平成8年3月から平成9年2月までの1年間に当院に搬送された院外心肺機能停止患者72例を対象に,来院直後の動脈血ガス値および血中乳酸値,心拍再開率ならびに現場での処置時間を指標として,特定行為としての
ラリンジアルマスク
の有用性について検討した。その結果,
ラリンジアルマスク
群(14.8±3.9min,平均±標準偏差)は従来のマスク群(8.2±3.4min)に比べて,約7分間の処置時間の延長(p<0.01)を認めた。一方,処置時間の延長にもかかわらず,心拍再開率に関しては,
ラリンジアルマスク
群が57%,従来のマスク群が52%で両群間に有意差を認めなかった(P=0.72)。また来院直後の動脈血pH,二酸化炭素分圧,酸素分圧,乳酸値のいずれに関しても,両群間に有意差を認めなかった(p>0.43)。したがって,
ラリンジアルマスク
の功罪両方を認め,その有用性については結論できなかった。すでに救急救命士制度が発足して5年が経過し,気管内挿管の代替処置として導入された
ラリンジアルマスク
の再検討が必要な時期にきている。早急にコントロールされた全国規模の調査が施行されるべきと考えられる。
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