RuBisCOはカルビンサイクルの初発反応であるribulose-1,5-bisphosphate (RuBP)にCO
2を固定するカルボキシラーゼ反応を触媒する。また、RuBisCOはCO
2放出を伴う光呼吸経路の初発反応であるオキシゲナーゼ反応も触媒し、この反応はカルボキシラーゼ反応を拮抗的に阻害する。このようなRuBisCOの酵素としての性質の悪さから、RuBisCOが大気条件下における植物光合成を律速している。
では、なぜ植物は効率の悪いRuBisCOを光合成に用いなければならなかったのか?この答えは、RuBisCOの分子進化過程にあると考えられる。興味深いことに、細菌や古細菌はRuBisCO ラージサブユニットと相同性を示すタンパク質をコードする遺伝子を有し、これらはRuBisCO-like proteins (RLPs)と呼ばれている。我々はこれまでに、枯草菌RLPがメチオニン代謝でジケトメチルチオペンチル-1-リン酸のエノラーゼ反応を触媒する酵素であることを明らかにしてきた。この反応はRuBisCOカルボキシラーゼ反応の部分反応で、さらに基質がRuBPと類似している。これらの事実から、RLPと光合成RuBisCOは同じ起源から分子進化してきたと考えられる。本発表において、RLPの酵素学的解析と構造活性相関研究の結果から、RLPとRuBisCOの分子進化的関連性について考察する。
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