日本補助犬科学研究
Online ISSN : 1882-3084
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10 巻, 1 号
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基調講演
シンポジウム
原著論文
  • 鈴木 宏志, 横澤 幸美, 橋本 友樹, 伊藤 美咲, 水上 言, 高柳 友子, 諏訪 義典, 加藤 淳一, 古橋 博昭, 和田 孝文
    2016 年 10 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/12
    ジャーナル フリー

    【目的】身体障害者補助犬の社会への浸透を促進するためには、人獣共通感染症を含む補助犬の公衆衛生管理の充実および補助犬の能力に関与する遺伝的疾患の把握は、重要な要素であると考えられる。2008年、補助犬に汎用されているラブラドールレトリバーに好発する運動誘発性虚脱症候群(Exercise-induced collapse: EIC)は、ダイナミン 1の突然変異による遺伝性の疾患であることが明らかとなった。補助犬では強い運動付加を求められることがほとんどないことから、特に盲導犬や介助犬としての使役に対しては、本遺伝子の変異が、その能力に影響を及ぼすことは少ないものと考えられるが、繁殖計画を立てる上で、コロニーの遺伝子頻度の把握は重要であると思われる。 【方法】そこで、本研究では、補助犬の繁殖に供用および供用予定のラブラドールレトリバーとその雑種を対象にダイナミン1の変異について、その遺伝子頻度を解析した。遺伝子変異の同定は、制限酵素 Sml Iを用いた制限酵素断片長多型(RFLP)解析によって行った。 【結果】合計 162頭の野生型、ヘテロ、ホモの割合は、それぞれ、66%、30%および 4%であった。 【結論】本結果は、今後の繁殖計画の立案および繁殖・育成に有効に機能するものと思われる。

  • 細川 絢加, 三浦 靖史
    2016 年 10 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/12
    ジャーナル フリー

    【目的】視覚障害者にとって、点字ブロックや音響式信号機などの移動支援手段が欠かせないが、点字ブロック周囲への自転車の放置や、盲導犬の受け入れ拒否などの問題が報告されている。これらの問題を解決するためには、健常者が視覚障害者の移動支援手段を正しく認識する必要がある。そこで健常者を対象に、視覚障害者の移動支援手段に関するアンケート調査を実施し、課題を明らかにして対策を検討した。 【方法】2015年 1~2月に、大学生を対象として、視覚障害者の移動支援手段と誘導方法等に関する自己記入式アンケート調査を行った。白杖、視覚障害者の誘導方法、身体障害者補助犬法の認知度に関しては、医学部・教育系学部と他の学部との間で比較した。 結果 :本調査の回答者は 209名で、医学部・教育系学部の学生が 87名 (41.6%)、他の学部が 122名 (58.4%)であった。認知度は点字ブロックと盲導犬は 100%、音響式信号機 85.6%、白杖 80.4%、介助犬 66.0%、聴導犬 33.5%、補助犬法 24.9%、誘導鈴 7.2%であった。点字ブロックと駐輪自転車との間に必要な間隔について、 91.9%が 0.5m以上を、 8.1%が 0.5m未満を選択した。視覚障害者の誘導方法を知っていたのは 1. 7%で、知ったきっかけは授業・実習が最も多かった。誘導方法、白杖、補助犬法の認知度はいずれも、医学部・教育系学部で有意に高かった。ただし、盲導犬の役割に関する 5つの質問全てに正答したのは 2.2%に過ぎなかった。 【考察】視覚障害者の安全な歩行のために点字ブロックの周囲に必要な空間について、回答者の 8%が正しく理解していなかったこと、また、盲導犬の存在を知っていることと盲導犬の役割を理解していることは大きく解離していたことから、視覚障害者の移動支援手段について、具体的な内容での啓発を行う必要があると考えられた。また、医学部・教育系学部で移動支援手段について認知度が有意に高かったが、これらの学部では障害に関する授業が開講されており、そのことが移動支援手段への理解に役立っていることが考えられた。 【結論】視覚障害者の移動支援手段への理解向上のために、視覚障害に関する教育を積極的に実施する必要がある。

  • 倉澤 悠維, 三浦 靖史
    2016 年 10 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/12
    ジャーナル フリー

    【目的】 2020年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されるにあたり、身体障害者補助犬(以下、補助犬)使用者を含む多くの障害者の来日が予想される。来日する補助犬使用者の多くは国際線フライトを利用すると考えられるが、国際線航空会社の補助犬への対応の現状はあまり知られていない。そこで航空会社の対応状況について調査し課題を検討した。 【方法】2015年の 5-7月に日本に国際線定期便を運航している航空会社を対象に補助犬への対応状況について、各社のホームページ(以下、 HP)に掲載された情報を参照し、 HPで得られなかった項目については電話による問い合わせを行った。 【結果】81社のうち 76社 (93.8%)から情報を収集できた。 53社 (69.7%)で HPに補助犬に関する情報の掲載があったが、HPのみで調査した情報を全て参照できた会社は 8社 (10.5%)であった。59社 (77.6%)が補助犬を客室に同伴可能であり、同伴可能な補助犬の種類は、盲導犬が 56社 (73.7%)、聴導犬が 49社 (64.5%)、介助犬が 38社 (50.0%)であった。また、補助犬の搭乗時に必要な物として口輪が同伴可能な 59社のうち 15社 (25.4%)であげられ、そのうちの 7社は介助犬を客室に同伴可能と回答していた。 【考察】約 4分の 3の航空会社で補助犬を客室に同伴可能であったが、盲導犬と比較して介助犬の同伴可能な割合が低いことが明らかになった。また、補助犬に関する情報の HPからの収集は容易でないことが明らかになった。 【結論】国際線航空会社における補助犬を同伴しての航空機利用に関するサービスが、情報提供を含めて、より一層向上するように、航空会社に対して補助犬に関する啓発活動を実施する必要がある。

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