Caseのゲル化の定義は, 成長の期待値の概念に基いているが, 一般化された系 (特に複雑な場合) の取扱いは極めて煩雑となるため従来は全くなされていなかった。本報では, 一般化された系に対する成長の期待値を与える関数のうち, 対称性を有する形に変換されたものを「ゲル化式」と定義し, これを求める事を目的とした。ゲル化式は, 系に存在する官能基の反応率のみを変数とし, 反応開始時は0であり反応率の増大と共にその値は1に近づいて行く。この値が1となる点がゲル化点である。
ゲル化の系は1乃至数種の成分より構成され, 各成分は1乃至数種の官能基を1乃至数個含有しており所謂モノマーに相当するものである。
ゲル化の系は整理すると, 先ず系の官能基の種数の数に応じて1元系, 2元系, 3元系…と大分類され, 次に系の成分のタイプにより1元系は (A) 系, 2元系は (A+B) 系, (AB) 系, 3元系は (A+B+C) 系, (ABC) 系というように分けられ, 更にそれぞれの系が単成分系か多成分系かに分けられる。本報で対象としたのは3元系までである。
ゲル化式の誘導に際しては, 最も細分された部分成長の期待値の値を「分岐因子」と「結合因子」との積の形であらわすことを試み, その面倒をかなり簡明化することに成功した。また新しい演算記号, * (積和と称す) を導入し, 2つの同次のマトリックス間の相対応する行列式 (小行列式をも含む) のすべての積の和をあらわすこととした。得られたゲル化式は単純明解な形であり, 次の特徴がある。
(i) 多成分の場合も単成分の場合とゲル化式は同形である。
(ii) 成分のタイプが異ってもゲル化式は同形である。
(iii) ゲル化式は, すべての分岐因子または結合因子よりなるそれぞれのマトリックスの積和の形で表わされる。
本報の結果を適用すると如何なる系のゲル化式も直ちに得られ, ゲル化点での反応率の予測が可能となる。更に, 官能基の種類が4以上の系まで延長してそのゲル化式を推定することが可能である。
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