酸ブレオマイシン (以下BLMと略す) は, 1962年, 梅沢ら1) によつて発見され, 市川らによつて扁平上皮癌に著効を示すことが確認された。さらに, 悪性リンパ腫等に有効なことが示され, また, 造血器, 生殖器, 消化器に対する障害がなく, 広く臨床に用いられている抗腫瘍性抗生物質である。しかし, 副作用として, 時に致死的ともなる肺線維症が報告され, 使用量, 使用期間の制限因子となつている。
硫酸ペ
プレオマイシン
(以下NK 631と略す) は, このBLMの新らしい誘導体であり, 3- [(S)-1-Phenylethylamino] propylamino bleomycinの構造をもつ。松田ら2), 海老原ら3) が示すようにNK 631のマウスに対する肺線維症の程度は, BLMの1/4であつた。また培養細胞 (HeLa S3細胞), 各種動物実験腫瘍に対する増殖抑制効果は, BLMにくらべ強く3), 組織内濃度がBLMにくらべ高い4) ことから, その臨床における有用性が期待されている。
NK 631の毒性研究については, マウス, ラットおよび犬における急性毒性試験5), ラットにおける亜急性6), 慢性毒性試験7), およびビーグル犬における亜急性8), 慢性毒性試験9) が伊藤, 坪崎らによっておこなわれた。我々は主として肺に対する毒性を観察するためにSCHAEPPI等10) の方法に準じて, NK 631およびBLMの比較的高用量を雄性ビーグル犬に4日に1度, 総計11回, 前肢静脈内に投与し, その毒性を種々の観点から比較検討したので, 報告する。
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