体育系大学の学生は、他の大学の学部生と比べて性格特性のうち、外向性や協調性が特に高いという報告がされている(土田、 2021)。こうした特性を踏まえると、体育系大学学生では、人との距離感を示す
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においても特徴が見られる可能性がある。また、
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の距離は対人恐怖心性によって影響を受けることが指摘されている。本研究は
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に影響を与えると考えられる、対人恐怖心性尺度が体育系大学学生においても先行研究同様の因子構造を示すか、また、対人恐怖心性尺度と
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の関係にどのような特長が見られるかについて検討を行った。体育系大学学生74名を対象とし、対人恐怖心性尺度と
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の測定を行った。
因子分析の結果、対人恐怖心性尺度は先行研究とは異なる因子構造を示した。このことは、体育系大学学生の対人場面の捉え方は先行研究とは異なる可能性を示唆している。対人恐怖心性尺度と
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の関係では、男女で傾向が異なることが考えられたため、性別別に相関係数を算出した。男性では
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と対人恐怖心性尺度の間に正の相関が見られた。対人恐怖傾向が強いほど、
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を大きくとるという結果だったが、統計的に有意な関係は見られなかった。一方、女性では
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と対人恐怖心性尺度の間に統計的に有意な負の相関が見られた。特に、対人恐怖傾向が強いほど、親しい異性との
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が小さいという結果が得られた。これらの結果から、体育系大学学生においては、対人場面の捉え方や、
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の在り方に特徴がある可能性が示唆された。これらの結果について、現実的にどのような解釈が考えられるのか議論が望まれる。
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