学習者に「開かれた教室風土(OCC:open classroom climate)」を保障することが市民性教育にとって重要であることを、日本の小学 4〜 6年生への質問紙調査の分析から明らかにした。国際比較調査で用いられる OCC尺度項目は、日本の小学生の場合「計画的 OCC」と「偶発的 OCC」と解釈し得る2因子構造となった。そして、特別活動の経験は上記 2因子および市民性(効力感や参加意欲)に影響を及ぼすが、OCCから市民性への影響は偶発的 OCCからのみ観察され、計画的 OCCは市民性に影響していなかった。結論として、教室での話合い活動において〈反対意見の表明〉と〈社会問題への言及〉を保障することが市民性教育における特別活動の役割として重要であることを論じた。
本研究の目的は、特別活動研究においてこれまであまり用いられてこなかったマルチレベルモデルによる計量分析を行い、子ども個人レベルと学級集団レベルを区別した上で学級集団の向上に与える小学校学級活動の影響と、出身階層などの影響を統制した上での小学校学級活動の影響を明らかにすることである。分析結果より次の2点が明らかとなった。第1は子どもが学級活動(1)を積極的に取り組むと、子ども一人一人が集団を向上させる行動を増加させると同時に、学級集団単位で学級活動(1)の取り組みが活性化すると、学級全体で集団向上に関する行動が増加した。第2は出身階層などを統制してもなお学級活動が学級集団の向上に影響を与えていた。
福岡教育大学附属小倉小学校の事例から、特別活動の各活動・学校行事と、各学年で設定された学級目標とを、教師の教育意図としても児童の意識としても有意味的・系統的に関連させる一方途とその効果について検討した。その結果、集団関係の発達過程をふまえてめざす児童の姿を段階的に想定し、特別活動の力点を各学年に位置付けること。それと関連させて各学年の学級目標を系統立てて設定すること。それらの系統的関連や意図を教師集団が共通理解し受け継ぎながら指導にあたること。これらにより、児童は系統立った学級目標を意識して 6年間の特別活動に取り組み、それが自分たちの成長に効果的であると自覚する傾向が強いことが明らかとなった。
学校現場でのいじめ問題への取組として演劇的手法がある。本研究では、生徒会活動の交流の場で行われたいじめ撲滅劇に着目し、いじめをテーマとする演劇が中学生の傍観者意識に及ぼす効果について検討を行った。その結果、劇上演後には、劇参加群のいじめに対する無関心、自己防衛の意識に有意な減少がみられた。一方、いじめ撲滅劇を鑑賞するだけであった劇鑑賞群には有意な変化はみられなかった。また、加害者支持の意識においても群間に有意な差がみられ、劇参加群のみ得点が減少していた。これらのことから、いじめをテーマとした演劇の取組が、劇参加の生徒会役員の傍観者意識に影響を与えていることが示唆された。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら