子葉, 根及びカルスをナースとして用い, ダイコン (品種: 白姫) のプロトプラスト培養を行った. プロトプラストは, 無菌的に発芽させた幼植物体の子葉及び幼葉から酵素処理によって単離した. 酵素処理は, 40rpmで3時間振蘯を行った. その結果, MS培地を用いて子葉, 根をナースとした場合の細胞分裂率はこれまで報告された十字花科作物などの結果とほぼ同じであった. また, 子葉及び根をナースとした場合の細胞分裂率及びコロニー形成率はカルス及び無ナースの場合よりも有意に高い値を示した. さらに, 子葉ナースは根ナースよりも細胞分裂率及びコロニー形成率が高い傾向を示し, カルスナースは無ナースよりも細胞分裂率及びコロニー形成率が高い傾向を示した.
コロニー由来の黄色ないし緑色カルスから, 培養30日後に zeatin 2.0mg/
l+kinetin 2.0mg/
lのホルモンの組み合わせで13.2%, BA1.0mg/
l+kinetin 2.0mg/
lのホルモンの組み合わせで18.5%の幼芽が分化した. 同じ zeatin 及びBA濃度と kinetin 濃度1.0及び3.0mg/
lの組み合わせでは, 幼芽分化率は10%以下に低下した. このことは, 幼芽形成に有効であるとされている zeatin とBAの効果が kinetin の濃度によって影響されることを示唆している.
本研究の結果は, 作物の中で比較的に困難とされているダイコンのプロトプラスト培養, さらに植物体再生の改良に知見を与えるものである. 今後の課題は, これらの知見を基にして細胞融合, 形質転換植物体の育成を検討することである.
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