血流制限下レジスタンストレーニングとは,上肢または下肢の基部を専用のカフなどによって圧迫し,末梢への血流を適度に制限した状態で行うレジスタンストレーニングである。この方法の特徴は,従来のレジスタンストレーニングで扱う負荷の半分以下という低負荷を用いながらも,著しい筋肥大や筋力向上効果が得られることである。近年は軽いエルゴメータ運動やウォーキングなどの有酸素運動に併用することでも筋肥大効果が確認されている。筋量や筋力の増大を望みながらも,十分な負荷を用いた運動が困難な患者や高齢者にとっては魅力的な方法である。また血流制限をするカフさえあれば,特別な器具や施設を必要とせずに筋力強化が図れるので活用範囲が広い方法である。本稿ではこの血流制限下トレーニングの効果や実践方法,活用例を紹介する。
【目的】下腿最大周囲長と最小周囲長の比をとりCalf Ankle Index(以下CAI)とし,Short Physical Performance Battery(以下SPPB)およびSPPB community-based score(以下SPPB-com)との関連を明らかにし,CAIが身体機能の指標となりうるかを検討した。【方法】介護予防教室に参加した地域在住高齢者84例を対象とし,初回教室参加時に,下腿周囲長の計測を行った。また,同時に,SPPBの計測も実施し,その関連を明らかにした。【結果】CAIはSPPBおよびSPPB-comのいずれとも有意な相関が認められた。そのうえで,24ヶ月以内に新規に要支援,要介護状態になるとされているSPPBおよびSPPB-comの点数におけるCAIのカットオフ値が1.60となっていた。【結論】CAIが身体機能の指標として有用であることが示唆された。
【目的】頸椎化膿性脊椎炎による右上肢単麻痺に対し,異なる2種類の低周波治療器を選択使用することにより運動機能の改善に繋がった一症例を経験したので報告する。【対象】前記疾患にてC5 領域の右上肢単麻痺,60歳代男性である。電気刺激療法を併用し135病日目より理学療法を開始した。【方法】刺激強度を出力閾値の状態に合わせ末梢神経感覚電気刺激療法と随意運動介助型電気刺激療法を用い,1日60分1回より実施した。随意運動介助型電気刺激療法は,理学療法室と病棟で本体及び付属機を使用した。評価はROM,MMT,MFT,FIM,BIで経過を追った。【結果】電気刺激療法の使用前後で上肢運動機能に改善を認め,終了後も効果が持続した。【結論】刺激強度は出力閾値に合わせ,異なる2種類の電気刺激に対応した機器の選択使用により,右上肢不使用による運動学習が機能改善に繋がり,運動麻痺改善の一助になったと考えられた。
【目的】大腿神経を切断するとその神経障害は重篤であり,回復の見込みはない。今回,スクワット運動と半歩荷重肢位のステップを中心とした理学療法を実施し,歩行時の膝折れに対して良好な結果を得た。【症例】術後に膝関節伸展筋力を喪失し,膝関節屈曲位で患肢に荷重すると膝折れを生じた60歳代の男性である。【方法】術後早期からスクワット運動と半歩荷重肢位のステップを1セッションあたり30回,3~5セット反復して実施した。【結果】術後5週で屋外歩行はT字杖を使用し監視下で実施可能となった。階段昇降は手すりを把持して2足1段で自立した。床上動作も自立した。転院から4週後に自宅退院となった。自宅退院から 12週後に復職した。【結語】スクワット運動と半歩荷重肢位でのステップを実施した結果,体重支持下で膝関節の屈曲と伸展が可能となり,復職に繋がった。
屈筋腱腱鞘炎は中手指節間関節部で手指屈筋腱に対する滑膜性腱鞘の相対的な狭小化が起こり,手指屈伸運動で弾発現象が生じる疾患である。本症例は70歳代女性の専業主婦であり,誘因なく左中指屈伸運動時に弾発現象が生じていたが,注射や装具療法,そして手術を希望しなかったために運動療法開始となった。評価より深指屈筋腱の弓づる形成の増大が示唆され,超音波画像診断装置による所見ではA1 pulleyに浮腫がみられ,肥厚した中指屈筋腱との間に線維の乱れが生じていた。そのため,中指屈曲運動後半に浅指屈筋腱を十分に近位滑走できずに浅指屈筋腱腱裂孔で深指屈筋腱を受容できなくなり,A1 pulley と浅指屈筋腱との間の生じた局所的な摩擦が弾発現象の原因になったと推察した。深指屈筋に対する運動療法と摩擦によって生じた損傷に対する絆創膏での関節固定により,家事動作を制限することなく患部の安静を保てたことで弾発現象の消失に至ったと考える。
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