(black dot ringworm 1例、kerion Celsi 1例)、頭部白癬と体部白癬の合併例9例、体部白癬54例であった。罹患部位はほぼ全ての症例が上半身であり、露出部に多かった。臨床的には体部白癬のみでもHair brush 法で培養すると42例中18例で菌が検出された。治療に関しては頭部白癬例にはすべて内服治療が行われれ、体部白癬のみでも半数に内服治療が行われていた。
  • 宮城 秀樹, 細川 篤, 上里 博
    セッションID: P-058
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/06
    会議録・要旨集 フリー
    症例:14歳、男性(レスリング部員)。初診日:平成19年11月。主訴:頭部の疼痛を伴う脱毛性病変。家族歴・既往歴:特記事項なし。現病歴:初診の3週前に頭部の皮疹に気付き近医皮膚科を受診。KOH法で真菌要素陰性でありリンデロンVGローションによる外用療法を受けたが皮疹は増悪し右耳介に拡大した。KOH法陽性となり頭部白癬及び体部白癬の診断でイトラコナゾール内服(100mg/日)とニゾラールローション外用中に皮疹部の疼痛が増強し頚部リンパ節腫脹も生じたため深在性真菌症疑いで精査・治療のため紹介により当科受診。現症:前頭部に手拳大の不完全脱毛巣を認めた。病変部には浸潤を触れる紅斑に脱毛、紅色結節、痂皮、膿疱などが見られた。病理組織学的所見:真皮の毛包部位に膿瘍形成を伴う高度の炎症性細胞浸潤が認められた。浸潤細胞は白血球を主体としリンパ球や形質細胞などから構成され、真菌要素は陰性。菌学的所見:KOH法で膿疱は菌要素陰性、頭髪と頭皮の鱗屑は陽性だった。培養によりT.tonsuransを分離、同定した。治療経過:ニゾラールローション外用を中止しイトラコナゾール内服を継続し、8週で略治した。考察:沖縄県地方でも高校柔道部で集団発生がみられたがケルスス禿瘡は初めての症例であり、ステロイド外用や抗真菌剤外用が誘因と考えられた。同感染症の病変は軽微であり診断が難しいことが多く、若干の考察を加えて報告した。
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