重合体の化学構造と帯電の関係を定量的に議論する目的で, 電荷減衰の認められる共重合体の摩擦帯電の温度効果を検討した。電荷減衰が比較的大きいポリアクリルアミドや, メタクリル酸メチル-無水マレイン酸共重合体の飽和帯電量は, 温度上昇とともに減少するが, 電荷減衰の小さなポリスチレン, ポリメタクリル酸メチルおよびスチレン-メタクリル酸メチル共重合体では, 飽和帯電量が温度に影響されない。また重合体の帯電はガラス転移点付近でも温度一体積電導の関係にみられる屈折を認めず, 表面電導と同様に単なる表面現象として取扱うことができる。
飽和帯電量は電荷減衰定数と比例する関係で, 電荷減衰すなわち電荷の移動機構に関連する。帯電にトラップレベルの存在が関与すると仮定し, トラップからの電荷担体の移動, 換言すれば電荷減衰の活性化エネルギーがトラップの深さであるとして, 0.5~0.1eV を得た。また, 電導の活性化エネルギーは電荷減衰のそれとは逆の傾向を有し, 0.5~1.5eV と大きな値を示す。帯電量の温度効果をトラップの深さと関連させ, 接触帯電モデルにより考察した。
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