甲殻類の研究
Online ISSN : 2433-0108
ISSN-L : 0287-3478
4.5 巻
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
  • 原稿種別: 表紙
    1971 年 4.5 巻 p. Cover1-
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    1971 年 4.5 巻 p. Toc1-
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1971 年 4.5 巻 p. App1-
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 酒井 恒
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 1-49
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
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  • 上野 益三
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 50-61
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    英領コロンビア州(カナダ),バンクーバー島の5湖沼で採集されたDaphnia属は,基本的にD.pulex Leydig, D.rosea Sars,ならびにD.Thorata Forbesの3種であった。しかし,これら3種の各湖沼の個体群を精検すると,各個体中にはそれぞれの種特有の外観をもつと同時に,2種の各特徴を種々の程度に併せもち,互いに別種と明確に決定しにくいものがある。これは恐らく遺伝子移入による,自然状態でできた種間雑種と考えられ,その形態上の特徴から,D.pulex×D.middendorffiana, D.rosea×D.middendorffiana,ならびに,D.thorata×D.roseaだろうと認めて記載した。
  • ライス エー エル
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 62-70
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    ウィリアムソン(1965)はオーストラリアのニュー・サウス・ウェルスのハッキング港沖で,眼上部や甲殻背面側面に非常に長い棘をそなえたホモラ科のメガロパを採集し,このメガロパについて記述し,一応Paromola petterdi(Grant)のメガロパとした。著者はさらに1967年に,このメガロパがHomola orientalis Hendersonに属するのではないか,そして別の亜種か,または酒井(1965, pl.6, Fig.4)によって図示された非常に短かい側棘を有するメガロパと同じ種の変種であることを提案した。疑いなくウィリアムソンのと同じ種に属する第3番目のメガロパとまたHoloma orientalisの幼蟹は両方とも相模湾産で,天皇陛下の御採集品であるが,最近酒井恒博士の好意により私の手元に入った。オーストラリアの標本と異なり日本のメガロパはその付属肢を全て有し,ウィリアムソンが観察できなかった二三の細かな形態を具えている。しかしながらさらに重要なことはそれが相模湾に産するために同定に便宜を提起していることである。
  • セレーン ラオール, 小田原 アキ子
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 71-74
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
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    歴史と観察-酒井(1938)は,瀬戸(白浜)産,59×31のオスのnipponesisについて述べている。酒井に依れば,本種は次の点で大西洋産Portunus vocans A.M.E.と異なる。1)甲殻の後部が狭くなっている。2)前側縁歯は基部が幅広く先が尖っていない。3)心域は明確に稜線をなしていない。4)前鋼線は前方に向って強くカーブしている。5)鋏脚の長節には2棘でなく3棘ある。6)鋏脚長節の擦音器の棹は中途で途切れている。現在ある雌の標本は酒井(1938,1939)の観察引例と説明に一致する。鋏脚の長節の僅かな差異は恐らく標本の性差に依るのであろう。即ち(1)前縁において(第三の)後縁歯は酒井(1938)の標本よりも短かく,明かに未発達である。(2)発音器り桿は酒井の図ほど明確ではないが途切れている。前側縁腹面の発音桿が下眼窩の外葉の歯状縁に接して居り,又vocansについてラスバン(1930)が報告しているものと近似していることを記述する。酒井の図(1938)は,この点が相違している。窩眼外角は第一前外歯(酒井の第二,1938)の背面に位置する。即ち発音器の桿(本標本では27ある)の列は末端が下眼窩の外業の縁の5歯になっていることである。異る特徴の1の価値を正確にするために甲殻の後縁幅の長さを前側縁歯端間の最大計測値で比べてみた。この標本では甲殻の最大幅は後縁の幅の3.7倍である。それはnipponensisのType標本とは似ているが一方vocansではたった3.1倍でしかない。測定値はnipponensisのTypeについては酒井(1938)の図により,vocansについてはRathbun(1930)の図によった。ボルネオのPontianakからの標本記録はその地理的分布をかなり拡げた,そして本種は恐らく広くインド洋太平洋に分布しているという酒井(1938)の見解を確証した。私はエドモソソソ(1935)の標本即ちオアフ(ハワイ)採集の6×11の♂はnipponensisの幼型であるとする酒井(1938)の考えと一致している。タイプ標本の棲息環境は報告されていたい。現標本が77mの深さで採集された事は海岸近くにはなく又その記録の珍らしさを示している。
  • 松尾 美好
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 75-91
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
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    1.この研究はムツアシガニが,発生過程のどの時期に,3対の歩脚をもつようにたるかを知ることが目的である。2.研究の材料として使ったムツアシガニは,有明海の干潟に生息するトゲイカリナマコと共生生活をしている。3.このカニの幼生,ゾエア,メガロパが,幼カニに発育するまでの経過を人工飼育によって観察した。4.この研究で,ヒメムツアシガニの,第1期〜第3期ゾエアとそれに続くメガロパ期,幼カニ期の発達段階が明らかにされた。5.ヒメムツアシガニの産卵からふ化まで約1ケ月を要し,上記のそれぞれの段階に達するまでの期日はそれぞれ約1週間の日数である。6.第二期ゾエア期において3対の歩脚の原基が出現し,歩脚の数はこの時期において決定する。ゾエアの特徴 頭胸甲には前頭棘と後頭棘各1棘ずつ,側棘1対,第1,第2触角,大顎,第1・第2小顎,第1〜第3顎脚などすべての附属肢が出現する。顎脚外肢の遊泳毛の数は発育に伴って,4・6・8本と増加する。腹部は6節より成り第1節背面には湾曲した1棘と,第5節の側面に長くのびた1対の腹棘がある。尾節は2叉して長くのび,第5節に似ている。この内側に3対の刺毛が見られる。第二期ゾエアから,鯉,胸脚(鉗脚1対と歩脚3対)および腹肢の原基が出現する。メガロパの特徴 頭胸甲はその輪廓が円形である。額には3個の歯があり,中央の1歯は先端が丸く前方に突出し左右の歯は斜め前方に長く突出して尖っている。鰓域にはゾエア期の側棘の痕跡が残る。心域から後頭棘がのびている。第1・第2触角,大顎,第1・第2小顎,第1〜第3顎脚などそれぞれ1対ずつある。ゾエア期で原基であった胸脚は鉗脚や歩脚としての機能をもつようになる。腹部は6節あり,遊泳脚としての機能をもつ4対の腹肢が見られる。幼ガニの特徴 甲殻は輪廓が梯形で円く背面はふくれている。額域や胃域や心域には小さい顆粒がある。鉗脚は左右等大で掌節には短毛や顆粒をそなえている。歩脚は3対あり,長毛を列に生じている。腹部は6節より成り,不完全にたたまれている。
  • 鈴木 博
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 92-122
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    二枚貝と共棲するエビの種類は日本沿岸ではあまり多くたく,カクレエビ(Conchodytes nipponensis(de HAAN),C.tridacnae PETERS, Anchistus Anchistus misakiensis YOKOYA, A.pectinis KEMPなどが知られているにすぎない。筆者は真鶴臨海実験所付近の海から下記のような5種類(うち3種類は新種)の二枚貝と共棲するエビをしらべる機会を得た。1.カクレニビConchodytes nipponensis(de HAAN) 体は背腹にやや扁平で,一般に第5腹筋以下は腹側へ折り曲げられていて背面からみえない。額角はあまり長くなく触角柄を越えない。また額角を側面からみると,前方へ向ってゆるやかに下垂し,その先端は切断された形になっている。大顎に内肢がなく臼歯状部及び犬歯状部がある。犬歯状部の先端にある鋸状歯の数は従来4個とされていたが,筆者の標本ではこの数は4〜7個で一定せず,しかも左右の大顎でその数は相違している。第1,第2胸脚は鉗脚で,後者は大きい。第3胸脚以下は互に類似し,指節には2個の鈎がある。この指節の基部腹縁は隆起し,その先端に小突起を有することがある。尾節は襖形で,その両側縁近くに3対の,先端には2対の棘がある。雌は雄にくらべて体が大きく,筆者の扱った標本では雌の頭胸甲の長さは最も大きいもので8.29mm,雄では7.68mmであった。雄では第2鉗脚(第2胸脚)が雌のものより大きく,第2腹肢の内肢には雄性突起がある。生時の体はうすい黄褐色の地に小さい赤と白の班点が散在している。この属のエビは今までに世界で4種-C.nipponensis, C. biunguiculatus, C. tridacnae. C.monodactylus-が知られている。このエビは本邦本州以南に産し,希な種類ではない。宿主としてタイラギ,イタヤガイなどの二枚貝が知られている。筆者の扱ったエビは,すべてイタヤガイの外套腔から採集された。同じ宿主に棲むエビの数や性は一定していない。標本5♂♂,3♀♀計8個体のうち,2♀♀(抱卵個体),2♂♂はそれぞれ雌雄一対で,2♂♂は同じ宿主に,他の2♂♂はそれぞれ別の宿主から発見された。2.Platypontonia pterostreae新種 体は背腹に扁平である。額角は非常に短かく。その先端は背面からみると尖り,側面からみるとその上下両端は鈎状に尖り,下側のものは上方へ曲っている。頭胸甲には触角棘があり,前側角は尖っている。尾節の背面には2対の比較的長い棘,後縁には3対の棘がある。第2触角は比較的短かく,頭胸甲の長さに等しいか,それよりも短かい。大顎には内肢を欠き,犬歯状部の先端にある鋸状歯の数は左右の大顎で相違し,左では5個,右では4個である。第3顎脚は歩脚状で細い毛で被われ,鞭鰓(副肢)がある。第1,第2胸脚は鉗脚で,後者は大きく,咬合面に2歯がある。第3胸脚以下は互に類似し,指節は単純で長く,毛で被われている。生時体は半透明で,比較的大きい赤色の斑点と帯が体と付属肢にあり,美しいエビである。このエビは真鶴半島と初島の沖で,ドレッヂにより採集された二枚貝,カキツバタの外套腔から発見された。雌雄1対で同一の宿主に棲むとはかぎらない。この属はBruce(1968)によって設定された。この属の特徴は-1.体が背腹に扁平, 2.額角が非常に短かい, 3.第2小顎の内葉が2叉していない, 4.第3顎脚に関節鰓か鞭鰓がある, 5.第2胸脚(鉗脚)はあまり大きくなく,左右相称である-などである。3.Anchistus pectinis KEMP 体は背腹にやや扁平である。額角は側扁され,上下両縁には歯を有しない。額角の先端に2小棘を有するが,不明瞭の場合もある。額角の長さは第1触角の柄部を越えることがある。頭胸甲には触角棘があり,前側角はまるいか尖る。尾節の背面には2対,後縁には3対の棘がある。大顎はY字形で内肢を欠き,犬歯状部先端の歯は3〜5個があるが,左右の大顎でその数が異なることが多い。第3顎脚は歩脚状で,1個の関節鰓を有する。第1,第2胸脚は鉗脚であるが,後者が大きく,大きさは左右不相称,不動指の咬合面には1個の大きい歯があり,可動指では1個の小歯とそれに続く3〜5個の鋸状歯がある。第3胸脚以下の形態は互に類似し,やや太く指節は鈎状で基部に1小棘を有することがある。生時体は半透明で紫色に縁どられた赤い斑点が体や付属肢にあり,触角柄の先端部,尾節及び尾肢の後縁は紫色で前種と同じように美しいエビである。このエビはニコバル諸島(印度)で始めて発見されている。日本ではFujino&Miyake(1967)が和歌山・福岡両県の海から報告している。宿主はイタヤガイが知られていたが,ツキヒガイとも共棲することがわかった。このエビもかたらずしも雌雄1対で棲んでいるとはかぎらない。相模湾から報告されているツキヒガイと共棲するエビA.misakiensisはこのエビの若い時期のものと思われる。4.Paranchistus spondylis新種 体は背腹にやや扁平で,体の表面は滑らかである。額角は側扁され,その先端は第2触角の第2節に達し,上縁に4,下縁に1個の歯がある。頭胸甲には1個の触角歯と,関節した1個の肝上棘があり,前側角は尖る。尾節の長さはその幅の5.5倍で,背面には2対後縁には3対の棘がある。大顎は内肢を欠きY字形で,犬歯状部の先端には,右の大顎で3個,左の大顎で4個の歯がある。第3顎脚は歩脚状で1個の関節鰓がある。第1,第2胸脚は鉗脚である。前者は細く左右相称で,鉗の咬合面は滑らかである。後者は左鉗脚がやや大きく,可動指の咬合面には1個の大きい歯があり,不動指には1個のやや大きい歯とそれに続く細かい鋸状歯が並ぶ。第3胸脚以下は互に類似した形態である。それらの指節は2叉した鈎となり角質の細かい突起が密生している。生時の体は半透明で,赤色の細かい斑点が体と付属肢に散在している。Paranchistus属はHOLTHUIS(1952)により設定され,3種類-P.biunguiculatus(BORRADAIL),P.ornatus HOLTHURS, P.nobili HOLTHUIS-が知られていた。またこの属はAnchistus属に類似する。両属の重要な相違点は,Paranchistus属は肝上棘を有することである。このエビは実験所付近の岩礁に着生する二枚貝,ウミギクの外套腔から発見された。5.Aretopsis manazuruensis新種 体はかなり側扁されている。額角はあまり長くなく,第1触角柄の第1節をわずかに越す。また額角は側扁され背腹に幅が広く,先端はにぶく尖り,背隆起線がある。眼柄は短かく,眼の一部は頭胸甲によって被われている。頭胸甲には眼下棘があるが退化的で,前側角はまるい。尾節の背面には2対,後縁には1対の棘がある。大顎には内肢があり,犬歯状部先端には12個の鋸状歯がある。第3顎脚は歩脚状で副肢を有する。第1,第2胸脚は鉗脚である。前者は大きく,鉗の先は交叉し,鉗の咬合面には細かい鋸状歯が並び,掌部腹縁は隆起して2〜3歯を生じていて,可動指は常に腹側に保たれ,Athanas属のエビに似ている。後者は細く,腕節は5節からなる。第3胸脚以下の指節は2叉した鈎となり,前節の腹縁には多くの棘が並ぶ。第3,第4胸脚の座節には可動の1棘がある。第5歩脚の前節の腹縁には毛の束がある。側鰓は第4胸節に2個,第5・第6・第8胸節に各々1個ずつある。糸鰓は第1〜第3胸脚に各々1個ずつある。外肢は胸脚では,第1・第2胸脚に各々1個ずつを有する。体は生時淡黄色の地に,幅の広い赤色の帯が体の両側面にあり,その帯の中に黄色の斑点が散在する。第1〜第5腹筋の正中線上には赤色の斑点がある。第1胸脚(鉗脚)は深赤色で,その掌部の側面に黄色の帯がある。第2胸脚以下は淡黄赤色である。このエビは真鶴臨海実験所付近の岩礁に生棲するオニヤドカリが背負っていたサザエの貝殻の中から発見された。Aretopsis属はde Man(1910)により設定され,今までに2種類-A.amabilis de MAN, A.aegyptiaca. RAMADANが知られていた。日本からは前者がMIYAKE&MIYA(1967)により琉球から報告されている。
  • ゴルドン イザベラ, 小田原 アキ子
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 123-132
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
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    ・ホワイト氏(彼のカタログは1847年及び1850年に出版された)が退職した頃は,甲殻類研究にはほとんど何も見るべきものがなかった。もっとも,トマス・ベルのコブシガニ(1885)が一連のモノグラフの先駆をなしていたし,また,C.スペンス・ベイトが端脚類(1862)のカタログを作るために雇われたりはしたが,マイヤースはホワイトの後を継いだ。彼は,ホワイトの多くのnominanudaを含む館内の収蔵品のうち,新しい種類や,よく知られていない種類を述べエビ,カニ類の数種について,また,シャコ類やヘラムシ科についても訂正した。それに加え,彼は多くの重要な採集物について報告し,ニュージーランドの有柄眼と無柄限甲殻類のカタログを出版した。この期間中,「収蔵品の鑑定ばかりでなく,記名,ラベルはり,分類などまで私ひとりの手でなしとげた」(1883年5月14日付書簡)ことを考えると,彼の組織的な仕事の量と質は驚くべきである。当時採集したものは,大体,生物の記録として新種のものになった。マイヤースは新種の名を脚註や他の種類のテキストの中でなにげなく紹介する傾向があったので,マイヤースの発見した新種を正確に数えることは容易ではない。しかし,彼は 大体のところ十脚類に32の属,亜属と260の種,亜種を加えた。そして甲殻類の目に4つの属と,72の種,あるいは変種をつけ加えた。名前は少し変ったかも知れないが,それらの大部分は今でも有効である。例えば最近,R.セレン博士によって編纂された西インド洋の短尾類の暫定的なリスト(未出版)の中には,143のマイヤースの発見した種類が含まれており,そのうち名前の変ったものは20しかない。(十脚類を含むマイヤースの文献のリストについては,Balss&Gruner.1961:1898と1989〜1991を参照されたい)ところで,彼の主要報告はどうであったろうか。甲殻類のサウス・ケンジングトンへの移転がマイヤースにとって大変厄介な時にやってきた。1883年5月14日付のギュンターへの手紙で,彼はその移転が,「軍艦アラートによって採集された甲殻類に関する報告の準備によって必然的に延びるチャレンジャーの短尾類の予備調査の完了まで延期される」ことを暗示した。ジョン・ミュラーは彼の報告書の長さと,それを図で説明するのに必要な図版の数によって評価されたいと望んでいた。しかし,マイヤースはこの望みをかなえてやらなかった。というのは彼は異尾類のほうにまわされることになっていたパロワとまだ討議しなければならなかったし,また,図版は10から15で十分であると考えたからである。ミュラーは1883年5月18日にこう書いている。「あなたの時間の多くが,博物館の移転に費やされてしまったのは残念です。しかしながら,せいぜい二月以内に,あなたが我々によい報告書をお与え下さることを望んでおります」。甲殻類は全部6月末までに移されたが収蔵品と書籍を整理するのに,数か月かかったにちがいない。つづく18か月をマイヤースは,彼の博物館の仕事が許すがぎり,チャレンジャー報告に費やした。しかし1885年の終りまで彼は病気がちで,健康をかたり害していたので11月に辞任した。チャレンジャーの原稿は,1886年4月1日から11月26日までの間に分けて,ミュラーのところへ送られ,マイヤースは健康の続く限り,それを校正した。彼は6月26日付のミュラーの手紙を読んで確認したに違いない。「ここ数年間,私はあなたの報告書をていねいに読んでおります。大変立派な,重要なものであり,今あなたのお送り下さった原稿は,大変明確でよく準備されてありますので,出版が完了するまで,大して,あなたにお手数をおかけしなくて済むと思います。あなたの名を高める報告書になるにちがいありません。すべての生物学者に,科学への最高の貢献であるとみなされるでしょう」。マイヤースはしばしばこの博物館で働いていたようである。その時彼はかなり元気で,乾燥標本を新しい標本棚に並べかえたりしていた。(ギュソター宛の書簡,1887年7月30日)この日以来,1892年1月19日の葉書しか残っていない。これはコーンウェルの住所から発信したもので,かつての同僚にクリスマスの挨拶に対する感謝をしたためたものである(偶然にも,ヘンリー・マイヤースが1882年から1895年までこの博物館の職員であり,また,1926年から1939年まで大英博物館の理事をつとめている)。E.J.マイヤースは終生,動物学会員及びロンドンのリンネ学会員であった。日本の甲殻類に関するマイヤースの業績 日本の甲殻類に関する彼の重要な文献は,韓国と日本の海を7年間調査したことのある英国海軍のセント・ジョン海軍大佐によって集められた資料に関する1897年の報告である。資料の多くはドレッジで採集された深海のものである。それゆえ,デ・ハーンによってよく説明されている通常海岸に住む種類はほとんど含まれていなかった。この地域の深海の甲殻類については,アメリカ合衆国,北太平洋調査探検隊(1853〜56)に加わった動物学者スティンプソンがフィラデルフィア科学学士院委員会で,多数の属や種の特性についての短いラテン語の本を出版するまでは,比較的わずかしか知られていなかった。しかも,短尾類と異尾類の説明とさし絵は,かなり後まで出版されなかった。(スティンプソン1907)しかしながら,マイヤースは,セント・ジョンの資料と,スティンプソンによって命名され数年前スミソニアン協会から大英博物館に寄贈された日本近海で採れた標本とを比べることができた。提供された64種類のうち,26種類は明らかに新種であった。他の7種には彼は種名をつけなかった。彼はParatymolus, Pleistacantha, Pomatocheles, Heterocumaなどの属名を確立し,日本の動物相の関連について述べた。彼は後日Amphipoda, Isopoda, Cirripedia Pycnogonidaなどに関する出版をするつもりであったが,達成しなかった。マイヤースの出版物の多くは,さし絵を画家に石版刷りにさせているが,この図版のように石版工の名だけしか記されていないものは,恐らく下絵はマイヤース自身によるものであろう。1881年12月17日,ナポリの動物学研究所のピー・メイヤー博士がマイヤース宛ての書簡で,彼はあるアメリカ人,ホイットマン博士によって彼に送られた日本のエビの標本をいくつか送るつもりであると述べている。このエビは東京の近くの淡水池で採集された。メイヤーの手紙には,実際に誰がそれを採取したのか書いてない。この標本は成長した大きさよりせいぜい5mmしか小さくなかったのであるが,かなり小さかった。しかし私は,ホイットマン博士個人を通じて,この標本を送ったのは石川博士であるに違いないと思っている。というのは石川博士は,この種類を増やすことを研究していて,専門家にそれを名づけてもらいたがっていたからである。このことは,Atyaephra? Compressa De Haan(1882.マイヤース)に関するメモを受けとった時に石川博士が書いていることに一致するであろう。1882年6月12日に石川はこう書いている。「私があなたにお送りした標本は,皆小さいので,今度はもっと良い大きた標本をお送りしたいと思っているのですがご存じのとおり,アルコール標本を海外に郵送することは,我々にとって大変困難なことなのです。」それ故,大英博物館の収蔵品には,ナポリからメイヤー氏によって送られたこれらの標本(登録番号82.2)しかないのである。このエビは,久保博士によりParatya compressa improvisa Kempに属するものとされている。(1938.東京水産大学報告.33(1):71).英国軍艦チャレンジャーは,再び日本の海で採集し,1875年5月12日から6月17日までの間に獲得されたカニはマイヤースのリストに載っている。2種類だけ新種であることが分った。即ちCharybdis bimaculata(Miers)と深海産のEthusa(Ethusina)challengeri(Miers)である。又,マイヤースがよく述べていた西インド洋産の多くは,後に,日本の動物相に属することが分った。
  • ゴルドン イサベラ
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 133-137
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    今度出版されたこのすばらしい本は,シーボルトの古典「Fauna Japonica」5巻のいずれかを利用する機会のあるすべての動物学者にとって,興味深いものである。シーボルトに関する既にあった情報に加えて,著者達は,ヨーロッパと日本の様々な教育の古い記録の未発表の資料に接する機会を持ったのである。歴史的,伝記的事実の他に,「Fauna Japonica」各巻の色々な分冊の出版の日付に関する有用なデータをすべて含んでいる。甲殻類学者には,この本は,デ・ハーンによる原典(1833〜1850)と共に,甲殻類の原典の姉妹編又は補遺として,特に観迎されるであろう。甲殻類分類学の二人の権威によって,デ・ハーンの多くの新属,新種のそれを含んで,すべての学名が改訂され,今日まで提出されてきた。さらに,約140年後,日本の有名な画家川原慶賀によって,シーボルトとビユルゲルの為に準備され,もともと「Fauna Japonica」のためのさし絵として描かれた甲殻類と剣尾類の得も言われぬほどの精巧な絵を再生することも今では可能になった。初めて,ヨーロッパ人が日本の海岸に着いてから約一世紀後,日本は諸外国との接触を一切断つことを決めた。ただし,厳しい監視の下で,オランダだけはその小さな貿易地を残すことを許された。平戸に1609年に設立されたこの商館は,1641年長崎港の人工島出島に移された。遠い江戸(今の東京)幕府への定期訪問の間だけ,商館のオランダ人は国内を見ることができた。しかし,この時代でさえ,日本の医者は西欧医学を学ぶことに熱心で,諸科学,特に植物学に興味を持つものが多かった。このようにして,出島の医者は日本人と何らかの職業上の接触を持つことができ,時々,植物を集めることも許された。オランダの権威は,従って彼等の奉仕に対し,自然科学に幅広い興味をもつ医者を可能な限り,ひきつけようと努めた。1820年はライデン自然科学博物館が設立された年であったが,これに先立って,こういった医者二人が,二人のヨーロッパ人,即ち,1690年から1692年まで日本に居たE.Kaempferと1775年から1776年まで勤務していたC.P.Thunbergの日本の動物相の知識にかなりの貢献をしたのである。ケンペルとツンベリーに関する生物学上の情報と,彼等の各々の貢献の評価は第一章に書かれている。しかし,最も著しい貢献は,最初の訪日が6年間に及んだ(1823〜1829)Ph.F.Von Sieboldと彼の助手であり後継者であるH.Burgerによって行なわれた。ビュルゲルは医者ではなかったが科学の養成を受けており,優れた収集家になった人である。シーボルトとビュルゲルに関する生物学上の記事は,シーボルトと親交のあった日本の生物学老たちに関する記事とともに,第2章に記載されている。そして,日本の動物学史への彼等の貢献の評価は,第3章に書かれている。次の2章の内容は,「Fauna Japonica」に捧げられたものであるが,この評論の第一パラグラフにすでに述べた。第5章(シーボルトの「Fauna Japonica」における甲殻類の学名の改訂)では,第1部(pp.80〜98)と第2部(pp.271〜298)の間に,いくつかの食い違いがある。例えば,p.57 Ocypoda(Helice) tridens, De Haan-p.280のHelice tridens tridens De Haanがp.85では省かれている。p.83亜属Othonia, Bell-P.284のPitho Bellがp.88では省略されている。p.31亜属Philyta-p.275のPhilyra Leachは"Philyra"と読めるがp.81から省略されている。ついでに言うと,第2部には第1部以上に脚註がある。(つまり,p.273〜274には属,Galene, Curtonotus, Dotoの脚註があるが,p.81にはない。)最後の章は,画家川原慶賀と海の生物,主に魚類や甲殻類の原画の歴史を扱っているが,これらの絵はビュルゲルによって1831年ライデンに送られた。甲殻類と剣尾類の絵はカラーで上手に再現されており,それらが代表している種の説明はp.106〜132とp.304〜323(日本語)に記されている。ビュルゲルは,この絵のうち25に説明をつけ,日本語の俗名の音声的転写が後に続く暫定的な属名をつねにつけた。川原慶賀は二種類の文字の組み合わせ,つまり,仮名と漢字で日本語名をつけ加えた。原画にいくつかの面白い註が,日本のカニの分野での第一人者,酒井博士によって加えられた。そして,図版26に描かれたカニの細部がSesarma(Sesarme) intermedia(De Haan)に一致するのに彩色がSesarma(Holometopus) dehaani H. Milne Edwardeのものである(p.129)ということを酒井博士が見つけている。学名のいくつかの誤字や印刷者のまちがいが沢山あるが,これらは,甲殻類学者には明らかに分るであろう。読者は英文体のちがいを区別できるであろうが,種々の分野の原著者の指示が,内容の委員会で与えられればよかったのではないだろうか。原典に列挙された日本の著者による著書が挿入されてないが,(つまり,p.47のK.Ito, T.Ito, p.99のイワサキヨシカズ,p.101のアレクサンダー・シーボルト)参照リストは,日本の動物学史に興味をもつ者にとって有益であるにちがいない。とびら絵として入れてある口絵(一枚はカラー)の頁は,この書の芸術的歴史的興味を非常に強めている。川原慶賀とジョセフ・シメラーによるシーボルトの青年時代の肖像画を長崎のナルタキ校と病院の敷地に彼を記念して建てられた銅像の写真と比較するとおもしろい。又,慶賀による出島の絵や,種々のオランダの使いが通った長崎から江戸への道順の地図なども含まれている。序文は,ライデン大学分類動物学の名誉教授H.ボシュマ博士,日本生物地理学会長の岡田弥一郎博士から寄せられたものである。本書は日本とオランダの長い交流にふさわしい記念であり,両著者は,非常に魅惑的な問題への学問的貢献に関し,祝されるべきである。
  • 酒井 恒
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 138-156
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 武田 正倫, 三宅 貞祥
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 157-163
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    ヤワラガニ科の多くの種は河口の汽水域にみられるが,現在まで純淡水産の4種が知られている。それらはニュージーランドおよびオーストラリア産のHalicarcinus lacustris(Chilton),フィリッピン産のH.wolterecki Balss,中国中部産のNeorhynchoplax introversus(Kemp)およびイラク産のN.kempi(Chopra et Das)である。ここに報告する種も淡水産で,パラオ諸島,バベルダオブ島のガルドック湖付近の川で採集されたものである。本極は第3顎脚が口部を不完全に閉ざしていること,および雄の腹部が4節からなっていることによりNeorhynchoplax Sakai,1938に含まれる。この属のカニでは額角は通常3歯よりなるが,N.rostrata(Haswell),N.nasalis(Kemp)および本種においては1歯である。本種では額角が短い三角形の突起にすぎないが,他の2種では顕著である。他の特徴も著しく異なっているため上記既知種から容易に区別される。本種の模式標本は九州大学農学部動物学教室に保管されている。種の特徴の概略は下記のとおりである。Neorhynchoplax inermis sp. nov. 完模式標本においては,甲幅3.6mm,側壁を除いた背面の最大幅3.0mmである。甲は丸みのある三角形で,背面はほとんど平滑である。各域を分割する明瞭な溝が発達し,また背面の周縁にわずかな縁どりが認められる。前側縁はわん曲するが,側縁は互いにほぼ平行である。側線に近く側壁が突出し,甲の最大幅を形成する。眼窩外歯は認められず,また前側縁,側壁も歯ないし棘を欠く。額角はきわめて短い三角形の突起で,短毛で縁どられている。鋏脚の長節下縁に1小突起が認められるが,他の節は歯または棘を有しない。不動指および可動指は先端近くで内側にわん曲し,それぞれ3ないし4個の互いにかみ合う歯を備える。歩脚の長節の前縁末端は突出せず,また指節後縁も辣を有しない。指節は前節とほぼ等長である。追記-最近オランダのホルサイス博士により淡水産ヤワラガニに関する論文が公表され,ニューギニア,パプァ区産の1種Halicarcinus angelicusが追加された。ホルサイス博士はニューカレドニア産のH.pilosus(A. Milne Edwards)も加えて合計6種を数えている。H.pilosusは汽水域にもみられるので"淡水産"としてはやや疑問があるが,同属の淡水産3種と共通の特徴をもつ。したがって,H.pilosusおよびここに報告したNeorhynchoplax inermisを含めると,ヤワラガニ科の淡水産の種は2属7種となる。
  • 武田 正倫, 三宅 貞祥
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 164-172
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    ヤワラガニ科HymenosomatidaeのRhynchoplax属は西太平洋産の3種のみで構成されている。Sakai(1938)により,従来Kemp(1917)あるいはTesch(1918)により本属に含められた種のうち,真のRrynchoplax属3種以外はNeorhynchoplax属に移された。両属は非常に近縁であるが,Rhynchoplax属では口腔が第3顎脚で完全に閉ざされており,また雄の腹部は6節から成っている。額角の形態はNeorhynchoplax属と同様にやや変異に富み,本報告中の1種(R.hondai)では,3葉とたっていない。しかし,いずれの種においても中央のものが著しく長く,その特徴によりHalicarcinus属から容易に区別される。2新種の模式標本は九州大学農学部動物学教室に保存されている。標本を提供して下さった当教室の馬場敬次助手および奄美大島赤木名中学校の本田紘一教諭に深謝する。1)Rhyncholpax keijibabai sp. nov. ニューカレドニア産,1雄1抱卵雌,雄は甲長(額角を含む)2.8mm,甲幅2.0mm,抱卵雌は甲長2.4mm,甲幅1.9mm,本種はツノダシヤワラガニR. coralicola Rathbunに近縁で,鋏脚および歩脚の形態は酷似している。しかし,下記の特徴により容易に識別される。(1)甲の形態が洋梨形である。(2)背面の縁取り上に棘状歯をもたない。(3)額角は長く,また基部の歯は非常に小さい。(4)眼窩,額域が背面より前方に強く突出している。(5)眼窩外角は棘状歯とならない。(6)歩脚の指節は一様に細い。2)Rhynchoplax hondai sp. nov. 琉球列島徳之島産,1雌,甲長(額角を含む)2.2mm,甲幅(側歯を含む)2.0mm,本種はヤワラガニR.messorに酷似するが,甲の前側縁に葉状歯をもたず,また額角の形態が明らかに異なる。ヤワラガニでは額角は短いヘラ状で,基部に棘状歯を備えるが,一方本種の額角は長く,やや先細りの突出で,基部に棘ないし歯をもたない。
  • 今泉 力蔵
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 173-
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 笹川 康雄
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 174-183
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 本尾 洋
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 184-190
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 博, 小田原 利光
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 191-195
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 有元 石太郎
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 196-203
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    Three developmental stages of Caprella equilibra Say have been studies - a young of 10 mm in body length, a semi-adult of 12mm and a full-grown of 22mm. In the young, the second antenna is longer than the peduncle of the first antenna, and in the fully grown, it is about 1/2 or 1/3 the length of the first antenna. This difference probabiy due to unusual growth of the second and third segments of the first antenna. The flagellum of the first antenna is consisted of 10 joints in the young, of 12 in the semi adult and of 18 in the fully grown. As she animal grows, the first and second segments grow excessively, so that the first segment attains almost twice as long as the third segment, and the second almost thrice the third. Lateral spines are growing in second, third, fourth and fifth segments. As the animal grows, the ratio between the length of hand and the whole body length decreases, but that between palmar tooth and palmar poison tooth increases. Such differences are peculiar to the aged individual of this species.
  • 高田 継男
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 204-216
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    寄生性原生動物については今迄にも色々報告されているが,甲殻類に寄生するものについては極めて少ない。甲殻類は一般に,脱皮を行なうので鰓や体表面に寄生した原生動物等はその都度脱落してしまうが,次の脱皮までの間に,有機物や下等藻類等が鰓に附着すると共に非常に多数の原生動物が再度寄生する。そのため養殖エビ等は大量斃死を起こすと云われている。著者は,近年,数種の甲殻類の鯛に寄生する原生動物について若干の知見を得たので今回はフナムシについて報告する。尚,この調査研究にあたり生前懇切な御指導を賜わりました恩師の故福井玉夫博士の霊前にこの報告論文を捧げます。本研究は1954年〜1956年,1961年〜1967年の2期について行なった。材料は,内湾に面した汚れた海岸(横浜市)と,外海に面した清澄な海岸(油壷等)とで比較するため採集した。調査研究の方法は,はじめ生鮮個体について,ついで核染色をしたのち同定を行なった。そのあと次の諸点につき検討した。1)個々のフナムシの鰓における原に動物の寄生位置及び数。2)鰓の外鰓葉及び内鰓葉の別動寄生状況3)各鰓葉節と寄生との関係4)フナムシの雌雄差による寄生状態5)季節別の寄生状態6)採集場所と原生動物の相関性等について行なった。フナムシの鰓は図1の示したように内,外鰓葉共左右各5葉ずつ合計20葉あり,このうち雌雄共に第1鰓葉は,内外共に著しく小型化しており,雄の第2内鰓葉は雄性突起として変形している。今回供試したフナムシの数は合計1506個体で,内湾に棲息のもの876個体,外洋に面した所に棲息のもの630個体て,雌雄比はほぼ1:1こであった。今回の調査研究で見出された原生動物は,Ciliata(繊毛虫類)が3科9属25種,Suctoria(吸管虫類)が3科5属9種であり,内湾棲息のフナムシには内湾性(brackishwater)の原生動物が殆どであり,外洋に面した所のものでは外洋性の種が主で,ごく数種が両水域から見出された。いずれの場合もEpistylidaeとVaginicolidaeが優占種であった。又,寄生部位も,内鰐葉,外鰐葉の別,及び,各第1〜第5鰓葉の別,そして各鰓葉の寄生部位に著しい差が認められた。しかし,これらと原生動物の種類との間には差は認められなかった。季節と寄生原生動物の問には明らかに関連がある。これは,主に水温の季節的差による消長と思われる。フナムシの採集地別による寄生種の差も認められた。
  • 高田 継男
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 217-224
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    クルマエビの養殖が盛んになるにつれて,養殖池でエビの鰓が黒変する病気が出,大きな被害をもたらすことがある。この場合に,鰓には有機泥,下等藻類やその他細菌等がかなりの量寄生や附着している。さらにそれらと混ってProtozoaの寄生が非常に多い。これも鰓病の一因と思われるので,今回若干の知見を得たので報告する。この研究は1661年と1968年に養殖されているクルマエビ125尾と天然のもの5尾(東京湾産)について鯛の生鮮なものについて観察し,その後核染色を行なって調査した。この結果寄生Protozaの種類は6属11種のものが観察された。全般に,寄生の状態はEpistylidaeのものがその大半(約80%)を占め,他の種類はあまり多くなかった。今回の調査では,寄生種,寄生数等の間には,季節により,又,養殖クルマエビと天然のものとの間には特徴的な差が認められた。即ち,初夏から急激に寄生種,寄生数共に増加し,10月に入ると漸次減少して行くこと,養殖クルマエビには,半鹹水性,浅海性のProtozoaが寄生しているのに,天然のものでは浅海性,外洋性の種類が見られ,寄生数も天然産のものは非常に少ないことであった。その他,鰓には下等藻類や有機泥が附着しているが,Protozoaとの相関はほぼ反比例の状態と考えられるが明確な結果は得られなかった。又脱皮による鰓の浄化が行なわれても数日にしてProtozoaの寄生が観察された。幼エビ(5cm以下)と成エビ(約10cm以上)とではあまり差はなかったが,活動力の盛んな幼エビ程鰓の泥等の附着,Protozoaの寄生数共に少ないように思われた。
  • 村岡 健作
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 225-235
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
    本邦産いわがに科の後期幼生については相川(1929,1937),石川・八塚(1948),蒲生(1958),村岡(1967),倉田(1968)等によってすでに報告されている。これらのうちいそがに亜科に属するイソガニHemigrapsus sanguineus(DE HAAN)の幼生については相川によってゾェアの第1期を,また倉田によって孵化したゾェアを実験室で飼育することによって,ゾェアの5期とメガロパの1期をそれぞれ報告している。またヒライソガニGaetice depressus(DE HAAN)の幼生については相川によって,ゾェアの第1と最後期を,そしてメガロパの1期を報告している。筆者はイソガニとヒライソガニの両種のメガロパを相模湾から採集した。このうちイソガニのメガロパは1967年の夏から秋にかけての期間,沿岸の表層から,またヒライソガニのメガロパについては1968年の夏に転石海岸の潮上帯付近からいずれも得た。これら両種のメガロパは実験室で飼育し,幼蟹に変態させることに成功した。これら2種のメガロパ及び幼蟹の外部形態を観察したところ,若干の知見が得られたので報告するとともに,従来報告されている本邦産のいそがに亜科のメガロパの外部形態との比較も合わせておこなった。イソガニHemigrapsus sanguineus(DE HAAN) メガロパの甲殻背面には棘や毛は認められない。甲長1.5mm,甲幅1.1mmで,甲長がわずかに長い。第2触角は10節からなり,第7〜第9節の各節には2〜3本の長い剛毛が認められる。末節末端には2本の長い剛毛と1本の短かい剛毛とをそなえる。第3顎脚は内外肢に分かれ,内肢には5節,外肢には2節それぞれ認められる。鉗脚の大きさは左右ともほぼ等しい。第4歩脚の末節には3本の長い感覚毛が認められる。腹部は7節で,第2〜第5腹筋にはそれぞれ1対の二叉'した腹肢をそなえ,その外肢には17〜20本の羽状毛を,内肢には2〜3本の鈎毛が認められる。第6腹節には1対の尾肢をそなえ,その基節の外縁には1本の羽状毛を,末節の側縁には10〜12本の長い羽状毛が認められる。第1幼蟹は甲長1.7mm,甲幅1.8mmで,外部の形態は成体とほゞ類似している。ヒライソガニGaetice depressus(DE HAAN) メガロパの甲殻背面は前種と同様,棘や毛は認められない。甲長は1.9〜2.2mm,甲幅は1.5mmである。第2触角は10節からなり,第7〜第9節の各館末端には3本の長い剛毛が認められる。末節末端には1本の長い剛毛と短かい剛毛とをそなえる。第3顎脚は,内肢に5節,外肢に2節それぞれ認められる。鉗脚の大きさは左右ともほぼ等しい。第4歩脚の末節には末端に4本の長い感覚毛をそなえる。腹部は7節認められる。第2〜第5腹筋にはそれぞれ1対の二叉した腹肢をそなえ,その外肢には20〜23本の羽状毛を,内肢には3本の鈎毛が認められる。第6腹節には1対の尾肢をそなえ,その基節の外縁は1本の羽状毛を,末節の側縁には12〜13本の羽状毛が認められる。第1幼蟹は甲長2.2mm,甲幅2.3mmで,外部の形態は成体とほぼ類似している。イソガニのメガロパはヒライソガニのメガロパと外部の形態において類似している点が多い。しかし甲殻の大きさ,第2触角の末節の剛毛数,尾節側縁の剛毛数,腹肢及び尾肢の羽状毛数,第4歩脚末節の感覚毛の数などにおいては両種のメガロパの間で明確な相違が認められる。またイソガニのメガロパの形態はすでに報告されているモクズガニEriocheir japonicus DE HAANのメガロパ(石川・八塚,蒲生)と比較して,甲殻の大きさや,第2触角の形態などの点では類似している。しかし腹肢や尾肢の羽状毛数はこの両種の間で明らかに差異が認められるので,これらの形態を観察することにより,両種のメガロパを簡単に識別することができる。
  • 渡部 孟
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 236-241
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 一宏
    原稿種別: 本文
    1971 年 4.5 巻 p. 242-248
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1971 年 4.5 巻 p. 249-250
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1971 年 4.5 巻 p. 251-
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1971 年 4.5 巻 p. 252-
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    1971 年 4.5 巻 p. 252-
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    1971 年 4.5 巻 p. Cover2-
    発行日: 1971年
    公開日: 2017/09/08
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