理学療法の科学と研究
Online ISSN : 2758-3864
Print ISSN : 1884-9032
4 巻, 1 号
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講座
原著
  • 大谷 拓哉, 竹内 弥彦, 吉田 晋, 堀本 佳誉, 三和 真人
    2013 年 4 巻 1 号 p. 4_15-4_18
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

     静止立位における姿勢制御の特性を詳細に捉えるためには,各体節の質量中心(center of mass; COM)動揺の計測が重要と考えられる。本研究では地域在住高齢者を対象とし,外乱を加えた際の後方へのステッピング反応様式によって,高齢者を転倒リスクの高い群と低い群に分類した。その後,3次元動作解析装置を用いて,静止立位における各体節のCOM動揺を計測した。その結果,転倒リスクの高い高齢者は転倒リスクの低い群と比較して,頭部の前後方向の加速度と胸郭部の左右方向の加速度が有意に大きいことが明らかとなった。転倒リスクの高い高齢者は,静止立位において,骨盤より上位の体節に大きな動揺性を伴う姿勢制御様式をとっていることが示唆された。

症例報告
  • 石川 修平
    2013 年 4 巻 1 号 p. 4_19-4_22
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

     両腸脛靭帯炎,両鵞足炎,両膝蓋靭帯炎と診断された陸上部長距離選手において,走行時の右膝内側の疼痛に対して介入し,効果を得た。疼痛は右膝内側の筋付着部に生じており,同組織への牽引ストレスが疼痛の誘因であると考えた。右膝内側にある組織への牽引性ストレスは,knee inによって増大するといわれており,本症例においても走行動作時にknee inの不良肢位が観察された。本症例におけるknee inの原因である足部からの影響と,体幹からの影響からの2点に着目してアプローチを行ったところ,疼痛が改善し,部活へ完全復帰することができた。スポーツ障害において,疼痛部位の炎症など,単関節における発痛因子を治療するだけでは治療効果を得られないことがある。その際に,スポーツ動作における隣接関節からの影響も踏まえた,疼痛への寄与因子を考慮して治療することが重要である。

  • 水野 敬太, 大出 由子, 鵜澤 吉宏, 宮越 浩一
    2013 年 4 巻 1 号 p. 4_23-4_26
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

     近年,がん患者のリハビリテーションの必要性が訴えられており,理学療法士ががん患者に関わる機会は増加している。しかしながらがん脊椎骨転移患者の歩行機能予後やリハビリテーションの実施経過に関するリスク管理やプログラムについてはいくつか症例報告が散見されるが,報告数は少ない。今回,がん脊椎転移が脊髄を圧迫し感覚障害を中心とした神経症状を生じていた症例に対して2か月半にわたる理学療法を施行し歩行自立に至ったので以下報告する。症例は96歳男性。前立腺癌,第1胸椎骨転移により脊髄が圧迫され,重度の表在覚鈍麻・深部覚鈍麻を生じ,両下肢筋力低下は軽度であったが立位保持,歩行は困難であった。放射線加療及びホルモン療法を受け,骨転移部位の画像を評価の上で転移部の不安定性に対する生活指導,転倒予防対策などを行い,入院臥床に伴う筋力低下をきたさぬよう2か月半の理学療法を行った。退院時,表在・深部感覚障害は軽度残存,両下肢筋力に変化なかったが,無杖歩行が見守り下で可能となった。

短報
  • 斉藤 琴子, 菅原 憲一
    2013 年 4 巻 1 号 p. 4_27-4_29
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

     【目的】本研究では,健常者における歩行において一定と言われている相対タイミングについて,脳卒中片麻痺者(以下片麻痺者)には変化があるのではないかと仮説を立て,歩行速度と歩行周期における相対的時間比から検討した。【測定方法】対象は屋外歩行を自立している維持期片麻痺者2名とした。課題は低速歩行,快適歩行,最大歩行の3種類の歩行とした。歩行周期の立脚期および遊脚期の時間およびタイミングを同定するため,フットスイッチを用い歩行周期の立脚相の時間比を求めた。歩行速度はストップウォッチを用いて測定し歩行速度を計算した。【結果】2症例ともに,各歩行速度に有意な相関関係がみられたが,時間比においてはみられなかった。また,各歩行の時間比について,全ての群に有意差がみられた。【考察】発症後長期経過しているが,歩行速度の差異により歩行という同一動作にもかかわらず,相対タイミングは異なっていた。このことから,歩行周期における相対タイミングは脳卒中片麻痺患者の歩行特性を評価し得る可能性を示唆すると思われる。

紹介
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