症例は65歳の男性で,全身倦怠感を主訴に来院し,貧血を指摘され入院となった.入院時血液検査ではHbが8.5g/dlと軽度の貧血を認めた.上部消化管透視検査および胃内視鏡検査では,胃角後壁に径約8cm大で,表面は凹凸があり結節状の隆起性病変を認めた.また,前庭部小轡側に径約2cmで, IIa集籏様病変を認め,さらに前庭部大轡側に径約1cmの,中心に陥凹を有する隆起性病変を認めた.生検の結果,3カ所とも高分化型腺癌とされ,多発胃癌の診断で幽門側胃亜全摘術を施行した.
病理組織学的には,胃角後壁の腫瘍は,絨毛管状腺腫で,前底部小彎側の腫瘍は,腺管腺腫であった.両者とも一部に高分化腺癌巣を認め,それぞれ深達度はmであった.また,前底部後壁の腫瘍は粘膜固有層に限局する高分化型腺癌であり,さらに,これら3病変は互いに正常粘膜を介して存在しており多発早期胃癌と診断された.
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