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廣瀬 伸良, 菅波 盛雄, 白木 祐美, 比留間 政太郎
セッションID: P-059
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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わが国で
T. tonsurans感染症が流行して約8年が経過する。しかし、柔道競技現場における発症例は多く、拡大している可能性も高い。全日本柔道連盟では2007年より国内主要大会の要項に同感染症の治療義務を成文化したが、実際に組織単位で定期検査を実施している例はなく、現状は注意喚起にとどまっている。過去の全国大会出場者を対象にした調査で本感染症の頭部陽性者の背景因子として、強豪選手、寮生活、練習(合宿・遠征)が報告されているが、大会代表選手の所属団体下の柔道部員の罹患状況までについては充分に把握されているとは言いがたい。対象と方法:東京学生柔道連盟に登録し、常時全国大会へ出場している男女の1部校21チームの柔道部員を対象に質問紙と頭部ブラシ培養検査を試みた。東京学生柔道連盟1部校には全国トップレベルの柔道選手が集い、新年度には高校生が多く全国強豪校から入学してくる。大学では大部分の選手が共同の寮生活であり、練習量も豊富で同世代における代表的な柔道選手群である。検討:同選手群には過去の発症状況や治療方法、また啓発活動の有無などについての調査を実施した。頭部陽性者との関連や罹患状況を検討するとともに、組織を統括した定期的なブラシ検査の実施の可能性と課題点を報告する。
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加賀 麻弥, 白木 祐美, 池上 望, 比留間 政太郎, 池田 志斈
セッションID: P-060(SIV-03)
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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68歳、男、画家。既往歴:脳梗塞。現病歴:平成12年9月に転倒し右前腕を負傷し一旦治癒したが、その3ヶ月後、同部位に紅色丘疹が出現し拡大した。他院で約5年間ステロイド外用治療を受けたが完治せず、平成17年8月29日に当院に受診した。初診時、右前腕伸側手首付近に10×6cm大、暗赤色米粒大の丘疹が融合した不規則な局面があり、表面は凹凸、顆粒状を呈していた。病理で表皮は全体的に萎縮し、真皮内に組織球および多核巨細胞、多核白血球の集塊から成る稠密な細胞浸潤が、一部の細胞質内に淡い褐色にそまる円形の菌要素がみられた。PAS染色では、菌の形態は、胞子,胞子連鎖、菌糸より成っていた。真菌培養では発育の速い、灰黒色、綿毛状の集落が形成された。スライド培養では、分生子柄の先に縦横に隔壁のはいった洋梨形の茶褐色の分生子が連鎖していた。以上より本菌をAlternaria属の菌と考えた。形態学的特徴と26S rRNA D1/D2領域の遺伝子解析よりAlternaria alternataと同定した。本症をAlternaria alternataによるPhaeohyphomycosis(褐色菌糸症)と診断した。切除植皮術を薦めたが患者が拒否したため、化学カイロによる局所温熱療法を行い10ヶ月で治癒した。併せてわが国における皮膚アルテルナリア症の報告例の特徴をまとめた。温熱療法は本症治療の一つとして有望であると考えた。
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服部 尚子, 井上 重治, 内田 勝久, 安部 茂
セッションID: P-061
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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「目的」:足白癬および爪白癬に対して植物精油単独または抗真菌薬との併用による足浴での治療が可能かどうかを検証する。「方法」:足浴は42°C,25分間行う。薬剤は足白癬に対しては、0.8%パルマローザ単独群(薬剤A),0.8%パルマローザ+0.04%塩酸テルビナフィン併用群(薬剤B)、0.04%塩酸テルビナフィン単独群(薬剤C)で、4日間連続足浴2週間後、KOH―光顕法による菌の陰性化で効果を判定した。爪白癬に対しては、薬剤Bと0.8%パルマローザ+0.1%ヒノキチオール併用群(薬剤D)について5日間連続足浴2週間後の菌の光顕による陰性化で効果を判定した。「成績」東芝病院外来患者18名について、足白癬の菌陰性化率は薬剤Bが75%(6/8), 薬剤A,Cが各50%(2/4)、爪白癬に関しては薬剤Bが60%(3/5), 薬剤Dが0%(0/5)であった。加藤らの方法に準拠したフットプレス法で菌の検出された患者は10名で、同定された菌は
Trichophyton rubrumが5例,
T. mentagrophytesが4例、両者の混合感染が 5例、その他同定不能株が 3例であった。フットプレス陽性患者は全員1回の足浴後菌は陰性化した。試験中重篤な副作用は認められなかった。「考察」薬剤A,B,C間に有意差はないが、足浴は足白癬に一定の効果が期待される。本研究は社団法人 日本アロマ環境協会2007年度研究助成事業による研究助成を受けている。会員外共同研究者、川口健夫、高橋美貴。
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白木 祐美, 石橋 芳雄, 比留間 政太郎, 西川 朱實, 池田 志斈
セッションID: P-062
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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Candida albicans感染に対する生体防御には主にTh1型免疫応答が関与している。近年、表皮角化細胞(NHEK)はIFN-γ刺激によりTh1型免疫応答を惹起するInterferon-γ-inducible protein-10(IP-10)を分泌すること、それが皮膚局所における感染防御の一端を担う可能性が報告されている。また
C. albicansはprostaglandin (PG)E
2を産生すること、PGE
2はTh1型免疫応答を抑制することも報告されている。そこで本研究では、NHEKのIP-10産生に対する
C. albicansの影響、ならびにそれに対する
Candida由来PGE
2の関与について検討した。方法:NHEKに
C. albicansを感染させ、IP-10 mRNA発現(4時間後、RT-PCR)およびIP-10タンパク産生(24時間後、ELISA法)を測定した。結果:IFN-γ刺激によるNHEKのIP-10 mRNA発現およびタンパク産生は、
C. albicans感染により有意に抑制された。
C. albicans死菌添加では抑制は見られなかった。またIP-10産生抑制は
Candida菌種のPGE
2産生能と相関すること、PGレセプター拮抗剤はIP-10産生抑制を解除することが判明した。考察:
C. albicans由来PGE
2はNHEKのIP-10産生を抑制し、宿主のTh1免疫応答を回避している可能性が示唆された。
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小林 憲, 澤田 美月, 二宮 淳也, 石崎 純子, 田中 勝, 原田 敬之
セッションID: P-063
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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症例1:81歳,女。初診:2007年7月3日。気管支喘息でステロイド,高血圧でベシル酸アムロジピンを内服中。現病歴:初診の数ヵ月前より右第2,3指爪部の掻痒があり,変形も出現した。現症:右第2,3指爪甲の肥厚,変形と淡い爪甲線条があり,側爪郭から後爪郭に落屑を伴う淡い紅斑を認めた。その後,右第4指,左第3,4指にも爪甲変形が拡大したため,2008年1月9日皮膚生検を施行した。
症例2:81歳,男。初診:2008年3月11日。既往歴:特記すべきことなし。現病歴:約1年前,右第2指の爪甲剥離が出現し,徐々に変形をきたした。現症:右第2指の爪甲剥離と変形粗造化を認めたため、翌日皮膚生検を施行した。
症例1,2とも,初診時の鏡検では菌要素陰性。病変部爪甲より生検し,PAS,Grocott染色にて角層内菌要素を証明した。その後,直接鏡検でも菌要素を確認。 SDA培地培養では,表面平滑な乳白色調のクリーム状コロニーを認めた。カンジダカラーにて
Candida albicansと同定した。症例1はTBF 125mg/日,症例2はITCZ 100mg/日の連日投与にて治療中。
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-国立仙台病院に於ける30年間の集計との対比も含めて-
笠井 達也
セッションID: P-065
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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1998年から2007年までの10年間に受診した白癬患者は実総数5372例、年次別には初年度が最も少なく217例、1999年以降は各年540例以上で、2004年が728例と最多、以後漸減して、2007年は518例に止まっている。新患再来併せた外来患者実総数に対する比は総平均で9%である。病型別の延べ数では足白癬が4862例と最多、爪白癬が1962例とこれに次ぎ、以下体部白癬347、股部白癬212、手白癬101、頭部白癬13、いわゆる急性深在性白癬2例の順であった。年次別には足白癬は2004年をピークにその後やや減少傾向、爪白癬もこれと同様の傾向が見られた。この両疾患に関しては男女の罹患数には各年齢に亘って大きな差は認められない。年齢分布では足・爪白癬とも50歳台を中心に高年齢層により多い傾向がある。体部白癬は2003、2004年に急増したが、これは
Trichophyton tonsurans(TT)による症例の増加によるものである。股部白癬は期間の後半にやや多い。原因菌種別では主な菌種数を示せば、足白癬は
T.rubrum(TR)1621、
T.mentagrophytes(TM)1432。爪白癬ではTR 581、TM 115。体部白癬ではTR 207、TT 24、
Microsporum.canis11、TM 4、手白癬ではTR61、TM7などであった。これらの結果と国立仙台病院30年の集計との対比をも提示する。
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杉浦 義紹, 廣永 正紀
セッションID: P-066
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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爪真菌症の原因菌として1939年、Cochetにより初めて分離・報告された
Arthrographis kalraeは近年、角膜炎、肉芽腫、免疫不全者の日和見感染症の原因菌としても注目されている。我々は昨年夏、健常者(63歳男性)の爪真菌症から
A. kalraeを分離・同定し得たので報告する。分離株は当初、酵母状の形態を示したが、培養継続すると菌糸や分節型分生子を形成したことから
Trichosporon属菌かと考えたが、42℃で生育を認めたので同定に窮し、ITS領域の解析とBLAST検索を行った。その結果、580塩基配列で分離株は
A. kalraeと100%一致した。そこで、形態を再確認したところ、真性菌糸から無柄で球形の分生子の形成も認められ、これは
A. kalraeの記載と一致した。抗真菌剤に対する感受性はイトラコナゾール(MIC値 0.12µg/ml)とミコナゾール(MIC値 0.5µg/ml)に良好であったので、前者の内服(100mg/日)と後者の外用で治療を開始したが、心臓頻拍出現のため内服は数日で中止し、外用と削爪のみで経過をみたところ、約6ヶ月で爪は略治した。患者は家庭菜園を趣味としていたことから、土壌や堆肥との接触を介しての感染が疑われた。本邦での
A. kalraeの分離は本報告例が初めてであるが、今後とも本菌種による真菌症への注意喚起が求められる。
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久保川 真理, 田中 英一郎, 伊藤 雅章
セッションID: P-067
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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53歳、女性。既往歴:SLEのためプレドニゾロン及び免疫抑制剤内服中であった。初診の数ヶ月前から左上肢、体幹に直径1cmから3cm大の皮下膿瘍が多発。近医を経て2008年3月当科を初診した。皮膚生検病理組織像は真皮から皮下組織にかけて肉芽腫の形成があり、PAS、グロコット染色で菌糸が認められた。膿、皮膚生検組織の培養からTrichophyton rubrumが分離された。以上の所見より白癬性肉芽腫と診断した。現在テルビナフィン125mgの内服で加療中である。
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牛上 敢, 阿部 真也, 望月 隆
セッションID: P-068
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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症例:89歳男性、平成19年3月初診。主訴:左口角の結節。既往歴:糖尿病、気管支喘息、慢性呼吸不全。現病歴:初診6ヶ月前より左口角に結節が出現し、徐々に増大したため当科を受診。現症:左口角に10×10mmの表面が乳頭状に増殖した紅色の結節があり、一部に厚い痂皮が付着している。周囲の毛は易抜毛性なし。口腔内は総義歯、頬粘膜と舌に白苔あり。検査所見:白血球、CRPは正常範囲内、HbA1cは5.2%。直接鏡検所見:左口角の鱗屑からの菌要素は陽性で、菌糸、胞子様菌要素を認めた。鱗屑の培養で
Candida albicansが分離。左口角の乳頭状の結節を生検。組織:HE染色で角質の増殖と不規則な表皮肥厚、コゴイ海綿状膿疱を認めた。真皮浅層には形質細胞、組織球、好中球からなる炎症細胞浸潤と血管拡張を認めた。PAS染色:角層内にPAS陽性の菌糸様、酵母様の菌要素を大量に認めた。真皮深層の小壊死巣にPAS陽性の菌糸を認めたが、肉芽腫反応は認められず、小壊死巣はケラチン染色で陽性。診断:
C albicansによるカンジダ性毛瘡と診断し、真皮深層の少量の菌要素は、毛包内の菌要素が毛包が破壊された結果、真皮内に落ち込んだものと考えた。治療は、結節にルリコナゾールを外用し、口腔内の清潔のため、アムホテリシンBシロップの内服を併用した。結節は治療開始11週の時点で消失。
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岩澤 真理, 外川 八英, 松江 弘之, 三上 襄
セッションID: P-069
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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症例1:77歳男性、千葉県香取市在住、農業従事者。既往歴は高血圧。農作業中に前額部に外傷を負った3週間後、同部位に圧痛を伴う紅色結節が出現し増数、増大した。左下顎部にも圧痛のあるリンパ節腫脹が出現し、発熱、悪寒を伴うため2007年5月当科を受診した。受診時、前額部、左眼囲、左下顎に多発する排膿を伴う軟らかい紅色結節を認め、病理組織学的に非特異的肉芽組織であった。膿汁の培養から
Nocardia brasiliensisが同定された。切開排膿処置とミノサイクリン内服4週間で著明に改善。ミノサイクリンの副作用のためST合剤に変更し14週間投与した。治療終了後8カ月現在再発を認めない。
症例2:79歳男性。千葉県四街道市在住、無職。既往歴は慢性甲状腺炎。2006年6月自転車で転倒し右前腕に挫創を受傷後、同部位に紅色結節が出現した。数か所の医療機関で切除術や軟膏治療をうけたが治癒せず、2007年5月当科を受診した。受診時4×2cmの排膿を伴う紅色結節で、病理組織学的に非特異的肉芽組織であった。膿汁の培養から
Nocardia brasiliensisを同定。ST合剤14週間内服にて瘢痕治癒した。治療終了後9カ月現在再発を認めない。
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松尾 陽子, 竹中 基, 佐藤 伸一, 西本 勝太郎
セッションID: P-070(SIV-01)
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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81歳,女性.ANCA関連血管炎にて2001年よりプレドニゾロン(15 mg),間質性肺炎にて2005年よりシクロホスファミド(50 mg)内服開始となっている.2004年2月,左下腿前面の角化性紅斑にて当科を初診.病理組織よりスポロトリコーシス疑いで,テルビナフィン125 mg/日内服にて加療受けるも,5月17日を最後に受診歴がなく,診断確定には至らなかった.2007年5月,2004年の初診時とほぼ部位も症状も一致する,痂皮を付す20 mm大の肉芽腫性局面が出現.近医にてスポロトリコーシス再燃の診断で,フルコナゾール50 mg/日内服,ネチコナゾール外用,温熱療法にて加療受けるも難治なため,2007年6月29日,当科紹介され受診した.痂皮のKOH直接顕微鏡所見にて褐色の菌要素を多数認め,黒色真菌症を疑った.診断・治療を兼ねて全摘生検を行った.病理組織所見はフェオヒフォミコーシスに一致し,培養の結果,原因菌は
Exophiala jeanselmeiと同定された.2004年の病理組織標本について再検討したところ,フェオヒフォミコーシスに一致した.その後,分離した菌株の遺伝子タイプによる解析にて,2006年に
E. jeanselmei complexの1菌種として新たに提唱された
E. xenobioticaと同定された.現在術後10ヶ月になるが再発はない.
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室 繭子, 海老原 睦仁, 槙村 浩一, 真田 妙子, 楠 俊雄, 坪井 良治
セッションID: P-071(SIV-06)
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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爪白癬をはじめとする爪真菌症の治療には抗真菌薬の内服療法が一般的であるが、無効例も少なからず経験する。今回我々は標準的内服治療が無効であった5症例につき、爪甲検体を用いてnested PCR法およびシークエンスを実施し、菌の検出および同定を行った。塩酸テルビナフィン内服無効症例3例のうち第1、第2症例では内服前の検体よりFusarium solani、とTrichophyton mentagrophytesがそれぞれ単独で検出された。また第3症例の内服後の爪検体からはCandida albicansが検出された。イトラコナゾール内服無効の第4症例では、内服後の爪検体よりAcremonium spp.が検出された。塩酸テルビナフィン、イトラコナゾールどちらの内服も無効であった第5症例ではTrichosporon spp.が検出された。
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宮崎 久美子, 大圃 詩子, 照井 正, 青山 一紀, 三上 襄
セッションID: P-072
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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80歳男性(東京都板橋区在住)。初診の約2ヶ月前に左前腕に虫刺されのような皮疹が出現し潰瘍となり増悪したため、平成19年4月17日当科紹介受診。生活歴:庭の植物の手入れ、風呂の薪の準備で手の擦過傷や刺傷が日常的にみられていた。現症:左前腕部屈側に径3 cm大までの不整形の潰瘍が11個線状に配列し、上腕部屈側に径1 cmと1.5 cmの発赤した皮下結節を2個認める。左腋窩リンパ節は触知せず。病理組織学的所見:潰瘍部・結節部ともに異物巨細胞が混在する慢性肉芽腫性炎症像。星芒体(-)。Grocott染色で菌要素(-)。一般細菌培養、抗酸菌培養:菌陰性。真菌学的所見:Sabouraud Dextrose Agar(SDA)培地で黒色のコロニー形成がみられ、1%Glucose添加Brain Heart Infusion(BHI)培地では25℃で菌糸状、35℃で酵母状の温度依存性二形性発育がみられた。さらに18SリボソームRNAをコードするDNA塩基配列の解析を行ったところNCBIデータベース上の
Sporothrix schenckiiの塩基配列と完全に一致した。以上より、本菌を
Sporothrix schenckiiと同定し、本症をリンパ管型スポロトリコーシスと診断した。イトラコナゾール(ITCZ)内服と温熱療法併用にて内服開始後4週間で潰瘍はすべて上皮化した。スポロトリコーシスの疫学、治療、分子生物学的同定法について文献的考察を加え報告する。
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吉田 和恵, 佐藤 友隆, 畑 康樹, 海老原 全, 天谷 雅行
セッションID: P-073
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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57歳、女。8年前にCastleman病と診断され、プレドニゾロン10-20 mg/日を内服継続、抗IL-6抗体を計5年間投与中。約4ヶ月前より臀部に皮下硬結が生じ徐々に増大してきたため当科を紹介受診した。左臀部に約3 cm大の可動性良好な皮下腫瘍を認めた。エコー上、左臀部皮下脂肪織内に嚢腫を認めたため粉瘤などを疑い、局麻下に全摘した。手術当日、両臀部に膿疱を伴う紅斑を認め、さらに術中に嚢腫内部より黄色膿汁の排泄を認めたため膿を培養した。病理組織学的所見: 摘出検体は主に皮下脂肪織内に存在し、リンパ球、形質細胞、組織球などの浸潤を伴った嚢腫様構造を呈し、嚢腫壁にGrocott染色で黒色を呈し、分節を有する真菌要素を認めた。菌学的所見:サブロー寒天培地27℃培養で発育はやや遅く、表面綿毛状で隆起し、白色から赤紫色を呈する集落が得られ、スライドカルチャーでは大分生子の産生に乏しく、菌糸の側壁に沿って単独性に産生される卵円形の小分生子を認め、起因菌を
Trichophyton rubrumと同定した。臀部膿疱の培養検体からも
T. rubrumを培養した。足、手爪からは
T.rubrumは検出されなかった。嚢腫様構造を呈した深在性白癬と診断し、イトラコナゾール100 mg/日内服を開始した。嚢腫様構造を呈した深在性白癬は過去の報告でもまれである。
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-1996年~2008年の本邦報告例の統計的観察-
福田 知雄, 五味 方樹
セッションID: P-074
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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今回我々は爪白癬を合併、ステロイド外用が増悪因子となったと考えられるケルスス禿瘡の2例を経験したので報告する.症例は13歳女児と、アトピー性皮膚炎および口唇ヘルペスの既往歴をもつ6歳男児.2例とも頭部に多発性の脱毛局面を認め、男児例では左耳後部と下顎に体部白癬を合併していた.病毛の真菌培養を行い、女児例では
Trichophyton rubrum、男児例では
T.mentagrophytesが発育同定された.共通項として、2例とも家族内に足白癬患者を有し、爪白癬を合併(女児例では左拇指爪甲の遠位側がケルスス禿瘡に約1年先行して白濁肥厚、男児例では左拇指爪甲の近位側に爪変形を認めた)、頭部の皮疹拡大前にステロイド外用をしていた.治療はイトラコナゾールの内服2カ月で、2例とも問題なく治癒した.
ケルスス禿瘡は頭部に生じる硬毛部深在性白癬と定義される疾患であり、過去に多数の報告がみられる.主な原因菌は
Microsporum canis、
M.gypceum、
T.rubrum、
T.mentagrophytesであるが、1960年代後半以降はペットからの感染による
M.canisの報告が増え、
M.canisが本症原因菌の多数を占めるようになった.
M.canisは現在なおケルスス禿瘡の原因菌の第1位であるが、近年
T.tonsuransなど他菌種の報告が増えてきた感がある.そこで我々は本症の最近の傾向を掴むべく、自験例の報告に伴い、併せて1996年~2008年のケルスス禿瘡本邦報告例をまとめ、統計学的検討を行った.
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徳久 弓恵
セッションID: P-075
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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症例:57歳、女、食品加工業勤務。既往歴・合併症:特記すべきこと無し。現症:左頬部の5×5ミリ大の角化を伴う茶褐色調の紅斑。現病歴:約1年前より左頬部に軽度のそう痒を伴う紅斑を認め、ステロイド外用剤を塗布し続けていたが治癒しないため当院受診した。尚同部位に外傷の既往はないが、勤務中にマスクで覆われる部位であった。病理組織検査:HE染色にて肉芽腫形成を認め、真皮浅層の巨細胞内に淡い茶色に染まる隔壁を有する菌糸を認めた。PAS染色でも巨細胞内に多数の菌糸・連鎖胞子を認めた。真菌学的検査:皮疹表面の痂皮をマイコセル培地にて培養し、黒色コロニーを分離した。菌種については検討中。
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栗原 雄一, 辻 学, 高原 正和, 松田 哲男, 古江 増隆, 本房 昭三, 松本 忠彦, 河崎 昌子
セッションID: P-076
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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77歳男性。合併症に肺気腫あり、プレドニン10mg/日を内服している。2007年夏、右手関節部に紅色局面が出現し、近医を受診。生検組織に、褐色の菌糸性菌要素が認められ、当科紹介。右手関節部に5×4cmの不整形の紅色局面を認め、黒色調の面皰様の病変を伴っていた。同部の生検組織より、黒色のコロニーの集落が分離された。スライドカルチャー及びDNA の ITS 領域の PCR-RFLP 解析を施行し、原因菌を〈I〉Exophiala jeanselmei〈/I〉と同定。本症例を同菌によるphaeohyphomycosisと診断した。病変部の肉眼的境界から5cm離して、切除し、植皮術を施行した。後療法として、イトラコナゾール100mg/日投与を行い、現在まで再発なく経過している。(436/600字)
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加賀 麻弥, 杉田 隆, 白木 祐美, 西川 朱實, 比留間 政太郎, 池田 志斈
セッションID: P-077
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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【はじめに】マラセチアは皮膚常在真菌であるが、特に顔面のアトピー性皮膚炎(AD)患者においては悪化因子の一つと考えられている。現在、マラセチア属には13種の菌種が知られているが、AD患者においてはM. globosaとM. restrictaが主要な皮膚構成菌種である。今回我々は、AD患者、特に顔面皮疹の重症度と菌叢に興味深い相関を見出したので報告する。【材料および方法】顔面に皮疹を有するAD患者(軽症21例、中等症18例、重症17例)および健常人(32例)を対象とした。オプサイトを用いてテープストリッピングを行い、それに付着したMalasseziaのDNAを抽出した。全Malassezia量および主要構成菌種量はreal-time PCRにより定量した。【結果および考察】全Malassezia量は、AD軽症から中等症群で健常人のそれとほぼ同量であったが、重症群において多かった。M. globosa およびM. restrictaの菌量は、健常人ではM. restrictaが優位であり、ADの重症度が上昇するに従いM. restrictaが減少しM. globosaが増加する傾向がみられた。重症群では両者がほぼ同量であった。全Malassezia量とその構成比率はAD顔面皮疹の重症度により異なることが示唆された。
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生駒 憲広, 松山 孝, 馬渕 智生, 田宮 紫穂, 小澤 明, 中村 直哉, 河崎 昌子, 望月 隆, 河野 通良
セッションID: P-078(SIV-02)
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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25歳、男。主訴は右膝~大腿にかけての皮疹。1999年に同部に転倒により外傷を受けた、その後瘢痕化したが、徐々に増大。2007年11月29日伊勢原協同病院皮膚科を受診し、同年12月5日当科紹介受診となった。初診時、右膝~大腿にかけて16×18cm大、表面疣状に隆起し、びらん、痂皮を伴う皮下結節が集塊状に板状の硬結を呈していた。同部のMRI所見では、皮膚から筋膜下まで及ぶ腫瘤を認めた。組織は真皮内に、好中球、リンパ球、類上皮細胞からなる膿瘍を認め、中心部にPASおよびグロコット染色にて染色される菌塊を認めた。皮膚組織からの培養では、サブロー・ブドウ糖寒天培地で灰白色~黒色の羊毛状のコロニーが得られた。分離菌は、rRNA遺伝子のITS領域およびD1D2領域の塩基配列についてBLAST検索を行ったところ、
Exophiala salmonisと99%の一致を見た。エコーおよびCT、MRIにて全身検索も施行したが、反応性と思われるリンパ節腫脹のみで他部位の感染所見は認められなかった。以上より
Exophiala salmonisによる黒色菌糸症と診断した。本人が外来での治療を強く希望したため、イトラコナゾール200mg/day内服にて治療中。
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畑 康樹, 山本 奈緒
セッションID: P-079
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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症例:58歳、女。既往歴:血小板減少性紫斑病。狭心症。現病歴:当科初診の1週間前より左踵に虫刺症様皮疹あり。3,4日前より同部が膿疱となりその後左下肢全体に発赤、腫脹がみられ圧痛を伴ってきたため当科初診の前日に近医受診。セフジニル(セフゾン)内服を1日処方されて当科紹介受診。現症:初診時、左踵に膿瘍を認め左下肢にリンパ管に沿って線状に発赤・熱感を認め、左鼠径部リンパ節腫脹も認められた。治療および経過:前医の血液検査では白血球2900、血小板43000と現病に伴う異常値を認め、CRPは1.34と軽度上昇を認めた。発熱などの全身症状を認めず、膿瘍の細菌培養を提出したうえで塩酸セフカペンピボキシル(フロモックス)内服と膿瘍部に抗生剤含有軟膏塗布を開始。3日目にはCRPは0.5、6日目には0.1と正常化し、臨床的にも左踵の膿瘍、リンパ管炎ともに改善を認め、治療を終了した。しかし、提出した細菌培養でノカルジアらしいコロニーの発育が認められた。初診から14日目に再診したがリンパ管炎の再燃なく左踵も瘢痕治癒していた。念のためST合剤を7日間投与し、画像による全身検索を行ったが内臓ノカルジア症の合併は認めなかった。分離された菌はNocardia brasiliensisと同定された。分離されたノカルジアが汚染菌だったとは考えにくく、セフェム系抗生剤の短期内服で軽快した膿瘍型皮膚ノカルジア症と考えたい。
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高橋 容子, 佐野 文子, 西村 和子, 亀井 克彦
セッションID: P-080
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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平成 18 年 4 月から 20 年 3 月までの 2 年間に皮膚糸状菌症で当皮膚科医院を受診したある中高一貫校相撲部員は 14 名で,この期間に在籍した部員 16 名中の約 88%に当たる.各人,臨床症状が出た時適宜受診しており,クラブ内または他校との試合や合宿を通じて感染を繰り返し,多くが複数回感染していた.病型は体部白癬が最も多く,股部白癬,頭部白癬もみられた.診断は直接鏡検と真菌培養,一部は遺伝子解析で行った.分離菌は
Trichophyton tonsurans が最も多く,
Epidermophyton floccosum が 2 名の股部白癬から分離された.1 名の中学生は胸部の白癬から
Trichophyton tonsurans が,股部白癬から
Epidermophyton floccosum が分離され,腹部のまわしの当たる部位に一致して多発した紅斑落屑局面からは,鱗屑の直接鏡検で多数の細い菌糸を認め,培養で淡褐色の綿様のコロニーを形成し,集落形態,分生子形成状況および ITS 領域の遺伝子解析から
Engyodontium album と同定されたが,本菌種の病原的意義は確定できなかった.近年,半裸で行う格闘技においては
Trichophyton tonsurans の流行が周知であるが,その他の原因菌による皮膚糸状菌症も念頭に入れて診断,治療を行う必要性があると思われた.
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李 民, 早出 恵里, 小林 めぐみ, 助川 のぞみ, 佐久間 朋, 清 佳浩
セッションID: P-081
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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71歳男性。2004年頃より右下腿の浮腫が出現。近医にて痂皮中に褐色の菌要素を認めたため、黒色真菌症を疑われ、ゼフナート、アムホテリシンB軟膏を外用したが、症状改善なく、2007年5月23日当科を紹介された。初診時、右下腿は全周性に発赤、腫脹し、象皮様を呈していた。下腿中央~足背にかけて黒褐色調の鱗屑と痂皮が付着し、左下腿下方1/2には色素沈着がみられた。直接検鏡陰性(真菌培養も陰性)で、右下腿うっ滞性症候群に伴うリンパ浮腫により生じた象皮症と考え、抗生剤、プレタール2錠/日開始した。2007年11月頃右下腿に潰瘍が出現し、徐々に拡大、最大5cmの潰瘍を形成した。2008年2月13日安静目的にて当科入院した。真菌検鏡陽性で、培養からカンジダが同定された。乳頭腫状変化部分から生検した組織では乳頭腫症、角層に真菌陽性であった。ケトコナゾール(ニゾラール)クリーム外用を併用した。潰瘍部は入院後著明に改善した。若干文献を加えて報告する。
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永井 美貴, 青山 裕美, 北島 康雄
セッションID: P-082
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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68歳、男。初診の3ヶ月前、古い材木により擦過傷を負い皮膚潰瘍ができた。近医で縫縮術を受けたが、離解し、上向性に紅色結節が新生したため、木沢記念病院皮膚科を受診した。初診時、左前腕に鶏卵大の浸潤を触れる紅斑の中央に一部痂皮を伴う不整形な潰瘍と、リンパ管の走行に一致して、爪甲大の潰瘍と紅色結節あり、深在性真菌症を疑った。組織所見:HE染色で真皮深層に好中球、リンパ球を主体とする細胞浸潤を認めた。PAS染色およびグロコット染色で円形の胞子および菌糸あり。真菌学的所見:サブロー培地で黒色の表面絨毛状の集落、マイコセル培地で湿性で灰白色調絨毛状のコロニーを観察。スライドカルチャー:細長く伸びる菌糸と分生子丙先端に花弁状に配列する無色ごま粒状の分生子(無色分生子)のほか、大きめで球形の褐色硬膜細胞(褐色分生子)が菌糸側壁に配列する像あり。非定型抗酸菌培養:陰性。以上よりリンパ型スポロトリコーシスと診断。ヨウ化カリウム0.5g/日内服とカイロによる温熱療法を開始。内服開始後7週間の現在、潰瘍は徐々に上皮化縮小傾向にある。分離菌の薬剤感受性(MIC):ITCZ>6, AMPH 2, 5-FG >64, FLCZ >64, MCZ 2, MCFG >16μg/mlと高値を示した。本症例より分離された株は、治療前から薬剤耐性であり、今後もヨウ化カリウム内服治療を続行する予定である。
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野村 昌代, 前田 学
セッションID: P-083
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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症例は81歳男性。2000年より分類不能型の膠原病と間質性肺炎を指摘され、プレドニン内服を中心に種々の免疫抑制治療を受けていた。2006頃はプレドニン10~15mg/day+MTX 6mg/weekにて状態は安定していた。2006.2頃竹串を誤って右手背にさしたが出血・疼痛なくそのまま放置していた。2006.04頃右手背部位に水疱が集ぞくして出現し序序に拡大していくため、2006.06本人が皮膚科を受診した。皮膚科初診時には、右手背部位全体に大小の皮下結節が出現していた。深在性真菌症・細菌性膿瘍・皮膚型結核・皮膚悪性腫瘍を考え、皮膚生検と細菌・真菌培養に提出した。病理組織検査にて、PAS強陽性・Guracott染色にて黒色に染まる菌糸を確認し、巨大培養では黒色ビロード様で成長の遅い菌体を検出した。DNA検査にて、Exophiala jeanselmeiと同定された。イトリゾール内服、温熱療法、ヨードカリ内服等種々工夫して治療に当たったが、効果なく治療開始後約1年で死亡された。高齢者における皮膚深在性真菌症の治療の工夫について考察した。
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鈴木 陽子, 冨田 浩一, 菅谷 圭子, 安澤 数史
セッションID: P-084
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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73歳男性。既往歴:痔瘻。高血圧治療中。農業に従事,温室野菜を栽培している。現病歴:2007年12月中旬に右第5指に温室の杭のとげを刺し,小さな傷ができて難治であった。初診の約1週間前から右前腕に自覚症の無い赤く腫れた皮疹を生じ,近医を受診し,翌日の2008年3月11日当科へ紹介された。現症:右前腕伸側に肉芽腫様紅色局面を認め,多数の小潰瘍を伴い膿汁排出がみられた。周囲に小結節が数個みられた。右第5指にはびらん痂皮を伴う小紅斑局面を認めた。検査所見:前腕の病理組織では真皮に膿瘍形成性肉芽腫を認め,多核巨細胞,貪食細胞内に多数の酵母型真菌要素がみられた。前腕病巣部の膿汁と組織および第5指の痂皮の真菌培養では,いずれからもSporothrix schenckiiを分離同定した。本分離菌株はミトコンドリアDNA制限酵素切断パターン分析結果では,S. schenckiiのタイプ5と同定。スポロトリキン反応強陽性(15x17/25x30mm)。血液検査所見では好中球貪食能低下がみられた。治療と経過:病理所見から深在性真菌症と診断し,初めテルビナフィン,ボリコナゾールを短期内服投与したが,菌種同定後ヨードカリに変更した。変更後,右上肢近位側に向かって結節性病変が多発,病型はリンパ管型と診断。1ヶ月投与後も培養で菌が分離され皮疹の数も増したため,ボリコナゾール内服に戻したところ,急速に潰瘍の上皮化と結節の縮小がみられ,経過観察中である。
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法木 左近, 若本 裕晶, 宮本 真浩, 石田 久哉, 梶谷 和生
セッションID: P-085(SIV-05)
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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【緒言】我々は白癬菌に対するモノクローナル抗体を作製し、それを用いたサンドイッチELISA法による白癬診断の有用性を、さらにイムノクロマトグラフィー法による爪白癬診断の有用性を報告してきた(第47回・第48回・第51回本学会)。今までの抗原抽出法は加熱によっていたが、今回非加熱法について検討したので報告する。また、動物白癬の簡易診断のため基礎的研究についても報告する。【非加熱抽出】抗原抽出液として1%~10%の各種界面活性剤を検討した。対照として、加熱(100℃、10分)および蒸留水のみを用いた。KOH法にて菌の存在が確認されている患者爪を細切し、均等に分割し上述の抽出液で20分室温で振盪した。イムノクロマトグラフィー法などにより抽出液の白癬菌抗原の有無を検討した。【動物体毛】
Trichophyton mentagrophytesをまいた培地上にネコおよびイヌの体毛を静置し、3日後菌糸を付着させた体毛を界面活性剤法(NP-40)・イムノクロマトグラフィー法で検討した。対照として菌糸の付着のない体毛を用いた。【結果】白癬菌抗原の抽出は、非イオン性界面活性剤であるNP-40, TritonX-100が加熱法と同等の結果を得た。非加熱抽出法により安全性・作業性が向上することが期待できる。また、ネコ・イヌの体毛の抽出物には抗体と交叉反応はなく、動物の白癬の診断に応用が可能と思われた。
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吉田 幸恵
セッションID: P-086
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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当科において爪白癬にイトラコナゾールパルス療法を行った中で、70歳以上の爪白癬患者30例において効果と安全性の検討を行った。無効例はなく、内服終了時に全例で爪混濁比の減少を認めた。投与後6か月以上の経過で、爪白癬の再燃あるいは再感染の兆候あり再投与した症例もあるが、概して患者の治療に対する満足度は高く、良好な治療効果を得た。
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常深 祐一郎, 服部 尚子, 金子 健彦
セッションID: P-087
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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背景:趾爪白癬に対するイトラコナゾールパルス療法(以下、パルス療法)では、400mg/dayを1週間内服、3週間休薬を3回繰り返す(これを1サイクルと定義する)。この方法でパルス療法開始6ヶ月後には約80%の高い有効率が得られる。しかし、全例で混濁比が完全に0に至るわけではなく、途中で混濁比の減少が停止する症例もある。目的・方法:趾爪白癬に対し、パルス療法を1サイクル施行し、6ヶ月以上経過したのち、2か月連続して混濁比の減少が停止した症例に2サイクル目を行い、再び混濁比が減少するかを検討する。結果:(1)混濁比の減少が停止した症例を経過観察すると、混濁比が増加するものがみられた。(2)混濁比の減少が停止または混濁比が再増加し始めた症例に、2サイクル目を行うと混濁比は再び減少した。(3)2サイクル目により有害事象が増加することはなかった。考察: 2サイクル目により全例で混濁比が再度減少したことから、混濁比の減少が停止するのは、耐性化したわけではなく、爪中の薬物濃度が低下し、白癬菌の増殖が再開したためと考える。2サイクル目により爪中の薬物濃度を再度上昇させることにより、再び改善させることができると判断した。爪中濃度が低下したまま経過観察すると再び混濁比が増加することがあるため、混濁比の減少が停止した症例で、1サイクル目で効果が確認されている同薬を用い2サイクル目を行うことは治癒に向けた有用な手段であると考える。
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常深 祐一郎
セッションID: P-088
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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足白癬治療では十分な期間外用を継続することが重要であり、患者にとって使用しやすい剤型を処方することが大切である。ゼフナート外用液は、乾きの早さが患者に好評である印象を持ったため、他の抗真菌薬の液剤(以下、他の液剤)との使用感の患者評価の比較を行った。足白癬患者にゼフナート外用液と他の液剤を左右の足で塗り分けてもらい、使用感を評価してもらったところ、23人中、「ゼフナート外用液の方が使用感がよい」が14人、「どちらも変わらない」が3人、「他の液剤の方がよい」が3人、「液剤よりクリーム剤がよい」が3人、であった。ゼフナート外用液の使用感がよい理由として、ほぼ全員がはやく乾いてべたつかないことをあげた。別の実験でゼフナート外用液と他の液剤の蒸発速度を比較したところ、ゼフナート外用液が最もはやいことが判明した。このことは、患者がはやく乾くと感じていることと一致する。今回の検討より、はやく乾くことが使用感の良さにつながっていると考えられる。本剤は特有のにおいを有し、においを指摘する感想もあったが、このために使用できなかったという患者はおらず、許容範囲内と判断した。継続外用のコンプライアンス向上には、患者にとって使用しやすい剤型が大切で、その際ゼフナート外用液は有用な選択肢となりうる。(現在さらに症例を蓄積して検討中である。)
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島村 剛, 久保田 信雄, 長坂 沙織, 鈴木 琢, 向井 秀樹, 渋谷 和俊
セッションID: P-089
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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爪白癬モデルに関して、爪表面の感染モデルは報告があるものの爪深部に菌を感染させた爪白癬モデルは殆ど無く、また爪表面の加工や長期の感染期間が必要である等、モデル作製には課題が多い。そこで、ウサギを用いて様々な感染条件(菌の形態、感染期間、感染後の放置期間)下において、爪を組織学的に評価し爪白癬動物モデル作製方法について検討した。
日本白色種雄性ウサギを用いて、ステロイド製剤による免疫抑制状態の下、
Trichophyton mentagrophytes(TIMM2789)を爪及び爪と皮膚の境界部に感染させた。感染終了後、一定期間放置して爪の組織標本を作製し、PAS染色にて組織学的に評価を行った。これらの操作に関して、菌の形態(arthroconidia、microconidia)、感染期間(2, 4, 6週間)および放置期間(0, 2, 4, 6週間)を検討し、感染率向上も目指した。
その結果、microconidiaを用いた2週間以上の感染期間および2週間以上の放置期間では、爪甲側から爪床側の爪中に白癬菌が確認され、感染率も86%以上となった。また、放置期間に依存した菌の局在変化が認められるとともに、爪中菌数の増加も示唆された。
よって、今回作製したウサギ爪白癬モデルは、簡便かつ短期間で作製が可能であり、爪中の菌の局在も爪深部で確認され、爪白癬動物モデルとしての有用性が示唆された。
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山田 剛, 槇村 浩一, 安部 茂
セッションID: P-090(SIV-07)
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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発表者らは、白癬菌の感染メカニズムを分子レベルで解明することを目標に、本菌の遺伝子操作を行う上で必要となる効率的な形質転換および遺伝子破壊システムの構築を進めてきた。他の糸状菌において高い形質転換効率が報告されているアグロバクテリウム法(ATMT)を用いて、白癬の主要な起因菌の一つである
Trichophyton mentagrophytesの形質転換(random integration)を試み、1 x 10
7個の小分生子当たり200以上の効率を有する形質転換システムの構築に成功した。また、本システムを利用して相同組換えを介した遺伝子破壊株の作出に成功した。ただし、遺伝子破壊の効率は10%程度で、ATMTを用いた他の糸状菌(
Aspergillus fumigatusなど)のそれに比べ低かった。そこで発表者らは、
T. mentagrophytesにおける遺伝子破壊効率を改善するために、相同組換えの効率に深く関わっている非相同末端結合機構(non-homologous end-joining; NHEJ)の重要な因子の一つであるKu70-Ku80ヘテロダイマーに着目し、Ku80のオーソログをコードする遺伝子(
Tmku80)の破壊株を作出した。その後、本破壊株を用いて、二つの遺伝子座に関する遺伝子破壊を試みたところ、共にその効率が改善された。したがって、本研究で作出した
Tmku80破壊株は、
T. mentagrophytesの遺伝子操作を効率良く行う上で役立つと考えられる。
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津田 雅世, 笠井 正志, 栗嶋 クララ
セッションID: P-091
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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【はじめに】MCFGはFluconazole(FLCZ)に耐性または低感受性のカンジダ属に対しても優れた活性を示す抗真菌剤で小児への適応が認められている。一方、
C.parapsilosisはMCFGに対して低感受性という報告もあり、小児での全身性カンジダ症に対するempiric therapyに明確な指標がない状況である。今回我々は
C.parapsilosis菌血症の小児例に対してempiric therapyとしてMCFGを投与し、良好な経過を得たので報告する。
【症例】14歳女児、脳性麻痺、精神発達遅滞あり。栄養障害に対して中心静脈カテーテルを留置し高カロリー輸液施行していた。【経過】当院入院中、X年1月8日より38℃台の発熱を認め、Cefatazidime、Vancomycinの投与の開始後も解熱せず、呼吸状態が悪化し1月10日にICU入室。ARDS、severe sepsisを認め集中治療を行った。中心静脈カテーテルを抜去し、1月8日の血液培養にてカンジダ属が陽性でMCFG 6mg/kgを投開始した。後日
C.parapsilosisと判明しカテーテル先端培養からも同菌が検出。1月13日に血液培養が陰性となり、
C.parapsilosisの感受性判明後にF-FLCZに変更した。1月20日頃より呼吸状態は改善し一般病棟へ転棟した。
【考察】小児では抗真菌剤の保険適応は限定されている(2007年ではMCFGとL-AMPのみ)。MCFGは
C.parapsilosisに対して感受性が低いという報告もあるが、十分量の投与にて小児重症全身性カンジダ血症のempiric therapyとして使用可能と思われる。
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栗嶋 クララ, 笠井 正志, 津田 雅世
セッションID: P-092(SII-03)
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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【背景】近年、NICU滞在中に真菌感染にて死亡する例が報告されている。その一方で新生児領域における真菌のサーベイランスは不明である。そこで今回我々は、長野県立こども病院(以下、当院)NICUにおける真菌検出例の臨床的検討を行ったので報告する。
【対象と方法】2003年1月~2005年12月を対象期間とした。当院NICUでは入室時と週1回鼻腔培養と感染症を主治医が疑った際の培養を採取している。対象検体のうち、真菌が検出された177検体(51症例)について臨床的に後方視的に検討した。
【結果】検出真菌はCandida属のみで、その内訳は
C.albicans 163検体(92%)、non-albicansでは、
C.parapsilosis 10検体(5.6%)、
C.glabrata 4検体(2.3%)であった。検出部位は血液培養4検体(同一患者、すべて
C.albicans)、髄液1検体(
C.albicans )、PIラインカテ先1検体(
C.albicans )、尿培養14検体、その他の多くは呼吸器系と糞便の検体であった。入院から最初に真菌検出までの日数は平均16.9日(0日~141日)。検出例で、抗菌薬が使用されていたのは38症例(74%)、ステロイド剤が使用されていたのは5症例(9.8%)であった。抗真菌剤を使用されたのは18症例(35%)。死亡は3例(5.9%)であった。
【考察】当院NICUでは、
C.albicans の検出が多く、また血液や髄液検体からも
C.albicans が検出されていることから、NICUにおいて抗真菌薬の初期選択薬はfluconazoleでよいと思われる。
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三原 智, 泉川 公一, 高園 貴弘, 小佐井 康介, 西條 知見, 中村 茂樹, 栗原 慎太郎, 山本 和子, 今村 圭文, 関 雅文, ...
セッションID: P-093
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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【背景】慢性肺アスペルギルス症(CPA)の診断には臨床症状、画像所見、培養検査のほか、血清アスペルギルスガラクトマンナン抗原検査などを用い総合的に行うが、血清抗原検査は偽陽性例が多く課題となっている。今回、気管支洗浄液または気管支肺胞洗浄液(BALF)中のアスペルギルスガラクトマンナン抗原検査の臨床的有用性について検討した。【対象】H18年12月~H19年12月までに血清抗原価とBALF抗原価を測定した41症例(CPA 6例)。【結果】CPA症例では、血清抗原価の平均値は1.759、BALF中の抗原価均値は7.79であった。非CPA症例(35例)では、血清抗原価の平均値は、0.997で1.5以上が5例、BALF中の抗原価の平均値は1.037で1.5以上が4例であった。血清抗原価のcut off値を0.5(1.5)と設定した場合、感度100%(50%)、特異度37.1%(85.7%)であった。それに対しBALF抗原価のcut off値を0.5(1.5)と設定した場合では、感度66.6%(66.6%)、特異度71.4%(88.5%)となり、BALF抗原測定の有用性が示唆された。また、BALF抗原価高値の症例については、臨床背景も併せて報告する。
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渡部 俊彦, 小牧 奈未, 上野 将明, 小笠原 綾子, 三上 健, 松本 達二, 佐藤 則文
セッションID: P-094
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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【目的】Hinokitiol はヒバ等から抽出される精油成分で、抗菌活性を示す事が報告されているが、抗真菌活性に付いての解明は充分とは言えず、
C. albicans の付着性に及ぼす作用は明らかにされていない。本研究では、Hinokitiol の
C. albicans 付着性に対する効果と作用メカニズムについて解析を行ったので報告する。【方法】
C. albicans NIH-A207株と Hinokitiol をヒト口腔上皮細胞または歯の構成成分であるヒドロキシアパタイトとともに培養し、口腔上皮細胞およびヒドロキシアパタイトへの付着性について検討した。また、
C. albicans の接着因子mRNA発現量はリアルタイムPCR法を用いて測定した。【結果・考察】
C. albicans の口腔上皮細胞およびヒドロキシアパタイトへの付着性は、Hinokitiol 存在下で抑制されていた。Hinokitiol で処理した
C. albicans では、 付着因子のmRNA 発現が低下しており、これが接着性低下の要因と推察された。 以上の結果から、ヒノキチオールは、口腔内カンジダ感染の予防に有効な成分となることが明らかになった。
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丸山 奈保, 胡 偉民, 滝沢 登志雄, 石橋 弘子, 久島 達也, 安部 茂
セッションID: P-095
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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【目的】
すでに、私達は補剤の真菌感染防御効果について検討し、十全大補湯経口投与が深在性カンジダ症モデルである静脈内感染マウスに有効であり、その作用メカニズムとして低下したサイトカイン産生能及び好中球数の回復が関与することを発表してきた。今回、粘膜感染に対する十全大補湯の効果を明らかにすることを目的とし、咽頭及び膣カンジダ症マウスモデルを用いその有効性を検討した。
【方法】
1.咽頭カンジダ症:安静状態下で
Candida albicans TIMM2640をICRマウス咽頭部に接種した。接種20時間後から、吸入ステロイド剤を2回/日、咽頭部にエアゾール噴霧した。十全大補湯は飲料水に懸濁し自由接種させた(day0~4)。Day4に咽頭部の感染状況をスコア化し、咽頭部ホモジェネイトの生菌数を測定した。
2.膣カンジダ症:Day-3, 1にエストラジオール及びシクロホスファミドを投与したBALB/cマウスに、TIMM2640を膣内接種した(day0)。Day4, 7に膣を生理食塩水で洗浄し、生菌数を測定した。十全大補湯は飲料水に懸濁し自由接種させた(day-4~7)。
【結果と考察】
1.十全大補湯(0.5-2.0g/kg)投与により、生菌数及び症状スコアが有意に低下し、頚部リンパ節細胞のIFN-γ量の増加傾向が認められた。
2.十全大補湯(0.5g/kg)投与により膣洗浄液中の生菌数が低下し、末梢血中の好中球の割合が増加した。
以上より、十全大補湯は粘膜カンジダ症に対しても予防・治療効果を発揮する可能性が示された。
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上田 成一, 江上 徹也
セッションID: P-096
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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【目的】 2004年から2006年に経験した両耳性外耳道真菌症3例の菌学的検索および市販抗真菌剤;アスタット,メンタックス,ニゾラール,ルリコン,ペキロン,ゼフナートに対する感受性試験結果について報告する.
【菌学】 採取した試料は前報1)の方法で分離・同定した.その結果,1例目では右耳から
Aspergillus niger,左耳から
A. flavusが,また,2例目と3例目では両耳とも同種が分離され,それぞれ
A. sydowii,
A. oryzaeと同定された.
【薬剤感受性】 供試菌株には前述の6株と当研究室で保存している
A. terreus 5株,合計11株用いた.定法により胞子懸濁液を作成し,薬剤濃度を0.1~100μg/mLに調製したRPMI1640培地に接種し,25℃,4日間培養後,菌糸の発育を認めなかった最小濃度を最小発育阻止濃度(MIC)とした.また,MIC判定後,マイクロプレートを3000rpm,10分遠心して上清を除き,同量のRPMI培地で置換した.この操作を3回繰り返し,25℃,6日間培養した後,菌糸の発育を認めなかった最小濃度を最小殺菌濃度(MBC)とした.5菌種に対するMICは,アスタット≦0.1,メンタックス0.2-6.3,ニゾラール≦0.1-3.1,ルリコン≦0.1,ペキロン>100,ゼフナート0.8->100であった.また,MBCはアスタット≦0.1-3.1,メンタックス6.3-12.5,ニゾラール6.3->100,ルリコン≦0.1,ペキロン>100,ゼフナート3.1->100であった.
1)野口美和,上田成一,江上徹也:耳喉頭頸75(7), 444-450, 2003
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金子 幸弘, 大野 秀明, 今村 圭文, 河野 茂, 宮崎 義継
セッションID: P-097
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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ミカファンジン(MCFG)をベースとした抗真菌薬の併用療法について、
Candida albicansのバイオフィルムに対する効果を検討したので報告する。[方法]菌株は、SC5314株を用いた。MCFG+ボリコナゾール(VRCZ)、MCFG+アンホテリシンB (AMPH)の組み合わせで、96ウェルチェッカーボード(CB)を作成した。遊離菌は、10
4CFU/mlの菌をCBに接種した。バイオフィルムは、3mm大のシリコンディスク上に作成し、ディスクごとCBに移した。遊離菌、バイオフィルムともCB内で24時間培養後、生菌数をXTT還元反応で評価し、MICおよびFICインデックスを計算した。[結果]MCFG、VRCZ、AMPHの遊離菌に対するMICは、0.031、0.016、0.5μg/mlで、FICインデックスは MCFG+VCZ、MCFG+AMPHともに1で相加的であった。MCFG、VRCZ、AMPHのバイオフィルムに対するMICはそれぞれ、0.25、>8、2μg/mlで、FICインデックスは、MCFG+AMPHが1で相加的、MCFG+VCZは>2以上で拮抗的であった。[考察]MCFGとAMPHはバイオフィルムに対しても有効であったのに対し、VRCZはバイオフィルムには無効であった。MCFG+AMPHはバイオフィルムに対しても有効であったが、MCFG+VRCZはバイオフィルムに対しては拮抗的であった。特に、VRCZ存在下でのMCFGのFICは32μg/ml以上となり、VRCZがMCFGの効果を低下させた。バイオフィルム関連の感染症に対する併用療法については、これらのことを考慮し、注意する必要があると思われた。
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槇村 浩一, 佐藤 一朗, 山田 剛, 西山 彌生, 安部 茂
セッションID: P-098
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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【背景と目的】今後本格的な利用が期待される宇宙ステーション(ISS)においても船内の真菌を始めとした微生物叢を排除することは困難であり、様々なストレスにさらされた乗員に健康障害を惹起する可能性が危惧されている。本研究では、ISS等の人工的環境において、これら微生物叢を管理する目的で非培養系による真菌叢評価法の研究開発を行った。【方法】菌叢評価法としては、
Candida albicans及び環境真菌を対象としてβ-グルカン、ペプチドグリカン、エンドトキシンおよびATP等の菌体成分検出キットを用いた定量的検出系を検討した。【結果と考察】β-グルカン等(エンドトキシンは除く)の測定値は菌数と高い相関が認められ、短時間で高感度に菌数を推定することができた。よってこれらを測定することによって環境中および身体における真菌の汚染状況を把握することが可能になることが示唆される。ここで開発される技術は宇宙に限らず、地上におけるクリーンルームを管理し、感染例の診断と治療の指標とする技術にも直接応用できるものと期待する。尚、本研究の一部は日本宇宙フォーラム・JAXA 第9回宇宙環境利用に関する公募地上研究(「きぼう」利用重点課題)および「きぼう」船内実験室第2期利用候補テーマによるものである。 [会員外共同研究者:帝京大学・医真菌研究センター 石原由美子]
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今村 圭文, 関 雅文, 泉川 公一, 掛屋 弘, 山本 善裕, 柳原 克紀, 田代 隆良, 河野 茂
セッションID: P-099
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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[背景]フサリウムはコンタクトレンズ (CL) 関連角膜炎を引き起こす主要な真菌である。2005年から2006年に北米でフサリウム性角膜炎のアウトブレイクが発生したが、この原因としてフサリウムのバイオフィルム (BF) 形成の関与が指摘された。そこで我々はCL上のフサリウム性BFモデルを新たに作成し、真菌BFに対するCL洗浄液の効果についても検討した。[材料と方法]臨床分離株
Fusarium solani MRL8609株をサブロー液体培地(SDB)で40時間培養し、分生子を分離・洗浄し、1.0 × 10
6 conidia/mlに調整した。市販のCL (6種類) をこの菌液に90分間浸けレンズ表面に分生子を接着させ、SDB内で37℃で48時間培養しBFを形成させた。BFの量的評価はXTTアッセイで、質的評価は共焦点顕微鏡を用いて行った。またCL洗浄液のBFに対する殺菌効果についても検討した。[結果]フサリウムはlotrafilcon A CLで最もBFを形成し、逆にbarafilcon A CLでは最も形成しなかった。CL消毒液は浮遊菌に対しては良好な殺菌能を呈したが、BF菌に対しては殺菌能を示す事が出来なかった。[結論]フサリウムBFはCL消毒液に対して強い耐性を有しており、BF形成がCL関連角膜炎の原因の一つである可能性が示唆された。このモデルを用いる事で、フサリウム性BFの病原性の解明やCL消毒薬の開発が進展する事が期待される。(会員外共同研究者 Case Western Reserve大学 Mahmoud Ghannoum)
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佐野 文子, 高橋 英雄, 村田 佳輝, 亀井 克彦
セッションID: P-100
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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ヒストプラズマ症(ヒ症)は輸入真菌症の一つとして取り扱われてきた.近年,ヒトと動物で国内感染症例が相次いで報告されて以来,その原因菌である
Histoplasma capsulatum は 国内に生息する唯一の高度病原性真菌の可能性が指摘されている.さらに,ヒトおよびイヌの国内感染例から検出した遺伝子はウマの仮性皮疽の原因である
H. capsulatum var.
farciminosum と近縁なため,接触感染の危険が示唆されている.一方,ヒ症に関する一般獣医師の認識度は不明である.そこで小動物臨床獣医師を対象にメールまたはファックスによる任意転送方式のアンケート調査を行ったところ 257 通(母数不明,小動物臨床従事者約 13,200 名の 1.9%に相当)の回答を得た.その結果,認識率はヒ症で約 75%と高かったが,仮性皮疽では約 50%,仮性皮疽が家伝法で届出伝染病であることは 30%以下,ヒ症と仮性皮疽が広義に同じ疾病であるとの認識は 24%にとどまった.またヒ症を法律で管理する必要性については 34%が必要ありと答えていた.しかし,国内感染によりヒトが発症したことについての認識は 15%,動物については 21%であり,国内発症例に対する認識は低いことが判明し,見逃されている症例が多く存在する可能性が推測された.
【謝辞】調査に御協力いただいた獣医師の方々に厚く御礼申し上げます.また本研究は厚生労働省新興・再興感染症研究事業の補助により行われました.
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上野 将明, 渡辺 宏美, 倉内 寿孝, 渡部 俊彦, 小笠原 綾子, 三上 健, 松本 達二
セッションID: P-101
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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【目的】
C. albicansが人体に対し病原性を発揮する際、菌糸形成能力やプロテアーゼなどの酵素生成能力が関与することが報告されている。
C. albicansの増殖形態は培養温度によって影響されていることから、増殖シグナルもまた制御されることが予想されるが詳細は明らかになっていない。そこで、本研究では外部環境中の温度変化による
C. albicans増殖シグナルの変化について解析を行った。【方法】サブロー培地中で
C. albicansを27℃又は37℃で培養を行い、増殖速度、菌体内ATP量、cAMP量、及び増殖に関与するタンパク質のmRNA発現量を測定した。【結果及び考察】
C. albicansの増殖速度を吸光度620nmで測定したところ、温度条件が37℃と比較して27℃の方が増殖しやすいことが確認された。菌体内ATP、cAMP量、mRNA発現量を測定したところ培養温度が37℃において、ATP量の増加、mRNAの発現の増加及びcAMP量の増加が認められた。以上の結果から、27℃と比較して37℃ではアデニレートサイクラーゼを介した増殖シグナルが活性化されており、ATPからcAMPの変換が効率よく行われていることが推察され、このことが増殖の促進の要因となっていることが示唆された。
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田嶋 磨美, 寶田 英子, 加藤 雪彦, 坪井 良治, 財満 信次
セッションID: P-102
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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21歳、男性。海洋学部学生。2007年12月頃より、右手関節外側に自覚症状を欠く紅色丘疹出現、2008年4月25日近医受診し4月30日当科紹介となる。右手関節外側に紅色角化性小結節が3つ癒合し1.2×1.5cmの局面を形成する。病理組織学的に非乾酪性類上皮肉芽腫の所見。Ziel-Neelsen、PAS、Grocotto染色では菌要素認めず。ツベルクリン反応陽性38×32mm(硬結20×18mm)、ガフキー陰性。サブロー培地による真菌培養は陰性。小川培地による抗酸菌培養にて4週目でコロニー1個陽性(32℃発育、37℃陰性)、現在菌種同定中である。PCR :
M. avium - intracellulare陰性。治療は温熱療法にて経過観察中である。
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山口 正視, 大楠 美佐子, 川本 進
セッションID: P-103
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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ヒトの身体を構成する細胞の数は約60兆、脳細胞の数は150億であるといわれている。しかし、例えば一個の酵母細胞に何個のリボソームが存在するのか、また、小胞体はどれだけの体積を占め、どのように分布しているのかなどは、わかっていない。「ストラクトーム」とは、structure と -ome から成る造語であり、電子顕微鏡レベルにおける細胞の定量的、三次元的全構造情報を意味する新しい概念である[1]。我々は、まず、病原黒色酵母エクソフィアラを材料として、細胞の定量的、三次元的解析を行った。その結果、たとえば、細胞壁は、体積の22%、ミトコンドリアは10%、核は7%を占めるが、小胞体はわずかに0.2%の体積を占めるにすぎないことがわかった。また、ミトコンドリアは、一細胞中に17~52個存在すること、リボソームは20万個存在することなどがわかった[2]。本研究では、さらに、サッカロミセス細胞を、急速凍結・置換固定法により、樹脂に包埋し、連続超薄切片法により、写真撮影を行い、すべての細胞成分のストラクトーム解析を目指す。文献 1) Yamaguchi M: Current Trends in Microbiology 2: 1-12, 2006. 2) Biswas SK, Yamaguchi M, et al: J Electron Microsc 52: 133-143, 2003.
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大楠 美佐子, 大畑 美穂子, 清水 公徳, 川本 進
セッションID: P-104
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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病原性酵母
C. neoformansは細胞壁周囲に主要な病原因子である莢膜を持つ。莢膜を持たない変異株の病原性は低く、また莢膜産生に関与する遺伝子が報告されている。本菌は継代培養中にコロニー形態などの表現形が変化することがあることも知られている。我々は、薄い莢膜を持つ光沢のないコロニーを形成する株を継代培養中に、光沢の強いコロニーが出現することを見出し、これらは厚い莢膜を持つことを確認した。本研究では莢膜の厚さが本菌の性状や病原性に与える影響について検討を行った。3株の親株から、光沢の強いコロニーを単コロニー分離したところ、いずれも厚莢膜株であった。これらの倍数化時間、メラニン合成能、薬剤感受性を調べた。また、このうちの2株についてマウス接種試験による病原性の比較を行った。倍数化時間は厚莢膜株の方が親株に比べ、長い傾向が認められた。またマウス接種試験では、接種菌数が少ない場合に、厚莢膜株の病原性に低下が認められた。感染したマウス脳より回収した
C. neoformansを顕微鏡で観察したところ、厚莢膜株を接種したマウスには、巨大化し、異常に大きな液胞を持つ菌が多数存在した。厚莢膜株は生体内で増殖に時間を要する事、また光顕観察結果から細胞そのものが脆弱になっている事が考えられた。また、さらに今回は光沢の強いコロニーを作る株から、光沢の少ないコロニーを分離し、各性状、病原性について検討を加えたので報告する。
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清水 公徳, 李 皓曼, 吉見 啓, 田中 千尋, 阿部 敬悦, 渡辺 哲, 亀井 克彦, 山口 正視, 川本 進
セッションID: P-105(SIII-01)
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼ(HHK) や応答レギュレータータンパク質 (RR) は二成分シグナル伝達系の構成タンパク質であり、薬剤耐性、浸透圧感受性、病原性、菌糸生育などを制御していることが知られている。病原性酵母
Cryptococcus neoformansはゲノム中に7個のHHK遺伝子、2個のRR遺伝子をもつ。HHK遺伝子の一つ
CnNIK1遺伝子はフェニルピロール系抗真菌物質フルジオキソニルに対する感受性を制御している。今回、
CnHHK2、
CnHHK3、
CnHHK5、
CnHHK6、
CnHHK7(以上HHK遺伝子)、
CnSKN7、
CnSSK1(以上RR遺伝子)の機能を調べるため遺伝子破壊を行ったところ、
CnHHK4を除く全ての遺伝子破壊株を得ることができた。HHK遺伝子破壊株のうち、
CnHHK2、
CnHHK5、
CnHHK6、
CnHHK7 遺伝子破壊株は明確な表現型を示さなかったが、
CnHHK3遺伝子破壊株は高温および高浸透圧条件下において生育遅延が認められ、本遺伝子は温度や浸透圧適応に重要な役割を果たしていることが示唆された。RR遺伝子に関しては、
CnSKN7、
CnSSK1遺伝子破壊株はいずれも高温、高浸透圧に対して感受性を示し、また、フルジオキソニルに対して耐性であった。
C. neoformansにおいては、温度、浸透圧、フェニルピロール系薬剤に対して、
CnNIK1、
CnHHK3および
CnSKN7、
CnSSK1が協調的に応答していることが示唆された。
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大畑 美穂子, ヴィルトゥダゾ エリック, 大楠 美佐子, 竹尾 漢治, 川本 進
セッションID: P-106
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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Cryptococcus neoformansは、日和見感染を引き起こす病原性の真菌であり、本菌の細胞周期制御の解明は、感染症治療のための基礎となることが期待される。
我々の研究室ではこれまでに、本菌のサイクリン依存性キナーゼ遺伝子
CnCDK1(
CDC28/Cdc2ホモログ)と、3種類のCdk1サイクリンをコードする遺伝子ホモログのクローニングに成功している。これらのCdk1サイクリンのうち、G1サイクリンをコードする
CnCLN1のmRNAは、そのORFの5´側に2つのupstream ORF(uORF)を持つことがわかった。
Saccharomyces cerevisiaeでは、G1サイクリンをコードする
CLN3遺伝子にもuORFが存在することが既に報告されている。このuORFは、
CLN3の翻訳効率を下方調節することによって、細胞の増殖と分裂を負に制御する役割を担っている可能性が示唆されている。
本研究において我々は、
CnCLN1の一方または両方のuORFについて、ATGをTTGに置き換えた変異株、および、uORF領域を削除した変異株をそれぞれ作製した。現在、これら変異株の細胞周期について検討中である。
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梶原 将, 大浦 隆宏, ジャンタチャイ ウィーラポン
セッションID: P-107
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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Phospholipase B (PLB) exists in many microorganisms including pathogenic fungi and is suggested to be an important factor for fungal pathogenicity. For example, PLB has been positively correlated with virulence of
Cryptococcus neoformans in murine models of infection. In the opportunity fungus
Malassezia species, the phospholipase activity of
M. pachydermatis was detected and suggested to play a pathogenic role in the occurrence of skin lesions. Then, in order to investigate the PLB activities of main species of
Malassezia, we analyzed and compared the PLB activity of this fungus previously. As a result, a lipid-independent fungus showed the highest PLB activity in all of them. Therefore, to clarify the detailed molecular mechanism of
Malassezia PLB, we cloned PLB genes from
M. furfur and
M. pachydermatis. From the result of sequencing, the amino acid sequence of these genes (
MfPLB and
MpPLB) have 81% of identity each other and 60-75% of identity with those of PLBs from other fungi. The collaborating researcher: Ms. Linh Thi Thuy Truong
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清水 誠, 清水 公徳, 李 皓曼, 大楠 美佐子, 川本 進
セッションID: P-108
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
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C. neoformansは、AIDS発症者や免疫力の低下したガン患者だけでなく、健常者にもクリプトコックス症を引き起こす。クリプトコックス症治療は化学療法が一般的であるが、本菌の薬剤耐性獲得メカニズムはよく分かっていない。モデル生物
Saccharomyces cerevisiaeでは、ABC輸送体、転写因子、熱ショックタンパク質(Hsp)、ホスファチジルイノシトール転移酵素(PITP)などをコードする遺伝子が多剤耐性(Pleiotropic Drug Resistant:
PDR)に関与していることが明らかになっている。このうち
PDR13遺伝子はHsp70をコードし、多剤耐性制御因子のPdr1pの機能を促進し、
PDR16遺伝子はPITPをコードし、Pdr1pにより調節を受ける。これらのアミノ酸配列をもとに、
C. neoformansのゲノムデータベースについてBlast検索したところ、Pdr13pに6個、Pdr16pに1個、それぞれホモログが見出された。
C. neoformansの
PDR13遺伝子ホモログのうち、
CnPDR131、
CnPDR132、
CnPDR133、および
PDR16遺伝子ホモログ
CnPDR16について、遺伝子破壊による機能解析を試みた。得られた遺伝子破壊株について、薬剤感受性試験を行ったところ、
CnPDR132遺伝子破壊株において、フロロピリミジン系抗真菌薬フルシトシンに対する感受性が高くなっていたが、アゾール系抗真菌薬や、ポリエン系抗真菌薬に対する感受性に顕著な差はなかった。また、増殖速度については、
CnPDR133遺伝子破壊株において生育の遅延がみられた。
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山越 智, 橋本 ゆき, 大川原 明子, 田辺 公一, 新見 昌一, 大野 秀明, 宮崎 義継
セッションID: P-109(SIII-02)
発行日: 2008年
公開日: 2009/03/06
会議録・要旨集
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【目的】
アスペルギルス属菌の菌体外へ分泌される蛋白質及び細胞表層に存在する蛋白質を網羅的に同定し、それら蛋白質を標的とする診断応用を検討すること、並行して遺伝子破壊による病原性の変化を検討し治療標的となる可能性を探る。
【方法】
真核生物の蛋白質細胞内輸送メカニズムは種を越えて保存されている。そこで、哺乳類で細胞膜および分泌蛋白質を網羅的に同定できるシグナルシークエンストラップ(SST-REX)法を用いて
Aspergillus fumigatusの細胞表層および分泌蛋白質の網羅的同定を試みた。
【結果・考察】
YPD培地で培養した
A. fumigatus由来のcDNAライブラリーを作製しSST-REX法を行った。その結果、アミノ酸配列の相同性から機能を推定できない15種類を含む75種類の遺伝子が同定され、その多くが細胞表層あるいは分泌蛋白質をコードすると推測された。一方、窒素源飢餓条件下で培養した
A. fumigatus由来のcDNAライブラリーを用いて同様の手法で同定された遺伝子は、多くがYPD培地による培養で同定された遺伝子と同じであったが、窒素源飢餓特異的な遺伝子も含まれていた。現在、診断を目的とした検出系の作製と病原性の解析のために、同定された遺伝子の抗体の作製、遺伝子のクローニングを行っている。
【結論】
SST-REX法により、
A. fumigatusの細胞表層および分泌蛋白質を効率よく同定をすることができた。この方法は、他の病原真菌にも応用可能であると考えている。
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