近年,多剤耐性Escherichia coli sequence type 131(ST131)パンデミッククローンが,世界的に急増しているが,その原因は未だ明らかとなっていない。われわれは,2016年に ST131に特異的なタンパク質として,E34A アミノ酸変異を有する YahO タンパク質を発見した。しかし,本タンパク質は現在のところ機能不明であり,かつ E34A 変異が本タンパク質にどのような影響をもたらすかも現在のところわかっていない。本研究は,ST131パンデミックの原因追究のため YahO タンパク質の機能解析および mRNA 定量解析を実施した。グルタチオン -S- トランスフェラーゼ(GST)タグを標識したYahO 高発現株を用いたプルダウンアッセイでは,明らかな相互作用を示すタンパク質は検出されなかった。つぎに,in silico において YahO と相互作用関係にあるタンパク質がバイオフィルム形成関連タンパク質であったため,バイオフィルム形成能試験を実施したが,YahO E34A アミノ酸変異群と非変異群との間に有意差は認めなかった。しかし,yahO mRNA 定量解析では,E34A 変異群は有意に高い発現が認められた。以上より,yahO 遺伝子は流行株である ST131で有意に高発現していたが,in silico で予測されたバイオフィルム形成とは無関係な発現であり,他の要因に関連していることが推測された。
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