本研究の目的は,社会調査データを用いた実証分析によって,
2000
年代
において人々の犯罪に対する反応がどのように変容したのかについて明らかにすることである.はじめに,これまでの社会調査の結果をまとめることで,人々の犯罪へのまなざしが
2000
年代
前半に急速に過熱し,
2000
年代
半ばをピークに沈静化しつつあることを示す.次に,こうした過熱から沈静化という変化のなかで,人々の犯罪リスク認知の規定構造がどのように変容したのかについて問う.JGSSのデータを用いて時点間比較分析を行った結果,
2000
年代
前半の過熱期にみられた高階層効果や男性における配偶者の効果が,
2000
年代
後半の沈静化期では消失しつつあることが明らかになった.欧米の仮説からは説明できない日本独自の規定構造は,
2000
年代
初頭に凶悪犯罪が社会問題化し,人々の犯罪へのまなざしが急速に過熱していくなかで生じた時代特有の現象であったと考えられる.
抄録全体を表示