人が立ち入ることが困難な環境へのアクセスを可能とするドローンリモート技術はそのシステムを構成する要素技術の急速な進展によって広い用途での可能性が構想されている。リスクの高い環境での運用が前提となる防災や災害状況把握を目的とした実用化はその構想段階において社会システムとの十分な調和を目指す必要がある。欧州航空安全機関（EASA）ではSpecific カテゴリに部類される飛行ミッションのリスク評価手法の最上流において概念構想（Concept of Operations: 以下ConOps）の提示が求められている。我が国でも2022 年の改正航空法の施行により一定の制度設計がなされた一方で，技術的社会的双方の概念構想の提示については現時点では運用者の個別対応に委ねられており十分な事例が存在しない。本研究では，ビル火災における複数ドローンの消火活動支援をケースとしシステムズエンジニアリングに基づいたConOps の構築を試みると同時にこの社会実装において検討すべき概念検討項目，技術検証項目，事業検証項目の抽出を実施した。ConOps 構築のガイドラインが実現することは，必要となる技術的要件，サービス要件，社会的制約などについて運用者とステークホルダーとの合意形成を得るプロセスが円滑となりドローンリモート技術の社会実装に貢献するものである。

抄録全体を表示