【目的】視覚障害者にとって、点字ブロックや音響式信号機などの移動支援手段が欠かせないが、点字ブロック周囲への自転車の放置や、盲導犬の受け入れ拒否などの問題が報告されている。これらの問題を解決するためには、健常者が視覚障害者の移動支援手段を正しく認識する必要がある。そこで健常者を対象に、視覚障害者の移動支援手段に関するアンケート調査を実施し、課題を明らかにして対策を検討した。 【方法】2015年 1~2月に、大学生を対象として、視覚障害者の移動支援手段と誘導方法等に関する自己記入式アンケート調査を行った。白杖、視覚障害者の誘導方法、身体障害者補助犬法の認知度に関しては、医学部・教育系学部と他の学部との間で比較した。 結果 :本調査の回答者は 209名で、医学部・教育系学部の学生が 87名 (41.6%)、他の学部が 122名 (58.4%)であった。認知度は点字ブロックと盲導犬は 100%、音響式信号機 85.6%、白杖 80.4%、介助犬 66.0%、聴導犬 33.5%、補助犬法 24.9%、誘導鈴 7.2%であった。点字ブロックと駐輪自転車との間に必要な間隔について、 91.9%が 0.5m以上を、 8.1%が 0.5m未満を選択した。視覚障害者の誘導方法を知っていたのは 1. 7%で、知ったきっかけは授業・実習が最も多かった。誘導方法、白杖、補助犬法の認知度はいずれも、医学部・教育系学部で有意に高かった。ただし、盲導犬の役割に関する 5つの質問全てに正答したのは 2.2%に過ぎなかった。 【考察】視覚障害者の安全な歩行のために点字ブロックの周囲に必要な空間について、回答者の 8%が正しく理解していなかったこと、また、盲導犬の存在を知っていることと盲導犬の役割を理解していることは大きく解離していたことから、視覚障害者の移動支援手段について、具体的な内容での啓発を行う必要があると考えられた。また、医学部・教育系学部で移動支援手段について認知度が有意に高かったが、これらの学部では障害に関する授業が開講されており、そのことが移動支援手段への理解に役立っていることが考えられた。 【結論】視覚障害者の移動支援手段への理解向上のために、視覚障害に関する教育を積極的に実施する必要がある。
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