3名の家族性大腸腺腫症患者の予防的全大腸切除材料の肉眼検索で中央陥凹を有する病変を全例に認めた.このような病変を含む粘膜領域4カ所を選び,長径2mm以上の全病変を切出して組織学的に検索した,表面型ないし無茎型の腺腫病変52ヶの平均長径は2.5mmで,その中央の粘膜固有層(以下,固有層と略す)の厚みを非病変部と比較した値(厚み値)が負のものではリンパ濾胞を伴うことが多く(20ヶ中15
ヶ
,p<0.05),筋板の断裂も見られた.正のものでは腫瘍腺管が筋板と離れていることが多かった(23ヶ中16
ヶ
,p<0.05).厚み値の度数分布は単峰性で,52ヶを「陥凹群」と「隆起群」に区別することはできなかった.炎症に伴って筋板や固有層間質が変化することにより,微小腺腫病変中央の陥凹が消失する可能性が示唆された.
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