耐熱性樹脂の分子量分布測定法の確立を目的に, テトラヒドロフラン (THF) 可溶ポリアミドイミド (PAI) とポリアミド酸 (PAA) を合成し, これらの樹脂を用いて充てん剤と溶離液の種類をそれぞれ変えた場合のサイズ排除クロマトグラフィ (SEC) の溶出挙動について調べた。
THFに可溶な耐熱性樹脂として, 2, 2-ビス [4- (4-アミノフェノキシ) フェニル] プロパン (BAP) と無水トリメリット酸クロライド (TAC) 又はBAPとピロメリット酸二無水物 (PMA) とからPAI-B及びPAA-Bを合成し, 実験用試料とした。スチレン・ジビニルベンゼン共重合体ゲル (Sカラム) を用いたSECにおいて, ジメチルホルムアミド (DMF) とTHFの混合 (D/T) 溶離液中に, 解離抑制や充てん剤への吸着防止作用をもつ臭化リチウムとりん酸を添加剤として加えると, PAI-BとPAA-Bは再現性の良いSECクロマトグラムを示した。この系において, 溶離液をD/TからTHFに変更すると添加剤なしで正常なSECクロマトグラムの得られることが分かった。さらに, Sカラムを親水性アクリル酸エステル系ゲルカラム (Aカラム) に交換し, 溶離液としてD/Tを使用することによっても添加剤なしで再現性の良いSECクロマトグラムの得られることが分かった。
これらの結果から, 耐熱性樹脂であるPAIとPAAのSECにおける溶出挙動は, 試料・充てん剤・溶離液間の三者の相互作用の影響を受け, 特に試料と充てん剤との相互作用に大きく左右されることが確認できた。
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