仮想湿潤熱帯条件下におけるダイズ種子の種々の品質指標に及ぼす種子含水率・貯蔵期間の影響を調査した。品種“秋田大豆”を用いた。供試種子は貯蔵開始前に含水率を約6, 8, 10及び12%に調整し, 温度26±1℃, 湿度80±5%で貯蔵した。貯蔵開始, 0, 2, 4, 6, 8, 10, 12, 15及び18カ月後に, 発芽率, 発芽速度係数 (CVG) , 実生生長率 (SGR) , 実生長, 種子浸出液の電気伝導度及び糖含量 (24時間浸漬後) , 水吸収量 (水浸漬0, 2, 4, 6, 8及び24時間後) 及び胚軸の呼吸活性を測定した。
当初の含水率が6及び8%の種子では, 貯蔵中発芽率及びCVGには殆ど減少が認あられなかった。種子浸出液の電気伝導度及び糖含量, また4時間後の水吸収量にも殆ど変化が認められなかった。一方, SGR, 実生長, 胚軸呼吸活性は徐々にではあるが, 有意に減少した。
含水率が10及び12%の種子では, 貯蔵期間が長くなるにつれて発芽率, CVG, SGR, 実生長, 胚軸呼吸活性が顕著に減少した。種子浸出液の電気伝導度及び糖含量, 4時間後の水吸収量は発芽率の低下に伴い急速に増加した。
種子浸出液の電気伝導度及び糖含量, 4時間後の水吸収量は発芽率の変化に同調して変化した。このことは種子の膜構造の劣化が発芽率低下に密接に関与していることを示唆している。貯蔵中の種子の発芽率の低下を予測する指標として種子浸出液の電気伝導度及び糖含量は利用可能であると思われるが, 水吸収量は健全種子による積極的水分吸収と劣化種子による受動的水分吸収 (膜透過性の低下による水分の種子内への浸入) とをともに含むため, 利用は困難であろう。
当初の含水率6及び8%の種子では, 発芽率が低下していないにもかかわらずSGR, 実生長, 胚軸呼吸活性が低下した。このことは長期貯蔵により種子活力が低下していることを示唆しており, SGR, 実生長, 胚軸呼吸活性は種子活力の指標として有用であると考えられる。
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