スポーツにおける脳振盪の問題点としては,受傷時に併発しうる致死的合併症である急性硬膜下血腫,その後の急性期に再び打撃を被ることによって致死的脳損傷を生じうるセカンドインパクト症候群,そして,繰り返しの外傷により認知機能の低下をきたす慢性脳損傷などが挙げられている.これらの観点からは,脳振盪を起こしたスポーツ選手の管理および現場への復帰は重要な課題である.脳振盪では意識内容の変化を起こしているが,重症度の判定に際しては,意識消失や記銘力障害の有無や期間よりも,脳振盪に関連した諸症状,徴候の持続時間が重要であるとされている.脳振盪の客観的評価としては,ペーパーベースのSCATカードやcomputer based testingが行われている.また,重症な脳振盪の際には,神経心理学的評価も評価に加味される.復帰に際する原則は,症状の消失があるまで休息をとることである(身体機能,認知機能上の休息).そして,それから段階的復帰が強く望まれている.しかし,現実には,脳振盪からの復帰を規定している団体はわずかであり,統一性もなく,個々のレベルで対応したり,指導がなされていないのが現状である.本邦においても,関連諸団体による脳振盪からの復帰のガイドラインの作成が望まれる.
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