口腔病学会雑誌
Online ISSN : 1884-5185
Print ISSN : 0300-9149
86 巻, 2 号
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原著
  • 渡辺 数基, 大杉 勇人, 前川 祥吾, 佐々木 直樹, 芝 多佳彦, 片桐 さやか, 荒川 真一
    2019 年 86 巻 2 号 p. 25-35
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2024/08/03
    ジャーナル フリー

     目的 : オゾン (O3) は酸化ストレスの調節を介しさまざまな生理作用をもつことが明らかとなっており, その作用を利用したものとしてオゾンウルトラファインバブル水 (OUFBW) が挙げられる。OUFBWはオゾンの保存性が良好で, 線維芽細胞や上皮細胞に毒性を示さず, 殺菌効果があることが明らかになっているが, OUFBWの創傷治癒効果についての詳細な作用機序はいまだ明らかとなっていない。本研究においては, マウス創傷治癒モデルを用いることによりOUFBWの創傷治癒における作用機序を明らかとすることを目的とした。

     材料および方法 : 8週齢の雄性C57BL/6Jマウスの背部に全層皮膚欠損層を作成し, 1日ごとに100 μLのOUFBWを創部に滴下し, 対照群においては紫外線照射により不活性化したOUFBW (オゾン濃度0 ppm) を滴下した。組織の形態計測解析, 組織学的解析, また肉芽組織で遺伝子発現を行った。

     結果 : OUFBW投与群では対照群と比較し創部の大きさ (OWR) は減少傾向にあり, 上皮化率 (ER) は有意に増加した。創傷治癒初期ではOUFBWはTumor necrosis factor-alpha (TNF-α) とCollagen type ⅣのmRNA発現を有意に上昇した。また滴下後7日目の創部組織ではTNF-αとInterleukin 6のmRNA発現は有意に低下し, 一方でFibroblast grows factor-2 (FGF-2) のmRNA発現は有意に上昇していた。組織学的評価においてもOUFBWによる異常な治癒は認められなかった。

     結論 : 今回, OUFBWが炎症因子を介して創傷治癒を促進する可能性を示唆する結果が得られた。創傷治癒過程には炎症性サイトカインやFGF-2, Collagen type Ⅳをはじめとしたさまざまな因子が関与しているためさらなる検討が必要であるが, 本研究はOUFBWの効果に関して新たな知見を与えるものであると考えられる。

  • カイ ミャッ トウ, 金澤 学, トウイ ヴォ ラム, 浅見 茉里, 佐藤 大輔, 水口 俊介
    2019 年 86 巻 2 号 p. 36-46
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2024/08/03
    ジャーナル フリー

     目的 : 本研究の目的は, ロケーターアタッチメントを使用したシングルインプラントオーバーデンチャー (SIOD) において, ナイロンインサートの耐久性およびSIODの維持力と患者満足度の関連を調査することである。

     材料と方法 : 21人の下顎全部床義歯装着患者に対し, それぞれ下顎正中にインプラント1本を埋入し, ロケーターアタッチメントを使用したシングルインプラントオーバーデンチャー (SIOD) を製作した。アタッチメントは, ブルーまたはピンクのナイロンインサートにて維持力を調整した。SIODの維持力を患者の口腔内にて維持力測定装置を用いて10カ月間, ナイロンインサートの交換まで毎月測定した。維持力の測定と同時に, 100 mmのVisual Analog Scale (VAS) を用いてSIOD使用1カ月後から毎月, 患者満足度の評価を行った。また, ナイロンインサート交換の日に, 患者に毎日の義歯の着脱回数を質問した。ナイロンインサートの耐久性についてはカプランマイヤー法を用いて分析を行い, SIODの維持力と患者満足度についてスピアマンの順位相関係数を用いて分析を行ったのち, 最適な維持力のカットオフ値をROC曲線から求めた。

     結果 : どちらのナイロンインサートも, 生存期間の中央値は6カ月 (ブルー : 5カ月, ピンク : 7カ月) だった。ブルーおよびピンクのナイロンインサートの耐久性に統計的有意差は認められなかった。SIODの維持力と満足度におけるスピアマンの相関係数は0.39 (P<0.0001) であった。統計解析より, SIODにおける維持力の最適なカットオフ値は6.05N以上と8.32N以上であった。

     結論 : ロケーターアタッチメントのナイロンインサートは, 6カ月まで十分な維持力で使用できる可能性が示唆された。SIODの維持力は, 6~8N以上で最も高い患者満足度が得られた。

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