動物循環器病学会学術誌
Online ISSN : 2432-5392
1 巻, 2 号
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症例報告
  • 原田 佳代子, 水野 壮司, 侭田 和也, 上地 正実
    2017 年 1 巻 2 号 p. 25-30
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    去勢雄、9 ヵ月齢の雑種猫が、重度の高窒素血症と無尿を呈して来院した。初診時の血液検査では、尿素窒素 (BUN)(>140 mg/dL)およびクレアチニン (Cr)(15.1 mg/dL)の上昇が認められた。また、血漿カリウム濃度が9.8 mEq/L と顕著に上昇しており、心電図検査で高カリウム血症に起因するP 波の消失およびQRS 幅の延長が認められた。発症の経緯および治療経過、各種検査所見の結果から、International Renal Interest Society (IRIS) の急性腎障害(AKI)診断基準におけるグレード5 の腎性AKI と判断し、腎代替療法として腹膜透析を実施した。第3 病日に全身麻酔下で開腹術を行いディスク型腹膜透析用カテーテルを肝臓横隔膜面に設置した。腹膜透析は、透析液を腹腔内に注入し、2–3 時間後に自然落差を利用して排液させる作業を繰り返して行った。第6 病日から徐々に尿量の増加が認められるようになり、第8 病日には一般状態の改善、第9 病日に食欲の改善が認められた。血液検査所見は緩やかに改善し、第21 病日の退院時には、BUN(62.8 mg/dL)およびCr(2.2 mg/dL)が低下した。術後1 年8 ヵ月後現在、血液検査上BUN およびCr 値は正常に回復し、無治療で良好に経過している。猫におけるディスク型の腹膜透析カテーテルを使用した腹膜透析に関する報告は少なく、その詳細の多くは明らかになっていない。本症例では、ディスク型のカテーテルを肝臓横隔面に設置することにより、腹腔内のカテーテルの位置移動や大網や腹腔内脂肪によるカテーテル閉塞を起こすことなく、効率的な注排液を行うことができたと示唆された。

診療ノート
  • 西尾 洋介, 小杉 和伸
    2017 年 1 巻 2 号 p. 31-34
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    雑種猫 (雌、年齢不詳、体重3.6 kg) が出産後の腹囲膨満、食欲低下、元気消失、呼吸速迫を主訴に来院した。右側心基部にGrade Ⅲ/Ⅵの収縮期逆流性雑音、左側心基部にGrade Ⅲ/Ⅵの犬糸状虫症特有の雑音聴取、胸水および腹水貯留、心エコー検査にて右心房および右心室に虫体の存在を確認し大静脈症候群を呈していた。血液検査では犬糸状虫(Dirofilaria immitis)抗原も陽性を示した。胸水および腹水を穿刺吸引除去し呼吸状態を改善し食欲の回復が認められ、長距離輸送に耐え得ると判断し、虫体摘出のため北里大学附属家畜病院へ上診した。アリゲータ鉗子による虫体の摘出を検討したが、頸静脈が細く鉗子の挿入が不可能であったため、開胸による右心房切開ならびにアリゲータ鉗子による吊り出し術を適用した。術後は臨床徴候が軽減され良好に維持されている。

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