伊豆大島で2009年度より開始したインフルエンザ疫学調査では,島内の受診情報を全て回収し,ほぼ全数にPCR検査を実施することで,高い精度で流行を把握することを可能にした.しかし,医療機関において実施する疫学調査では,世帯単位でのインフルエンザ発生状況や非受診群の規模や特徴は把握できない.そこで,世帯内での罹患状況と世帯構成員の受診行動をアンケート調査し,世帯単位の疾病負荷と,非受診群の規模や特徴の推定を行った.
伊豆大島の各保育園と小・中・高等学校において,2010年第13週に調査票を配布し,郵送で回収した.世帯用調査票では居住地区と同居家族の人数を,個人用調査票では,各世帯全員の性別,年齢,インフルエンザワクチン接種歴,受診行動を尋ねた.受診行動は,2009年8月から2010年3月までの各月の発熱,かぜ様症状,受診,インフルエンザ診断の有無を,10日間を一単位時間として尋ねた. 調査期間中,対象世帯の約半数に罹患者が発生し,その約8割は未成年だった.回答世帯の18%で,同一または続く単位時間内に複数の罹患者が発生した.大人の受診率は,小児より低く,性差も見られた.一方,流行シーズン中にかぜ様症状に加え発熱を伴っても受診しない例やインフルエンザワクチンを誰も接種しない世帯がそれぞれ1割強みられた.このような非受診群の存在を勘案した感染症対
策へのアプローチが,より効果の高い介入への一助となると考えた.
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