シイタケの子実体の菌傘の色は,流通市場における重要な品質評価項目の一つであるばかりでなく,農林水産省の種苗法によって新品種登録の際に提示することが義務づけられている項目でもある.このように菌傘の色の評価は,重要な評価項目の一つであるにもかかわらず,従来,熟練者の肉眼による色見本との対比とこれに基づく等級化によって行われている.そこで本研究では,シイタケの子実体の傘の色の客観的な品質評価方法を確立することを目的として,色差計の導入の可否を検討した.供試シイタケ品種に対して,菌傘表面の中心部,中心部と外側部の中間部,および外側部を,開口直径6mmおよび30mmで色差計を用いて測定した.通常の湿度条件である相対空気湿度約65-90%で栽培した展開度100%(10分)の秋山A-589号株についての測定値をx^2適合度検定にかけた結果,菌傘のいずれの部位における明度,彩度,色相角度の値も,6mm開口直径の測定では5%水準では正規分布であるという仮定を棄却できなかったが,30mm開口直径での測定値では0.3%以上の水準で正規分布から偏った分布と判定された.この結果から,6mm開口直径での測定の方が適切と考え,以下の実験ではすべて6mm開口直径を標準測定条件とした.通常空気湿度条件下で栽培したA-567株と秋山A-500号株を用いて傘の展開に伴う菌傘表面の色の変化を調査したところ,明度と彩度の変化として把握されることが判明した.通常空気湿度条件下で栽培して,種苗法での基準となる菌傘の展開度80%(分)に達した6品種(A-567株,A-580株,秋山A-503号株,秋山A-589号株,秋山A-500号株および秋山A-550号株)について菌傘の表面の色を比較したところ,明度,彩度,および色相角度はいずれも菌傘の外側部で品種間の相違が明瞭化する傾向がみられた.相対空気湿度,約95-100%(高湿度条件)で栽培したA-580株の菌傘の表面の色は,3部位ともに高湿度条件下で栽培したものでは通常湿度条件下で栽培したものと比較して明度と彩度の測定値が低下する傾向がみられた.各品種で得られた明度,彩度,および色相角度の測定値はいずれも肉眼による色の評価とよく対応するものであった.これらのことから,色差計による生シイタケの菌傘の表面の色の測定は,6mm開口直径を用い,展開度を特定した菌傘の外側部を測定すれば,客観的評価方法として導入可能と判断した.
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