理学療法の科学と研究
Online ISSN : 2758-3864
Print ISSN : 1884-9032
13 巻, 1 号
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特集論文
  • 山中 玄, 大島 明子, 南原 一樹, 佐々木 南, 福家 晶子
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_3-13_7
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     COVID-19は感染性が強く,理学療法の現場において特別に感染症対策を講じる必要がある疾患である。また,隔離が必要であるなど,療養環境の特殊性から廃用症候群が生じるリスクも高く,理学療法介入の重要性はその他の疾患と相違ないものである。水平感染を生じさせず,有効な理学療法の提供を可能とするか,試行錯誤が必要であった。今回,COVID-19陽性患者に対し,理学療法を提供するにあたり,当院でとった種々の対応策について報告する。本報告が患者の回復はもとより医療従事者の一助となることを願う。

  • 内村 信一郎, 横谷 浩士, 菊地 聡, 高橋 功
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_9-13_13
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     COVID-19は世界中でパンデミックを引き起こし,理学療法の現場にも大きな影響を与えた。当院は初期の時点からICUでの重症患者から,軽症・中等症の患者に対して積極的に理学療法提供を行ってきた。そしてCOVID-19患者に対する理学療法の必要性は再認識されていった。しかしながら,体制構築にあたり人員配置,PPEなどの感染制御に対する様々な課題があった。理学療法介入についても感染対策の中での腹臥位療法や,通常人員の確保が必要であったり,吸引処置についての問題があった。そのような中でもP-SILIについて再認識を図ることや,一般床での患者の自主的な腹臥位の試行など新たな見解を持つこともできた。急性期病院の立場として,当院でのCOVID-19患者に対する理学療法対応について述べる。

  • 井上 靖悟, 立本 将士, 結城 千佳, 近藤 国嗣
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_15-13_19
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     東京湾岸リハビリテーション病院(以下,当院)は,160床の回復期リハビリテーション病棟であり,全患者の平均在院日数は77.8±45.8日である。コロナ禍において,当院でも面会制限,リハビリテーションの家族の参加の制限など,多くの感染防止対策を強いられてきた。そのなかで,意思決定の場として,新型コロナウイルス感染症に特化した対策委員会を組織し,大きく変動する状況下で,その時々に応じた感染防止対策とリハビリテーションの質を維持するための対応を検討してきた。本稿では,その対策について紹介し,その中で得た学びや,検討していくうえで重要であると感じたことをまとめた。依然として不安定なこの社会情勢下において,対応を検討するうえでの一助となれば幸いである。

  • 桑江 豊, 大杉 紘徳, 横井 悠加, 安齋 紗保理, 森下 勝行
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_21-13_23
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     2020年,新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念される地域において臨床実習の中止が相次いだ。当大学におけるwithコロナ時代のテーマ「学生の学びを止めない」を実現するために行ったICTを活用したテレ臨床実習の取り組みを報告する。症例の基本情報・医学情報・理学療法評価結果の配信と基本動作・担当理学療法士による理学療法評価実演のオンデマンド動画を経時的に学生に配信し,「見学」「協働参加」を経験するオンデマンド実習期と,2週のオンライン会議システムZoom(以下,Zoom)を用いた医療面接を中心としたテレ臨床実習期に分けて実施した。実際に対象者に触れられる経験は得られなかったが,学生が行う評価の説明や,手順,進め方などを同席した他の学生が他覚的に認識し,互いに指摘助言することで内省を促すことができた。また,学生それぞれの改善点を教員が詳細に把握することができ,より個別性の高い指導が可能であった。

  • 児玉 美香
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_25-13_29
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     BCPは災害拠点病院に策定が義務づけられているが,地震などの災害を対象としたものであり,感染症では対応が異なる。コロナ禍において当院では感染症専門医,認定看護師を中心とした感染制御部が指揮を執り感染対策を講じてきた。人口33万人の医療圏の基幹病院であり唯一の三次救急病院でもあるため,コロナ診療も救急医療も継続しなければならない。
     時間の経過と共にコロナに関する情報,認識,資源,環境が変わる中で,リハビリテーション科は繰り返し対策を検討してきた。先にBCPがあったわけでは無く,試行錯誤の結果をBCPとしてまとめたものを報告する。
     当院の理学療法は疾患別チームで診療していたが,コロナ禍では人員配置を変更しICUでは腹臥位療法を中心に実施している。PCR陽性患者以外は標準予防策としてサージカルマスクと手指消毒のみで対応しており今日まで院内クラスターは発生していない。
     当院の取り組みがBCPの検討材料になれば幸いである。

研究論文
  • 竹内 真太, 河野 健一, 西田 裕介, 石坂 正大, 金子 純一朗, 久保 晃
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_31-13_37
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】本研究では理学療法分野における初年次キャリア教育が進路選択に対する自己効力に及ぼす影響を検討した。【方法】非ランダム化比較試験を採用し,介入群は初年次キャリア教育科目を受講した医療系大学理学療法学科1年生88名,対照群は該当科目を受講していない他キャンパスの理学療法学科1年生64名とした。アウトカムとして進路選択に対する自己効力尺度と職業キャリア・レディネス尺度を介入前後で調査し,分割プロットデザインによる分散分析を実施した。【結果】進路選択に対する自己効力尺度のみ,介入の有無と測定時期の間に交互作用を認めた。事後検定の結果,介入群において,介入前と比較して介入後に有意な低下を認めた。【結論】理学療法士養成課程の学生に対する初年次キャリア教育は,進路を選択・決定する過程で必要な行動に対する遂行可能感を低下させることが示唆された。

  • 折原 将太, 志田 真澄, 大峰 浩輝, 羽田 圭宏
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_39-13_43
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】Leg-Heel-Angle(LHA)の検者内・検者間信頼性を測定方法別に検討すること。【方法】対象は健常成人男性10名20肢。検者2名(理学療法士7,3年目)。LHA測定方法は実測と画像上計測の3つとした。実測は膝窩中央・アキレス腱中央・踵骨中央を基準(測定方法①),下腿二等分線・踵骨二等分線を基準(測定方法②),画像上計測は下腿遠位1/3の点とアキレス腱付着部を結ぶ線,アキレス腱付着部と踵骨下端を基準(測定方法③)のなす角度とした。級内相関係数(Intraclass correlation coefficients:ICC)を算出した。【結果】ICC(1.1)は測定方法①0.71以上,測定方法②0.97以上,測定方法③0.37以上,ICC(2.1)はすべて0.42以下であった。【結論】実測の検者内信頼性は0.7以上であり安定した値が得られた。検者間信頼性は0.6未満で低かった。

  • ~患者立脚型アンケートによる術後の経時的な変化に着目した研究~
    渋谷 悠太, 宮内 秀徳, 妹尾 賢和, 平尾 利行
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_45-13_49
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】術前サルコペニアの有無におけるTotal Knee Arthroplasty (TKA)術後機能を経時的に比較した。【方法】対象は片側TKAを施行し術後6ヶ月を経過した71例71膝とした。サルコペニアの有無はAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)の定義にて,2群(26例/45例)に分類した。機能評価は日本語版Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score (J-KOOS)を用い,J-KOOS合計点と下位項目を術前,術後3ヶ月,術後6ヶ月で調査し比較した。【結果】術前のJ-KOOS合計点,疼痛,日常生活活動,スポーツ・レクリエーションで群間に有意差を認め,サルコペニア群が低値であった。術後の経時的変化では,時期のみ主効果を認めた。【結論】術前にサルコペニアが存在しても術後の理学療法介入によって術後機能の改善が可能であると考える。

短報
  • -パイロット版による予備的調査-
    諸澄 孝宜, 橋川 拓史, 寺門 淳
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_51-13_56
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】心理因子を包括的に評価する日本語版Optimal Screening for Prediction of Referral and Outcome Yellow Flag Assessment Tool(OSPRO-YF-J)を用いて,腰痛患者の心理的特徴について検討した。【方法】腰痛患者100名にOSPRO-YF-JとJOABPEQを回答させ,OSPRO-YF-Jの下位尺度を説明変数としてクラスタ分析を行った。腰痛患者の心理的特徴に応じて類型化した群間でOSPRO-YF-JとJOABPEQを比較した。【結果】有効回答が得られた96名に対し,OSPRO-YF-J下位尺度の得点によって心理因子正常群,恐怖回避思考群,低自己効力感群の3群に類型化された。恐怖回避思考群・低自己効力感群のOSPRO-YF-Jは心理因子正常群よりも有意に高値を示した。また,JOABPEQの心理的障害は,心理因子正常群と比較して恐怖回避思考群は有意に低値を示し,低自己効力感群は有意に高値を示した。【結論】OSPRO-YF-Jを用いることにより,腰痛患者の心理的特徴を類型化できる可能性が示唆された。

  • 下出 雅仁, 齋藤 洋, 上野 秀直, 田村 美華, 遠藤 佳子, 長谷川 裕貴, 松村 昭彦
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_57-13_61
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)症例の退院時Activities of daily living(ADL)に着目し,術前の身体機能,認知機能が退院時のADLを予測する因子であるかを検討した。【方法】単一施設の横断研究を実施した。対象は,2016年2月から2019年11月までに当院でTAVIを受け,機能評価が可能であった連続96症例であった。術前の身体機能はShort Physical Performance Battery(SPPB),認知機能はMini-Mental State Examination(MMSE)を測定した。ADLは術前と退院前にBarthel Index(BI)を測定した。退院時のBIが80点以上と未満の2群に分類した。退院時のBIを予測する因子を検討するためにロジスティック回帰分析を適用した。【結果】年齢の中央値と四分位は86(84-88)歳,男性は27.6%であった。術前のSPPBは8(5-10)点,MMSEは24(21-28)点,術前と術後のBIは85(80-96)点と85(80-95)点であった。ロジスティック回帰の結果,術前のSPPBは有意に退院時のBIと関連する因子として抽出された(オッズ比;0.10,95%信頼区間:0.01-0.86,p=0.04)。【結論】TAVI症例において,術前の身体機能は退院時のBIと関連したが,認知機能は関連しなかった。

  • ~健常成人を対象としたpilot study ~
    倉田 直紀, 清野 浩希, 梅原 弘基, 仲島 佑紀
    2022 年 13 巻 1 号 p. 13_63-13_67
    発行日: 2022/02/22
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】即時的に可動域を改善するために,主観的伸張感で実施時間を設定(主観法)した静的ストレッチング(ストレッチ)を実施する場合,何セットが有効であるかを明らかにすること。【方法】対象は健常成人26名とし,ストレッチ課題は,ハムストリングスのストレッチとした。主観的にハムストリングスが伸びたと感じるまでを1セットのストレッチ時間とし,4セット実施した。効果検証は,膝関節他動伸展角度(Knee extension angle:KEA)とし,ストレッチ前後に測定した。対応のある一元配置分散分析および多重比較検定により,KEAをセット間で比較検討した。【結果】ストレッチ前,第1セット後,第2セット後,第3セット後の間に有意なKEA差を認めた(p<0.01)。また,第3セット,第4セット間に有意なKEA差を認めなかった。【考察】主観法によるストレッチにより十分な効果を得るためには,3セットが有効であることが明らかになった。

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