目的 本研究は紡績工程における単繊維の切断現象を工程の作用との結びつきにおいて解析しようとするものである.
 本報では, 切断過程が時間的に連続, 定常と考えたときの切断による繊維長分布の変化を, より一般化して確率論的に論じた.
結果 繊維の消失のない過程での切断による本数分布n (l, t) の時間変化は, 切断率α (l), 切断点分布β (l
1→l) の両確率関数で特徴づけられて
 ∂n (l, t) /∂
t=-α (l) n (l, t) +2∫
Llα(l
1β(l
1→l)n(l
1,t)dl
1)
で表わされることを示した.
 つぎに, 一般的に与えられた両関数についてこれの解が求められ, その結果から, 時間的な本数増加の上限値, 分布のモーメント変化を導き, さらには, 実験的に両確率関数を求める近似法を得た.
 以上の理論の応用として, ローラーカードの実験について考察した結果
 α (l) =kl
2.5 β (l
1→l) =6l/l
21(1-l/l1)
を用いることによって, 切断後の分布を比較的よく表わすことができた.
 なお, 繊維の消失率を導入することによって, 消失のある場合も同様な取り扱いが可能であることを導いた.
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