W' Waves
本誌名であるW'Wavesは, 基礎と臨床の波をさし, これにWeave the warp, and weave thewoof (縦糸に横糸を織れば) をかけて, 基礎と臨床の緊密な共同研究を願うとのこと.ベッドからベンチへ, ベンチからベツドへ, トランスレーション・リサーチの重要性が指摘されている.命名の妙に感服するとともに, updateな目的に深く共感している.
トランスレーション・リサーチという概念が脚光を浴びたのは, 医学に分子生物学の技術が取り入れられ, 爆発的な基礎研究の進展がみられたからである.莫大な新知見は医師が一人で学び理解できる範囲をはるかにこえ, 今も増加の一途をたどっている.一方で, こうした医学研究の急速な変化は, 基礎と臨床との間に大きな癌を生みはじめた.医学の現状を頭でっかち, よろよろ歩きと揶揄する医学者さえいる.基礎医学における成果を医療に還元するためには, 臨床に用いるための翻訳研究と科学的臨床研究による効果の証明が必須である.より緊密な基礎と臨床との連携, 共同研究はなにより患者さんの求めるところであろう.
W'Waves という言葉に込められた願いは, 小生が求めてきたものでもある.トランスレーション・リサーチの実践を求めて, 外科から基礎医学の研究室に席を移して3年になる.ベッドからベンチへ, 立場だけはこれを実践したことになる.しかしながら, ベンチからベッドへ, これがなかなかに難しく, 試行錯誤の毎日である.残念ながら, 今の小生にみえるW'Waves は, 等振幅, 同波長だが逆位相, 原点でしか交差できない二つの波のみである.このままでは永遠に同調共鳴しない.目的を達成するにはどうすればいいのか, 研究の方向性は正しいか, 時々刻々と変化する知見やとめどなく肥大する情報のなかでひたすらもがいてきた.
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