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盤指 豪, 浦田 信明, 田中 恒之, 笹野 佳奈子, 小野 祥子, 平塚 和之
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0951
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
植物は病害感染時に病原体を認識し、複雑な情報伝達系を介して生体防御反応を誘導する。このため、病害抵抗性機構の解明とその制御には防御反応に関与する遺伝子の発現状況を把握し、的確に評価する事が必要となる。我々はホタル由来の発光遺伝子を利用し,病害応答性遺伝子の発現制御動態のモニタリングとその応用を目的とした
in vivo発現解析系を構築している。本解析系によって各種遺伝子プロモーターの発現様式を詳細にモニターする事が可能になるだけでなく、化合物の抵抗性誘導活性の評価や作用機作の解明に応用できる事を示してきた。最近、病害関連ストレスに対して特徴的な発現パターンを示す
BIK1(
Botrytis-induced kinase1)遺伝子が単離され、その性状に興味が持たれている。
BIK1遺伝子は腐生性病原菌感染時に発現するタンパク質リン酸化酵素をコードする遺伝子であるが、病害応答経路における代表的なシグナル伝達物質(SA、MeJA、ET)処理による顕著な発現誘導を示さない。また、既知のシグナル伝達経路のクロストークに関与する事が示唆されているが、
BIK1遺伝子の発現制御機構には不明な点が多い。そこで、今回は
BIK1遺伝子のプロモーター領域とルシフェラーゼレポーターの融合遺伝子を導入した形質転換体を作出し,各種化合物処理(SA、MeJA、エリシター等)及び各種病原菌接種による発現様式の変化を経時的に観察した事例について報告する。
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高畠 令王奈, 向原 隆文
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0952
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
青枯病菌は約60~70のタイプIIIエフェクターを有すると予想されるが、個々の植物細胞内における機能に関しては全く不明である。最近の研究から、植物の防御応答には様々な膜輸送系が重要な役割を担っていることが明らかとなってきた。今回、我々が同定した44種類の青枯病菌エフェクターの中に小胞輸送阻害活性を有するものが含まれているかどうかを調べた。これらエフェクター遺伝子を出芽酵母の細胞内で発現させたところ、少なくとも6種類のエフェクターがCPY-Inv融合タンパク質の液胞選択的な小胞輸送を阻害することが明らかとなった。現在、これらのエフェクターが本来機能する場である植物細胞の小胞輸送を阻害するかどうかを、液胞移行シグナルを付与したGFP(GFP-CT24)を発現するシロイヌナズナを用いて解析している。これらの結果に加え、青枯病菌の小胞輸送阻害エフェクターの植物病原性に対する寄与についても議論したい。
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藤原 伸介, 安藤 拓哉, 澤田 寛子, 寺門 純子
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0953
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
芳香族アルカロイドの一種β-フェネチルアミン(β-PEA)は、サボテンやアカシア、ヌスビトハギなどの多年生樹木に含まれることが知られている。類縁アルカロイドの中には、N-methyl-tyramineやN-methyl-mescalineをはじめとして、動物の中枢神経系に薬理作用を示すものが多く、これら成分を多く含む植物は古くより民間療法にも利用されてきた。私達はこれまでに、β-PEAがダイズ、アズキ、キマメ、ササゲ、ナタマメ、クロタラリアといった、
Bradyrhizobium属菌と親和性の高いマメ科作物中に含まれていること、その分布は根粒組織に特異的であり、宿主植物の他の組織からは検出されないことを見出した。ただ、唯一の例外は落花生で、
Bradyrhizobium属菌が共生しているはずの根粒中にはβ-PEAがまったく検出されなかった。そこで今回は、栽培地点の異なる多品種の落花生および大豆から根粒を採取し、再度β-PEAの存在について調査を行った。また、圃場で栽培した落花生および大豆の根粒から菌を分離し、共生菌の同定を行うとともに、宿主作物への相互接種試験を行い、β-PEA生成の有無について調べた。その結果、β-PEAの生成には、共生菌の
Bradyrhizobiumおよび宿主植物側の誘導因子の双方が強く関わっていることが示唆された。
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安藤 杉尋, 田部 茂, 繁森 英幸, 山田 小須弥, 秋本 千春, 西澤 洋子, 南 栄一
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0954
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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イネといもち病菌の感染初期相互作用において、いもち病菌が産生する自身の感染を促進させる因子の存在は長い間議論されてきたが、未だ明確な結論は得られていない。我々は葉鞘接種検定法を用いて、イネ(品種:日本晴(
Pia))に対して親和性のいもち病菌(稲86-137)の胞子を回収する際に得られる胞子懸濁液の上清に、感染を促進する効果があることを見いだし、この活性因子を感染補助因子と名付け詳細に解析した。本活性は、日本晴(
Pia)に対して親和性の5菌株及び非親和性の3菌株に確認され、イネいもち病菌に普遍的に存在することが強く示唆された。また、本活性は親和性相互作用において顕著であり、非親和性の組み合わせでは殆ど感染を促進しなかった。さらに、イネ以外のいもち病菌のイネへの感染には効果がないことを確認した。本因子は100℃、15分の熱処理によって失活せず、熱安定な物質であることが明らかとなった。そこで本因子の同定を目的に稲86-137胞子懸濁液上清を酢酸エチル可溶性画分、メタノール可溶性画分および水溶性画分に分画したところ、感染補助因子はメタノール可溶性画分に含まれることが分かった。さらに活性を指標に逆相カラムを用いたHPLCによって精製を進め、2つの活性画分を得た。そのうち一つについて精製を進め、
1H-NMRによる構造解析を行ったのでその結果を併せて報告する。
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田部 茂, 南 尚子, 西澤 洋子, 小野寺 治子, 土岐 精一, Day R. Bradley, 澁谷 直人, 南 栄一
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0955
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
イネの培養細胞系において特定サイズのキチンオリゴ糖がエリシターとして種々の生体防御反応を引き起こすことが知られている.我々はこの培養細胞の系を用いてキチンオリゴ糖エリシター処理後数分で発現誘導されるGRASファミリー遺伝子,
CIGR2を単離し,詳細な解析を行ってきた.これまでに,RNAiによるCIGR2発現抑制形質転換イネへの非親和性イネいもち病菌接種実験から,抵抗性反応の一つであり細胞死の前兆とされているイネ細胞内への顆粒物質の蓄積を
CIGR2が負に制御していること,プロモータ解析などから,熱ショック転写因子(HSF)が
CIGR2の下流で働いていることを示してきた.今回,
CIGR2の細胞死への関与を解析するために,
CIGR2・RNAiイネの培養懸濁細胞を作成し,エリシター処理した時の細胞死について調べたところ,エリシター処理の有無にかかわらずWTに比べて細胞死が有意に増加しており,
CIGR2が細胞死を負に制御していることをさらに強く示唆する結果を得た.また,HSF・RNAiイネへの非親和性いもち病菌接種においても顆粒物質蓄積が増加していることが明らかとなり,
CIGR2がHSFを経由して細胞死を抑制するシグナル伝達経路の存在が示唆された.現在,HSFのシス配列解析および酵母ワンハイブリッド法による解析から,HSF発現の制御因子としてMyb転写因子を候補として同定しており,その結果についても報告したい.
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宮 彩子, 矢元 奈津子, 川上 直人, 賀来 華江, 渋谷 直人
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0956
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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微生物分子パターン(MAMPsあるいはPAMPs)認識に基づく病原菌の検出は、植物の基礎的病害抵抗性において重要な役割を果たしている。MAMPsエリシターの一つであるキチンオリゴ糖は、シロイヌナズナやイネにおいて防御応答を引き起こす。我々はキチンオリゴ糖の受容・伝達機構の解析を進める中で、イネ原形質膜に存在するキチンエリシター結合タンパク質、CEBiPが細胞表面受容体として重要な役割を果たしていることを明らかにした
1)。一方、CEBiPは細胞内ドメインを持たないと想定されたことから、細胞内へのシグナル伝達にはCEBiP以外の未知の因子が関与することが想定された。そこで、シロイヌナズナ遺伝子破壊系統を用いた逆遺伝学的解析により、この未知の因子の探索を進めた結果、新規な受容体様キナーゼ(
Chitin Elicitor Receptor Kinase1:
CERK1と命名)がキチンオリゴ糖シグナル伝達で中心的な役割を果たしていることを見出した
2)。一方、T-DNA挿入型変異体のスクリーニングという正遺伝学的アプローチにより、キチンエリシター応答性が低下あるいは消失した変異体が得られ、それらの表現型の解析及び原因遺伝子の探索を試みている。今回はこれらの変異体の解析を中心に報告する。
1)Kaku et al.,
PNAS,
103, 11086 (’06);
2)Miya et al.,
PNAS, in press.
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畠本 正浩, 藤根 勇樹, 江本 慶輔, 八鍬 真洋, 亀岡 勇佑, 出崎 能丈, 増田 紳吾, 賀来 華江, 秋本 千春, 南 栄一, 渋 ...
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0957
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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病原菌感染やエリシター処理によって誘導される防御応答において、防御応答シグナル伝達に関わると想定される多くの遺伝子の発現が誘導されることが分かっている。こうした知見に基づき、イネ培養細胞においてキチンオリゴ糖エリシター処理によって発現が誘導される遺伝子をマイクロアレイにより解析したところ、細胞外ドメインにPRタンパク質の一種と相同性の高い構造を持つ受容体様キナーゼをコードする遺伝子が見出された。本研究では、この遺伝子の発現制御機構、コードするタンパク質の生化学的特性、防御応答における役割の解明を目的として実験を行った。
本遺伝子はキチンオリゴ糖の構造・サイズに依存して発現が誘導され、タンパク質合成阻害剤単独処理でも発現誘導が認められた。GFP融合タンパク質を用いた解析から、本遺伝子がコードするタンパク質はイネ培養細胞原形質膜に局在することが確認されたほか、植物体では、葉で強く発現していることも明らかとなった。また、大腸菌で発現させた細胞内ドメインのGST融合タンパク質は強い自己リン酸化能を示した。逆に、キナーゼの活性中心と予測されるアミノ酸に変異を導入したものでは、自己リン酸化能がほぼ消失した。現在、本遺伝子の過剰発現・ノックダウン型形質転換細胞を用いた機能解析、本受容体様キナーゼに対するリガンドの探索、また細胞内ドメインとの相互作用タンパク質の探索などを進めている。
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出崎 能丈, 小林 大二郎, Molinaro Antonio, Newman Mari-Anne, 山根 久和, 仲下 英雄, 賀来 華江 ...
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0958
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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Primingとは、何らかの処理によって防御応答の潜在能力を高め、病原菌感染に対し早く強い防御応答ができるようにする現象のことで、基礎的にも応用的にも非常に興味深い現象と考えられている。しかしながら、その分子機構に関してはほとんど分かっていない
1)。
我々はこれまでに、細菌由来のリポ多糖(LPS)がイネ培養細胞に対し細胞死を伴う防御応答を誘導することを示すとともに
2)、防御応答を誘導しないような低濃度で一種のPriming活性を示すことをも明らかにしてきた。さらに、防御応答誘導には過ヨウ素酸酸化感受性糖鎖が必要だが、Primingには必要でないことを示してきた。
本年会では、各種植物ホルモンのPrimingへの影響や変異体を用いた解析などからLPSによるPriming活性の機構を検討した結果を報告する。一方、LPS自身は分子量が大きく不均一なため、これら2つの活性に必要な構造要素を解析することが困難であった。この点を解決するため、現在、LPS生合成系に変異を持つ細菌から精製した分子構造の明確なリポオリゴ糖を用いた検討を進めており、その結果についても併せて報告する。
1)Conrath, U. et al.,
MPMI,
19, 1062 (2006).
2)Desaki, Y. et al.,
PCP,
47, 1530 (2006)
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小森 大輔, 大西 浩平, 曵地 康史, 吉岡 博文, 木場 章範
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0959
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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ナス科青枯病菌
Ralstonia solanacearum(Rs)に対する植物防御を解析することを目的に、Rs非病原性変異株MINE接種タバコ葉より調製した均一化cDNAライブラリーを鋳型にDifferential displayを行った。そのうちAsnリッチ構造を持つ
NtARP (
Nicotiana tabacum Asparagine-rich protein)および
Nicotiana benthamiana由来のオルソログ
NbARPに着目した。
NtARPおよび
NbARPは
rolB応答遺伝子の
ROX1やアラビノガラクタンタンパク質(AGP)と相同性を示し、RsMINE接種およびH
2O
2処理タバコ葉において発現が強く誘導された。
NbARPサイレンシング植物では病原性Rs接種で誘導される萎凋症状の進展が促進された。また、非病原性Rs接種で顕著に誘導される
PR-4の発現が抑制されたが、逆に
PR-1aの発現が誘導された。一方、過敏感反応はコントロール植物、
NbARPサイレンシング植物とも認められ、
NbARPのサイレンシングによる影響は観察されなかった。
ROX1やAGPは維管束の形成や情報伝達に関与することが報告されている。このことから、
NtARPおよび
NbARPは維管束の分化の調節により発病に関連している、あるいはRsの感染に応答した防御応答情報伝達に関連している可能性が示唆された。
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マインボ ミリモ, 大西 浩平, 吉岡 博文, 曵地 康史, 木場 章範
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0960
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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ナス科青枯病菌(
Ralstonia solanacearum)に対する植物の生体防御機構、および発病に関わる植物因子の単離と機能解析を行った。病原性、非病原性
R. solanacearum接種タバコ葉より調製した均一化cDNAライブラリーを鋳型にDifferential display 法によって防御・発病過程に関連するタバコ遺伝子を単離した。そのうち低分子熱ショックタンパク質をコードする
Ntshsp17(
Nicotiana tabacum small heat shock protein 17)およびそのオルソログ
Nbshsp17(
N. benthamiana small heat shock protein 17)に着目した。大腸菌で発現したNtshsp17タンパク質は分子シャペロンとして機能した。
Ntshsp17は非病原性の
R. solanacearum接種、サリチル酸、ジャスモン酸等の植物細胞内情報伝達分子によって強く誘導された。
Nbshsp17サイレンシング植物では過敏感反応には影響はなかったが、防御関連遺伝子の発現が抑制されるとともに、非病原性
R. solanacearumの増殖が促進された。さらに、病原性
R. solanacearumの増殖のみならず、発病も促進された。以上の結果は低分子ショックタンパク質(Ntshsp17およびNbshsp17)が植物の生体防御に極めて重要な役割を持つことを示唆している。
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武藤 さやか, 永野 幸生
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0961
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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病原菌の多くを占めるグラム陰性菌は、細胞壁構成成分としてリポ多糖(LPS)を持つことが特徴である。LPSは哺乳類における自然免疫発動の強力な因子のひとつであるが、近年、植物もまたLPSを認識することで病原菌を感知し、自己の自然免疫を誘導するという報告がなされている。
LPSに対する自然免疫誘導機構を解明するには、まずLPSを認識し、結合するタンパク質の特定が必要である。しかし植物において、LPSと直接結合するタンパク質は未だ明らかにされていない。一方、動物においては広く研究が進んでおり、既にLPS認識から自然免疫機構誘導までのスキームは出来ている。その中で、LPSをLPS受容体へ運ぶ重要なタンパク質として位置づけられているのがLPS結合タンパク質(LBP)である。私はヒトLBPのホモログであり、LPS結合活性部位の相同性が高いシロイヌナズナLBP(AtLBP)に注目し、AtLBPと大腸菌由来LPSとの結合を、SDS-PAGEと抗LPS抗体ウェスタンブロットにより生化学的に解析した。その結果、ヒトLBPと同様に、AtLBPは大腸菌由来LPSと特異的に結合することが明らかになった。これはAtLBPの性質を初めて証明するものである。今回の結果と既知のヒトLBPの機能を踏まえると、AtLBPがLPSに対する植物の自然免疫誘導機構に関わっている可能性が高まったといえる。
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小林 裕子, 鈴木 将史, 竹内 竜馬, 荒川 勉, 島田 真奈美, 宮尾 安藝雄, 廣近 洋彦, 小林 一成
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0962
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
我々はイネ葉鞘内腔にGFP発現イネいもち病菌を接種し、感染菌糸の伸長量を指標としていもち病抵抗性における
OsRacの機能解析を行っている。
OsRacはイネゲノムに7つのメンバーからなるサブファミリーを形成している。その中の1つである
OsRac5遺伝子にレトロトランスポゾン
Tos17が挿入された変異体では菌糸の拡大が日本晴に比べ有意に抑制されることをすでに報告した。この変異体に
OsRac5 promoter:
OsRac5 cDNAを導入した形質転換体では日本晴れと同程度に菌糸が拡大し、変異体の表現型が相補された。また、7つの
OsRacの中で
OsRac5と最も相同性の高い
OsRac3および
OsRac5の構成活性型(CA)および優性不活性型(DN)を発現する形質転換体を作出し、いもち病抵抗性を比較検討した。この結果、
OsRac5DNと
OsRac3CAの発現によっていもち病抵抗性が強化された。さらに、いもち病菌を接種した
OsRac5変異体、
OsRac5DNおよび
OsRac3CAの葉鞘細胞を詳細に観察したところ、いずれの場合も過敏感反応は認められないが,細胞側壁の貫通による隣接細胞への菌糸拡大が抑制された。以上の結果より、
OsRac5はその機能欠損が、
OsRac3はその活性化がいもち病菌の拡大抵抗性をイネに誘導する可能性が示唆された。この違いが何に起因するかを明らかにするため、現在2つのOsRacのGFP融合タンパク質をイネ葉鞘細胞で一過的に発現させ、その局在性を調べている。
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門田 康弘, Boter Marta, Zhang Minghao, Amigues Beatrice, Prodromou Chrisos ...
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0963
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
植物病原菌はエフェクターと呼ばれる蛋白質を植物細胞内に多数注入して、植物の防御機構を攪乱または抑制し、感染増殖を行う。一方、植物はエフェクターを認識する抵抗性(Resistance; R)蛋白質を持ち、過敏感反応と称される強い抵抗性反応を誘導する。遺伝学的なアプローチと酵母ツーハイブリットスクリーニングにより、RAR1-SGT1-HSP90複合体が抵抗性反応の誘導に必須な役割を果たすことが明かとなった。タバコにおいて、これら3つのどの因子をサイレンシングしてもR蛋白質の量が減少することから、この複合体はR蛋白質の安定化に働いていることが示唆された。SGT1に様々な変異を導入して機能解析を行った結果、RAR1とHSP90の結合するCSドメインがこの複合体の機能に重要であることが分かった。そこで、NMR法、X線結晶解析法によるタンパク質立体構造解析を行ったところ、CSドメインは7つのβシートからなるサンドイッチ状の形をしており、片方の面にHSP90が、他方の面にRAR1が、それぞれ結合することが分かった。また、HSP90と結合する領域に変異を導入したSGT1は、HSP90と結合できないだけでなく、R蛋白質を安定化できず、さらに病原体の増殖を抑制できなかった。このことから、SGT1がHSP90と結合することがR蛋白質の安定化制御と抵抗性反応の誘導に必須であることが分かった。
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山口 武志, 黒田 昌治, 山川 博幹, 芦澤 武人, 平谷重 一之, 栗本 玲王奈, 新屋 友規, 渋谷 直人
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0964
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
ホスホリパーゼD(PLD)は植物の生育や環境ストレス、植物ホルモンの応答などに重要な機能を有していることが知られている。イネゲノムには少なくとも16種類のPLD遺伝子が存在することが推定されているが、それぞれの生理機能は不明である。イネにおけるPLDの生理機能を解析するために、組織で発現しているPLD遺伝子について、それぞれRNA干渉(RNAi)による遺伝子発現抑制系統を形質転換で確立し、その表現型を解析した結果、
OsPLDβ1-RNAi系統が病原菌感染のない状態で過敏感反応を誘導していることがわかった1)。このRNAi系統の病原菌の感染に対する抵抗性反応を、いもち病菌(
Pyricularia grisea)を用いて解析した結果、感染は成立しているが、圃場抵抗性のように病斑の伸展が抑制されることにより、抵抗性が大幅に上昇することがわかった。従ってOsPLDβ1は病原菌の感染後の防御応答を負に制御していることが示唆された。RNAi系統とWild type(WT)における種々の比較解析を行った結果、RNAi系統の組織の活性酸素種のレベルがWTの約3倍以上に上昇していること、
PBZ1などの防御関連遺伝子以外に、多数の遺伝子発現が大幅に変化していることが明らかになった。
1) Yamaguchi et al. PCP supplement, 2007, p254
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高梨 功次郎, 杉山 暁史, 佐藤 修正, 田畑 哲之, 矢崎 一史
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0965
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
マメ科植物はその根において窒素固定細菌(根粒菌)と共生系を確立し、高効率の窒素固定器官である根粒を形成する。この根粒の形成には、植物由来のシグナル分子であるフラボノイドの根からの分泌や、根粒組織内での炭素源と窒素化合物の交換など様々な膜輸送系が複雑に関わっている。
ATP結合カセット(ABC)蛋白質は、植物の膜輸送体の中で最大のファミリーを形成する。マメ科のモデル植物であるミヤコグサにおいては、少なくとも90個以上のABC蛋白質が存在しており、その輸送能を介して多様な生理機能に関わっていると考えられる。本研究ではミヤコグサの根粒形成に応答するABC蛋白質に焦点を絞り、その輸送機能と生理的役割を解明することを目的とした。
かずさDNA研究所が公開しているミヤコグサのcDNAアレイデータから、根粒感染時に最も顕著に発現が上昇するABC蛋白質の1つとしてLjABCB1が、また最も発現が抑制されるABC蛋白質の1つとしてLjABCB2が見出された。いずれもABCBサブファミリーに属するメンバーであるが、本サブファミリーはオーキシンを輸送基質とするものがあることで知られる。そこでミヤコグサ実生を用いこの2つのABC蛋白質の植物ホルモンに対する応答を調べたところ、
LjABCB1はNAAに応答し発現が上昇することが分かった。
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八丈野 孝, 射場 厚
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0966
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
サリチル酸(SA)は植物免疫において重要な役割を持つシグナル分子である。シロイヌナズナにおけるSAの生合成経路は、
sid2変異体およびその原因遺伝子である
ICS1がすでに同定されているイソコリスミ酸経路と、安息香酸(BA)を基質とする経路の2つが存在すると考えられているが、BA経路に関わる変異体および遺伝子は単離されていない。そこで我々は、BAを与えるとSAを蓄積する変異体
bah1-D (
benzoic acid hypersensitive1-Dominant)を単離した。
bah1-D変異体は
Pseudomonas syringae (
Pst) DC3000の感染に対してもSAを多く蓄積し、抵抗性を示した。また、
bah1-D sid2二重変異体では
sid2変異体よりもSAを多く蓄積することから、
ICS1に依存せずにSAが合成されるメカニズムが存在することが明らかとなった。さらに
bah1-D変異体では、
Pst DC3000に対して過敏感反応様の細胞死が観察された。本発表では、その他の
bah1-D変異体の特徴的な表現型についても報告する。
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矢元 奈津子, 浅田 裕, 筒井 友和, 池田 亮, 山口 淳二
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0967
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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我々は、FOX Hunting Systemを用いてシロイヌナズナのgain-of-function型細胞死形質変異体を単離した。原因遺伝子を
DEAR1 (
DREB and EAR motif protein 1)と名付け、解析を行ったところ、
DEAR1過剰発現体では、ロゼッタ葉における過敏感細胞死の出現、病原体抵抗性遺伝子
PDF1.2の発現上昇などが確認された。またDEAR1は、DREBドメインとEARモチーフを有し、生物的ストレスシグナル伝達の抑制型転写制御因子と考えられた。
PDF1.2の発現が上昇したことから、DEAR1の標的遺伝子の一つにAP2/ERF familyがあると予測された。
DEAR1過剰発現体におけるマイクロアレイなどを行った結果、
ERF9(
ethylene-
responsive element binding factor 9)がその候補として挙げられた。ERF9は、シス配列にDREBドメインが特異的に結合するDRE配列をもち、抑制ドメインであるEARモチーフを有する転写抑制因子である。従って,ERF9も下流の標的遺伝子を抑制していることが考えられた。
ERF9の具体的な機能やその下流のシグナル伝達機構の解明を目的として、
ERF9過剰発現体を作製し、
erf9変異体とともに病原体感染実験を行った。結果、野生型と比較して
ERF9過剰発現体では病原体感受性を、
erf9変異体では強い病原体抵抗性を示した。このことからERF9は病原体抵抗性を寄与する因子を負に制御していることが示唆された。
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平井 克之, 久保田 健嗣, 望月 知史, 津田 新哉, 飯 哲夫
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0968
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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タバコモザイクウイルス(TMV)がタバコに全身感染すると,新たに展開する上位葉にモザイク模様が現れる.接種後最初に展開するモザイク葉は,先端側にウイルス蓄積の多い淡緑部が,基部側にウイルス蓄積の少ない濃緑部が形成されるという特有のパターンを呈する.RNAサイレンシングはウイルスに対する抵抗性に重要であり,病徴発現への関与も示唆されている.本研究では,モザイク病徴の発現過程におけるRNAサイレンシングの役割を明らかにすることを目的とした.サイレンシングを抑制した形質転換タバコにTMVを感染させたところ,濃緑部が形成されず葉全体が淡緑部様となったことから,濃緑部の形成へのRNAサイレンシングの関与が示唆された.ウイルス分布の経時変化を解析した結果,将来淡緑部になる先端部では,感染後の早い時期から葉脈だけではなく葉肉全体に感染が認められるのに対し,濃緑部になる基部では,ウイルスは主脈にのみ局在していた.また,モザイク葉では,ウイルスに対するRNAサイレンシングが非感染領域を取り囲むように,濃緑部の周縁の淡緑部と接する狭い帯状の領域と濃緑部内の主脈沿いで局所的に確立していた.これらの結果から,RNAサイレンシングは,先端部から基部側へのウイルス感染の拡大を阻止するとともに,基部ではウイルスを主脈に局在させるように機能し,その結果として病徴パターンが形成されると考えられた.
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山崎 征太郎, 中村 崇, 山崎 秀雄
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0969
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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造礁サンゴは、固着性の刺胞動物と藻類(褐虫藻)の共生体である。また、亜熱帯以南の海洋で優占する重要な一次生産者の一として知られている。サンゴ虫と褐虫藻の両者は非常に強い相互依存関係にあり、褐虫藻の光合成は造礁サンゴの生存にとって必要不可欠である。造礁サンゴには、細胞内に共生している褐虫藻とは別に、骨格内に多種の微細藻類が生息していることが知られている。ところが、骨格内藻類の生物学的意義やサンゴの生理に与える影響はわかっていない。本研究では、沖縄とオーストラリアの異なった栄養環境の海域からサンゴを採取し、骨格内微細藻類の種構成と、機能性遺伝子の多様性を調べた。PCR-DGGE法により解析をおこなった結果、貧栄養な海域から採取したサンゴ10群体中の全てから、ラン藻、紅色光合成細菌、緑色光合成細菌の生息が骨格内に確認された。一方、富栄養環境からは、約半数の群体からのみ検出された。得られた結果は、骨格内部に生息している光合成生物の組成が栄養塩などの水質環境によって、変化を生じることを示唆している。サンゴ骨格内微細光合成生物と宿主サンゴとの相互作用について、第二のサンゴ共生システムという点から考察する。
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太田 尚孝, 柴田 庸介, 長谷山 陽平, 吉野 由佳, 鈴木 健裕, 森山 淳, 池内 昌彦, 榎並 勲, 佐藤 修正, 中村 保一, 田 ...
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0970
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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Synechocystis sp. PCC 6803における酸性ストレス応答遺伝子はDNAマイクロアレイによって同定された。発現が増加したこれらの遺伝子の中で、slr0967とsll0939の発現量は酸性条件下において、発現量が4時間で経時的に12から20倍まで増加した。これらの結果はこの両遺伝子が酸順応過程において重大な役割を果たしていることを示している。これらの遺伝子を含め、私たちは13個の欠損株を作成し、その表現型を解析した。それらの欠損株において、4つの欠損株が酸処理に対して顕著に反応することを見つけた。また、これら欠損株のReal-Time PCR分析により、slr0967欠損株においてsll0939の発現が大きく抑制されることを明らかにした。さらに,私たちはslr0967が酸順応に関連した遺伝子の発現調節に重大な役割を担っていると考え、slr0967欠損株のDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、新たに発現増加が確認された遺伝子を同定したので報告する。
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刑部 敬史, 土岐 精一
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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BRCA1は、ヒト乳がんの発症に伴う核内ガン抑制因子として同定された,ゲノム安定維持に重要な因子である.DNA損傷のシグナルを受けたセンサー因子ATMが伝えるシグナルをBRCA1はリン酸の形で受取り、そのリン酸化によりBRCA1はDNA修復タンパク質群の機能を制御し、ゲノムの安定性を保つと考えられている.BRCA1は哺乳動物には存在するが、酵母,ショウジョウバエ、線虫では見出されていない.しかし興味深いことに、高等植物であるアラビドプシスにはBRCA1ホモログ(
AtBRCA1)が存在し、更には
AtBRCA1の転写はガンマ線照射により劇的に上昇し、その転写誘導はATM依存的であることが明らかとなっている.
我々は高等植物におけるBRCA1の機能、特にBRCA1を介したDNA損傷シグナル伝達機構を明らかにすることを目的として,
AtBRCA1欠損変異株を解析し,欠損変異体がDNA損傷に対して高感受性を示すことを明らかにした.また
AtBRCA1欠損はDNA損傷の存在下で染色体内相同組換え頻度を低下させることも明らかとした.現在,ATMからBRCA1を介したDNA損傷シグナル伝達により制御される因子を同定する為に,トランスクリプトーム解析を進めており、本発表ではこれらの結果についても併せて報告すると共に,高等植物に特異的なBRCA1の役割についても考察したい.
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Rodjana Opassiri, Busarakum Pomthong, Takashi Akiyama, Massalin Nakpha ...
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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The cDNA for a stress-induced glycosyl hydrolase family 5 (GH5) β-glucosidase was cloned from rice seedlings by RT-PCR,and designated
GH5BG.The cDNA for
GH5BG included a reading frame encoding a 510 amino acid precursor protein that comprised 19 amino acids of prepeptide and 491 amino acids of mature protein.The protein was predicted to be extracellular.The mature protein is a member of a rice-specific subfamily of GH5 proteins that contain two major domains,a β-1,3-exoglucanase-like domain and a fascin-like domain not commonly found in plant enzymes.The
GH5BG mRNA is highly expressed in the shoot during germination and in leaf blades and leaf sheaths of mature plants.The
GH5BG was up-regulated in response to salt stress,submergence stress, methyl jasmonate, and ABA in rice seedlings.A GUS reporter tagged at the C-terminus of GH5BG was found to be secreted to the apoplast when expressed in onion cells.A fusion protein produced from
GH5BG cDNA hydrolyzed various β-linked oligosaccharides.
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吉原 亮平, 長谷 純宏, 滝本 晃一, 鳴海 一成
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0973
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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放射線は、DNAに傷害を与え突然変異の原因となる。生物は、その傷害を修復するためのDNA修復機構をもっている。これまでに微生物や動物において遺伝子レベルで放射線誘発変異の種類や、変異誘発とDNA修復機構の関係が調べられた。しかし、高等植物においては、それらの研究はほとんど行われていない。本研究ではモデル植物のシロイヌナズナを用いた突然変異検出システム(Yoshihara et al. 2006)により、イオンビームとガンマ線による誘発変異の特徴を遺伝子レベルで明らかにする。大腸菌のribosomal protein small subunit S12(
rpsL)遺伝子を導入したシロイヌナズナにイオンビームおよびガンマ線を照射し、染色体DNAから変異を持った
rpsL遺伝子をプラスミドレスキューにより回収し、誘発された突然変異を解析する。今回は、本システムを用いて得られた結果からイオンビームおよびガンマ線の誘発変異の特徴について報告する。
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高橋 美佐, Kohama Sueli, 重藤 潤, 長谷 純宏, 田中 淳, 坂本 敦, 森川 弘道
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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二酸化窒素(NO
2)は、都市大気の主汚染物質の1つである。クワ科イチジク属のヒメイタビ(
Ficus thunbergii Maxim)は、蔓性常緑街路樹で、NO
2同化力は、70タクサの樹木の中で4番目に高い。本研究は、イオンビーム照射によるイタビのNO
2吸収同化力の分子生理学的改良を究極の目的とする。
無菌的イタビ切片を2%ショ糖、0.3%ゲランガム、46.7 nMチジアズロン、1.78 μMベンジルアデノプリンを含むWP培地(pH 5.8)上で2~3日間培養した後、
12C
5+ (220 Me V)、
4He
2+ (50 Me V)、
12C
6+ (320 Me V)を用いてイオンビーム照射した。再分化した茎葉を発根させ、約20 cmに伸長した植物体を約一ヶ月間馴化した。1 ppm
15NO
2で8時間暴露を行なった後、葉を採取、EA/MSを用いてNO
2由来の全窒素量およびケールダール窒素量を測定、NO
2 吸収・同化量を求めた。
得られた263再分化体のNO
2吸収力を調査した結果、コントロール植物に比べて1.4倍高いNO
2吸収能をもつ変異体が選抜された。また、この変異体のNO
2同化力は、コントロール植物の1.8倍であった。以上、植物のNO
2吸収同化力には、分子生理学的改良が可能であることが示された。その原因遺伝子の解明は今後の研究における重要な課題である。
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原田 英美子, Meyer Andreas J., 權 容秀, Hell Ruediger, Clemens Stephan, 崔 龍義
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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トライコームは葉、茎などの地上部の器官の表皮細胞より形成され、種々の防御機構に関連するとされているが、その機能について遺伝子レベルで研究した例は少ない。今回、タバコ(
Nicotiana tabacum L. cv. Xanthi)葉のトライコームからESTライブラリを作成した。ジテルペン生合成系の遺伝子、抗菌活性を有するT-phylloplaninの類縁タンパク質、pathogenesis-related (PR)タンパク質に属するmetallocarboxypeptidase inhibitor、Bet v 1類縁タンパク質、lipid transfer proteinをコードする遺伝子などが高いスコアで得られた。LC-ESI-MS を用いて葉からの分泌物とトライコーム細胞抽出物を調べたところ、昆虫忌避活性が報告されているcembrene型ジテルペンが検出された。Cysteine-rich なPRタンパク質の多くはトライコーム特異的に発現しており、重金属キレーターとして機能している可能性が考えられた。Cysteine-richタンパク質の酸化還元制御に関連していると考えられるグルタチオンの分布を共焦点レーザー電子顕微鏡を用いて調べたところ、トライコームのtip cellに蓄積していた。タバコ葉のトライコームは種々の環境ストレスに応答する機構を備えた器官であることが示された。
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三村 由佳子, 田中 淨, 上中 弘典
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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近年頻繁に用いられるようになったGatewayシステムは、目的遺伝子を効率的かつ迅速に様々なベクターへとクローニングすることが可能な手法である。そのため、Gatewayシステムを用いてcDNAライブラリーを構築し、利用することで、様々なベクターを用いたライブラリーが容易に作出できると考えられる。そこでまず、Gatewayシステムに利用できるシロイヌナズナの均一化cDNAライブラリーの作成を行った。様々な処理をしたシロイヌナズナの緑葉から
attB1と
attB2サイトを両端に付加した2本鎖cDNAを作成し、二本鎖DNA特異的DNA分解酵素を用いて均一化処理を行った後、pDONRベクターへクローニングしたものを、均一化cDNAライブラリーとした。また、Gatewayシステムを利用してTobacco Rattle Virus由来のVIGS(Virus Induced Gene Silencing)用ベクターへとクローニングした均一化cDNAライブラリーを利用して、シロイヌナズナにおいて迅速に目的の表現型依存的なスクリーニングを行う系の確立を試みた。VIGS用cDNAライブラリーをアグロバクテリウムに導入した個々のクローンを約3週齢のシロイヌナズナの葉へ導入し、表現型の観察を行った。細胞死関連遺伝子のスクリーニング結果、及び様々な表現型を指標にしたスクリーニングへの応用例についても報告する。
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櫻井 哲也, Plata German, Rodriguez-Zapata Fausto, 関 原明, Salcedo Andres, 豊田 ...
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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熱帯低木キャッサバ(Manihot esculenta Crantz)は、アフリカ、東南アジア、中南米を中心とした国々で盛んに栽培される10億人もの人々の食糧源であるだけでなく、乾燥地、酸性土壌、貧栄養土壌での栽培が可能であることから、デンプン生合成や環境ストレスに関する研究対象として注目を集めている。我々は乾燥、高温、酸性土壌条件などの環境ストレスを与えたキャッサバ植物体を材料として完全長cDNAライブラリを作製し、約20,000クローンについての末端塩基配列情報(EST)を獲得した。得られたESTをアセンブルした結果に基づき、クラスタリングを行ったところ、約11,000種のキャッサバ完全長cDNAを同定した。これらの配列データについて、Gene Ontology (GO) term、代謝経路図への対応付け、非翻訳領域部の推定などの注釈付けを行った結果、デンプン生合成やストレス応答などに関連するキャッサバの特異性を示唆する情報を得た。配列データや上記のような情報は、進行中であるゲノム配列解読プロジェクトにも貢献するものである。我々が生産した情報をデータベース化し、公開する準備を進めており、その現状についても紹介する。
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永野 惇, 深澤 美津江, 西村 幹夫, 西村 いくこ
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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様々な生物学的現象の解析において正遺伝学は極めて有効である.しかしながら一方で,多くの時間と労力,費用を要するという問題点がある.我々はこのような正遺伝学の問題点を解消するため,従来法より高精度・低価格のタイリングアレイ(AtMap1)を設計し,それを用いた欠失変異の同定法の確立を試みた.野生型,変異体のそれぞれのゲノムDNAをAtMap1アレイにハイブリダイズすることで,変異体における欠失領域が変異体に由来するシグナルが低い領域として検出できる.既知の欠失変異体を用いた解析の結果,AtMap1アレイによる欠失変異の検出は有効であることが示され,同時に未知の欠失変異を発見することができた.しかしながら,比較的小さな欠失や転座・逆位などの変異の検出は難しく,すべての変異を同定できるわけではない点に注意を要する.AtMap1アレイによる欠失変異同定のコストは1変異体あたり17,000円,所要時間は3日であり,従来の連鎖ベースのマッピングと比較して,コストは数分の一,所要時間は数十分の一である.また,エコタイプ間で多型が大きい形質の変異や,マーカー情報の乏しいエコタイプ上の変異,復帰変異など連鎖ベースのマッピングでは同定が困難な変異には特にAtMap1アレイによる欠失領域の同定が有用と考えられる.
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望月 孝子, 倉田 のり, 矢野 健太郎
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0979
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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これまでに、イネのゲノム・アノテーションや代謝パスウェイ、ジーン・オントロジー、マイクロアレイ・プラットフォーム、遺伝子発現などの情報がWeb上 に多く蓄積している。これらの情報は複数の異なるWebデータベースから提供されていること、また、遺伝子座やマイクロアレイ・プローブなどに用いられて いる記載法に統一性が無いことから、複数のデータベースに渡る検索が困難となっている。そこで、当プロジェクトでは、RAP-DBとTIGR Rice Genome Annotationが提供するイネのゲノム・アノテーション情報、KEGGとRiceCycが提供する代謝パスウェイ情報、そして、Agilent社の オリゴ・マイクロアレイ(22Kおよび4X44K)とAffymetrix社のGeneChipに搭載されているプローブの情報を統合し、これらを簡便に 検索し得るデータベースOryzaExpressを構築した。遺伝子座やプローブのIDからの検索、アノテーションのキーワードを用いた遺伝子やゲノム情 報の検索が可能であり、また利用可能な公開遺伝子発現プロファイルを検索できる機能を提供している。
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真野 昌二, 三輪 朋樹, 西川 周一, 三村 徹郎, 西村 幹夫
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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本データベースは、平成16年度に発足した特定領域研究「植物の環境適応戦略としてのオルガネラ分化」における植物オルガネラ研究の支援を目的として、運営、構築されている。既に、平成18年9月よりVersion 1として一般に公開している(http://www.nibb.ac.jp/organelles/)。
Version 1は、(1)可視化されたオルガネラの動態を収集したOrganellome database、(2)オルガネラ研究に有用なプロトコールを収集したFunctional analysis database、 および(3)外部へのデータベースやホームページへのリンク集から構成されている。本データベースに登録されているオルガネラの画像およびプロトコールは、全て植物研究者から提供していただいた実際の実験データおよび解析方法より構成されている。これまで、Version 1のインターフェースの改善を行い、また、登録データを増やして内容の充実を図ってきた。それとともに、現在は動画に対応したVersion 2の構築を行っている。このVersion 2も完成次第、一般に公開し、動画データを提供して頂くことによりデータベース内の情報を充実させ、植物オルガネラの動態を明らかにしていくための研究ツールとして広く活用されることを期待している。
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蓬莱 尚幸, 有田 正規, 二瓶 義人, 池田 奨, 諏訪 和大, 尾嶌 雄也, 嘉数 勇二, 曽我 朋義, 西岡 孝明
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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MassBankは代謝物を中心とした化合物精密マススペクトルのデータベースである。スペクトルの標準化が難しい高分解能ESI-(MS)nスペクトルに焦点を定め、個々の代謝物について複数のイオン化、分解、分析手法で測定したスペクトルを包括的に収録することで、前駆イオンの化学構造と個々のピークとの対応付けを可能にしている。
化合物の同定率向上が最大の課題であるメタボローム研究において、精密マススペクトルの体系的理解は必須である。前駆イオンと生成イオンの関係をスペクトルから分析することで、スペクトルからの前駆体構造推定を実現できる。
現時点でMassBankには1,000を超える代謝物標品の12,727スペクトルが収蔵されている。代謝物名や精密質量といった単純キーだけでなく、ピークの差分や計測条件など多様な条件でスペクトルを検索できる。また、複数スペクトルをあわせた「統合」スペクトルなどをグラフィカルに表示する機能も併せ持つ。本講習会では、MassBankのこうした多用な利用方法を紹介する。ぜひhttp://massbank.jp/を訪れてもらいたい。
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櫻井 望, 山崎 清, 鈴木 秀幸, 斉藤 和季, 柴田 大輔
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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代謝制御に関与する遺伝子機能の解明を加速するため、我々はこれまでに、トランスクリプトームとメタボロームを代謝経路マップ上で統合解析するためのウェブツールKaPPA-Viewを開発してきた。本発表では、機能拡張を行い最近リリースしたバージョンKaPPA-View3について報告する。以前のバージョンKaPPA-View2は、モデル植物シロイヌナズナに特化したツールであり、シロイヌナズナの遺伝子のみが代謝経路マップ上の酵素反応に対応づけられていた。KaPPA-View3では、データ構造を改良したことにより、多生物種の代謝経路を解析可能になった。現在、ミヤコグサ(Agilent)、イネ(Agilent)、トマト(Affymetrix)のマイクロアレイのプローブ情報をシロイヌナズナタンパク質との相同性解析により対応づけたものを公開している。またKaPPA-View3では、遺伝子共発現解析機能をさらに向上させた。KaPPA-View2では、遺伝子間の共発現関係を一つの代謝経路マップ上のみで図示していたが、KaPPA-View3では、任意に選んだ最大4枚のマップ間で共発現関係を表示できる。また、ユーザーが任意に入力した遺伝子IDを簡易的なマップとして登録することが可能なため、代謝経路マップには表示されない転写因子などとの共発現関係を解析できるようになった。
http://kpv.kazusa.or.jp/kappa-view/
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近藤 陽一, 櫻井 哲也, 秋山 賢治, 市川 尚斉, 黒森 崇, 黒田 浩文, 吉積 毅, 高橋 真哉, 樋口 美栄子, 中澤 美紀, 川 ...
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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理研PSCでは、これまで幾つかのシロイヌナズナの変異体系統を作出し、データベース化を行ってきた。本講習会ではデータベースを整備済みの変異体系統のうち、外部への公開を行っている「RIKEN Activation Tagging Line Database」、「RIKEN Arabidopsis Phenome Information Database (RAPID)」及び、1月より制限公開予定の「RIKEN RICE FOX Line Database」の解説を行う。
「RIKEN Activation Tagging Line Database」には、アクチベーションタグライン約400系統のデータが、「RAPID」には、独立した遺伝子に挿入が確認されている
Dsトランスポゾン・タグライン約4,000系統のデータが、格納されている。これらのデータには変異体の表現型、及びタグの挿入位置の情報が含まれており、検索機能も搭載している。
「RIKEN RICE FOX Line Database」は、イネFOXライン約17,000系統のデータを格納している。イネFOXラインはイネ完全長cDNAをランダムにシロイヌナズナへ導入、過剰発現させた変異体系統群である。データには、変異体の写真、導入されていたイネcDNAの情報等が含まれている。本データベースは文部科学省の科学技術振興調整費によるサポートを受けて作成された。
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山本 義治, 小保方 潤一
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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シロイヌナズナ、イネのプロモーター配列の統計解析を行い、プロモーター上の特定の場所で現れる配列をプロモーター構成配列として抽出した。抽出された8塩基配列はゲノム当たり1,000個程度であり、TATAボックスや転写開始点のコンセンサス配列であるInr、様々な既知の転写制御配列に加え、新規のコアプロモーター配列や転写制御配列の候補が多数同定されている。抽出された配列の局在性を表すシグナル強度と生体内での機能性(遺伝子発現量)との間に強い相関が確認されており、この手法の有効性が示されている(Yamamoto et al, Nucleic Acids Res 35: 6219, 2007 )。抽出された配列を有効に利用するために、シロイヌナズナ、イネのゲノム配列にこれらのプロモーター構成配列をマッピングし、プロモーターデータベースとして利用出来るようにした。配列の検出には主要転写開始点からの位置を考慮しており、独自に同定した高密度転写開始点情報を元にしている。開発したデータベースにより植物遺伝子のプロモーター構造が高感度に認識出来る。アドレスはhttp://ppdb.gene.nagoya-u.ac.jp。2007年6月末の開設以来数ヶ月の間に、世界39カ国、10万アクセスを超える利用があった。
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田島 直幸, 佐々木 直文, 藤原 誠, 佐藤 直樹
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0985
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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配列が決められたゲノムにコードされたタンパク質を比較し,相同タンパク質を簡単に検索するデータベースとして,Gclustサーバーを公開したので紹介する(http://gclust.c.u-tokyo.ac.jp/)。このデータベースにはさまざまな生物のデータを集めているが,特に植物やシアノバクテリアのタンパク質に関して調べるのに有用である。データベース構築の方法としては,ゲノムにコードされた全タンパク質を集め,総当たりBLASTPを行った。その結果をGclustソフトウェアによってクラスタリングし,系統ごとの保存性で整理したものを,サーバーに載せた。サーバー上では,キーワードによる配列検索,BLASTによる配列検索などが可能で,これによって得られた配列が所属するクラスタを表示し,さらにアラインメントや簡易系統樹が見られる。クラスタとして分割されていても類似性のある配列は,関連グループとして表示される。系統プロファイルを利用する点がこのデータベースの特徴で,生物群特異的に保存されているタンパク質グループを簡単に検索することができる。これを用いて,シアノバクテリアから共生によって植物に持ち込まれた遺伝子の推定などができている。
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深海 薫, 田村 卓郎, 太田 聡史, 小林 正智
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0986
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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シロイヌナズナでは、ゲノム配列や遺伝子などの情報がTAIR (The Arabidoposis Information Resource)データベースにまとめられている。SABRE (http://saber.epd.brc.riken.jp/sabre7/SABRE0101.cgi) では、このTAIRの遺伝子配列データを「串」にして、類似の配列を持つ植物の遺伝子リソース(シロイヌナズナ、ヒメツリガネゴケ、タバコの培養細胞、ポプラ)を、遺伝子ごとに「串刺し」にしてある。そのためBRCリソース番号、AGIコードや遺伝子名などのキーワードを用いることで、検索条件に合致したリソース、それと相同な遺伝子配列を持つTAIRの遺伝子とアノテーション、さらには他の種由来の相同なリソースを、瞬時に検索することができる。
植物遺伝子の機能解析は、主としてモデル植物であるシロイヌナズナを用いて進められてきており、それらの研究成果もまたTAIRに集約されている。SABREは、TAIRの情報をBRCのリソースデータベースと統合することにより、シロイヌナズナで得られた機能解析の知見を他の植物の研究者にも活用しやすくしたものである。今後はSABREにキャッサバや白菜などの作物遺伝子の情報を取り込み、モデル植物研究と作物の品種改良研究の間の垣根を取り払い、作物の品種改良に貢献できるツールとして発展させていく予定である。
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伊藤 剛, 田中 剛, 沼 寿隆, 坂井 寛章
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0987
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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イネは世界で最も重要な作物のひとつであり、特にアジアでは主要な栄養源であることから、農業上重要な形質を発見するに当たって今後のゲノム研究の進展が期待されている。イネアノテーション計画(Rice Annotation Project; RAP)では全ゲノム配列が決定されたイネにおいて高精度アノテーションを付与し、RAP-DBというデータベースの構築と運用を行ってきている。今回、国際イネゲノム配列決定プロジェクトによってゲノム配列が更新され、また数十万件の完全長cDNA端読み配列が公開されたのを受け、そのアノテーションを全面的に更新した。新規に追加されたのは、MPSS、マイクロRNA、トランスポゾン、ミュータント情報などである。また、キーワードや配列の検索機能の利便性を向上すべく改修したので併せて紹介する。
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矢野 健太郎, 青木 考, 柴田 大輔
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0988
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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当プロジェクトでは、矮性トマト品種マイクロトムの葉と果実に由来する5つのcDNAライブラリーと3つの完全長cDNAライブラリーから、ESTおよび完全長cDNAの解読を進めている。EST情報からは、非冗長な配列セット(Unigene)の構築を行うと共に、それらの機能アノテーションや代謝パスウェイ、ジーン・オントロジーとの関連付け、SNPおよびSSRの探索、cDNAマイクロアレイの設計およびマイクロアレイを用いた遺伝子発現データの収集を進めている。これらのトランスクリプトームの情報は、構築・運営しているデータベースMiBASE(http://www.kazusa.or.jp/jsol/microtom/)より提供している。また、完全長cDNA情報を用いて、タンパク質機能ドメインなどの推定やゲノム・アノテーションを進めている。ここで、ゲノム構造の推定は、完全長cDNAとトマト・ゲノム解読プロジェクトから利用可能なゲノム配列との比較に基づく。これらの完全長cDNAとゲノム・アノテーションの情報は、データベースKaFTom (http://www.pgb.kazusa.or.jp/kaftom/)から閲覧が可能である。現在、さらに、根由来の完全長cDNAライブラリーの解析を進めており、Unigeneやゲノム・アノテーションなどの情報のアップデートを行う予定である。
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尾崎 崇一, 尾形 善之, 須田 邦裕, 鈴木 達哉, 青木 考, 柴田 大輔
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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遺伝子共発現解析は、遺伝子の機能推定のための有効な手段の一つである。同じ共発現遺伝子グループに属する遺伝子は関連した機能を持つと考えられる。多くの作物が属すナス科の一つであり、自身も主要な作物であるトマト(
Solanum lycopersicum)においても、マイクロアレイデータの蓄積により、共発現遺伝子解析が可能となってきた。そこで、機能未知遺伝子の機能を推定するために、それぞれの共発現遺伝子グループ全体としての生物学的意義の推定を試みた。
当研究室で取得された73枚のAffymetrix社GeneChip Tomato Genome Array(10038プローブセット)の発現量データに対して、共発現相関係数と遺伝子間の共発現関係の疎密に注目した包括的な解析法を適用し、共発現グループが抽出された。プローブセットのアノテーションから、共発現グループ全体としての生物学的意義を推定できるものを見出した。フラボノイド合成関連遺伝子群、プロテアーゼインヒビター遺伝子群、DNA修復タンパク質遺伝子を含むそれぞれの共発現遺伝子グループには機能未知の転写因子の遺伝子が含まれており、これらの遺伝子の制御に関わっていることを示唆している。
これらの共発現遺伝子グループを紹介するとともに、その一部について行った実験による検証の結果を報告する。
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佐々木 江理子, 浅見 忠男, 嶋田 幸久
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発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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植物体内のホルモン作用や状態を調べる方法には、定量分析やマーカー遺伝子の発現解析等が用いられてきたが、定量には多くのサンプル量が必要とされる上、全ホルモンを同時に、感受性を含めて解析する手法は確立されていない。本研究では、網羅的な遺伝子の発現解析手法として有用なマイクロアレイを用いて、植物体におけるホルモンの生理活性や植物の応答を簡易に解析する新しい手法の開発を行った。我々がAtGenExpressJPNで公開しているマイクロアレイデータセットから、シロイヌナズナの芽生えに代表的な植物ホルモンを処理した実験を用い、ホルモン応答性遺伝子群の発現プロファイルを作成した。発現変動の幅が大きく有意な水準で変動した遺伝子を抽出し、発現値(log2 treatment / mock)を付加したものを各ホルモン応答の標準発現プロファイルとした。次に、作成した各ホルモンの標準発現プロファイルと解析対象のマイクロアレイデータに含まれる対応遺伝子群の発現値の相関を求めることにより、ホルモン応答の検出を試みた。ホルモン応答レベルが明らかになっている実験のデータセットの解析を行い、本手法の評価を行ったところ、阻害剤処理、ストレス処理、ホルモン過剰発現変異体のデータセットから得られた結果は、全て過去に報告されているホルモンの応答または抑制効果に一致し、このことから本手法を用いた植物ホルモンの生理活性や植物の応答の検出が可能であることが示された。
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元廣 春美, 北島 幸太郎, 泉 俊輔, 平田 敏文
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0991
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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植物におけるタンパク質の動的代謝を網羅的に明らかにするために,シロイヌナズナ(
Arabidopsis thaliana)におけるアミノ酸およびタンパク質のturn-over速度を,
15NH
4+のタンパク質への取り込み率の経時変化から解析した。
(
15NH
4)
2SO
4を含むMS培地で10日間培養したシロイヌナズナ培養細胞のタンパク質を抽出し,SDS-PAGEで分画した。上から2mmずつ切り出したゲルをトリプシンでゲル内消化し,MALDI-TOF MSで網羅的に解析した。得られたMSスペクトルから各タンパク質が
15Nラベルされている度合を解析し,turn-over速度を算出した。その結果,1)同じ生合成経路を辿るアミノ酸は同程度の速度で代謝されること,2)Ser, Thrなど翻訳後修飾の受けやすいアミノ酸のturn-over速度は大きいこと,がわかった。また,光合成経路に関わる酵素群ではturn-over速度は速く,構造タンパク質群ではturn-over速度は遅かったことから,同一代謝経路に関わるタンパク質は似通った速度でturn-overしていることも示された。さらに,シロイヌナズナとイネ(
Oryza sativa)由来タンパク質のアミノ酸配列同一性とturn-over速度には相関があることが明らかになった。これらのことから,翻訳後修飾により損傷を受けやすいタンパク質群は速い速度で作り替えられることで,機能の失活を防いでいることが示唆された。
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菓子野 康浩, 井上 名津子, 杉浦 美羽, 佐藤 和彦
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0992
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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光合成系や呼吸系などの電子伝達系のサブユニットタンパク質の多くが膜タンパク質である。プロテオミクス解析の進展に合わせて、MS分析技術が向上し、ゲノムが解析された生物に於いては可溶性タンパク質のタンパク質の同定が容易になった。しかし、膜タンパク質は、水溶性タンパク質に比べるとMS分析で同定できる可能性が低い。また、モデル生物以外のゲノム解析のされていない生物では、MS分析の応用可能性は低い。
このような場合、膜タンパク質の同定のためには、タンパク質を電気泳動で分離し、アミノ酸配列解析を行うことが有効な手段となる。N末端がブロックされていると、内部配列の解析が必要になるが、タンパク質を抽出し、濃縮後トリプシンなどにより限定分解することが有効である。しかし、膜タンパク質は、そのような手法の適用が困難な場合が多い。本研究では、光化学系II反応中心複合体タンパク質D1と、酸素発生系の可溶性タンパク質PsbOタンパク質を比較しつつ、膜タンパク質の分析手法の改善を行った。その過程でCoomassie Blue R250の性質を利用することが効果的であることが判明した。この手法は、ゲノム解析がなされていない多くの生物での膜タンパク質を研究対象としたプロテオミクスに道を開くものと期待される。
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深尾 陽一朗, 西森 由佳, 藤原 正幸, 大津 巌夫
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0993
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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第48回植物生理学会において、脱塩処理を行っていないサンプル、SDSを含んだサンプルを用いて高解像度な二次元ゲル電気泳動像を得るためのノウハウを紹介した。本大会では、プロテオミクスにおける膜タンパク質の効率的な解析方法の確立を目的に、前回大会で紹介した二次元ゲル電気泳動を応用した解析方法を紹介する。解析に用いる膜タンパク質試料として、細胞膜タンパク質を水性二相分配法にて単離精製した。精製された細胞膜タンパク質画分を、SDSを含まない溶液と、1.5%SDSを含む溶液にそれぞれ溶かし、一切の前処理を行うことなく二次元ゲル電気泳動により分離した。この結果、各試料を用いた二次元電気泳動において、分離度の高い泳動像を得ることができ、膜タンパク質に特化した等電点電気泳動においてもSDS溶液が使用可能であることが示された。さらにSDS溶液を用いた場合、(1)水溶性溶液よりも高濃度の試料を得ることができる、(2)SDS溶液によって溶解されるタンパク質スポットが増加する、などの優位性が認められた。本二次元ゲル電気泳動法は元々分離能が高い事に加え、溶媒置換などの前処理が不要なることから、より定量性の高い膜タンパク質の比較解析を可能にする手法である。
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甲斐 光輔, 山田 勇雄, 高橋 弘喜, 櫻井 望, 鈴木 秀幸, 柴田 大輔, 金谷 重彦, 太田 大策
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0994
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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花芽における器官の構造・機能等に寄与する転写調節因子は数種報告されているが、転写調節制御を受ける酵素遺伝子が担う生理機能に関する知見はあまり得られていない。転写調節因子およびその制御を受ける遺伝子が関与する代謝経路の全貌を明らかにするには、マイクロアレイなどによる発現相関解析と共に代謝物レベルでの包括的な解析が重要となる。本研究は、シロイヌナズナの花粉形成に寄与する転写調節因子および発現に相関がみられる機能未知シトクロム P450 遺伝子に着目し、メタボロミクス手法によりこれら遺伝子群の共発現ネットワークを代謝物レベルで解析することを目的とした。
我々はこれまでに FT-ICR/MS (フーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分離装置) を用いたメタボローム一斉解析ツールを確立してきた。FT-ICR/MS は超高分解能を有し、化合物の分離操作なしで生体内の代謝物を包括的、かつ高速に解析することが可能である。そこで花芽において共発現している転写調節因子およびシトクロム P450 遺伝子の過剰発現 T87 培養細胞を作出し、FT-ICR/MS によるノンターゲット型代謝プロファイリング分析に供した。現在、得られた代謝プロファイルを多変量解析に供し、各遺伝子の過剰発現による代謝変動の相関を解析中である。
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佐々木 亮介, 大西 美輪, 飯島 陽子, 櫻井 望, 柴田 大輔, 三村 徹郎, 青木 考
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0995
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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液胞は植物細胞体積の大きな部分を占め、植物の成長や浸透圧調節等に重要な関与があると考えられている。植物の代謝においても、有機酸・二次代謝物などが液胞に蓄積することが知られており、植物代謝産物の貯蔵にとっても重要なオルガネラである。しかしながら、液胞に蓄積する代謝物の多様性や細胞質液胞間の代謝物輸送制御機構は明らかにされてはいない。そこで本研究では、液胞膜輸送機能変換による細胞代謝機能制御研究の基本情報として、均一な形質を持つと考えられるシロイヌナズナ培養細胞系単離液胞ならびに全細胞代謝産物組成の解析を行った。
高速液体クロマトグラフィー-フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(LC-FTICR-MS)を用いてシロイヌナズナ培養細胞DEEP株の単離液胞と全細胞抽出物のESI positive、negative分析を行なった。質量分析データから代謝物の包括的アノテーションを実施し、液胞と細胞での比較解析を試みた。
単離液胞、全細胞抽出物から、それぞれ495成分、607成分(共通95成分)を検出した。代謝物の分子量分布は両サンプルで似たパターンを示した。Negativeモードで検出された成分数は全細胞で単離液胞よりも多かった。この基本情報をもとに、より詳細な推定構造アノテーションに関しても議論する予定である。本研究は科学技術振興機構・CRESTの支援をうけて実施された。
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鈴木 誠, 草野 都, 高橋 秀樹, 市川 尚斉, 松井 南, 森 昌樹, 廣近 洋彦, 斉藤 和季
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0996
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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FOX Hunting System (full-length cDNA over-expressor gene hunting system)は完全長cDNAを用いて多数の遺伝子機能を解析し、有用遺伝子を探索することを可能とする手法である。近赤外分光法は4000-10000cm
-1の近赤外光をサンプルに照射し、反射光から得られるスペクトルをもとにサンプル中代謝産物を非ターゲット解析する分析法であり、サンプルを前処理なしかつ非破壊で測定することが可能であるため、希少サンプルの分析や、迅速なスクリーニングに適している。そこで我々は、イネ完全長cDNAをシロイヌナズナにおいて過剰発現させたFOXラインを用い、代謝物フィンガープリンティング法による非破壊スクリーニングを試みた。分析試料として、T2世代の種子200粒を用いて近赤外吸収スペクトルを測定した。そこで得られたスペクトルデータに多変量解析を適用することにより、代謝物プロファイルの変化したラインを選抜した。これまでに約3000ラインのイネFOXラインを解析し、そのうち30ラインを候補として選抜した。候補ラインについては順次挿入されたイネ遺伝子の同定を行い、合計27遺伝子について再形質転換体を作成した。現在、近赤外分光法による再現性の確認およびGC-TOF/MSによる代謝プロファイリングを行い、これらの遺伝子が代謝物変化に及ぼす影響を解析している。
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Limei Chen, Li Ma, Zhongbang Song, Kunzhi Li, Katsura Izui
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0997
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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The gateway technology developed by Invitrogen is very useful for construction of the expression vectors for a target gene. However, the present destination vectors developed by VIB/Gent for expressing target genes in plants only contain 35S promoter. The expressed proteins driven by 35S are localized in cytoplasm. Thus, the present gateway technology can not be used to construct plant expression vectors for localization of target proteins into chloroplasts. We converted
Xmn I site in gateway entry vector, pENTR-2B, as
HindIII site and then inserted Rubisco small subunit promoter (PrbcS) from tomato and GFP gene into pENTR-2B for generation of a gateway entry vector (pENTR-PrbcS-T-GFP). Here, we showed that pENTR-PrbcS-T-GFP can be applied to generate the entry vector for any target gene by replacement of GFP with a target gene. The plant expression vectors for localization of target proteins into chloroplasts can be made quickly by gateway technology.
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遠藤 真咲, 土岐 精一
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0998
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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ジーンターゲッティング(GT)によりイネAcetolactate synthase (ALS)遺伝子に点変異を導入し、ALS阻害型除草剤ビスピリパック(BS)耐性のイネを作出することに成功した。即ち、BS 耐性を付与する2点の変異を有するが、5'領域を欠損しているために機能的ではないALS遺伝子断片(約8kb)をアグロバクテリウム法によりイネカルスに導入した。その結果、1500個のカルスより、72個体のBS耐性植物体を得ることができた。GTベクター上にはBS耐性を付与する2点の変異に加え、サイレントな2点の変異が存在している。72個体のBS耐性個体のうち、70個体では、これら複数の点変異が導入されており、GTが生じている事が確認された。また、非常に興味深いことには、GT個体70個体中3個体では、GTベクター上の4点の変異のうち、隣り合わない2点の変異が導入されており、GTと同時にmismatch repair機構が働いた可能性が示唆された。さらに、GT後代で得られる改変型ALSのホモ接合体は、改変型ALS遺伝子の過剰発現体を上回る著しいBS 耐性を獲得しており、遺伝子の完全置換の有効性が示された。
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溝渕 正紘, 東條 卓人, 山崎 健一
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0999
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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グルココルチコイドは副腎皮質ホルモンの一つであり、核内受容体である副腎皮質ホルモン受容体との結合を介して脊椎動物の糖代謝や抗炎症作用などの重要な代謝に関わっているので新薬開発のターゲットとなっている。そのようなグルココルチコイド様活性物質や抗グルココルチコイドなどの一次選抜には多額の費用がかかるため、簡便で安価な一次選抜法の確立が求められる。これまでに植物を用いたGVGシステムや酵母を用いたレポーター遺伝子アッセイなどの例があるが、GVG システムは感度が低く、酵母のシステムは操作が煩雑である。
そこで、我々はシロイヌナズナにGRαリガンド結合ドメイン (GRα-LBD) と大腸菌由来のリプレッサーDNA結合ドメイン (LexA-DBD) を連結したエフェクター1遺伝子、転写コアクチベーター (TIF2) と転写増幅ドメインであるVP16 を5 コピー連結したエフェクター2遺伝子、及びレポーター遺伝子を連結させたプラスミドを導入し、リガンドと GR-αLBDとの結合によりTIF2-VP16×5をリクルートし、レポーター遺伝子の転写を活性化するシステムを構築した。これはTwo-hybrid Systemを応用したレポーター遺伝子アッセイであり、検出感度は高かった。また、アンタゴニスト活性検出のために、デキサメタゾンへのアンタゴニスト(ミフェプリストン)の添加によるGUS活性の低下も確認できた。
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平井 里奈, 東條 卓人, 山崎 健一
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1000
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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甲状腺ホルモン (Thyroid hormone) は脊椎動物の代謝・発生・分化・成長・変態・細胞死になど関わる重要なステロイドホルモンであり、核内受容体である甲状腺ホルモン受容体 (TRβ1) と結合し、標的遺伝子の転写調節を行う。このような動物の核内受容体を利用した植物でのケミカルインダクションシステムには、エストロゲン受容体や副腎皮質ホルモン受容体を利用したものが知られている。しかし、これらのシステムはリガンドの必要量が多かったり、誘導に組織特異性が有ったりして、必ずしも広く普及しているわけではない。従って低濃度のリガンドに鋭敏に応答し、全組織で標的遺伝子の発現を誘導可能なシステムが求められる。
シロイヌナズナに TRβ1 リガンド結合ドメイン (TRβ1-LBD) と大腸菌由来のリプレッサーDNA結合ドメイン (LexA-DBD) を連結したエフェクター1遺伝子、転写コアクチベーター (TIF2) と転写増幅ドメインであるVP16 を5 コピー連結したエフェクター2遺伝子、及びレポーター遺伝子を連結させたプラスミドを導入し、リガンドとTRβ1-LBDとの結合によりTIF2-VP16×5をリクルートし、レポーター遺伝子の転写を活性化するという植物ツーハイブリッドシステムを構築した。これは100 pMという超低濃度の Thyroid hormone に応答し、葉でも根でも同様にレポーター遺伝子の発現を誘導した。
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