アサツキの生育の様相及び葉と根の生長力の季節的変動について検討した.
アサツキ鱗茎の根の自発休眠は7月上旬ごろに, 葉のそれは8月上旬ごろに終了したが, 25°C以上の高温条件は発根•発芽を著しく遅延させ, 露地植えのアサツキの鱗茎の発根は8月上旬以降に, 発芽は8月下旬以降に起こった.
発根後の根の生長適温は21~25°Cで, 発芽後の葉の生長適温は17~25°Cであった.
自発休眠終了後, 根の生長力-発根力と発根後の生長力を総合したもの-と葉の生長力は漸次上昇し, 前者は8月下旬に, 後者は9月中旬に夏秋期の最高に達し, アサツキは気温が生長適温に近い9月上旬~10月上旬におう盛な生長を示した.
生長力は最高に達して後に漸次低下し, 根の生長力は10月中•下旬~11月中•下旬に, 葉の生長力は11月中•下旬~12月中•下旬に, 夏期休眠期を除く全生育期を通じて最低になり, 晩秋にはアサツキの生長は休止した. 12~1月以降生長力は漸次上昇したが, 低温のため早春まで外観的には強制休眠の状態にあった. しかし, 植物体内部では1月下旬ごろから貯蔵葉原基 (側球原基) の形成が徐々に進行した. 根の生長力は2月ごろに, 葉の生長力は3月中旬に全生育期を通じて最高になったが, 根が生長を再開したのは3月下旬以降で, 葉が生長を再開したのは3月上•中旬であった. ただし, 葉の生長が著しくなったのは根雪融雪後の4月初め以降であった.
発根力は4月中旬に消失し, 根量の増加は4月中旬で終了した. 葉の生長力は5月下旬ごろにほとんど消失し, 地上部の増大生長は5月下旬ごろに終了した.
貯蔵葉原基は4月中旬までにすべてが形成され, 4月中旬以降急速に発達•肥大した. 6月中旬ごろから地上部の黄変と根の枯死が急速に進み, 貯蔵葉の肥大も衰え, 6月下旬には地上部はほとんど枯死した.
以上のように, 夏期休眠期を除く全生育期を通じて葉と根の生長力は月単位でかなり大きく変動し, 晩秋~初冬期に生長力が1か月強の期間著しく低下し, この期間中は9~25°Cのどの温度下でも生長がほとんどみられなかった. これは明らかに自発休眠の状態であり, アサツキでは夏期と晩秋•初冬期の二つの季節に自発休眠に入ることが示された. また, 晩秋•初冬期の自発休眠は10月ごろの涼温条件によって誘起されることが示された.
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