日本シミュレーション学会論文誌
Online ISSN : 1883-5058
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14 巻, 2 号
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JSST2021 学生セッション特集
巻頭言
論文
  • 瀧澤 哲, 工藤 彰洋, 武居 周
    2022 年14 巻2 号 p. 71-77
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,仮想空間における広帯域雑音のMAMAを明らかにすることを試みた.先行研究では恒常法によってMAMA測定が行われてきたが,結果の心理測定関数への当てはめが不適切であり,ヒトの平均的なMAMAを推定できているとするには至っていないと考えられる.そこで,本研究では心理物理測定法を適応法の一種であるQUEST+法に変更した上でMAMAの再検討を行った.心理物理実験は水平面上において被験者と1.5 mの等距離で円運動する音像の移動方向を回答させるものとし,ヘッドホンを使用したVRサウンドを用いて実施した.なお,移動音の移動速度は8[deg/sec]で一定とした.この実験には9人の被験者が参加し,MAMA測定値の平均は提示方位0[deg](正面)で3[deg],45[deg]で14[deg],90[deg](真右)で36[deg]となった.この結果から,現実空間と比べて仮想空間の方が広帯域雑音のMAMAが大きくなり,その増加の仕方は線形であることが明らかとなった.また,心理物理測定法をQUEST+法に変更した結果,恒常法と比較して測定精度には差が見られなかったものの,信頼区間の計算処理に必要となる手続きが少ない分,QUEST+法を用いた方が測定効率が高いと結論付けられた.

  • グイネア ニク, 鳥生 大祐, 牛島 省
    2022 年14 巻2 号 p. 78-84
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/05
    ジャーナル フリー

    A computational method is proposed for interactions between deformable objects and fluid flows using the immersed boundary method and the mass-spring model. In the proposed method, the direct-forcing immersed boundary (DF/IB) method by Uhlmann is used for the computation of fluid-solid interaction. Multiple mass points are set up on the surface of a solid object and connected to each other with spring-dashpot model. The distinct element method (DEM) is used for the calculation of solid-solid and solid-wall contact forces. The proposed method is applied to lid-driven cavity flow problems with multiple deformable solid objects. The results demonstrated that the proposed method enables us to calculate the deformations of the multiple deformable solid objects due to the fluid-solid and solid-solid interactions.

  • 廣岡 信行, 牛島 省
    2022 年14 巻2 号 p. 96-103
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/19
    ジャーナル フリー

    Numerical simulation of particle filtration is performed using the MICS (Multiphase lncompressible flow solver with Collocated grid System) for multiphase flows and the DEM (Discrete Element Method) for uncharged or charged particle dynamics. This study deals with micro-particles and fluid flows through a single pore, which is larger than the particle size, modeled with two solid objects at the micro-scale. For an understanding of the effect of the electrostatic force between the electric-charged particles and objects, the interaction force is implemented based on Coulomb's law. The computational results show that the number density of the particles around the objects tends to be high by giving the electrostatic attractive force between the negatively charged particles and the positively charged objects. It is confirmed that there is a possibility of improving the filtration performance by the electrostatic attractive force, in addition to increasing the pore size at the same time under the given conditions.

  • 田上 幸歩, 鷹取 慧, 水谷 健一, 剣持 貴弘, 鶴山 竜昭, 池川 雅哉, 吉川 研一
    2022 年14 巻2 号 p. 133-137
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/14
    ジャーナル フリー

    病理診断は,患者への適切な治療方針決定にかかわる重要な診断技術である.標準的な手法では,病理医が光学顕微鏡を用いてミクロレベルで病態組織を観察し,形態的特徴から診断を行っている.このような手法では,組織切片の顕微鏡観察において定量的な指標に基づいた診断を行うことは困難であり,病理医の経験によって診断が異なるといった問題点があげられる.そこで,本研究では,病態の進行度した組織切片の物理的特性に着目した新規な病理診断手法を提案する.私たちは,組織切片に張力を印加したときに生じるひび割れパターンが病態に依存することを発見した.さらに,このひび割れパターンについて,機械学習を活用すると,飛躍的に診断精度が向上することを明らかにした.

    このことから,組織切片に生じたひび割れパターンを病理診断の定量的な評価指標として用いることで,信頼性の高い新規病理診断手法の確立が期待できる.

多次元移動通信網特集
巻頭言
論文
  • 宮北 和之, 田村 裕, 中野 敬介
    2022 年14 巻2 号 p. 104-113
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    情報フローティング(Information Floating:IF)は,移動ノードが送信可能エリア(Transmittable Area:TA)内だけで直接無線通信でデータを送信することにより,不要な送信を防ぎつつ,目的の領域の移動ノードに情報を配信する方法である.IFでは,移動ノードが同じTAで複数の異なるデータを送信することにより,仮想的にデータを蓄積することができる.また,複数のTAが連携することで,一時的に失われたデータを再蓄積することができる.本論文では,二つのTAが連携した場合の再蓄積について考え,まず,これらのTAが道路上の点であると仮定して検討する.シミュレーション結果から,システムの状態を再蓄積が十分に機能する状況と再蓄積能力が低下する状況の2種類に分類し,近似的な理論解析により,この二つの状況の境界を表すノード密度を推定する.数値計算結果とシミュレーション結果から,十分な再蓄積を実現するためのノード密度を推定できることを示す.また,上記の結果を用いて,ノード密度が十分でない場合に十分な再蓄積を実現するためにTAを拡張する手法を提案し,その有効性を示す.

  • 甲斐 太陽, 道下 尚文, 森下 久
    2022 年14 巻2 号 p. 114-122
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/16
    ジャーナル フリー

    これまで,UHF帯で動作するヘルメットアンテナが多く報告されている.我々の研究室ではVHF帯で動作する,防災用のヘルメットアンテナについて検討している.これらは,いずれも水平面内で水平偏波・ほぼ無指向性の放射パターンを有するものとなっている.本研究では,非常に低姿勢な,水平面で垂直偏波・無指向性の放射パターンを有する容量装荷モノポールアンテナを用いて,半球殻構造に簡易化した防災用ヘルメット上に適用したアンテナを提案する.この提案アンテナについて,VSWR特性と放射パターン,電界分布について,電磁界シミュレータを用いて解析し,実際に試作・測定を行ってシミュレーション結果の妥当性を確認する.その結果,提案アンテナがVHF帯で使用可能で,水平面内無指向性の放射パターンを持つことを確認した.また,頭部方向への放射を抑制し,人体頭部ファントムモデルに近接しても良好なVSWR特性が得られた.

  • 伊藤 建一
    2022 年14 巻2 号 p. 123-132
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/19
    ジャーナル フリー

    本研究では,開発してきた磁界方式人体通信機を用いて,各種磁界結合方式の通信距離を評価・比較した.検討した結合方式は一般的な誘導結合方式(非共鳴結合方式)と2種類の共鳴結合方式(低Q共鳴結合方式と高Q共鳴結合方式)である.まず,通信機の仕様に基づいて通信特性を計算機シミュレーションによって評価した.線形RLS等化器を適用すると,低Q共鳴結合方式と高Q共鳴結合方式は,非共鳴結合方式よりも大幅にBERの雑音特性や送信電力特性を改善できることを示した.次に,送信周波数2 MHz,ビットレート500 kbps,線形等化器を実装した磁界方式人体通信機を用いて送受信実験を実施したところ,低Q共鳴結合方式と高Q共鳴結合方式は,非共鳴結合方式よりも通信距離をそれぞれ2倍と3倍に伸ばすことができることを確認した.

通常論文
論文
  • 中川 匡弘
    2022 年14 巻2 号 p. 85-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    本論文では,感染症の簡便な数理モデルの一つであるSIRモデルにおいて,実質的な感染率に関係する実効再生産数を時間制御することにより,総感染者数抑制と経済損失低減の両立を可能とする最適化手法を提案する.具体的には,Pontryaginの最大原理に基づいて,感染抑制と抑制による経済損失の両方を考慮した目的関数と随伴変数並びにHamilton関数を導入し,正準方程式を解くことにより最適制御を実現する.本シミュレーションの結果,感染抑制期間を固定し,経済損失を考慮しない場合には,先行研究で報告されたものと同様の結果が得られ,また,感染抑制期間を固定しないで感染抑制と経済損失の両方を考慮した場合には,目的関数における経済損失の割合をより大きくすることにつれて,最適化された人流抑制制御の期間がより短縮されることが確認された.さらに,経済損失が同程度であれば,感染抑制率も同程度であることが見出された.

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