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桒野 哲史, 田中 紘介, 長澤 滋裕, 森田 祐輔, 矢田 雅佳, 増本 陽秀, 本村 健太
肝臓
2022年
63 巻
7 号
335-341
発行日: 2022/07/01
公開日: 2022/07/12
ジャーナル
フリー
症例は70歳代,男性.B型肝硬変を背景とした切除不能多発肝細胞癌に対してレンバチニブ,ラムシルマブ,持続肝動注化学療法で治療を行っていたが,リンパ節転移を認め,アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法を開始した.5コース施行し,治療開始6カ月後に40℃の発熱,倦怠感,体幹部の発疹を認め,入院となった.免疫関連有害事象による皮膚障害の診断でステロイド投与を行い,体幹部の発疹は改善したが,第4病日に両下肢に紫斑が出現し,血小板<5000/μlと著明な低下を認めた.ステロイド投与の継続により緩徐に血小板数は回復した.切除不能肝細胞癌に対するアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法によって
免疫性血小板減少性紫斑病
を生じた稀な1例を経験したので報告する.
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戸島 史仁, 足立 浩司, 稲邑 克久, 岡村 利之, 杉本 立甫
肝臓
2009年
50 巻
3 号
132-138
発行日: 2009年
公開日: 2009/04/08
ジャーナル
フリー
症例は66歳女性.C型慢性肝炎にてペグインターフェロンα-2b・リバビリン併用療法32週目に,左前腕の点状出血が出現し,血液検査にて血小板数7,000/mm
3と減少を認めたため入院となった.赤血球,白血球数が経過で横ばいに推移していたのに対し,血小板数のみが著明に減少したこと,凝固能は抗ウイルス療法中と著変を認めなかったこと,抗血小板抗体である血小板関連IgG(PA-IgG)が軽度高値を示したこと,骨髄穿刺にて赤芽球,顆粒球,リンパ球系は数・形態ともに明らかな異常を認めず,また巨核球数も正常範囲内であったことから自己
免疫性血小板減少性紫斑病
と診断した.インターフェロンが誘因となり発症した自己
免疫性血小板減少性紫斑病
と考え,プレドニゾロンによる治療を開始したところ,血小板数は急激に増加した.血小板数の著明な減少は,出血傾向をきたす重篤な副作用と考え報告した.
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宮崎 浩二
日本内科学会雑誌
2009年
98 巻
7 号
1662-1668
発行日: 2009年
公開日: 2012/08/02
ジャーナル
フリー
トロンボポエチン受容体活性化能をもつ血小板増加薬として,romiplostim(AMG 531)とeltrombopagが,慢性
免疫性血小板減少性紫斑病
の新規治療薬として,米国において先駆けて昨年承認された.慢性肝疾患や骨髄異形成症候群などによるその他の血小板減少症に対する有効性も期待され,同様の血小板増加薬が次々と開発中である.また,承認された2剤において,長期投与の安全性と有効性に関する臨床試験結果もそろいつつある.
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*桑名 正隆
会議録・要旨集
フリー
自己免疫疾患は遺伝素因と環境要因の両者が密接に関連する多因子疾患で、化学物質への暴露、喫煙、微生物感染が環境要因として知られている。感染は自己免疫病態を促進するのみならず、抑制する場合もある。感染が自己免疫疾患を誘導する機序として、微生物抗原と自己成分との交差反応、多クローン性B細胞活性化、TLRやIFNαを介した自然免疫機構の活性化、免疫制御機構の破綻などが報告されている。分子相同性による交差反応の代表例としてギラン・バレー症候群の発症要因としてのカンピロバクター感染がある。一方、胃粘膜のヘリコバクター・ピロリを除菌すると
免疫性血小板減少性紫斑病
の約半数が治癒する。この現象は、感染がマクロファージでの抑制性FcγRIIBの発現低下を介して血小板破壊と自己抗体産生を促進することで説明できる。感染が自己免疫疾患に及ぼす機序の追究は病態解明や新たな視点からの治療開発に役立つ。
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笹本 磨央, 酒井 徹也, 大井 肇, 池田 喬哉, 湯田 淳一朗, 後藤 功一
日本呼吸器学会誌
2023年
12 巻
1 号
44-49
発行日: 2023/01/10
公開日: 2025/07/07
ジャーナル
フリー
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王 黎亜, 独孤 龍, 濱崎 友佳, 白土 基明, 幸田 太, 中原 剛士
西日本皮膚科
2022年
84 巻
6 号
534-537
発行日: 2022/12/01
公開日: 2023/02/28
ジャーナル
認証あり
71 歳,男性。2 回目の COVID-19 ワクチン接種 2 週間後より,四肢・体幹に瘙痒を伴う皮疹が出現した。初診時,四肢・体幹に扁平隆起した紫紅色丘疹が散在し,瘙痒を伴っていた。一部は過去の外傷部に一致して皮疹を認め,肥厚性瘢痕や扁平苔癬などを鑑別に皮膚生検を施行した。病理組織学的に顆粒層の肥厚,表皮直下の帯状のリンパ球浸潤,変性した角化細胞を認め,扁平苔癬と診断した。経過中に口腔内の血疱や下肢の紫斑が出現し,血液検査で血小板の著明な低下がみられ,特発性血小板減少性紫斑病の診断で当院血液内科入院となった。PSL 60 mg/日より投与開始され,皮疹の著明な改善を認めた。
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泉谷 祐甫, 牛丸 裕貴, 西川 和宏, 川端 良平, 大原 信福, 三宅 祐一朗, 前田 栄, 中平 伸, 中田 健, 宮本 敦史, 安原 裕美子
日本消化器外科学会雑誌
2022年
55 巻
8 号
483-490
発行日: 2022/08/01
公開日: 2022/08/30
ジャーナル
オープンアクセス
HTML
免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor;以下,ICIと略記)は免疫機序を介すると考えられている免疫関連有害事象(immune-related adverse events;以下,irAEと略記)の発生が問題となっている.今回,切除不能進行食道癌に対して3rd lineでニボルマブを使用したところ,4コース施行後にICI関連結核を発症した.6か月の休薬期間を経て結核治療と並行しニボルマブを再開すると,再投与3週間後にirAEである肝障害・腎障害に加えて,
免疫性血小板減少性紫斑病
を発症した.入院でのステロイド治療が開始となり,治療開始から2週間で血小板は正常まで回復し,肝障害や腎障害も改善した.治療開始後1か月で軽快退院となった.現在,ニボルマブの最終投与から約3か月経過しているが,腫瘍の進行を認めていない.
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大月 哲也, 西松 寛明, 水上 浩明, 槇島 誠, 大西 真由美, 木村 文彦, 元吉 和夫, 永田 直一
臨床血液
1992年
33 巻
6 号
841-843
発行日: 1992年
公開日: 2009/04/24
ジャーナル
認証あり
A 64-year-old woman was admitted for treatment of malignant lymphoma involving the pharynx and abdomen. Lymphoma disappeared after chemotherapy and radiotherapy, but she had central nervous system symptoms; euphorism, left facial nerve palsy, right hemiplesia, and disturbance of micturition. Magnetic resonance imaging (MRI) revealed a diffuse dural thicking and a subdural fluid retention. The subdural fluid was determined to be an exudate, and a biopsy of the dura mater revealed a normal dura and a fibrin clot containing lymphoma cells and neutrophils. MRI can be very useful to detect the meningeal involvement of malignant lymphoma.
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岡本 奈央子, 本間 まゆみ, 南雲 佑, 川口 有紀子, 蒲澤 宣幸, 田澤 咲子, 塩沢 英輔, 矢持 淑子, 楯 玄秀, 瀧本 雅文, 宇藤 唯, 服部 憲路, 中牧 剛, 山本 将平, 磯山 恵一
昭和学士会雑誌
2018年
78 巻
2 号
111-116
発行日: 2018年
公開日: 2018/09/11
ジャーナル
フリー
免疫性血小板減少性紫斑病
(Immune thrombocytopenic purpura:ITP)は網内系においてマクロファージによる巨核球や血小板の貪食・破壊が亢進することが主因とされている.近年,骨髄中の血小板産生段階にも異常があることが明らかになってきており,骨髄巨核球の障害や破壊がヘルパーT細胞の不均衡やインターロイキン17(Interleukin-17:IL-17)を産生するT細胞によって起こることが報告されている.しかし,骨髄を対象とした報告は少なく,一定した見解は得られていない.今回,慢性 ITP の骨髄病理組織(クロット)検体を用いて免疫組織化学(免疫染色)を施行し,治療開始前の骨髄巨核球の形態的変化とIL-17関連の免疫学的変化の有無を検討した.昭和大学病院において臨床的に慢性 ITP と診断された患者の治療前の骨髄病理組織33例を用いた.形態的変化はHematoxylin-Eosin染色を用いて観察した.抗CD3抗体,抗CD4抗体,抗CD8抗体,抗CD20抗体,抗CD25抗体,抗CD68抗体,抗CD163抗体,抗IL-17抗体を用いて免疫染色を行った.強拡大で免疫染色陽性細胞をカウントし,対照の骨髄浸潤のない悪性リンパ腫患者の治療前の骨髄病理組織11例と比較した.各例とも巨核球の形態異常や貪食像はみられず,血小板付着像にも明らかな差異はなかった.慢性 ITP の骨髄では,IL-17,CD68,CD163 免疫染色陽性細胞の割合が有意に増加し(
P<0.05),IL-17陽性細胞の多くは,CD68やCD163陽性細胞の分布と一致していた.また,三者は各々正の相関を示した.慢性ITPの骨髄で単球やマクロファージは増加し,T細胞以外にIL-17を産生し分泌する可能性が示唆された.現在 ITP の診断に骨髄検査は必須ではないが,免疫染色を含む骨髄病理組織診断は慢性ITP症例の骨髄におけるリンパ球やマクロファージ・単球の動態やサイトカインの影響などの病態生理の解明において有用であると考えられた.
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大賀 慎太郎, 片山 映樹, 緒方 優子, 中園 裕一
臨床血液
2021年
62 巻
12 号
1666-1671
発行日: 2021年
公開日: 2022/01/13
ジャーナル
認証あり
症例は47歳日本人男性。搔痒性皮疹と鼠径リンパ節腫脹認め,左鼠径リンパ節生検より木村病と診断された。木村病診断後に血小板減少が出現し,木村病の病勢とともに血小板数の変動を認めた。木村病の軽快再燃とともに血小板数も変動を繰り返し,リンパ節再生検および骨髄検査にて木村病と
免疫性血小板減少性紫斑病
(ITP)との合併と診断した。木村病およびITPに対してprednisolone(1 mg/kg/day)で治療開始し,リンパ節腫脹および血小板数はすみやかに改善した。以後prednisolone漸減し,木村病・ITPともに病勢はコントロールされている。木村病の病勢悪化に伴いITPを合併した稀な症例と考えられ報告する。
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金子 修也, 西田 圭吾, 伊良部 仁, 越野 恵理, 水田 麻雄, 藤木 俊寛, 清水 正樹, 谷内江 昭宏
小児リウマチ
2019年
10 巻
1 号
16-20
発行日: 2019年
公開日: 2021/03/20
ジャーナル
フリー
1 歳女児.川崎病発症第3 病日に血小板減少症(1.6×104/μL)を呈した.免疫グロブリン大量静
注療法を施行し,川崎病の主要症状は速やかに改善したが,血小板減少症は持続した.骨髄検査
を施行し未熟な巨核球の増加を認め,血小板関連IgG(Platelet-Associated Immunoglobulin:PAIgG)
の増加と合わせ,
免疫性血小板減少性紫斑病
(Immune thrombocytopenic purpura:ITP)と診断
した.ステロイド治療を開始し,以後血小板数は徐々に回復し正常化した.また川崎病に関連し
た心合併症も認めなかった.
川崎病の急性期には血小板数は増加することが多いが,稀に血小板減少症を呈することがある.
その頻度は2 %程度とされ,原因として,播種性血管内凝固症候群,薬剤性血小板減少症,マク
ロファージ活性化症候群などが挙げられる.このうちITPを合併することは稀であるが,合併症の
一つとして考慮すべきである.
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七野 浩之, 大熊 啓嗣, 西川 英里, 下澤 克宜, 平井 麻衣子, 加藤 麻衣子, 谷ヶ崎 博, 陳 基明
日大医学雑誌
2014年
73 巻
1 号
22-25
発行日: 2014/02/01
公開日: 2015/05/22
ジャーナル
フリー
当院の小児脾摘出後状態の患者12 例における脾摘出後の重篤な感染症(Overwhelming postsplenectomy infection: OPSI) 対策につき後方視的に検討した.対象は1999 年から2011 年に当院で脾摘出術を行った12 例で,男4 例・女8 例,遺伝性球状赤血球症7 例・慢性型
免疫性血小板減少性紫斑病
5 例である.脾摘出時年齢は4~21 歳(中央値8 歳)で,脾摘出後の経過年数は2 年4 か月から14 年4 か月である.全例に23 価肺炎球菌ワクチンを,2 例にインフルエンザ菌b 型ワクチンの接種を術前に行った.脾摘出後抗菌薬内服は全例でペニシリンG の投与が行われたが,7 例で中断し,継続は5 例(2 年4 か月~11 年1 か月,中央値5年0 か月)である.OPSI 様の重症感染症を1 例で認めた.OPSI 予防には,術前に行う肺炎球菌とインフルエンザ菌b 型に対する予防接種に加え発熱時の速やかな対応についての患者教育が重要である.
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永尾 暢夫
日本輸血学会雑誌
1995年
41 巻
5 号
544-547
発行日: 1995年
公開日: 2010/03/12
ジャーナル
フリー
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田中 裕太郎, 黒田 裕行, 本間 慶一, 若木 邦彦
日本消化器病学会雑誌
2023年
120 巻
10 号
852-857
発行日: 2023/10/10
公開日: 2023/10/11
ジャーナル
フリー
症例は73歳男性.直腸癌術後再発に対しXELOX施行後,血小板減少の遷延を認め,化学療法を中断し当科へ紹介となった.骨髄検査で未熟巨核球とPA-IgGの上昇を認め,ITPと診断した.PSLにより血小板数は回復したが,直腸癌に対する化学療法の再開による血小板減少を考慮しエルトロンボパグを導入した.経時的にPA-IgGは低下し,血小板の減少なくFOLFIRIの継続が可能であり,直腸癌は完全奏効を得た.
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金田 眞
日本血栓止血学会誌
2018年
29 巻
6 号
669-672
発行日: 2018年
公開日: 2018/12/14
ジャーナル
フリー
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佐藤 健朗, 大本 周作, 恩田 亜沙子, 坂井 健一郎, 三村 秀毅, 井口 保之
臨床神経学
2020年
60 巻
1 号
57-59
発行日: 2020年
公開日: 2020/01/30
[早期公開] 公開日: 2019/12/17
ジャーナル
フリー
症例は69歳男性.類天疱瘡の発症と同時期に右手掌,左上肢の異常感覚,および両下肢筋力低下を認め入院した.腰部MRIでは馬尾神経根の腫大を認め,電気生理学的検査から慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーと診断し,免疫グロブリン大量療法を2回施行した.治療により症状は緩徐に改善した.しかし各治療後に,血小板減少を認め,いずれも開始の約2日目から始まり,約10日から14日で最低値に達し,終了後10日から15日より自然に改善し始めた.透析時の止血困難を認めた.その機序として,IgG-血小板複合体の関与が推定され,活性化したFcγ受容体が病態に関与する複数の炎症性疾患の併存はリスクとなる可能性があった.
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落合 友則, 安藤 純, 原田 早希子, 比企 誠, 安藤 美樹, 小松 則夫
臨床血液
2021年
62 巻
1 号
58-60
発行日: 2021年
公開日: 2021/02/05
ジャーナル
認証あり
Immune thrombocytopenia (ITP) may occur following a viral infection. We report the case of a 30-year-old woman with thrombocytopenia who was subsequently diagnosed with ITP. Although she was asymptomatic, chest computed tomography (CT) showed ground-glass opacities in the lower lung regions. The patient had a positive severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) real-time polymerase chain reaction (RT-PCR) test. She responded well to 400 mg/kg of intravenous immunoglobulin therapy. Coronavirus disease of 2019 or COVID-19 should be considered as a cause of ITP during the pandemic, and chest CT scans and RT-PCR tests should be performed in patients suspected of ITP.
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保坂 優斗, 蔵原 弘, 伊地知 徹也, 田上 聖徳, 又木 雄弘, 東 美智代, 大塚 隆生
日本臨床外科学会雑誌
2022年
83 巻
2 号
422-426
発行日: 2022年
公開日: 2022/08/31
ジャーナル
フリー
症例は25歳の女性.左側腹部痛を主訴に近医を受診し汎血球減少を指摘され,当院血液内科を紹介受診した.血液疾患や悪性腫瘍,膠原病は否定的であり,遊走脾と脾腫を認めた.脾腫による汎血球減少と診断し,腹痛が改善したため経過観察とした.初診から13年後,皮下出血と血尿が出現し,高度な血小板減少(血小板数0.1×104/mm3)を認めた.脾腫の増悪や脾臓の明らかな茎捻転を疑う所見を認めず,骨髄生検で芽球の増生はなく,巨核球が増加していた.以上の所見から,
免疫性血小板減少性紫斑病
(immune thrombocytopenic purpura:以下,ITP)を合併したと考え,ステロイドとトロンボポエチン受容体作動薬で加療したが,血小板減少の改善効果に乏しく腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.術後徐々に血小板数が増加し,術後6カ月時点で血小板減少の再燃なく経過している.遊走脾による脾腫にITPを併発したと考えられた高度な血小板減少をきたしたまれな1例を経験したので報告する.
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笹原 洋二
ジャーナル
フリー
小児期の血小板減少症には,血小板に対する自己抗体産生を原因とする
免疫性血小板減少性紫斑病
(以下ITP)が多いが,鑑別すべき疾患として遺伝子変異を原因とする遺伝性血小板減少症がある.ITPの診断は基本的には除外診断であり,慢性かつ治療不応性ITP症例の中に遺伝性血小板減少症症例が含まれている可能性がある.日本小児血液・がん学会血小板委員会では,遺伝性血小板減少症の診断アルゴリズムをまとめ,学会ホームページに公開している.
遺伝性血小板減少症は血小板サイズにより分類し,小型・正常大血小板と大型・巨大血小板を有する疾患群に分けると理解しやすい.本稿では特にITPとの鑑別に重要な小型・正常大血小板を有する遺伝性血小板減少症に焦点を当て,本症を疑う時の要点と診断のフローチャートをまとめた.また,
WASP,
WIP,
MPL,
HOXA11,
RBM8A,
RUNX1,
ANKRD26,
CYCS遺伝子を責任遺伝子とする各疾患について,遺伝子変異と分子病態に関する最近の知見をまとめた.大型・巨大血小板を伴う遺伝性血小板減少症については,國島による優れた総説を是非参照されたい.
遺伝性血小板減少症の鑑別診断は,不要なITPの治療を避けられること,また血液悪性疾患合併の可能性のある本疾患群を注意深く経過観察できることから,その確定診断法の確立は適切な治療方針決定のために重要である.
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萩原 政夫, 内田 智之, 井上 盛浩, 大原 慎, 今井 唯
臨床血液
2021年
62 巻
12 号
1684-1687
発行日: 2021年
公開日: 2022/01/13
ジャーナル
認証あり
免疫性血小板減少性紫斑病
(ITP)症例における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン後の血小板減少は,日本血液学会から勧告されている重要な注意事項である。一方,SARS-CoV-2ワクチン投与によって,新規にITPが発症する報告も相次いでいる。今回,過去に血小板数値の異常を指摘されたことのない2名の女性において,BNT162b2 mRNAワクチン2回接種の4ないし14日後に出血症状を伴って重篤な血小板減少症が出現した症例を経験した。それぞれ血小板輸血,あるいは大量γグロブリン大量療法とデキサメタゾンにより速やかに血小板数が回復した。これまでBNT162b2 mRNAワクチン接種後のITP発症は,本稿を執筆時に検索した限り9症例が報告されており,当院の2症例も含め,殆どが良好な経過を辿っている。一方,発見や対処が遅れた場合には不良な転帰を辿る可能性もあるため,全国規模の調査によってワクチンとの因果関係や,その予後に関して明らかにすることが望ましい。
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