日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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  • 三宅 親弘
    p. S0078
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    我々は、CEF-PSIが、リニアーな光合成電子伝達反応と共に機能し、チラコイド膜でのΔpH形成を通して、ATP生成およびNPQ形成誘導に機能していることをこれまでに明らかにしてきた。具体的な事実としては、(1)光強度の増加により光合成活性が飽和した後、顕著にCEF-PSI活性およびNPQ共に増加させる。(2)Ciの低下は、CEF-PSI活性およびNPQを共に増加させる。(3)CEF-PSI活性は、NPQと正の相関を示す。(4)CEF-PSIのメディエーターであるFdを葉緑体に過剰発現させたタバコでは、野生型タバコと比較し、大きなCEF-PSI活性を示す。(5)このTransplastomicタバコは、大きなNPQ誘導を示す。(6)Transplastomicタバコは、光合成を促進しなかった。これらの結果は、葉緑体が還元状態になるとCEF-PSI活性が発現し、NPQ誘導にいたることを示している。このCEF-PSIの機能は、植物が光傷害を回避するために不可欠のものである。また、野生型の光合成活性発現は、内在のCEF-PSI活性で十分であることを示す。
  • 牧野 周, 佐藤 友則, 三宅 親弘, Sage Rowan
    p. S0079
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    Rubiscoの活性が電子伝達系から制御される様々な局面について紹介する。1.光照射に伴いwater-water cycle(WWC)が駆動し、ΔpH形成とATP生産に伴い Rubiscoが活性化される。WWCが機能しない条件ではサイクリックPSI電子伝達(CEF-PSI)が駆動し、Rubiscoが活性化される。2.Rubiscoの活性化状態は中低温で高い。低温下では、CEF-PSI活性が誘導されΔpHが形成、Rubiscoの活性化が促進される。逆に40˚以上の高温下でもCEF-PSI活性が誘導されるが、Rubiscoは不活性化する。Activaseの熱失活も考えられるが、CEF-PSI駆動に伴うストロマの酸化も要因と思われる。3.窒素含量の少ない葉身では、Rubisco含量も少なく光合成速度は低い。そのような貧栄養葉身では、CEF-PSI活性が誘導され、Rubiscoの活性化が促進される。4.rbcS-antisenseイネでも常に高いCEF-PSI活性が誘導され、Rubiscoの活性化が促進される。貧栄養葉身やantisenseイネでは、光合成効率を上げるための補償作用と思われる。以上のように、activaseが、ATP/ADP比、ストロマの還元状態およびチラコイド膜のΔpHによって制御されるので、activaseを介して電子伝達系からRubiscoの活性が制御される。
  • 小川 健一, 松本 雅好
    p. S0080
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    チオレドキシン(Trx)は電子伝達に伴って還元され、カルビン回路を活性化する。一方、グルタチオンも電子伝達に伴い合成される高い還元力を有するトリペプチドである。最近、我々は、カルビン回路の酵素であるフルクトース-1,6-ビスリン酸アルドラーゼ(FBA)がTrxでその活性が抑制され、グルタチオン化によって活性化されることを示し、カルビン回路の新たな制御を見出した。ここでは、その詳細を報告する。FBAのグルタチオン化は光照射によって起こり、そのアイソザイムの発現量が低下した変異体では、その生長量が低下し、CO2固定量も低下する。過剰発現体では、CO2固定能が上昇し、成長が向上するだけでなく、クロロフィルあたりのRubisco量の上昇も観察された。以上から、FBAのグルタチオン化は単なるひとつの酵素反応のスイッチではなく、カルビン回路全体の制御とも深く関わると考えられた。グルタチオン化は特定の2つのシステイン残基で起こるが、その結合に関与しないシステイン残基も生長促進に寄与することから、FBAはin vivoではグルタチオン化以外にもレドックス制御されると考えられる。
  • 田茂井 政宏, 重岡 成
    p. S0081
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    高等植物ではカルビンサイクルの4種のチオール酵素(GAPDH, FBPase, SBPase, PRK)分子内の2つのシステイン残基(Cys)のSH基が、光照射下ではフェレドキシン/チオレドキシン(Fd/Trx)系を介した光還元力により還元されて活性型となり、暗黒下では酸化されてジスルフィド結合を形成し不活性型となる。これはBuchananグループが確立した光合成調節機構であり、教科書的にはすべての光合成生物がFd/Trx系により明暗の光合成制御を行っているとされている。しかし、ラン藻および真核藻類では、これらの酵素の調節部位のCysが欠損している、もしくは構造が異なっているために、Fd/Trx系を介した活性調節を受けない(受けにくい)ことを明らかにしてきた。我々は、CP12という小タンパク質に着目し、CP12がカルビンサイクルの制御に重要な役割を果たしていることをラン藻を用いて明らかにした (Plant J.42,504,2005)。ラン藻細胞内では明暗条件の変化によりNADP(H)/NAD(H)の量比を変動させ、PRK/CP12/GAPDH複合体の形成・解離を介してPRK活性の調節を行い、カルビンサイクルの調節を行っていることが示唆された。本講演では、藻類および高等植物のCP12のカルビンサイクル制御機構およびストレス応答への関与について、最近の知見も踏まえて紹介する。
  • 蘆田 弘樹, 横田 明穗
    p. S0082
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    RuBisCOはカルビンサイクルの初発反応であるribulose-1,5-bisphosphate (RuBP)にCO2を固定するカルボキシラーゼ反応を触媒する。また、RuBisCOはCO2放出を伴う光呼吸経路の初発反応であるオキシゲナーゼ反応も触媒し、この反応はカルボキシラーゼ反応を拮抗的に阻害する。このようなRuBisCOの酵素としての性質の悪さから、RuBisCOが大気条件下における植物光合成を律速している。
    では、なぜ植物は効率の悪いRuBisCOを光合成に用いなければならなかったのか?この答えは、RuBisCOの分子進化過程にあると考えられる。興味深いことに、細菌や古細菌はRuBisCO ラージサブユニットと相同性を示すタンパク質をコードする遺伝子を有し、これらはRuBisCO-like proteins (RLPs)と呼ばれている。我々はこれまでに、枯草菌RLPがメチオニン代謝でジケトメチルチオペンチル-1-リン酸のエノラーゼ反応を触媒する酵素であることを明らかにしてきた。この反応はRuBisCOカルボキシラーゼ反応の部分反応で、さらに基質がRuBPと類似している。これらの事実から、RLPと光合成RuBisCOは同じ起源から分子進化してきたと考えられる。本発表において、RLPの酵素学的解析と構造活性相関研究の結果から、RLPとRuBisCOの分子進化的関連性について考察する。
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